結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35241号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4075365号商標(以下、「引用商標」という。)は、「ARCENCIEL」の欧文字を書してなり、平成5年7月7日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,つや出し剤」を指定商品として、同9年10月31日に設定登録されたものである。
請求人が引用する登録第710342号商標(以下、「引用商標」という。)は、「ARCANCIL」の欧文字を書してなり、昭和40年3月27日に登録出願、第4類「せつけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、同41年6月16日に設定登録されたものであって、現に有効に存続するものである。
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第14号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記のとおり、「ARCENCIEL」の欧文字よりなる商標であって、これは「虹」を意味するフランス語を表したものに他ならない。そして、本件商標が使用される化粧品等の取引界において、フランス語が多用されていることは顕著な事実である。よって、フランス語「ARCENCIEL」の文字よりなる本件商標は、これがフランス語読みされて「アルカンシェル」の称呼を生ずるとするのが自然である。
なお、被請求人は、本件商標の審査過程において、本件商標を英語的読み方により「アーセンシール」と称呼するものと特定し主張しているが、本件商標は、英語ではなくフランス語であり、かつ、その指定商品たる化粧品等の取引界において、フランス語が多用されていることは前記したとおりであるから、被請求人の前記主張は失当であるのみならず、被請求人は、本件商標の出願の直前たる平成5年7月5日に、「アルカンシェル」の片仮名文字よりなる商標を登録出願していることを勘案すれば、本件商標から「アルカンシェル」の称呼が生ずることは一層明らかである。
他方、引用商標は、フランス国法人たる請求人が、1935年以降現在に至るまで、請求人の商品「化粧品(口紅,ネイルポリッシュ,アイペンシル等)」に継続して使用している商標であって、世界各国において使用され登録されており、請求人のフランス製の化粧品を表示するものとして広く知られている。
このことから、引用商標「ARCANCIL」は、フランス語読みされて「アルカンシル」と称呼される。日本においても、引用商標は「アルカンシル」の片仮名文字により、雑誌等によって紹介されている。
なお、被請求人は、本件商標の審査過程において、引用商標の称呼を「アーカンシル」と特定し主張しているが、引用商標がフランス語読みされて「アルカンシル」の称呼を自然に生ずることは上記したところから明らかである。
そこで、本件商標より生ずる「アルカンシェル」と、引用商標より生ずる「アルカンシル」の両称呼を比較するに、両者は、共に6音構成であって、称呼の識別上重要な要素を占める第1音から第4音「アルカン」を全て共通にし、かつ、語尾音「ル」までも共通にするものであって、異なる点は僅かに第5音の「シェ」と「シ」の1音の差異にしかすぎない。
そして、該差異音「シェ」と「シ」は、その伴う母音が「e」と「i」で異なるものの「e」と「i」は母音として近似しているばかりでなく、その子音は共に無声の摩擦音である。
そうとすれば、両称呼は、簡潔な称呼とは云い難い6音にあって、前記差異音が比較的聴取し難い語尾部に位置することも相俟って、両称呼を一連に称呼するときは、互い相紛れるおそれがあるものというべきである。
なお、別件商標「CILSTAR」(「シルスター」の称呼)の拒絶査定に対する審判事件において、その引用商標「SHELLSTAR」(「シェルスター」の称呼)とは、前記差異音は「子音共通の近似音といえるものであって、この音の差異が各称呼全体に及ぼす影響は必ずしも大きいとはいえず、したがって、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、その語感は相似たものとなって、聴者をして彼此聞き誤るおそれがあるものと判断するのが相当である。」と説示されている。
さらに、請求人は、「アルカンシル」の文字よりなる商標を登録出願したところ、「アルカンシェル」の文字よりなる登録商標に類似するとして拒絶理由通知を受けている。
してみれば、「アルカンシェル」の称呼を生ずる本件商標は、「アルカンシル」の称呼を生ずる引用商標と、称呼において類似する商標であることが明らかである。
次に、本件商標と引用商標の外観について比較するに、本件商標「ARCENCIEL」と引用商標「ARCANCIL」は、全体として9文字又は8文字中、第1文字から第3文字「ARC」、中間における「NCI」及び語尾における「L」の7文字を共通にするものであるから、時と所を異にして離隔的に観察するときには、外観上互いに相紛れるおそれがある類似の商標である。
本件商標は、その指定商品中「せっけん類,化粧品」につき、引用商標の指定商品と同一である。
よって、本件商標は、その登録出願日前の出願に係る引用商標に類似する商標であって、かつ、その指定商品も抵触することが明らかなものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、既に述べたとおり、請求人が、1935年以降現在に至るまで、商品「化粧品(口紅,ネイルポリッシュ,アイペンシル等)」に継続して使用している商標であって、本件商標の登録出願前から、請求人の商品を表示するものとして世界的に広く知られている。
そして、本件商標が、請求人の前記引用商標に類似するものであることも既に述べたとおりである。
本件商標は、前記申立人の商品「化粧品」を指定商品とする他、「かつら装着用接着剤,つけまつげ用接着剤」等の商品を指定商品とするものであるが、これら商品は化粧品と密接な関連性を有する商品である。
してみれば、本件商標が、その指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標「ARCENCIEL」から「アーセンシール」、引用商標「ARCANCIL」からは「アーカンシル」の称呼が生ずるものと思料するが、仮に請求人が主張するように本件商標から「アルカンシェル」、引用商標から「アルカンシル」の称呼が生ずるとしても、両者は、その音構成に明らかな差異が認められるから、称呼上容易に区別し得るものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼上明らかに非類似の商標である。
また、本件商標と引用商標とは、前者は9文字、後者は8文字と顕著な差異を有するものであり、第4文字目において「E」と「A」の差異、及び後半部における「IEL」と「IL」の差異をも有するものであるから、外観上明らかに非類似の商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、引用商標が本件商標の登録出願前から請求人の商品を表示するものとして世界的に広く知られている旨主張する。
しかしながら、請求人の提出に係る甲第6号証ないし第10号証からは、引用商標が請求人の化粧品を表示するものとして広く知られているものと認めることはできない。
してみれば、本件商標は、引用商標と類似しない商標であって、他に混同を生ずるとすべき格別の事情も見出し得ないから、本件商標を指定商品に使用した場合、その商品が請求人又は請求人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれのないものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
請求人は、本件商標に対し、本件審判請求と同様の理由による商標登録異議の申立て(平成10年異議第90528号)を行ったが、当該異議決定謄本中にあるように、上記被請求人の主張と同様の理由により、本件商標の登録を維持する旨の決定がなされている。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標は、それぞれ前記した構成のとおり、前者が「ARCENCIEL」、後者が「ARCANCIL」の欧文字を書してなるものであるが、いずれも何ら特定の意味合いを理解させない一種の造語よりなると認められるものである。
ところで、本件のように欧文字のみよりなる造語商標であって、その発音を表現したとみられるべき片仮名文字が併記されていない場合においては、これに接する取引者・需要者は、その語学知識に応じ、それぞれの読み方をするものということができる。そして、我が国では、最も親しまれている外国語が「英語」であり、また、化粧品等を取り扱う業界においては、「仏語」がしばしば使用されている実情にあることから、該欧文字のみよりなる商標を英語又は仏語の読み方に倣った発音で称呼し、取引にあたる場合も決して少なくないとみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標と引用商標は、それぞれの構成文字に相応して、英語風の読みで、前者が「アーセンシエル」、後者が「アーカンシル」、また、仏語風の読みで、前者が「アルサンシェル」、後者が「アルカンシル」の各称呼を生ずるものといわなければならない。
なお、請求人は、「本件商標は、『虹』を意味する仏語を表したものであるから、『アルカンシェル』の称呼を生ずる。」旨主張する。
確かに、本件商標と同一綴り字の「arc−en−ciel」が仏和辞典に記載されていることは認められるが、我が国における仏語の普及度の点からみれば、これをもって、本件商標に接する取引者・需要者が、その構成文字である「ARCENCIEL」の文字を捉え、これが「虹」を意味する仏語で、「アルカンシェル」と発音するものであると直ちに理解するとは到底認め難い。むしろ、仏語の「cent」(サント)、「cendre」(サンドル)、「accent」(アクサン)、「licence」(リサンス)等にみられるように、「cen」が「サン」と発音される例の多いことからみれば、「cen」を「カン」と発音するのは例外といえるものであって、本件商標は、仏語風の読みでは「アルサンシェル」と発音されるとみるのが自然であるから、前記請求人の主張は採用できない。
そこで、本件商標より生ずる「アルサンシェル」と引用商標より生ずる「アルカンシル」の称呼を比較するに、両者は、第3音目を「サ」と「カ」、第5音目を「シェ」と「シ」とする差異を有するものであって、その差異が称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼しても彼此相紛れるおそれのないものといわざるを得ない。
その他、本件商標より生ずる「アーセンシエル」と引用商標より生ずる「アーカンシル」「アルカンシル」及び本件商標より生ずる「アルサンシェル」と引用商標より生ずる「アーカンシル」の各称呼の比較においても、両者は、いずれも相違する各音の音質の差、音構成の差等により、それぞれを一連に称呼しても彼此相紛れるおそれのないものである。
また、本件商標と引用商標は、いずれも何ら特定の意味合いを理解させない一種の造語よりなるものであること前記認定のとおりであるから、両者は、観念上比較し得ないものであり、さらに、外観においても、その文字構成において「ARC」「NCI」「L」の文字部分を共通にするも、第4文字目において、前者は「E」、後者は「A」、第8文字目において「E」の有無に明らかな差異を有するばかりでなく、その書体も異にするものであるから、明瞭に区別し得るものというべきである。
したがって、本件商標と引用商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれの点よりみても、相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用商標とは、前記(1)の認定のとおり、非類似の商標であるばかりでなく、請求人提出に係る各甲号証を以てしては、引用商標が、本件商標の登録出願時に、請求人の業務に係る商品「化粧品」を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く認識されていたものということはできないから、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、請求人又は同人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じさせるおそれのないものである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反してなされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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