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Trademark Appeal Case

称呼類似による混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35131号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第3332311号商標(以下、「本件商標」という)は、「オステック」の片仮名文字を書してなり、第5類「薬剤」を指定商品として、平成5年3月12日に登録出願、同9年7月18日にその設定登録がなされているものである。

2 請求人の引用商標

請求人が本件商標の登録を無効とすべきものと理由に引用する登録第483940号商標(以下、「引用A商標」という。」)は、「OSTEN」「オステン」の各文字を二段に横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、昭和29年12月24日登録出願、同31年7月5日に設定登録、その後3回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第20号証を提出している。

(1)無効事由

本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にされるべきものである。

(2)無効原因

(イ)第4条第1項第11号について

本件商標と引用商標とを比較すると、前者が「オステック」、後者が「オステン」と称呼されることは、それぞれの構成に照らして明らかである。そこで、本件商標の称呼「オステック」と引用商標の称呼「オステン」とを比較検討すると、両者は称呼の識別上重要な要素を占める語頭音を含め、3音目までの構成音及びその配列を共通にし、僅かに第4音における促音の有無、語尾音において「ク」対「ン」の差異を有するものである。そして、促音については、必ずしも明瞭に発音されるものとは言い難く、また、該「ク」対「ン」の差異は、聴者に聴き取り難い語尾に位置するものであることより、かかる差異が称呼の全体に及ぼす影響は極めて小なるものと言わざるを得ない。しかして、かかる徴差を有するにすぎない両称呼を時と処を異にして一連に称呼したときは、相紛らわしく、相混同を生ずるおそれを有するので、かかる称呼を有する両商標は称呼上類似の商標と言うべきものである。

また、請求人は、引用商標を昭和63年12月よりその製造・販売にかかる医療用医薬品「骨粗しょう症治療剤」の販売名として使用を開始して以来(甲第3号証)、今日まで引き続き使用している(甲第4号証)。そして、その間、同商標を使用した商品について、積極的に営業・販売活動を推進すると共に、盛んに宣伝広告を行ってきた結果(甲第5号証乃至甲第8号証)、当該商品は、請求人の主力製品のーとして、年間100億円を超える販売実績を収めるに至っている(甲第9号証乃至甲第15号証)。

その結果、引用商標「OSTEN/オステン」は請求人の製造・販売にかかる「骨粗しょう症治療剤」を指称するものとして、本件商標の出願時である平成5年(1993年)或いはその登録査定時には、取引者・需要者とりわけ医師・薬剤師間において広く認識されていたものである。このことは、甲第16号証乃至甲第18号証のとおり、日本製薬工業協会、日本薬剤師会、大阪医薬品協会といった業界団体においても認定されているところである。ちなみに特許庁における平成6年審判第1845号審決においては、引用商標「OSTEN/オステン」の使用にかかる商品「骨粗しょう症治療剤」の1991(平成3)年度の売上高が95億円、市場占有率が12.6%に達していることをもって、引用商標が「その取引者、需要者に相当程度知られていた」との認定がなされている(甲第19号証)。

商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された両商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者にあたえる印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかもその取引の実情を明らかにしうる限り、その具体的な取引状況に基づいて判断されるべきであり、このような取引の事情には、引用商標の周知・著名性も含まれる。このことは、平成4年(行ケ)第82号判決(甲第20号証)のほか多数の判決において判示されているところである。

そこで、上記のような引用商標に関する取引の状況を踏まえて、本件商標と引用商標とを比較するに、本件及び引用の両商標に対して、時と所を異にして接する需要者、取引者は、両者の称呼から受ける音声上の印象が必ずしも明確でないことによって、本件商標がその指定商品中「薬剤」、殊に「骨粗しょう症治療剤」に使用されたときは、あたかも当該商品が申立人或いは請求人となんらかの関係がある者の業務にかかる商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあり、かかる意味においても、両商標は称呼上類似の商標とされるべきものである。

・商品の類似について

本件商標と引用商標の指定商品が相抵触することは論ずるまでもなく明らかである。

(ロ)第4条第1項第15号について

本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、次のとおり、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるため、同法第4条第1項第15号の規定に該当する。

引用商標「OSTEN/オステン」は、上記のとおり、請求人の「骨粗しょう症治療剤」を指称するものとして、医薬品取引市場において極めて広く認識されるものとなっているものであるが、医薬品の販売名においては末尾に「ン」を有する商標が多数存在することより、これに接する需要者・取引者にあっては、「オステ」の部分が強く印象づけられ、この部分が、事実上、自他商品識別標識としての役割を果たしているものと言える。さらに、甲第9号証乃至甲第15号証のとおり、「骨代謝改善剤」における上位20位の銘柄中、販売名に「オステ」の文字を有するものは請求人の「オステン」のみであることも相まって、請求人の永年にわたる使用を通じて、引用商標は「オステ」の部分のみをもって、請求人の業務にかかる「骨粗しょう症治療剤」を直観せしめるほどに、識別力並びに周知性を獲得しているものである。

しかして、かかる引用商標の基幹部分である「オステ」を共通にする本件商標がその指定商品「薬剤」、就中「骨粗しょう症治療剤」について使用されたときは、引用商標「OSTEN/オステン」を容易に連想・想起させ、もって、取引者・需要者をして、当該商品が請求人の「オステン」商品のシリーズ商品・姉妹商品として、恰も請求人或いは請求人と何らかの関係がある者の業務にかかる商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずること必至である。

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものとして、また仮にこれに該当しないものであるとしても、同第15号の規定に該当するものとして、同法第46条第1項第1号の規定により登録を無効とされるべきものである。

4 被請求人の答弁

被請求人は、「結論同旨の審決を求める」と答弁し、その理由を次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至同第3号証を提出している。

(1)請求人の言うところによれば、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとのことである。

しかしながら、その請求には理由がない。

(2)本件商標からは「オステック」、引用商標からは「オステン」の称呼の生ずることに異論はない。

両称呼を比較するに、本件商標は「オス・テック」のように前後の部分に分離されたニュアンスで発音されるのに対し、引用商標は「オステン」と全体が平易に発音される。これは、本件商標の「テック」の部分が「tech」の略語として人口に膾炙されていること、及び本件商標の「ック」の部分が促音を伴って強く明瞭に発音されるのに比べて、引用商標の「ン」が弱音で前の音に吸収されることによる。すなわち本件商標と引用商標との差異がそれぞれの称呼全体に及ぼす影響は大きく、両称呼は相互に語韻・語調を異にし、聴者をして彼此聞き誤る可能性はないと判断すべきである。

さらに請求人は、引用商標が周知・著名であるとの具体的な取引の実情に基づいて商標の類否を判断すべきと主張する。そのような判断手法そのものは否定するものではないが、本件の場合に限っていえば、請求人は引用商標が単に周知であることを主張しているにとどまり、周知になった結果として引用商標の類似の範囲がどのように変動したのかを明らかにしておらず、また類似の範囲が変動した事実も客観的に認め難い。よってここでは具体的な取引の実情は参酌すべくもなく、経験則に従って類否を判断すべきであることは、商標法第4条第1項第10号を同第15号とは別に規定した法の趣旨よりするも明白である。よって本件商標と引用商標とは称呼において類似するものではなく、従って本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

(3)次に請求人は、本件商標は引用商標との関係で商標法第4条第1項第15号に該当すると主張する。

請求人は甲第3号証以下により引用商標の著名性を証明したとしているが、引用商標が著名であるとしても、引用商標と本件商標との間で出所の混同が生ずるとは到底認め難い。この点について請求人は引用商標と本件商標とが「オステ」の部分を共通にし、その部分が自他商品識別標識としての役割を果していると主張している。しかし、事実は正反対である。すなわち、本件商標及び引用商標を構成するオステ(oste)の文字は、骨(bone)を意味する連結形の一種であり(乙第1、2号証)、請求人が本件商標を使用していると主張する骨粗しょう症治癒剤との関係においては比較的識別力が弱い部分である。

従って、かりに請求人の商品をあらわすものとして引用商標が周知であるとしても一連のものとしてのみ認識されるものであって「オステ」の部分のみが請求人の商品をあらわすものとして需要者・取引者(請求人の謂うところによれば「とりわけ医師・薬剤師」)の注意を特別にひく部分とはいい得ない。従って、被請求人の商標「オステック」も「オステ」の部分が請求人の商標と共通するから出所が混同するとはなし得ず、その部分は共に「骨」を暗示するのみであり、「オステック」全体として「オステン」とは称呼上明らかに識別し得るものであり、混同を生ずるものではない。

過去の指定商品「薬剤」についての登録例をみるも、「オステ」「OSTE」を語頭に含む商標が多数登録されており(乙第3号証)、このことは「オステ」「OSTE」の語が請求人の案出した造語ではなく、「骨」を暗示する語として商標を採択しようとする者に好んで使用される識別力が弱い語であることを証明している。すなわち「オステ」の文字は、請求人の言うような自他商品識別の機能を果す部分ではなく、また請求人の主張を容認することにより請求人による使用の独占が事実上許されるような独占適応性を備えた語でもない。また引用商標が、請求人の主張のように本件商標出願時には周知性を超えた著名性を獲得していたかどうかについては疑問である。甲第19号証によると「その取引者、需要者に相当程度知られていた」とのことであるが、「極めて広く知られていた」とはされていない。またこの事件は相手方が答弁しなかったために十分な審理がなされておらず、請求人の主張をそのまま認めたにすぎない。畢竟請求人の主張は、その前提となる著名性の事実が十分証明されたとは言えず、また出所混同が生ずるとは認められないので、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。

以上のように本件商標と引用商標とは、その指定商品が相抵触するとしても、商標が相類似するものではないから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。また、請求人の商標との関係で商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

5 当審の判断

よって、本件商標と引用商標との称呼上の類否を判断するに、本件商標は、「オステック」の文字を横書きしてなるものであるから、これよりは「オステック」の称呼を生ずること明らかである。

他方、引用商標は、「OSTEN」「オステン」の各文字を二段に書してなるものであるから、これよりは「オステン」の称呼を生ずるものとみるのが相当である。

そこで、本件商標より生ずる「オステック」の称呼と引用商標より生ずる「オステン」の称呼とを比較するに、両称呼は共に4音と短い構成音よりなるものであるから、その構成音の一音一音が明確に聴取し得るものである。さらに、前者の後半部の「テック」の音は、促音を伴って強く撥ね揚がるように発音されるのに対して、後者の後半部の「テン」の音は無声音の「ン」を伴なって下降ぎみに発音されるものであるから、これらを一連に称呼した場合、全体の語調・語感が著しく相違するものとなり、称呼上十分に聴別し得るものである。

さらに、本件商標と引用商標は、各々上記したとおりの構成よりなるものであるから、外観上互いに区別し得る差異を有し、また、両商標は、共に造語よりなるものと認められるものであるから、観念上比較すべくもないものである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものである。

また、請求人の引用商標が需要者間に広く認識されているものであるとしても、上記のとおり、本件商標と引用商標は、商標が著しく相違するものであるから、商標権者がこれをその指定商品に使用しても、取引者・需要者間に、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるが如く、その商品の出所について誤認・混同を生じさせるおそれがあるものとは認め難い。

したがって、本件商標は、商標法第4第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものでなく、同法第46条第1項第1号によりその登録を無効にすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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