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Trademark Appeal Case

著名略称と誤認混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35274号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4215198号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4215198号商標(以下「本件商標」という。)は、「こんぴら劇場」の文字を書してなり、平成9年4月28日に登録出願され、第41類「劇場の提供」を指定役務として、同10年11月27日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べるとともに、証拠方法として甲第1ないし第18号証(枝番を含む。)を提出している。

本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に該当し、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。

1.本件商標は、平仮名及び漢字で「こんぴら劇場」と書されてなるものであるから、自他役務の識別力は「こんぴら」の文字にあることは明らかである。すなわち、「こんぴら」の文字を除いた「劇場」の文字は、単に「役務の提供の場所」を表示しているものにすぎず、一般的に「劇場」とは、「演劇・映画等を見せるために設けた建築物」(広辞苑)を意味するものであり、一定の場所を表示するにすぎない。そうすると、「劇場」の文字は、何ら自他役務を識別することのできるものではないから、本件商標の識別力は、「こんぴら」の文字にしかないものである。

2.「こんぴら」とは、今日、宗教法人金刀比羅宮(以下「金刀比羅宮」という。)を指し、かつ、その略称として著名なものである(甲第1ないし第18号証(6))。本来、「こんぴら」は「クンピーラ」で、サンスクリット語で「鰐」を意味し、漢字で「金毘羅」と表示され、神格化されたものであるといわれている(甲第1,第4、第9号証等)。この神格化された「クンピーラ」が仏教の守護神の1つとなり、日本へも古くに流入し、日本の古来の神と習合し、日本の神を表示するものともされた。すなわち、金刀比羅宮の祭神である「大物主命」は、「コンピラ神」であるとされ(甲第9号証)、この神は水の神であり、「コンピラ神」を祭神とする金刀比羅宮は「海上安全の神」とされるようになった(甲第1、第3、第5号証等)。

3.「金毘羅宮」は、もとは松尾寺という寺の境内に松尾寺の伽藍守護神として祀られていたのが、その後、「金毘羅信仰」が隆盛を極めるに従って、寺は潰れ、「金毘羅宮」のみが現在地に残ったといわれている(甲第4号証)。

この「金毘羅信仰」が盛んに行われ、今日までも続いている原因は、瀬戸内海の塩鮑諸島の人々に寄るほか、江戸時代に入って、唯一庶民に許された物見遊山は、伊勢詣りとこの金毘羅詣りであり、特に江戸時代の著名人「十返舎一九」や「与謝蕪村」等の小説や俳句等により、さらに「こんぴら参り」に火が付けられたといわれる(甲第5、第9、第14号証)。このため、日本の各所に「こんぴら(金毘羅)講」ができ、多くの人々が、そのため「金毘羅宮」へ向かう多くの道が作られていた。例えば、「丸亀道」、「多度津道」、「宇多津道」等があり、これらの街道を含めて「こんぴら道」といわれ、全ての道は「こんぴらに集まる」とまでいわれ、それらの道にも「こんぴら」に関する様々な建造物があり、人々のエピソードがあったといわれる(甲第6、第9、第14ないし第17号証)。

4.「こんぴら参り」が盛んになるに従い、「金毘羅宮」の地には、様々な催し物が生じたといわれており、その一つが「こんぴら歌舞伎」である(甲第9、第10号証)。

この「こんぴら歌舞伎」は、今日においても隆盛で、歌舞伎界の一流の役者が出演して、毎年4月に琴平町の「金丸座」で行われている。また、「こんぴら参り」に来る人々を当てこんで、土産品等が作られている。土産品には「人形」、「鈴」、「犬」等があり、これらの品々にも、「こんぴら」、「金毘羅」等の「金毘羅宮」と深いかかわりのある名前を使用している(甲第7、第13号証)。さらに「こんぴら」は歌にまでなっている(甲第12号証)。

5.このように、古くから「金毘羅」、すなわち「大物主命」を祀る「金毘羅宮」は、「金毘羅(こんぴら)」として人々に知られ、親しまれており、その後、「金刀比羅宮」に改称したが、宗教法人の名称として今日まで使用し続けているものである。

そして、甲各号証からしても、「こんぴら」は、「金刀比羅宮」の著名な略称であることは明らかであり、本件商標は、その構成中に「こんぴら」の文字を含み、かつ、唯一識別力を有する語がこの「こんぴら」であるにも拘わらず、「他人」である「金刀比羅宮」の承諾を何ら得ていないものである。

また、「金刀比羅宮」の著名な略称である「こんぴら」の文字を含む本件商標をその指定役務「劇場の提供」に使用するときは、その役務の提供にあたかも金刀比羅宮が関係しているかのように誤認混同を生じさせるおそれがあるものである。

第3 被請求人の主張

被請求人は何ら答弁していない。

第4 当審の判断

1.本件商標は、上記の構成のとおり、「こんぴら劇場」の文字を書してなるものであるところ、請求人の提出に係る甲各号証を総合すると、次の事実が認められる。

(1)「こんぴら」は、金刀比羅宮を指す語として、その漢字「金毘羅」や平仮名文字「こんぴらさん」とともに、各種の雑誌、書籍、カタログ、パンフレット等において広く使用されていること。

(2)金刀比羅宮は、海の神様として古くから全国各地の多くの人々の信仰を集めてきたこと(こんぴら(金毘羅)参り等)。

(3)金刀比羅宮がある香川県琴平町には、芝居小屋(劇場)の「金丸座」があり、そこで「こんぴら歌舞伎」と称される歌舞伎大芝居が毎年開催されていること。

2.これらの事実を踏まえると、「こんぴら」の語は、本件商標の出願前から、金刀比羅宮を指す名称として我が国において広く認識されていたと認められ、かつ、この名称を用いた「こんぴら歌舞伎」が地元の劇場で開催されていることを考え併せると、「こんぴら劇場」の文字からなる本件商標がその指定役務「劇場の提供」に使用された場合には、これに接する取引者・需要者は、その構成中の「こんぴら」の文字に着目し、これより金刀比羅宮を想起し、その役務が金刀比羅宮又は金刀比羅宮と何らかの関係を有する者の提供に係るものであるかのように、提供役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと判断するのが相当である。

3.したがって、本件商標は、請求人のその余の主張について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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