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Trademark Appeal Case

商標使用証拠の有効性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第31076号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第2644401号商標(以下、「本件商標」という。)は、昭和63年9月16日に登録出願され、別掲に表示したとおりの構成よりなり、第24類「運動用特殊衣服、運動用特殊ぐつ」を指定商品として、平成6年4月28日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要旨

請求人は、本件商標の指定商品中「運動用特殊衣服及びその類似する商品」について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求める、と申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出している。

1 本件商標は、その指定商品中「運動用特殊衣服及びその類似する商品」について、日本国内において継続して3年以上使用されていない。したがって、本件商標は、「運動用特殊衣服及びその類似する商品」について登録を取り消されるべきである。

2 被請求人の答弁に対する弁駁

(1)乙第1号証及び同第2号証の世界長株式会社(以下「世界長」という。)の取締役社長により作成された「上申書」には、世界長が前商標権者「ノエル フランス ソシエテ アノニム」(以下「ノエル社」という。)製造の靴及び運動用特殊靴(登山靴)を輸入し、わが国で販売してきた旨、記載されている。被請求人は世界長を通じて本件商標を日本国内において使用していたと述べていることから、この上申書では、「本件商標を付した同社製造の・・・、」と商標を明示して記載するのが自然である。被請求人が製造販売している靴には本件商標が付されていない靴も多数存在し、被請求人が使用している「LINE7」商標も、本件商標を含め少なくとも3つのタイプが存在しているのであるから、単に、輸入代理店が被請求人から靴を輸入販売している旨の陳述では本件商標の使用に係る証拠として不十分である。

上申書に添付されている商品カタログは外国語で記載されている。日本で配布するものならば日本語のものが用意されるはずである。現に被請求人は、乙第5号証及び同第6号証として日本語のカタログ(1990年1991年のもの)を提出している。なぜ、請求の登録日以降になると外国語のものしか存在しないのか不思議である。靴の業界では英語のカタログが一般的に使用されるというような特別の事情が存在することを請求人は知らないし、被請求人によってそのような事情の存在は明らかにされていない。

上申の内容を見ると「配布された」としか述べておらず、いつ配布されたのか、また、配布目的、配布した店の数も不明である。

上述したように、同上申書は本件商標の使用を証明するためのものであるから、その内容は具体的でなければならないにもかかわらず、記載内容が曖昧であり意図的にぼかしたとしか考えられない。証拠として採用されるべきものではない。

(2)乙第3号証は、世界長の社内文書ということであるが、このような内部文書は客観性に欠けることは明らかである。同証拠には「LINE7」と記載されているが、上述のように被請求人は少なくとも3種類の「LINE7」の商標を使用しているので、いずれの商標を示しているのか特定できない。本件商標であると特定できないのであるから、本件商標の使用証拠としては不適切である。

販売実績の欄に金額が明示されていない。実績ゼロの場合もあり得る。したがって、この文書は何ら証拠として役立つものではない。また、契約事実と商標の使用は別個独立した行為であるから、契約事実を示したところで使用証拠にはならないのはいうまでもない。

(3)乙第4号証の1は、日商岩井が被請求人に対して本件商標を付した商品の輸入の申し入れに対する被請求人の返答ということであるが、「LINE7」の文字が確認できない。よって、証拠として何ら意味がない。

(4)乙第4号証の2の1及び2は、ラクロワ・ジャパン社が97年に開催された博覧会の会場で本件商標を付した靴を見て被請求人に輸入したいと申し入れをしたときのFAXの写しということである。

同FAXの写しには、博覧会会場のノエル社のブースにおいて、ラクロワ・ジャパン社の関係者が、ノエル社の関係者から本件商標を付した靴について日本に代理店がないと聞いたと記載してあるので、そのような発言を聞いて輸入販売業者が輸入申し入れのFAXを送付したことが容易に窺える。

これらの事実から、本件商標を付した靴は、少なくとも97年時点では日本国内において販売されていなかった可能性が大きい。本件証拠は、使用の事実を示すどころか、本件商標は使用されていなかったのではないかと疑問を持たせる内容である。

(5)乙第4号証の3の1及び2は、博覧会の展示を見た輸入業者が被請求人に資料を請求したのに対し、被請求人が世界長に代理権がある旨を知らせている手紙であるが、これらの事実が本件商標の使用の証明と何の関係があるのか、請求人には理解できない。

(6)乙第5号証及び同第6号証は、1990年或いは1991年の商品カタログであり、使用証拠としては不適切である。

(7)乙第7ないし第11号証の商品カタログは、英語で記載されていることから日本で配布されたものと認めることはできないし、いつ配布されたのかも不明である。また、何の目的で誰に配布されたのかも分からない。つまり、これらの資料は使用証拠としての要件を具備していない。

(8)乙第12号証は被請求人が世界長に発行したインボイスであるが、同インボイスには「sports shoes」としか記載されていない。被請求人が使用している「LINE7」の商標は少なくても3つの種類が存在し、本件商標はそのうちの一つにすぎない。他の証拠により被請求人の商品には本件商標を付していない靴(「OUTDOOR」用の靴ももちろん含む。)も多数存在することが窺える。したがって、インボイスに単にスポーツシューズと記載されていて、インボイス自体に本件商標が表示されていたからといって、本件商標を付した靴が実際に日本に輸出されたことを示したことにはならない。同インボイスを使用して、本件商標を使用していない靴の輸出手続きを行うことは可能であることはいうまでもない。

(9)乙第13号証の1のインボイスは、乙第1号証の28頁に掲載されている靴に関するものと被請求人は説明している。しかしながら、乙第1号証の28頁に記載されている靴の商品番号は「6845」であり、インボイスの番号は「7」で始まる数字であるから、同一性がないことは明らかである。また、「7」以降の数字も「6845」であるかは不明である。数字の「4」に該当する部分の文字が極めて不鮮明だからである。仮に「6845」という数字であったとしても、ここで使用されている数字の「4」はインボイスの他の箇所で使用されている数字の「4」とかなり書体が異なっている。よって、証拠としての信用性に疑問をもたざるを得ない。

(10)乙第14号証は、株式会社ポスティコーポレーション発行の「シューズポスト」の該当ページであるが、その記事の内容には、日本で販売していることを示す事実は全く認められない。もし、世界長が販売しているのなら、「世界長がライセンス契約を結んでいる」という記事内容はおかしいといわざるを得ない。「日本では世界長が販売している」と記載されるのが普通であろう。本件証拠は、世界長が1996年時点で本件商標を付した靴を販売していない可能性を示唆する記事と考える。

(11)乙第15号証は株式会社ポスティコーポレーション発行の「シューズブランド辞典」の該当ページであるが、これは、1993年発行のものであって、時期的に使用証拠としてふさわしくないことは明らかである。

(12)乙第16号証は個人輸入に関するものであり、商標権者、専用使用権者或いは通常使用権者によって商品の販売目的で広告として掲載されていたものでないことは明らかである。本件証拠は使用証拠として何の価値もない。

(13)乙第17号証の1ないし4は、1997年に開催された博覧会の存在を示すものである。乙第17号証の4の手紙に「我々はこのフェアが『LINE7』商品を、フランスのトップブランドとして日本の消費者に紹介するのに役立つ好機であったと確信しています。」と記載していることから、この博覧会が展示目的であったことが窺われる。だとすれば本件商標を付した靴が同博覧会に出されていたとしても、商標法上の使用には該当しないことは明らかである。

(14)乙第18号証は、本件商標を付した登山靴及びトレッキングシューズの商品外箱の写真とされているが、写真に写っている箱から、本件商標が記されていることは分かるが、同箱が靴の箱であると判断することはできない。

(15)乙第19号証及び同第20号証は、被請求人から世界長へ送付された本件商標を付した商品の価格表とのことである。被請求人の「LINE7」の商標は3種類が確認できるから、本件証拠に表示されている「LINE7」が、3つの「LINE7」の商標のうちどれを示しているのか不明である。少なくとも、本件商標が明示されていない以上本件商標の使用証拠にはなり得ないことは明らかである。

第3 被請求人の答弁の要旨

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第20号証(枝番を含む。)を提出している。

1 本件商標の前商標権者ノエル社は、世界長に対し、平成2年6月1日から平成10年2月4日に至るまで、日本国内における本件商標の独占的通常使用権を許諾し、世界長は、本件商標を付した登山靴、トレッキングシューズ等の輸入販売とライセンスによる生産販売を行ってきた(乙第1ないし第4号証の3)。ノエル社と世界長の契約関係は、上記平成10年2月4日に終了しており、多くの資料が既に破棄されるか散逸しているため、契約書自体は見出せなかったが、上記乙第1ないし第4号証の3その外の乙号証によって、本件独占的通常使用権の存在は明白である。

2 世界長は、前記契約期間の初期には、本件商標を付した運動用特殊靴(登山靴)及び一般靴をライセンス生産していた。そのような製品の例として、乙第5号証及び乙第6号証を提出する。

3 上記のとおり、ライセンス生産もしていたが、本件商標を付した商品の多くは、ノエル社から世界長へ直輸入されたものである。そのような商品の例として、乙第1号証及び乙第2号証、並びに乙第7ないし第11号証を提出する。これらのカタログの奥付には、それぞれ「Sekaicho」或いは「Japon」の文字が明記されている。したがって、これらの記載により、同カタログ及びそこに掲載された商品が日本での販売に供されていたことは明らかである。

1995年頃から、ノエル社は本件商標のデザインを若干変更した別掲に表示した商標(以下「新バージョン商標」という。)を採用したが、その後も本件商標は、新バージョン商標と並行して相当期間使用されていた。

このため、1995年以降は、本件商標を付した商品と新バージョン商標を付した商品とが同時に市場に出回ることとなった。

本件商標と新バージョン商標とは、同一文字を構成要素として同一の称呼及び観念を生じるものであり、かつ、外観においても同視される図形であって、識別性に影響を与えるほどの相違はないから、新バージョン商標は「社会通念上同一と認められる商標」に該当するものというべきである。

4 世界長は、平成2年6月1日以降少なくとも平成10年2月4日までは、ノエル社より輸入した本件商標の付された登山靴等を日本に輸入し日本国内で販売していた(乙第12ないし第20号証)。

5 以上のとおり、本件商標及び新バージョン商標は、本件審判請求登録日前3年以内に、本件審判請求に係る指定商品について使用されていたことが明らかであるから、本件商標の登録は取り消されるべきではない。

第4 当審の判断

1 被請求人の提出に係る乙各号証によれば以下の事実が認められる。

(1)世界長の取締役社長「田中正伸」の「上申書」(乙第1号証及び乙第2号証)に、世界長は、平成2年6月1日から同10年2月4日まで当時の商標権者であったノエル社と提携し、ノエル社製造の靴及び運動用特殊靴(登山靴)を輸入し国内で販売した旨、及び、乙第1号証及び乙第2号証にそれぞれ添付されたノエル社から送付された1995年夏用の外国語表記の商品カタログ及び1996年夏用の外国語表記の商品カタログを取引関係のある国内の靴販売店及び運動具店に配布した旨が記載されていること

また、上記商品カタログに掲載されている登山靴その他運動用特殊靴と認められる靴に本件商標と同一性を有する商標(以下「使用商標」という。)が表示されていること

(2)ノエル社が件外の企業宛に送付した平成9年3月25日付(乙第4号証の1)、同年4月3日付(乙第4号証の2)及び同年9月17日付(乙第4号証の3)の手紙に、ノエル社は世界長と販売契約をしている旨記載されていること

(3)裏表紙に「NOEL FRANCE S.A.」と記載された、外国語表記の、商品カタログ1995−1996年冬版(乙第7号証)、同1996ー1997年冬版(乙第8号証)、同1997年夏版(乙第9号証)、及び、同1997年冬版(乙第10号証)に掲載されている登山靴その他運動用特殊靴と認められる靴に使用商標、或いは、新バージョン商標が表示されていること

また、商品カタログ1996−1997年冬版の裏表紙に「Secaicho Corporation」と記載されていること

(4)ノエル社が世界長に宛てたインボイス(乙第12号証)に、「SPORT SHOES」と商品名が表示され、また、インボイスの用紙の左上に使用商標が大きく表示されていること

(5)1996年3月15日付けポスティーコーポレーション発行の「Shoes Post」紙に、「『ライン7』・・・フランスのアウトドアマーケットではNo.1のシェアを誇るシューズブランドである。」、「仏『ライン7』のアウトドアシューズ」として、「『ライン7』シューズは、仏・ノエル社のスポーツシューズディビジョンで・・・」、「日本のマーケットでの代理店は世界長でライセンス契約も結んでいる。」と記載されていること

(6)平成9年に開催された「東京アウトドアズ・フェスティバル’97」に「LINE7」に関連する靴が展示されたこと

2 以上の事実によると、

(1)世界長は、平成2年から同10年の間ノエル社と提携関係にあったと認識し、平成9年にノエル社は世界長との間に我が国における販売契約が存在することを認め、また、平成8年3月の新聞にノエル社の日本マーケットでの代理店は世界長でライセンス契約が結ばれていると報道されており、しかも、平成8−9年のノエル社の商品カタログに世界長と認められる企業名が記載されていることが明らかである。そして、「LINE7」ブランドがノエル社の主力ブランドの一と推認し得ること(平成8年3月の新聞に「ライン7がフランスNo.1のシェアを誇るアウトドアシューズブランドである」旨記載されている。)を併せ勘案すれば、少なくとも平成8年ないしは同9年に、世界長は、本件商標について通常使用権者の地位にあったものと認めることができる。

(2)世界長が国内で配布したとされる平成8年ないし同9年のノエル社の商品カタログは外国語で表記されたものであるところ、国内用の商品カタログは日本語で記載されているのが通例であるとしても、外国の商品については、当該国語で記載された商品カタログが取引者、需要者に配布されることも少なからず行われていることであって、ノエル社の商品カタログについては、通常使用権者の世界長は平成7年夏用と平成8年夏用を国内で配布したと述べ、さらに、平成9年開催の「東京アウトドアズ・フェスティバル’97」の展示会にノエル社の商品が展示されたのであるから、この展示会で商品カタログが配布されたであろうことは容易に推認可能というべきである。

(3)平成8年ないし同9年のノエル社の商品カタログには、「登山靴」その他「運動用特殊ぐつ」に包含される商品が掲載され、本件商標と同一性を有する使用商標が表示されており、また、新バージョン商標も表示されていることが認められる。

そして、新バージョン商標にしても、本件商標と外観において一部異なるものであるが、外観を多少変更して使用することは実際の取引において通常行われているところであり、この変更が商標の識別標識としての機能に及ぼす影響は微少とみられるから、使用商標のみならず新バージョン商標も社会通念上本件商標と同一のものというべきでる。

また、上記(2)で述べた平成9年開催の「東京アウトドアズ・フェスティバル’97」の展示会で商品を展示し、或いは、商品カタログを配布することが商標の「使用」にあたることは明らかである。

さらに、乙第12号証のインボイス自体に使用商標が表示されているところ、インボイスは「売買契約の条件を正当に履行したことを、売主が買主に宛て証明する書類」(岩波書店発行「広辞苑」)であって取引書類にあたることは明らかであり、該インボイスは売主であるノエル社から買い主である世界長に頒布されたものであるから、該インボイスも本件商標の使用を立証し得るものといわなければならない。

3 まとめ

以上のとおりであって、本件商標は、日本国内において、通常使用権者により、本件審判請求の登録前3年以内に、本件取消請求に係る指定商品について使用されていたものというべきである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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