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Trademark Appeal Case

称呼類似と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35458号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件商標

本件登録第4079086号商標(以下、「本件商標」という。)は、「ART SERIES」の欧文字と「アートシリーズ」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、第3類「せっけん類、香料類、化粧品、歯磨き」を指定商品として、平成5年8月4日に登録出願、平成9年11月7日に設定登録されたものである。

2.引用商標

請求人が引用する登録第558581号商標(以下、「引用商標」という。)は、「ジュジュアート」の片仮名文字を縦書きしてなり、第63類「香料及び他類に属しない化粧品」をして指定商品として、昭和31年2月20日に登録出願、同35年10月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3.請求人の主張

請求人は、「登録第4079086号商標の登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。の審決を求める。」と主張し、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を、次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第4号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)本件商標を構成する文字「SERIES、シリーズ」は、「1)ある意図の下に規格された題材や傾向の似た一続き又は一組のもの。2)逐次刊行する出版物、新聞や雑誌の連続読み物。3)テレビ・ラジオの続き物の番組など」を意味する語であり(後出の甲第3号証の1ないし3参照)、「シリーズ」は殆ど日本語化している。

したがって、本件商標は、「ART、アート」という題材や傾向の似た一連のものをテーマとして組み立てられたものを意味することができ、その要部は、当然「ART、アート」の部分にあるのであって、「SERIES、シリーズ」の部分は要部ではない。

後出の甲第2号証は、第29類に属する商品を指定商品として「あっさりシリーズ」の商標を出願した第三者が受けた拒絶査定謄本の写である。この拒絶査定の理由中で、審査官は「本件商標中『あっさりシリーズ』の文字部分より『シリーズ』の文字は、シリーズ商品を表わすものとして、一般に使用されるものであるから、自他商品の識別機能を果す部分は『あっさり』の文字にあるといわなければならない。」と述べている。「あっさり」の語が商品識別機能を果たすかどうかはさておき、「シリーズ」の文字に自他商品の識別機能が無いことは、正にそのとおりである。指定商品こそ異なるが、このことは、本件の場合においても全く異なるところは無い。

(2)ところで、引用商標の構成は、上記のように「ジュジュアート」の片仮名文字を縦書きして成るものであるが、「ジュジュ」は審判請求人の著名な商号の略称であるから、この商標の要部は「ジュジュ」及び「アート」の二つの部分にあるということができる。

そうすると、本件商標の要部である「ART、アート」と引用商標の要部である「アート」とは称呼及び観念において同一であるから、両商標は互いに類似するというべきである。そして、指定商品においても抵触しているから、その登録は無効とされるべきものである。

(3)請求人は、本件審判に先立って登録異議の申立てをしたが、主張が認められず本年7月7日付で「登録第4079086号商標の登録を維持する。」との決定がなされた。その内容は、参考資料として本書面に添付した決定謄本の写記載のとおりであるが、「3.当審の判断」の項において、「ART」と「SERIES」の各文字が同じ大きさ同じ書体で表され、これらには軽重の差を見出しえないとの前提で、本件商標を構成する語は一体不可分であり、これから単なる「ART」「アート」の称呼は生じない、としている。

しかしながら、このような認定は著しく経験則に反する。すなわち、二つの語の間には間隔があり(この間隔の有無はさして重要なものではない。)、「SERIES」の語は上述のように殆ど日本語化し日常、頻繁に用いられている語であるから、取引者・需要者は、この商標を付した商品を目にした場合、「ART、アート」をテーマとする一連の商品であると理解し認識するのが普通であり、「ART」と「SERIES」とが結合された一体のものとのみ認識するということはありえない。

(4)以上述べたように、本件商標と引用商標とは互いに類似し、本件商標は、法4条1項11号に該当する商標であって登録要件を具備しないものであるから、請求の趣旨記載の審決を求める。

(5)被請求人の答弁書の記載中、本件商標と引用商標とが、外観において互いに相違するとの主張は争わないが、称呼及び観念上の非類似の主張については争う。

1)被請求人が、両商標が称呼上類似するとの主張の根拠として述べるところは、本件商標から生じる「アートシリーズ」の称呼と、引用商標から生じる「ジュジュアート」の称呼は、いずれも一連に語呂良くスムーズに称呼されるものであるから、各商標の構成中から「アート」の部分のみを分離抽出する特段の事由は存せず、全体を一連に称呼すると、両者は語韻・語調が相違し相紛れる虜れのない別異のものである、というところにある。

しかしながら、一般に、二つの商標の称呼上の類否を考える場合には、その構成全体から生じる称呼と、当然のことながら、要部から生じる称呼について考える必要のあることは、多くの判例・審決例の示すところである。したがって、本件の場合、両商標が全体としてともに一連に語呂良くスムーズに称呼されるか否かは見解の分かれるところであろうが、この点はさておき、両商標の要部である「アート」から生じる称呼(及び観念)を考慮する必要がある。

既に述べたように、本件商標を構成する語のうち「SERISES」「シリーズ」は、「ある意図の下に企画された題材や傾向の似た一続きまたは一組のもの。」を表わす語であるから、商標全体として「アートをテーマとして組み立てられた一連の化粧品」を意味する語ということができる。したがって、その要部は当然「ART、アート」の部分にある。一方、引用商標を構成する語のうち、前半の「ジュジュ」は請求人の商号の著名な略称であるから、要部は「ジュジュ」及び「アート」の二つの部分である。(一商標に要部が複数ある場合のあることは当然のことで、ことも判例・審決例の認めるところである。)したがって、要部を共通にする両商標は称呼のみならず観念においても、互いに類似するものというべきである。

2)このことは、次の事例によっても首肯される。後出の甲第4号証の1ないし4は、件外・デッチュ・グレーター・ウント・コンパ−−・アクチェンゲゼルシャフトの出願に係る商標「ART」 (指定商品は、旧第4類「せっけん類 歯みがき,化粧品,香料類」)に関するものである。

この出願に対して審査官は、請求人が本件で引用している登録第558581号商標「ジュジュアート」(指定商品は、旧々第3類「香料及び他類に属しない化粧品」)及び第873153号商標「アートホームライン」(指定商品は旧第4類「せっけん類 歯みがき」)の二つの商標を引用した拒絶理由通知を発し、結局、この理由で拒絶査定がなされた。このことは、この査定において、一つの引用商標の要部がいずれも「アート」の部分にあるとの認定が前提となっていることを示すものである。

3)以上述べたように,被請求人の主張は理由の無いものであり、本件商標の登録は無効とされるべきものである。なお,請求人は、本件商標の審査の段階で登録第558581号商標を引用した拒絶理由通知が発せられたことが無いこと、及び 同商標を引用した登録異議申立事件が排斥されたことを挙げ、被請求人の主張の正当性を補強しているが、このような事実の存在は、裁判の審級制度に思いを致すまでもなく、類否判断においては全く意味の無いものである。

4.被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を、次のように述べている。

(1)請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、その登録は無効にされるべきである旨主張している。しかしながら、本件商標の登録については何等違法性はなく、その登録は有効なものであって、無効とされるべき事由は存在しないものである。

(2)そこで、本件商標と引用商標を比較するに本件商標は「ARTSERIES」の欧文字と「アートシリーズ」の片仮名文字を上下二段に表した構成よりなるものであるのに対し、引用商標は「ジュジュアート」の片仮名文字のみを縦書きに表してなるものであるから、構成における相違は明らかであり、片仮名「アート」の文字を共通にするとしても、外観上類似するものとはいい難く、この点において両商標における誤認混同はあり得ないものである。

次に、称呼上においては、「ARTSERIES/アートシリーズ」からなる本件商標からは、『アートシリーズ』の称呼が一連に語呂良くスムーズに称呼されるものであり、他方「ジュジュアート」からなる引用商標からは、『ジュジュアート』の称呼が一連に語呂良くスムーズに称呼されるものである。

よって、両商標より各々『アート』の称呼のみを分離抽出する特段の事由は存しないものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、語韻、語調が相違し、称呼上の取引において相紛れるおそれはない別異のものといわざるを得ない。

観念においては、比較するまでもなく別異のものである。

したがって、本件商標と引用商標は、外観、称呼、観念のいずれよりしても区別できる非類似の商標である。

さらに、本件商標が審査の段階において拒絶理由通知に引用商標が引例されていない事実、又、引用商標をもって本件商標に対する登録異議申立がなされたがその主張が認められていない事実がある。

(3)そうとすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する請求人の主張は妥当なものとは認めることができない。

よって、本件審判の請求は成り立たない、との審決を求める。

5.当審の判断

本件商標と引用商標との類否について判断するに、本件商標は、「ART SERIES」の欧文字と「アートシリーズ」の片仮名文字とを上下二段に書してなるところ、その構成中の「ART」の文字は、「アート」と読まれ「芸術、美術」等を意味するものとして、また、「SERIES」の文字は、「シリーズ」と読まれ「連続、一続き」等を意味するものとして、それぞれに一般に慣れ親しまれている英語であるから、これらの語を綴ってなる「ART SERIES」の文字よりは、「アートシリーズ」と読まれものであって、「芸術の連続(もの)」程の意味合いを認識させるものというのが相当である。

しかして、本件商標は、その構成文字に相応し、「アートシリーズ」の称呼のみ生ずるものであって、「芸術の連続」程の意味合いを有するものである。

一方、引用商標は、「ジュジュアート」の文字を書してなるところ、その構成文字中に請求人の商号の著名な略称である「ジュジュ」の文字を有するから、これに接する看者は、構成中の「ジュジュ」に着目し、これより生ずる称呼をもって取引に資する場合も少なくないものというのが相当である。

そうしてみると、引用商標は、その構成文字に相応し、「ジュジュアート」の称呼を生ずるとともに、「ジュジュ」の称呼をも生ずるものある。

そこで、本件商標と引用商標との類否についてみるに、両者は、外観上明らかに区別し得る差異を有するものである。

そして、称呼および観念についてみるに、本件商標より生ずる称呼「アートシリーズ」と引用商標より生ずる称呼「ジュジュアート」および「ジュジュ」を比較するに、それぞれの称呼は、その構成音数において差異があるから、それぞれを一連に称呼する場合においても相紛れるおそれはないものであり、観念については、本件商標には上記のような意味合いが生ずるのに対し、引用商標は特定の意味合いを生ずるものとはいえないから、両者はその観念について比較すべくもないものである。

請求人は、第29類に属する商品を指定商品とする「あっさりシリーズ」商標は、その構成中の「シリーズ」が「シリーズ商品」を表すものとして自他商品の識別標識としての機能を果たさないとした拒絶査定(甲第2号証)および商標「ART」(指定商品は、旧第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」)に関して「ジュジュアート」を引用して、引用商標の要部は「アート」であるとした(甲第4号証)過去の審査例を挙げて、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その登録は無効とされるべきである旨主張している。

しかしながら、請求人の主張する過去の審査例に挙げる商標は、いずれも本件商標と商標が相違し、その判断の時期も相違する事案であるから、これが本件商標についての認定を左右するものとは認められない。

したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼および観念のいずれの点よりみても非類似の商標といわざるを得ないから、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとして同法第46条第1項によりその登録を無効とすることはできない。

以上のとおりであるから、請求人の審判請求は、理由がないから成り立たないものとし、審判に関する費用の負担については、商標法第56条第1項、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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