Trademark Appeal Case
著名商標の混同類似性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2000−90382(T2000−90382/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4349517号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成11年1月19日に登録出願され、「MsCOCOclub」の文字を横書きしてなり、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成12年1月7日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立の理由
(1)異議申立の根拠
本件商標は、以下の理由から明らかなように、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものである。
(2)具体的理由
(イ)登録異議申立人(以下、「申立人」という。)が香水等に使用する商標「COCO」の著名性について
申立人は、著名なデザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」により創設され、香水等の化粧品の他、高級婦人服、ハンドバッグ、ベルト、靴、時計、アクセサリー等の宝飾品などのデザイン・企画並びにこれらの商品の製造販売を業とするトータルファッションメーカーである。その商品は「シャネルの5番」「シャネルスーツ」「シャネルバッグ」「シャネルシューズ」と称されるほどに極めて高い知名度を有しており、いずれも洗練された高品質の商品であり、申立人の長年の継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が日本においても形成されているものである。
「COCO」(ココ)は、前述した申立人の創設者の愛称(甲第4号証乃至甲第6号証)であり、「エレガントでシンプル」を旨とするスタイルを基本的なスタイルとしているものである(甲第7号証)。
申立人は、以上のような申立人の創設者の愛称を表した商標「COCO」を、申立人の商品「香水」等に使用している(甲第8号証)。申立人の香水「COCO」は、1984年(昭和59年)7月23日にフランスにおいて発表、同年9月にヨーロッパで発売され、日本においては、その翌年たる1985年に(昭和60年)9月20日に発売されたものである。
申立人の香水「COCO」は、日本での発売と前後して極めて多数の新聞・雑誌によって報道され、各種雑誌に広告されたものである(甲第9号証乃至甲第36号証)。而して申立人の香水「COCO」の日本における発売開始年度である1985年(昭和60年)9月から12月末日までの約3ヶ月間だけでも、2億5千万円余の販売実績を達成し、その後も継続的に雑誌やテレビによる広告・宣伝を行ない、世界の一流品を掲載する各種刊行物によって紹介されるに至った(甲第37号証乃至甲第48号証)。また、申立人は日本において、発売開始後も10年以上にわたって、香水「COCO」に化体した信用を落とさないよう、その品質の保持のため、1992年度には9億円以上、その後も毎年約4億円近くのもの広告費をかけ、継続的に雑誌やテレビによる広告・宣伝を行い、その信用の蓄積のための努力を継続している(甲第49号証乃至甲第51号証)。
その結果、申立人が香水等に使用する商標「COCO」は、発売開始後8年経過した1993年度においても8億円余、1994年度にも7億4千万円余の販売実績を達成しているものである。したがって、少なくとも本件商標の出願当時1999(平成11)年にはもちろん、査定時においても、申立人が香水等に使用する商標「COCO」は、極めて広く知られるに至っている商標と云うべきである。
特許庁においても、別件商願平1一50916号登録異議申立事件、商願平4一244766号登録異議申立事件、商願平4一244768号登録異議申立事件、商願平4一244769号登録異議申立事件、商願平4一244711号登録異議申立事件、商願平4一244772号登録異議申立事件、登録第2220295号商標無効審判事件において、例えば以下のようにして各引用商標の著名性を認めているところからも、「COCO」の著名性については顕著な事実であると思料する(甲第52号証乃至甲58第号証)。
「引用商標」(「COCO」「ココ」)は、本件商標出願の日には、すでに申立人の業務に係る商品「香水」に使用している商標として、取引者及び需要者の間に広く認識されていたことは、申立人が提示した証拠によって認めることができる。本件商標は、前半において「COCO」あるいは「ココ」の文字を有しているから、出願人が本件商標を引用商標の使用に係る上記商品と需要者を同一にし、その用途面からも同時に使用することも間々ある間柄の指定商品に使用するときは、恰もその商品が申立人及び申立人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同させるおそれが多分にあるといわざるを得ない。
以上のことから、前記「COCO」(「ココ」)は、本件商標出願前から、本件指定商品を含むファッション業界において、申立人の創設者であり、著名なデザイナーである「COCO CHANEL」の愛称として広く知られており、また申立人が商品「香水」等に使用して著名な商標であることが明らかである。
また、リサーチ会社「INFOPLAN」による香水の著名度に関する最近の調査においても、トップ3にはすべて申立人の香水がランクされており、前記「COCO」(「ココ」)は香水を使用する人の78%、香水を使用しない人でも60%、トータルで68%の人が知っており、現在においても広く知られていることが明らかであり、申立人の信用の維持のための継続した努力の結果が現れているといえるものである(甲第59号証)。
(ロ)出所混同について
本件商標「MsCOCOclub」は、申立人の著名商標である「COCO」(ココ)の文字に、女性の敬称として用いられる「Ms」の文字と、ごくありふれた日常用語である「club」の文字とを組み合わせた構成からなる商標である。従って、かかる組み合わせからなる本件商標は、その構成中に申立人の世界的に著名な商標である「COCO」(ココ)を含んでいることに加えて、「Ms」の文字、「club」の文字とがともに一般的に知られている語であり、識別力の弱い語であると言えるから、これら商標を構成する文字の中でも、特に著名商標である「COCO」の文字が強く認識され、印象されるのが通常である。とくに本件商標のうち、「COCO」は、上述したとおり著名な女性デザイナーである「Gabrielle COCO CHANEL」の愛称であるから、「COCO」の直前に女性の敬称である「Ms」の文字がくることによって、著名な女性デザイナーの愛称である「COCO」がより強く印象されるものとなる。
また、本件商標においては著名な商標である「COCO」が強く印象されるものであるから、「人の集まり」等の意味で一般的に使用される「club」の文字との組み合わせにおいては、例えば「ココの愛用者の集まり」ほどの意味が生ずるものである。
さらに、本件商標は、申立人の著名商標たる「COCO」(ココ)の使用に係る香水等と同様の、ファッションに関係する商品「靴類」等を指定商品とするものである。すなわち、これら本件商標の指定商品「靴類」等は、各引用商標の使用に係る上記商品と需要者を同一にし、その用途面からも同時に使用することも間々ある間柄の商品であり、また申立人の商品は「シャネルシューズ」と呼ばれ高い評価を受けていることは上述したとおりである。
以上のように、本件商標は例えば「ココの愛用者の集まり」ほどの意味が生じ、本件商標に含まれる「COCO」の文字は、著名商標であるから強く認識され、印象される部分であるから、かかる構成からなる本件商標がその指定商品に使用された場合、申立人の著名な商標「COCO」がイメージされ、恰もその商品が申立人及び申立人と何らかの関係にある者の業務に係る商品又はそのシリーズ商品であるかの如く認識され、その商品の出所について混同を生じるおそれがあるといわなければならないものである。
なお、前述の別件商願平1一50916号登録異議申立事件においては、旧第22類を指定商品とする「I’m coco」からなる商標がその商品に使用された場合、出所の混同を生じさせるおそれがあると認められている。さらに、過去の判決においても、「POLO CLUB」なる商標が著名な「POLO」の商品と出所混同を生じさせるおそれがあると認められており(甲第60号証)、また最近の平成12年7月18日に出された判決においても、「ASCOT PARK POLO CLUB」及び「HOLLYWOOD POLO CLUB」からなる商標が著名な「POLO」の商品と出所混同を生じさせるおそれがあると認められている(甲第61号証及び甲第62号証)。
また、前述のように、申立人は莫大な宣伝広告費を費やして香水「COCO/ココ」を広告・宣伝し、その需要を喚起することに努力を注ぎ続けているものである。商標は、このようにして積み重ねられた営業や広告等の実績自体を、商標自体に目に見えない信用としてその価値を化体させ、自らの上に保持するものであるから、本件商標のような商標がその指定商品に使用されることで起こる申立人に係る商品との商品の出所の混同は、申立人が保持する財産的価値を害することにもつながり、商標所有者である申立人にとって重大な損害となるものである。
(ハ)結び
本件商標がその指定商品に使用された場合、その商品の需要者が申立人の業務に係る商品とその出所について混同するおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであり、取り消されるべきである。
4 当審の取消理由通知
当審では、申立人の異議理由に基づき、本件商標は、その構成中に世界的に著名なスイスの化粧品メーカー「シャネル エス アー」が1984年より商品「香水」に使用し、本件商標の登録出願時には我が国においても、取引者・需要著聞に広く知られていたものと認められる商標「COCO」と類似する「COCO」の文字を有してなるものであるから、これをその指定商品に使用した場合には、取引者・需要者に、上記「シャネル エス アー」の著名な「COCO」の商標を連想・想起させ、かつその商品が申立人又は申立人と組織的、経済的に何等かの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから取り消されるべきものである、旨の取り消し理由を通知した。
5 上記4の取消理由に対する商標権者の意見(要旨)
(1)先ず、旧第22類及び第25類に「ココ」、「ココちゃん」「COCO CHANE」「MsCOCO」「MsCOCOclub」等の文字よりなる登録商標の併存関係、及び本件商標権者の所有する登録商標に関する商取引の実情については、乙第1号証〜同68号証のとおりである。
上記証拠中、乙第1号証〜同第6号証の旧第22類及び第25類の審査例をみると、先登録された「ココ」商標(乙第1号証)に対し、後願の本件商標権者の「MsCOCO/ミズココ」商標(乙第4号証)が非類似の商標と判断されて登録され、次に、申立人の「COCO CHANEL」商標(乙第3号証)が、上記登録商標とはそれぞれ非類似の商標と判断されて登録され、さらに、本件商標権者の「MsCOCOclub」(本件商標)と類似する乙第6号証の商標がそれぞれ併存して登録されているものである。
そして、「ココ」商標(乙第1号証)、「COCO CHANEL」商標(乙第3号証)及び「MsCOCO/ミズココ」商標(乙第4号証)は、それぞれ商標権が併存し、しかも10年以上の年月に亘り平穏無事に商標として使用されるものであり、また、「MsCOCOclub」商標(乙第5号証)、乙第6号証の商標が平成12年の登録査定時においても上記登録商標と非類似の商標として登録されたことは、この認定判断は従来より今日に至るまで一貫して確立されているものである。
さらに、今日に至るまでそれぞれの商標権の間において取引上出所の混同を生じた事実はない。したがって、本件商標と引用商標の場合も同様に判断されてしかるべきである。
次に、本件商標権者の所有する登録商標の商取引の実情について述べるに、履物に使用する商標を採択するにあたり、「COCO(ココヤシ・ココナッツ)から連想される南国の似合う快活で健康的なかわいいお嬢さん」の意図をもって「MsCOCO」「ミズココ」の商標を採択し、昭和53年7月21日に商標登録出願をして、昭和54年頃から今日まで履物等について使用してきたところである。そして、取引者、需要者に好評を得て広く知られるに至り、昭和62年頃姉妹品に使用するために「MsCOCOclub」の商標を採択して今日まで使用し続けているものである。
しかして、商標権者は「MsCOCO」の登録商標(乙第4号証)を商品「ブーツ、サンダル、運動靴、婦人靴、幼児靴、短靴」等について昭和54年頃より今日に至るまで、「MsCOCOclub」の本件商標(乙第5号証)を商品「ブーツ、サンダル、運動靴、婦人靴、幼児靴、短靴」等について、昭和62年頃より今日に至るまで使用して来た結果、現在においては取引者、需要者間において周知著名な商標となっているものである。そして、その間に引用商標(COCO、ココ)とは取引上出所の混同を生じた事実は、乙第7号証〜同68号証に示すとおり全くない。
以上のとおり、先願に係る単体の「ココ」の文字よりなる登録商標(乙第1号証)が有効に存在するに拘らず「COCO」、「ココ」の文字を他の語句の前後に配してなる結合商標が、多数登録されていることは、従来より両者は非類似の商標と認定判断され、現在においてもこの判断が変わっていないものといわなければならない。そして、これらの結合商標は、「COCO」、「ココ」の文字よりなる商標とは商品の出所の混同は生じていないとみるのが、この業界における取引の実情である。
(2)次に、本件商標と引用商標の類否についてみるに、本件商標は「Ms」の文字、「COCO」の文字及び「club」の文字よりなるところ、同一書体で一連に横書きしてなるものであるから、結合した一体感のあるものとして視覚に訴え、把握されること、「s」と「club」の文字の大きさの相違は僅かなものであって、必ずしも三つの構成部分を一体のものとして把握する妨げとはなっていないこと等の理由から、三つの構成部分は外観上不可分一体として把握されるのが通常である。また、観念上もその後半部の「club」の文字が、政治、社交、文芸、娯楽その他共通の目的によって結合した人々の団体等を意味する語として一般に親しまれていることから、特定の団体の名称であることを認識し把握し得るものであるから、これらのすべての構成文字が一体のものとして読み込まれて称呼、観念されるのが実情である(乙第69号証 商審58ー23064、乙第70号証 商審57−13396)。しかも、全体をもって称呼しても格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであり、他に構成中の「COCO」の文字部分のみを要部として抽出し分離して観察しなければならない特段の事情も見出せないところである。
そうとすれば、本件商標はその構成文字全体に相応して「ミズココクラブ」の称呼のみを生じ、特定の団体の名称であると観念されるものといわなければならない。
他方、引用商標は「COCO/ココ」、「COCO」の文字を書してなるものであるから、該文字に相応して「ココ」(ココヤシ・ココナッツ)の称呼、観念を生ずること明らかである。
してみれば、両称呼はその構成音数において顕著な差異を有するものであるから、それぞれ一連に称呼するも聴感著しく異にし称呼上相紛れるおそれはないものと認められる。また、観念においても両商標は前記のとおり意味合を全く異にするものであるから、相紛れるおそれはないものであり、外観においても前記の構成よりみて相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは称呼、観念及び外観のいずれの点よりみても非類似の商標であり、かっ両者の指定商品も互いに非類似であること明らかである。
(3)したがって、本件商標をその指定商品に使用しても、申立人又は申立人の組織的、経済的に何等かの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものとは認められない。
5 当審の判断
そこでまず、本件商標と申立人が「香水」に使用する商標として取引者・需要者間に著名であるする「COCO」、「ココ」の各文字を二段に書してなる登録第520006号商標及び「COCO」の文字を書してなる登録第2704127号商標(以下、これらを合わせて「引用商標」という。)との類否を判断するに、本件商標は「MsCOCOclub」の欧文字よりなるところ、該文字は全体がまとまりよく一体的に表されており、殊更、構成中の「COCO」の文字部分だけを抽出して着目しなければならない特段の事由を有するものとも認め得ないものである。また、構成中後半部の「club」の文字は、我が国において「政治、社交、文芸、娯楽その他共通の目的によって集合した人々の団体」等を意味する語として日本語化して親しまれているものである。
そうとすれば、本件商標は、その構成文字全体より「ミズココクラブ」の一連の称呼を生じさせ、「MsCOCOclub」なる名称の団体名を表したものと認識されるものであるとみるのが相当である。
他方、申立人が商品「香水」に使用して著名な引用商標は、「COCO/ココ」、及び「COCO」の文字を書してなるものであるから、これらよりはいずれも「ココ」の称呼と「ココヤシ・ココナッツ」の観念を生じさせるものである。
そして、本件商標より生ずる「ミズココクラブ」の称呼と引用商標より生ずる「ココ」の称呼とは、その構成音数において顕著な差異を有するものであるから、称呼上相紛れるおそれはないものと言わなければならない。
さらに、本件商標と引用商標とは、外観上及び観念も上記したとおりのものであるから、外観及び観念上何ら類似するものではない。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標と認められる。
してみれば、本件商標と引用商標とは、上記のとおり商標が著しく相違するものであるから、引用商標が、本件商標の登録出願時に、申立人の業務に係る商品「香水」を表示する商標として取引者・需要者の間において広く認識されていたものであっても、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者が申立人の著名な「COCO」の商標を連想・想起し、その商品が申立人又は申立人の組織的、経済的に何等かの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条3第4項の規定に基づき、結論のとおり決定する。
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