Trademark Appeal Case
標語の識別力と記述性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年審判第13039号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおり「生活をデザインする」の文字を書してなり、平成9年2月5日に登録出願され、指定役務については、当審において、平成11年8月9日付提出に係る手続補正書により、願書記載の指定役務を、第37類「しゅんせつ工事、土木一式工事、さく井工事、バーナーの修理又は保守、冷凍機械器具の修理又は保守、荷役機械器具の修理又は保守、電動機の修理又は保守、業務用食器乾燥機・業務用食器洗浄機の修理又は保守、業務用調理機械器具の修理又は保守、駐車場用機械器具の修理又は保守、汚水排水管・排水槽の点検・保守又は修理、飲料水給水配管の点検・保守又は修理、煙突の清掃、建築物の外壁の清掃、窓の清掃、床敷物の清掃、汚水排水管・排水槽・ポンプ式貯水槽その他の貯水槽の清掃、有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものを除く。)」と補正したものである。
2 原査定の理由
原査定は、「この商標登録出願に係る商標は、標語と認められる『生活をデザインする』の文字を書してなるものであるから、このようなものを本願の指定役務に使用しても、これに接する需要者に対し、何人の業務に係る役務であるかを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定判断して、本願を拒絶したものである。
3 請求人の主張の主旨
請求人は、下記の主旨の主張をし、その証拠方法として第1号証ないし第3号証を提出した。
本願商標は、独自の識別力を有する独特のキャッチコピーであり、以下の理由により、登録を受け得るもので、本願商標は、一般的な標語ではなく、独自の識別力を有するものである。
すなわち、本願の平成11年8月9日付提出に係る手続補正後の指定役務との関係で考慮すると、本願商標が有する意味や内容において、いずれも密接な関連性を全く有しない役務ばかりとなっており、本願商標を標語と認識し、標語には識別力が無いから、本願商標にも識別力が無いと判断することは妥当でない。
本願商標中「デザイン」という文字は、本来「下絵、素描、図案、意匠、計画」等の意味で理解される語句で、性質上必ず形や色があり、それを造形的に構築できる物に対して用いられる語句である。例えば、「建築デザイン」といえば「建築物を図案化・設計すること」であり、「洋服をデザインする」といえば「洋服の色や形を造形的に構成する」ことを意味し、例えば「建築物の設計」や「デザインの考案」に関しては、明らかに直接的な記述的表示で識別力が無いことが明らかである。本願商標は、「デザイン」される対象が「生活」という漠然とした形のない観念的な概念で、本願商標が有する独自性は、この観念的な用語「生活」と本来形あるものを造形する際の用語「デザイン」を結合したことにある。この結合により、本願商標に接する者は、何となく「生活を造形する」等のイメージを抱くが、明確に「生活」をどうするのか理解することは困難である。本願商標が、商標として独自性のある領域を構築するのは、正にこの曖昧さの点にあり、これが本願商標の有する最大の特徴であると同時に、他の標語と区別するオリジナリティである。例えば、「生活設計」等の語句は、すでに一般に用いられており、明らかに直接的かつ具体的な記述的・説明的表示であるが、「生活をデザインする」の語句は、補正後の指定役務との関係では、一体何を具体的にどうするのか全く判然とせず、イメージ的には認識はできても、その実体は明確にならない。本願商標が有するこの意味の曖昧さが、本願商標が直接的かつ具体的な記述的・説明的表示となることを回避している。そして、補正後の指定役務との関係で「生活デザイン」の語句が、何らの記述的表示として一般に用いられている事実も存在しない。
したがって、本願商標は、一見して標語と把握されるかもしれないが、その内容が補正後の指定役務との関係では、全く具体性を帯びず、役務の質を直接的に表す意味合いは有しないので、一種独特な標語として識別力を有しており、役務の質を直接的に表現しない故に商標法第3条第1項第6号の規定に該当する標語とは把握されないと判断すべきである。
上記の一般的主張を、更に補正後の指定役務との関係で補足すると、工事に関する役務「しゅんせつ工事、土木工事一式工事、さく井工事」が、含まれているが、これらは「生活」という語句で表される意味合いとは、全く関連性を有さない工事である。本願商標が標語として表す「生活をデザインする」という語句およびその意味合いから考慮すると、これらの工事に関する役務に関しては、具体的に「生活」をどのように「デザイン」するのかは、全く把握不可能であり、本願商標が、いずれの役務に関しても、一般的にその内容を表す記述的表示であると把握されることはない。
次に、上記以外の役務は、「バーナーの修理又は保守、冷凍機械器具の修理又は保守、荷役機械器具の修理又は保守、電動機の修理又は保守、業務用食器乾燥機・業務用食器洗浄機の修理又は保守、業務用調理機械器具の修理又は保守、駐車場用機械器具の修理又は保守、汚水排水管・排水槽の点検・保守又は修理、飲料水給水配管の点検・保守又は修理」であるが、これらの役務も、広い意味では、人間の生活に全て関与していると認められる。しかし、現実の日常生活・家庭生活等、一般的な生活との関係で考慮すると、これらはいずれも工業上・業務上の役務であり、具体的な生活との関連性は、非常に希薄なもので、日常生活で、これらの役務に関わることはほとんどないと考えられる。
更に、本願の指定役務は、「煙突の清掃、建築物の外壁の清掃、窓の清掃、床敷物の清掃、汚水排水管・排水槽・ポンプ式貯水槽その他の貯水槽の清掃、有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものを除く。)」を含むが、そもそもこれらの「清掃、防除」に関する役務に関しては、「デザイン」という語句が自体が、何らかの記述的表示を表す語句ではなく、その結果として「生活をデザインする」という語句から想起される意味合いが、その役務の何らかの質・内容を表すということはあり得ない。
以上、補正後の本願の指定役務に関しては、本願商標は、一般的な標語とは把握されず、商標法第3条第1項第6号には該当しない。
4 当審の判断
本願商標は、前記したとおり「生活をデザインする」の文字よりなるところ、生活とデザインとの関係は、近年、工業製品や建物のデザインなどをはじめとして、人間生活において、デザインが重視されるようになってきたことは顕著な事実といえる。そして、企業が商品の生産や役務を提供するにあたって、デザインを無視して活動することはできないのが現状である。
そうとすると、かかる現状において、本願商標が使用された場合、取引者・需要者は、これより、「生活にかかわるデザインをする」という程の意味、ひいては、「デザインを重視して人間生活に企業として貢献する」という、企業の方針、標語の意味合いを、直ちに理解するものと認められる。
この点について、請求人は、補正後の指定役務は、現実日常生活と密接な関係を有さないものである旨主張しているが、本願指定役務中には、依然、「土木一式工事」が含まれており、これはデザインとは密接な関係があるし、また前記のとおり企業がデザインを無視して活動ができないのが現状であることからすると、本願の他の役務についても、前述の意味の、単なる企業の方針、企業のモットーとして理解されるものというのが相当である。
そして、このことは、例えば、「生活デザイン」の語が、彰国社発行建築大辞典1999年第2版880頁の「生活機能」の項目中に、「物を使う、人と交わるなどという日常の行為はすべて生活であるが、意志伝達を図るためのデザインを伝達デザインとすれば、ほかの生活の方は『生活デザイン』ということになる。」と記載されており、また、インターネット上のホームページURL:http://www.bacot.co.jp/shiro/ethical/student.htm「環境創造への基礎演習として、身近な現実である、私的な生活をデザインする。:自分一人が四年間の学生生活を過ごすための住空間一式をデザインする。(中略)設備構造:住宅の照度・空調・上下水道・ガス電気・電話TV」:比治山大学短期大学部のホームページURL:http://www.tandai.or.jp/hijiyama/gakka.html「生活学科生活文化専攻:人間の五感と生活環境との相互作用こそが、人間の生活をデザインすることであるという前提に立ち、身近な住・衣環境の分野を社会的・文化的視点から考えていきます。ハウス&インテリアデザインコース・・・インテリア・住宅の設計や、インテリアを演出するための装飾作品の制作などの知識・技能を高め、人間に優しく快適な生活環境をデザインし、環境と適切にコミュニケートできる能力を養います。」:長崎短期大学のホームページURL:http://www.njc.ac.jp/tandai/senkou/hukushi.html「専攻科福祉専攻:老人や障害者の生活をデザインする。」:「あすの中小企業No.220(7月号2頁)」のホームページURL:http://www.sss.city.hiroshima.jp/asu/980702.html「暮らしの中のデザイン:『デザインセンスが良い』、『デザインがしっかりしている』、『生活をデザインする』という言葉は、私達の生活のあらゆる分野で一般的な用語として幅広い意味で使用されている。」とあることからも裏付けられる。
そして、本願商標は、その指定役務に関する標語と理解されるに止まり、自他役務を識別できる標識部分を有しないものであるから、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当なものであって取り消す限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。