Trademark Appeal Case
商品形状の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年審判第2957号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲のとおりとし、第26類「組みひも、テープ、リボン、房類、腕止め、頭飾品、靴ひも」を指定商品として、平成9年9月18日に立体商標として登録出願、その後、指定商品については平成10年9月29日付け手続補正書により「テープ、リボン、靴ひも」と補正されたものである。
2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、靴ひもの両面に突起が設けられた加工が施されているとしても、全体として指定商品『靴ひも』の一形態を認識させる立体的形状を表示してなるものと認識するにとどまり、需要者が商品の出所を識別する上では特異又は特徴的な形状であるとは認められないから、これを上記商品について使用しても、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法における立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状を含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)に商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前示したように商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品・役務を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用をする必要があり、かつ、何人も使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品又は役務と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても、「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、商品の形態を不正競争防止法により保護を求めた事件の判決においても、例えば、「商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」(東京地裁 昭和50(ワ)3035号 昭和52年12月23日判決言渡【最高裁判所事務総局発行 無体財産権関係民事・行政裁判例集第9巻第2号769頁】)との判示がなされているところである。
(3)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲に示すとおり、ひもの両面に等間隔で突起が設けられているところの商品「靴ひも」の形状の一形態を表したものとみられるものであるから、これをその指定商品中「靴ひも」について使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
(4)請求人は、本願商標の外観的特徴について、本願商標は通常のひもをベースとしているが、その特徴は「ア 突起がひもの表と裏にそれぞれ1センチずつずらして等間隔に設けられている点、イ 突起の大きさが直径5ミリである点、ウ 突起の素材がアクリルラテックスである点」であり、このような特徴はこれまでの「靴ひも」にはない新規かつ特異なものであって、需要者・取引者は本願商標を「靴ひも」としての機能を確保するために不可欠な立体的形状に非常に特徴的な形状が結合された商標として認識し、他の「靴ひも」と出所を識別することができる旨、主張している。
しかしながら、上記特徴点ア及びイは、靴本体の前面に開けられた孔にひもを通して結ぶ際に、ひもの両面に突起をそれぞれ等間隔にずらして設けたことにより、上下の突起同士が組み合わさって結束力をより高めるための目的で採用された形状と認められるものである。また、特徴点ウは、綿の素材よりなる「靴ひも」に異質の素材の突起を埋め込むことによって視覚的印象をより際だたせるために採用されたものということができる。
そうとすれば、請求人の主張する上記特徴点は、商品「靴ひも」の機能又は美感をより効果的に発揮させるための範囲内のものというべきであるから、上記特徴を有する形状であっても、それが商品の機能又は美感に関わるものである以上は、これに接する取引者、需要者は、当該商品の形状を表示したものであると認識するに止まるものといわなければならない。
してみれば、本願商標に係る立体的形状の有する特徴点は、いずれも商品の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであるから、結局、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、その形状に特徴を持たせたこと自体で自他商品識別機能を果たし得るような特徴的な形態を備えていることを肯定することは困難であるといわざるを得ない。
次に、請求人は、本願商標を米国をはじめ各国に立体商標として出願し、米国、オーストラリア、韓国等で登録を受けている状況に鑑みれば、本願商標は出所表示機能を具備している旨主張し、証拠方法として甲第5号証ないし同第13号証(請求人は原審において甲第1号証ないし同第3号証を提出しているので、当審において提出した甲第1号証ないし同第10号証を甲第4号証ないし同第13号証として取り扱った。)を提出している。
しかしながら、前記甲各号証における商標は、1の方向から表示した1図(斜視図)で表されているのに対し、本願商標は、2以上の方向から表示した6図(右側面図、正面図、背面図、斜視図、拡大斜視図、拡大右側面図)より表されているものであるから、両商標は全ての面において同一であるとはいえないから、当該図をもって直ちに同一の商標ということはできないばかりでなく、諸外国と我が国の商標保護に関する法制は細部においては自ずと異なるものであり、したがって、本願商標の登録の適否は、専ら我が国商標法のもとにおいて判断されるべきものであって、諸外国における登録状況等の事情をもって本件判断が左右されるべきものではない。
4 むすび
したがって、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示してなるにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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