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Trademark Appeal Case

先使用商標の模倣と公序良俗

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年異議第91112号
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4267173号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4267173号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成10年4月9日に登録出願され、第4類「工業用油,燃料」を指定商品として、平成11年4月30日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下、「申立人」という。)の使用商標(以下、「引用商標」という。)は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるから、引用商標と同一又は類似の商標である本件商標を指定商品について使用するときは、商標法第4条第1項第10号、同第15号に該当し、また、本件商標は不正の目的をもって使用するものであるから同第19号に該当する。

したがって、本件商標の登録は取り消されるべきである。

3 本件商標に対する取消理由

本件登録異議の申立てがあった結果、商標法第43条の9(職権による審理)第1項の規定に基づいて、本件商標を商標法第4条第1項第7号に該当するものとして商標権者に対し通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

〈取消理由〉

申立人の提出に係る証拠(甲各号証)によれば、申立人は、少なくとも本件商標の登録出願前である平成3年頃から、別掲に示すとおりの構成よりなる引用商標を自動車その他燃料機関における燃料の燃焼効率を向上させるため、自動車等の燃料タンク等に投入させて使用する「液体助燃剤」又は「燃料改質剤」と称する商品について使用をしており、かつ、週刊雑誌において当該商品の宣伝、広告を相当程度行い、また、引用商標を付した商品の取扱店は、北海道から沖縄までの13都道府県25店に及んでいるものであることが認められる。

そして、商標権者は、本件商標の登録出願前において、申立人の業務に係る商品「液体助燃剤」又は「燃料改質剤」の取引に介在していたことを認め得るものであるから、当該商品に付されている引用商標について充分知っていたものと認められるところである。

そうとすれば、申立人の業務に係る商品「液体助燃剤」又は「燃料改質剤」に使用されている引用商標は、本件商標の登録出願前より使用されているものであって、取引者間において相当程度知られるに至っており、また、引用商標は、その構成中の第2文字目を図案化してなる特徴を有する構成よりなるものということができる。

しかして、本件商標と引用商標の構成は、それぞれ別掲に示すとおりであり、その構成において極めて近似したものといえるものであって、かつ、両商標中の第2文字目はいずれも欧文宇「0」を図案化したものと容易に理解され、全体として「SOLTRON」の文字を表したものとして、これより「ソルトロン」と称呼されるものであるから、両商標は、外観、称呼において類似するものと認められるものである。

また、本件商標の指定商品は、引用商標を付して使用している商品と密接な関係を有する商品ということができる。

してみれば、申立人の使用に係る引用商標と極めて近似した本件商標を商標権者が採択したのは、偶然の一致とみることはできず、むしろ、申立人の使用に係る引用商標の模倣(盗用)と認め得るものであるから、そのような行為は公正な取引秩序を乱し、公序良俗に反するものといえるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわなければならない。

4 商標権者の意見

上記3の取消理由に対して、商標権者は、要旨次のように意見を述べた。

(1)商標権者の代表者が、本件商標の登録出願の際に、「本件商標と近似した商標が申立人により、実質的に同一の商品に使用された事実があること」及び「申立人の商標が当該商品について、週刊誌等で宣伝広告された事実があること」を認識していたことは否定しない。

(2)ただし、本件商標の登録出願において、商標権者は、「申立人の当該商標を付した商品「燃料改質剤」は、平成5〜6年(1993〜4年)には、週刊誌等で積極的な宣伝広告を行なっていたが、その商品の拡販が成功しなかったせいか、その後は、宣伝広告も見られず、また商品も一般市場には流通していないこと」、「申立人の商標は、積極的な広告宣伝にもかかわらず、知名度が低く、広く認識されているとはいえないこと」、「従って、本件商標は周知商標ではなく、その使用について法的な問題はないこと」、「商標権者の代表者は、申立人の商品の効能と基本成分は知悉しており、それに代わる改良商品を開発しているところから、その商品の商標として法的に問題がないと考えている本件商標を権利化して、商標権者の商品の商標を法的に保護したい」との認識があり、そのもとに既登録商標を調査した結果、特に類似する登録商標が見出されなかったため、本件商標を登録出願し、登録されたものである。

(3)申立人が提出した甲第2号証乃至同第26号証は、上記の商標権者の認識を裏付けるものである。すなわち、1993年と1994年には、週刊誌にて繰り返し宣伝広告がなされているが、その後は、甲第22号証の 「WORLD JET SPORTS MAGAZINE」の平成9年(1997年)1月号に掲載されたことが主張されているのみである。すなわち、その後、異議申立が提出された日である平成11年(1999年)8月23日までの期間において積極的な宣伝広告を行なったことがないことは明らかである。換言すれば、1995年以降の約5年間の間に積極的な販売が行なわれていないことが推測される。そして、この点は、商標権者が理解している申立人の商品の販売状況とおおよそ一致している。

(4)甲第27号証の取扱店一覧も、日付がないが、1994年頃のものであると考えられる。

(5)甲第28号証は、株式会社トヨタテック大阪が提出した報告書とされているが、その評価に際してトヨタ以外の車両であるニッサン、ミツビシの車両が用いられていることから、トヨタ系の代理店として不自然な行動であり、この甲第28号証の信憑性は疑問である。

(6)甲第29号証乃至同第33号証には、1995年乃至1997年にも申立人の商品が部分的に販売されていたことが想像できる資料が提出されているが、それが市場において広く流通していることが証明されているわけではない。

(7)甲第34号証乃至同第36号証は、1994年における拡販時期での試供品提供キャンペーンの事実を伝えるのみである。

(8)甲第37号証乃至同第304号証の14、甲第319号証乃至同第328号証は、全て実質的に同一の印刷物に証明者が署名捺印したものであり、「証明者がいかなる立場(特に申立人の商品との関係)で証明しているかが不明であること」、「証明者は印刷物の事実を予め知悉していたとは理解できないこと」、「印刷物中の『当業者』が、本証明に際して何を意味するものであるかが不明であること」、「証明書のなかには、文面を充分に検討せずに署名したと思われるものが少なからずあること(例、甲第304号証の12、13における使用期間の不記入)」の点において、申立人の商標が著名となっていることを証明するものではない。

(9)甲第37号証乃至同第304号証の14が、申立人の商標が平成11年において「当業者の間で広く認識された商標であること」の根拠とされるのであれば、これらの証明者を証人として呼出し、証人尋問を行なうことを希望する。

(10)甲第305号証乃至同第318号証は、商標権者とその代表者に関する証明書であって、代表者が、申立人の当該商品の販売事実を知っていたことを示すのみである。

5 当審の判断

本件商標と引用商標は、それぞれ別掲に示すとおりであって、両者はその欧文字の綴り字を全く同じくするものであり、加えて、その構成に係る第2文字目の欧文字「O」を図案化した文字(ロゴ)もほとんど同一のロゴよりなるといえるものであって、全体として「SOLTRON」の文字を表し、これより「ソルトロン」と称呼されるといえるから、両商標は、外観、称呼において酷似したものといわざる得ない。

しかして、申立人の提出に係る甲号各証を総合勘案すると、申立人は引用商標を本件商標の登録出願前から自動車その他燃料機関における燃料の燃焼効率を向上させるため、自動車等の燃料タンク等に投入させて使用する商品「液体助燃剤」(「燃料改質剤」)について使用し、北海道から沖縄までの13都道府県に25店の取扱店を有し、週刊誌に当該商品の宣伝・広告が相当程度行なわれてきたことが認められる。

また、甲第305号証乃至同第318号証をみるに、本件商標の登録出願前である平成6年12月24日付けで契約を締結した申立人と株式会社金村商事との間で燃料改質液「ソルトロン」の特許・商標使用許諾契約書(甲第307号証)及び同商品についての製造販売の技術供与契約書(甲第308号証)に商標権者の代表者が立会人として署名捺印をしていること、さらに、他の甲号各証を総合するに商標権者あるいは商標権者の代表者が何らかの形で申立人の引用商標が使用されている商品「液体助燃剤」(「燃料改質剤」)の取引に関与していたことを認め得るものであるから、結局、商標権者(その代表者を含む)は当該商品及びそれに使用されている引用商標の存在について充分に知っていたといわなければならない。加えて、本件商標の指定商品「工業用油,燃料」と引用商標が使用されている商品「液体助燃剤」(「燃料改質剤」)とはその用途、需要者等において密接な関係を有する商品ということができるものである。

ところで、本件商標の取消理由とする商標法第4条第1項第7号(公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標)については、申立人の主張、立証に照らし、同法43条の9(職権による審理)第1項に基づき適用したものである。

しかるところ、商標法の目的は、「商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること」(同法第1条)にあることからして、同法による商標の保護が、産業の健全な発達及び需要者の利益を損なうようなものであってはならず、同法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗」も、このような観点から解すべきであって、そうであれば、商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的な印象を与える文字等からなるものである場合のみならず、商標の構成自体はそのようなものでなくても、その時代の一般的社会通念に照らしてみた場合に、その商標を特定の商品又は役務に使用することが社会の一般的倫理的観念に反するような場合やそれが商取引の秩序を乱すことにより社会公共の利益を害するような場合においても、当該商標は同号に該当するものとして、登録を受けられないものと解さなければならない。

これを本件についてみるに、申立人の使用に係る引用商標と酷似した本件商標を商標権者が採択したのは、偶然の一致とみることはできず、むしろ、申立人の使用に係る引用商標の存在を知った上で本件商標を採択し登録出願したものといえるから、それは引用商標の模倣(盗用)と認め得るもので、そのような行為は公正な取引秩序を乱し、公序良俗に反するものといわなければならない。

そして、商標権者の上記4に述べる意見は、商標権者(その代表者を含む)が引用商標の存在及びその商標が使用されている商品の取引に関与したことを認めた上で、自己の事業の営業政策上の都合及び引用商標についての解釈を自己に有利なように述べたに止まるものであって、前示商標法の目的に照らし社会的妥当性を欠くものであるから、その主張は採用できないものである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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