Trademark Appeal Case
立体商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年審判第7451号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第3類「せっけん類,香料類,香水類,クリーム,タルカムパウダー,その他の化粧品,つけづめ,つけまつ毛,バスフォーム,ボディーローション,練り歯磨き,その他の歯磨き,ボディーケアー用製品」を指定商品として、平成9年5月13日(パリ条約による優先権主張 1996年11月29日 イタリア共和国)に立体商標として登録出願されたものであって、その指定商品については、平成10年10月26日付の手続補正書をもって「せっけん類,香料類,香水類,クリーム,タルカムパウダー,その他の化粧品,バスフォーム,ボディーローション,練り歯磨き,その他の歯磨き,ボディーケアー用製品」と補正されているものである。
2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、デザイン化された特徴ある形状からなるものであるが、これをその指定商品(ただし、「つけづめ,つけまつ毛」を除く。)との関係よりみると、商品の入る胴体部分と上部の蓋の部分が容易に認識できるものであるから、全体として上記商品の収納容器として採用し得る形状の一形態を表した立体的形状よりなるものといわざるを得ない。してみれば、本願商標を上記商品について使用しても、単に商品の収納容器(包装)の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨の理由で本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、商品の形態を不正競争防止法により保護を求めた事件の判決においても、例えば、「商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」(東京地方裁判所 昭和50年(ワ)第3035号 昭和52年12月23日判決言渡【最高裁判所事務総局発行 無体財産権関係民事・行政裁判例集第9巻第2号769頁】)との判示がなされているところである。
(3)これを本願についてみるに、本願商標は、別掲に示すとおり、上端部を楕円球状突起部が付された黒色の球状立体とし、その下にハート型の白色皿状立体を形成し、さらにその下部に赤と黒とに塗り分けた円筒状立体を形成した立体の形状を表してなるものであって、全体として、液体等を収納する容器の形状としての一形態を表したとみられるものであり、これを指定商品に使用しても、取引者、需要者は、単に液状の商品の収納容器と認識するにすぎないと判断するのが相当である。
請求人は、「本願商標は、湾曲した本体部に先端のややつぼまった円筒体が係合され、さらにそれらにハート形鍔部が係合され、突起部を有する頭部が当該鍔部に乗せられた状態の一つの立体的形状をなしており、本願指定商品の収納容器であると認識されたとしても、その形状の特殊性により、本願指定商品の収納容器(包装)の形状を普通に用いられる方法で表示するに過ぎない、とはいえない」「この種商品の容器の表面模様について各種の模様を施す例があることは認められるが、外形形状を本願商標のように大きく特徴づけた例は知らないし、.........仮に本願商標から商品の容器を連想するものと認められるとしても、本願商標の大きな特徴的な変化性からすれば、本願商標は商品の収納容器の形状を普通に用いられる方法で表示したということはできない。」と主張する
しかしながら、本願指定商品(特に化粧品)を取り扱う業界においては、特にその収納容器の形状に特徴をもたせたものを採択し、販売していることが一般に行われていることは、本願指定商品の取引者・需要者間において顕著な事実というべきである。
そして、本願商標の形状の特徴は、商品の収納容器の美感(見た目の美しさ)を効果的に際立たせるための範囲のものと理解されるとみるのが相当である。
そうとすれば、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められないものである。
そして、商品の形状については、本来的又は直接的には他の知的財産権制度で保護されるものであるから、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するとの請求人の主張は採用できない。
なお、立体的形状からなる商標であっても、商品等の形状をもって構成されるものについては、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度の導入に当たって、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、また、前掲工業所有権審議会答申でも、「指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること」としている(前掲答申P31参照)。
したがって、請求人主張の形状の特異性があるとしても、それは指定商品の収納容器の一形態を表示するものであるとの原審の認定・判断を覆すには足りないというべきである。
そして、商品等の形状であっても、使用により自他商品の識別力を取得する場合があり、そのときに、識別力を認めて登録することは前記(1)で述べたとおりであり、諸外国と何ら異なるところはない。
この点に関して請求人は、「本願商標を、別添商品陳列写真(「資料1」)に示す通り、香料類、化粧品などについて『CHEAP AND CHIC BY MOSCHINO』として使用することにより各国で販売しており、我が国おいても、例えば、月刊誌『ELLE』に広告を掲載する等(「資料2」)の宣伝広告が行われると共に外国製化粧品を扱う化粧品販売店などで販売されており、取引者、需要者間では本願商標をみると本願出願人の取り扱いに係る商品であること又は前記『CHEAP AND CHIC BY MOSCHINO』の略称の『MOSCHINO』を直ちに認識できるものとなっている(「資料3」)。」と主張している。
しかしながら、参考資料1ないし3に表された商品の容器には「MOSCHINO」などの文字が付されており、該商品はこの文字により自他商品の識別機能を果たしているとみるのが相当であって、本願商標の形状そのものが自他商品識別標識としての機能を果たしている証左とはいえないから、前記請求人の主張は採用できない。
4 結 論
してみれば、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するとした原査定の認定、判断は妥当なものであって取り消すべき理由はない。
なお、本願の指定商品(補正後のもの)は、その表示において、必ずしも適切ではないものがあるが、これらは、他に記載されている商品に含まれるとみて差支えないものであるから、その表示の補正手続を経ることなく審理した。
よって、結論のとおり審決する。
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