結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2000−35307(T2000−35307/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4083263号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成8年5月31日登録出願、その構成を別掲に示すものとし、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,下着,靴下,手袋,ネクタイ,帽子,運動用特殊衣服」を指定商品として、同9年11月21日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第33号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第19号、同第7号、同第8号、同第10号、同第11号及び同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号によって無効にすべきものである。
(2)「Christian Dior」(クリスチャン・ディオール)及びその略称「Dior」(ディオール)の著名性について
請求人「Christian Dior Couture」(クリスチャン ディオール クチュール)は、フランスの著名なファッションデザイナーである「Christian Dior」(クリスチャン・ディオール)を創始者とするフランス国法人であり、請求人及びその関連会社の取扱いに係る商品は、「Christian Dior」(クリスチャン・ディオール)ブランドとして、高級婦人服、ハンドバッグ、ベルト、靴をはじめ、香水等の化粧品の他、時計、アクセサリー等の宝飾品など、服飾関係を主として幅広い分野に及び、いずれの商品も極めて高い信用が形成され、世界的に周知著名に至っているものである。
創始者クリスチャン・ディオールは、戦後間もない1947年に発表した婦人服デザインのコレクション「ニュールック」によって一躍モード界で有名になった。この「ニュールック」は戦後の豊かなモードの時代への先鞭をつけたこと等によって歴史的な意義を有している。その後「Aライン」「Yライン」などの新しいスタイルを創作し、戦後のモード界に大きな影響を与え、「モード界の王」とまで云われている。
また同氏はドレスのみならずファッション関連商品を幅広く手がけ、「大ディオール帝国」を築き上げた。同氏は1957年に急逝したが、イヴ・サンローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ等が主任デザイナーとなってその遺志は受け継がれている。
日本においても、請求人のブランドにかかる各種商品は、洗練された高品質の商品として一般需要者間に広く認識されており、請求人の長年の継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が日本においても形成されているものである。
これらの事実は、本件商標出願前に日本において出版された各種刊行物により「Christian Dior」(クリスチャン・ディオール)ブランドが数多く紹介されていることからも明らかな事実である。これら刊行物においては、前記請求人の創始者及び請求人並びに請求人の関連会社(以下、総称して「請求人ら」という)は、「Dior」(ディオール)と略称されている。
即ち、三省堂発行の「コンサイスカタカナ語辞典」(甲第13号証)には、「ディオール」の見出しのもとに、次のとおり紹介されている。
「フランスの服飾デザイナー.1947年夏,画商から転じで,ニュールックと称しロング−スカートのモードをもって服飾界に登場.以後,Hライン,Aライン,Yラインなど数多くのモードを発表.」
同様に、同社発行「コンサイス外国人名事典改訂版」(甲第14号証)、及び文化出版局発行の「服飾辞典」(甲第15号証)には、「ディオール」の項が設けられ、請求人の創始者であるデザイナー「クリスチャン・ディオール」が紹介されている。
また研究社発行「英和商品名辞典」(甲第16号証)において、「Dior」「ディオール」→「Chistian Dior」の項には、次のとおり記載されている。
「フランスのデザイナーChristian Diorのデザインした婦人服、および同氏の後継者Marc Bohanのデザインした婦人衣料品・毛皮製品・子供服のブランド、その店、その関連会社が製造している香水・オードトワレ・化粧品・スキンケア用品のブランド。製品は米国その他多くの国でライセンス生産されており,また同社の指揮のもとに、皮製またはジャガード地のバッグ・宝飾品・時計・眼鏡枠・サングラス・靴・浴室用品その他種々のファッション商品が契約会社で製造され、同ブランドで市場化されている。...」
さらに、世界の一流ブランドを紹介する各種刊行物、例えば主婦と生活社発行「世界の逸品百科事典」(甲第17号証)、サンケイマーケテイング発行「’84ザ・ブランド」(甲第18号証)、講談社発行「新編集世界の一流品大図鑑」(甲第19号証)、読売新聞社発行「The一流品」(甲第20号証)、世界文化社発行「世界の特選品’90年版」(甲第21号証)、毎日新聞社発行「パリ大図鑑」(甲第22号証)、並びに世界文化社発行「Miss家庭画報創刊号」(甲第23号証)において随所にみられるように、請求人らは「Dior」(ディオール)と略称されている。
上述したところから、「Dior」(ディオール)が請求人らの略称および商標として著名であることは明らかである。
以上のことから、本件商標の出願当時1996(平成8)年には、すでに「Christian Dior」(クリスチャン・ディオール)の著名な略称であり、登録商標でもある「Dior」(ディオール)の文字は、請求人が自らのブランドとして「婦人服・靴・バッグ・化粧品」等のファッションに関係する商品に使用する商標として、極めて広く知られるに至っていた商標であるというべきである。
(3)本件商標と引用商標「Dior」との類否について
本件商標は、「ANTONIO DIOR」の文字から構成され、その構成中後半部の文字「DIOR」は、世界的に著名な請求人の商標と全く同一の文字を含んでいるものであり、「DIOR」の文字の前に単に「ANTONIO」の文字を付加したにすぎない構成である。
ここで、「DIOR」の文字が極めてよく知られている本件指定商品の商取引の実情からすれば、本件商標は直ちに著名な「DIOR」に「ANTONIO」を結合させたにすぎないものと認識されることが必定である。
従って、需要者が時と所を異にして両商標に接する場合には、両商標は外観において相紛れるおそれがあり、また本件商標は著名な「DIOR」の文字を含むことから、「ディオール」の称呼をも生ずると言うことができる。
従って、両商標は外観及び称呼において類似する商標であると言うべきである。
特に本件商標登録出願前及びその査定時において、「Dior」(ディオール)が「洋服」等を指定商品とする本件商標の指定商品の取引界において極めて良く知られ、またその他様々な商品に使用されていたという実情からすれば、取引者・需要者が本件指定商品である「洋服」等に付された本件商標に接した場合、直ちに著名な「Dior」(ディオール)を想起し、その結果、見間違って認識する可能性が高く、その場合にその商品について出所混同を生ずるおそれが高いものであるから、本件商標は、著名な「Dior」(ディオール)と類似する商標であると言うことができる。
(4)出所混同について
上述のように、「Christian Dior」(クリスチャン・ディオール)の著名な略称であり、登録商標でもある「Dior」(ディオール)の文字は、請求人が自らのブランドとして「婦人服・靴・バッグ・化粧品」等のファッションに関係する商品に使用する商標として、極めて広く知られるに至っていた商標である。
また、本件商標はその構成中にかかる著名な「DIOR」の文字を含み、またその構成から「ディオール」の称呼をも生ずるものであるから、両商標は外観及び称呼において類似する商標と言うべきである。
従って、本件商標がその指定商品に使用されるときには、これに接する取引者・需要者は、恰も請求人若しくはその関連会社の取り扱い業務に係る商品、またはそのシリーズ商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
(5)不正の目的及び信義則違反について
本件商標は、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的)をもって使用するものである。
言い換えれば、本件商標は、「世界的に著名な商標と同一又は類似の商標について、出所表示機能を希釈化させたり、その名声を毀損させる目的をもって使用するもの」であり、「世界的に著名な商標について信義則に反する不正の目的で使用するもの」である。
本件商標は、著名な「Dior」に「ANTONIO」の文字を結合させたにすぎないものと認識されるされる商標であり、出願当初より、著名な「Dior」の持つ名声と信用にフリーライドして使用する目的をもって商標を選定し、出願したと言えるものである。
著名商標を強く保護することは、商取引の国際化が進んだ現在においては世界的な潮流であると言え、かかる国際的な観点からも、これを無視して本件商標のような国際信義に反する商標の登録を認めるべきではない。
被請求人は、前記請求人の主張に対し、指定された期間内を含め何らの答弁、手続をしていない。
(1)商標「Christian Dior(クリスチャン・ディオール)」及び「DIOR」、「Dior」、「ディオール」の著名性について
請求人は、フランスの著名なファッションデザイナーである故「Christian Dior(クリスチャン・ディオール)」を創始者とするフランス国法人であるところ、請求人が提出した、文化出版局発行の「服飾辞典」写し(甲第15号証)の「クリスチャン・ディオール(Christian Dior)」の項によれば以下の旨の記載が認められる。
「クリスチャン・ディオールは、フランスのノルマンジーに生まれ、帽子のデザインのスケッチが好評を博したのがきっかけでクチュリエ志望となった。1947年春デビュー作、花冠ラインを打ち出し、国際モード界に『ニュー・ルック』として受け入れられ、センセーションを引きおこした。
この大成功で,以後10年間、ディオールは世界のモードのトレンド・セッターとしての役割を果たすことになる。54年秋の『Hライン』ではじめてシンプルな、ストレートなラインを打ち出し、つづくAおよびYラインをも含めてバレンシアガのルース・フィットやチュニックの影響がみられ,肩の丸みも少なくなっている。しかし,56年春の『アロー(矢)・ライン』でディオールらしさを復活,ことに18世紀のカラコを発展させて,ブラウスやドレスと組み合わせる着方は,そっくり70年代のレイヤード・ルックにとり入れられている。
ブサック(木綿王マルセル・ブサック)方式の近代的なクチュール企業の経営方針と彼の世界的な名声と活発な宣伝活動が相まって、メゾンの売上げ高は他店を大きく引き離し,大ディオール帝国を築き上げた。ディオールの死後、イヴ・サン・ローラン、マルク・ポアンがメゾンのクチュリエとして創作活動を指導している。」
このほか、三省堂発行の「コンサイスカタカナ語辞典」(甲第13号証)、同社発行「コンサイス外国人名事典改訂版」(甲第14号証)、研究社発行「英和商品名辞典」(甲第16号証)及びサンケイマーケテイング発行「’84ザ・ブランド」(甲第18号証)においても、上記と概略同旨の記述が認められるところである。
また、前記甲第13号証ないし同第16号証及び第18号証ならびに、主婦と生活社発行「世界の逸品百科事典」(甲第17号証)、講談社発行「新編集世界の一流品大図鑑」(甲第19号証)、読売新聞社発行「The一流品」(甲第20号証)、世界文化社発行「世界の特選品’90年版」(甲第21号証)、毎日新聞社発行「パリ大図鑑」(甲第22号証)、並びに世界文化社発行「Miss家庭画報創刊号」(甲第23号証)を総合して検討すれば、「DIOR」、「Dior」、「ディオール」の文字は、故「Christian Dior(クリスチャン・ディオール)」及び請求人の会社名称の略称として使用されているといえるものである。
そして、前記甲第17号証ないし同第23号証によれば、「DIOR」、「Dior」、「ディオール」の文字は、請求人の取り扱いに係る商品、「婦人服、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、宝飾品、眼鏡枠、サングラス、化粧品、時計」などのファッション関連商品の商標として使用されていたことが認められ、これらは、少なくとも、本件商標出願日である平成8年5月31日以前に、我が国の取引者・需要者間で周知・著名になっていたということができるものである。
(2)出所の混同について
本件商標は、その構成前記したとおり「ANTONIO DIOR」の文字よりなるところ、これを構成する前半の「ANTONIO」と後半の「DIOR」とは視覚上分離して看取し得るものであり、かつ、これら文字を常に一体不可分のものとして把握しなければならない特別な事情は見出せない。しかも、「DIOR」の文字は、前記(1)で認定した、衣料品その他のファッション関連商品について著名性を獲得した著名商標「DIOR」と同一構成のものである。
加えて、本件商標の指定商品は、著名商標「DIOR」が使用されているファッション関連商品に含まれるものである。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用するときには、取引者・需要者は、「DIOR」の文字部分に着目するとともに、直ちに著名な「DIOR」商標を想起し、当該商品が請求人らと何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかのごとく、その出所についての混同を生ずるおそれが少なからずあるものというべきである。
そして、被請求人は、この理由を述べる請求人の主張に対し、何ら答弁していない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたというべきであるから、その登録は同法第46条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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