結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35157号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第888180号商標(以下、「本件商標」という。)は、「ワールドカップ」の文字を書してなり、昭和43年6月3日に登録出願、第29類「茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷」を指定商品として、同46年2月5日に設定登録されたものであるが、その後、商標登録取消しの審判(平成11年審判第30405号)において、本件商標の登録を取り消すべき旨の審決がなされ、平成11年11月24日に同審決が確定しているものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第12号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)「ワールドカップ」「WORLD CUP」の認識度
サッカーは、今日、世界中で最も競技人口の多い国際的なスポーツであることは広く知られている。本件審判の請求人である国際サッカー連盟(Federation International de Football Association。以下「FIFA」という。)は、サッカーの振興、各国の協会と選手間の親善の促進等を目的として1904年に設立された団体であって、現在、190以上の国々が加盟している。
ワールドカップ・アメリカ1994年大会は、NHKが衛星放送で全52試合のうち44試合を生中継で、残りは録画で独占的に放映し、1998年にフランスで開催されたワールドカップ第16回大会においても、NHKが全試合を放映した。日本代表が初出場を果たした1998年大会では、テレビ視聴率が最高で60.9%の高世帯視聴率を記録し、また、ワールドカップに関する新聞報道においても、1998年大会期間中(6月10日〜7月12日)、各紙スポーツ面では、「ワールドカップ」の記事が毎日大きく掲載されていたことは周知の事実である。
さらに、2002年ワールドカップ大会の日本、韓国への招致等により、「ワールドカップ」「WORLD CUP」は、従来のスポーツ、サッカーファンにとどまらず、女性や中高年層を加えた実に幅広い層に認識されるに至ったといえる。
2002年ワールドカップ第17回大会は日韓共催で行われるが、その大会を開催するために、「(財)2002年FIFAワールドカップ日本組織委員会」(JAWOC)が政官財界をあげて組織され、顧問には、現職及び元内閣総理大臣、現職各大臣等が名を連ね、幹部には、経団連副会長、各省庁事務次官経験者等が就任しているばかりでなく、「2002年ワールドカップ推進国会議員連盟」においても、合計280名の両院議員らが加盟している。そして、政府は、平成8年7月に関係各省庁の局長レベルで構成する「2002年ワールドカップサッカー開催準備問題に関する関係省庁連絡会議」を総理府に設置し、大会の準備等について連絡・調整を図っており、平成10年5月には、長野オリンピック競技大会と同様に、寄付金付郵便葉書等の発行や公務員の組織委員会への派遣に関する特例等を定めた大会支援のための「平成14年ワールドカップサッカー大会特別措置法」も制定された。
このように、日本において「2002年ワールドカップ」は、東京オリンピックや長野オリンピックに匹敵する国をあげてのイベントである。
また、請求人が提出した証拠によれば、サッカーのワールドカップの大会名を表示する場合において、一般的には「SOCCER」「サッカー」の語を入れずに、独立して「WORLD CUP」又は「ワールドカップ」の語が使用されていて、当該「WORLD CUP」「ワールドカップ」の語は、サッカーのワールドカップを表すものとして認識されていることが認められる。
(2)世界におけるワールドカップを取り巻く経済的側面
世界的で大規模なスポーツ大会では、幾つもの企業がスポンサーとなり、大会の広告・宣伝等のために、スポンサーとなった企業が自己の製品に関してその大会名を使用することは、よく行われていることであり、知られていることでもある。
ワールドカップの場合、スポンサーには幾つかの種類がある。FIFAの公式スポンサーは、競技場内に看板を出したり、大会マスコットを使って宣伝したり、オリジナル商品を作ることができる。商品の品目ごとに権利を持ち、権利商品に関しては提供の義務を負う。現在、FIFAの公式スポンサーは12社で、そのうちの3社が日本企業である。このほかのスポンサーとして、オフィシャル・サプライヤーと呼ばれる形態のもの(一業種一社しか認められない)や、各国の地域や協会が独自に持てるスポンサーがある。そして、ワールドカップにおいては、国を越えた全世界的な規模で、スポーツ関連商品に限らないあらゆる商品についてライセンス・ビジネスが展開されており、企業は権利を取得するために、巨額の金額を支払っている。
本件商標は、日本において、「ワールドカップ」が今日ほど一般に広く認識されていない段階(1971年当時)に登録されたものであり、「ワールドカップ」が今日ほど一般のあらゆる階層にまで広く浸透するに至った状況には何ら寄与した訳ではない。
本件商標の登録が現在及び将来に亘って存続するならば、「ワールドカップ」を取り巻く全世界的な枠組みの中において、本件商標の登録を独占的に維持するという手段により商業的利益を継続して得ることとなり、これは、オリンピックに匹敵するか又はそれを上回るといわれる現在の「WORLD CUP」「ワールドカップ」大会の権威が損なわれるとともに、「WORLD CUP」「ワールドカップ」商標の持つ利益吸引力が不当に利用されたり、同商標に対するイメージが汚染されたりするおそれがあり、FIFAのワールドカップ大会に関連して、全世界的に展開されるライセンス・ビジネスに大きな混乱を招き、公正な商業秩序の維持及び国際信義に反する行為であるといわざるを得ない。
(3)我が国における過去の審査・審判の判断例及び外国の判断例を甲第11号証の1ないし4及び同第12号証の1ないし5として、提出する。
(4)以上のように、サッカーのワールドカップを取り巻く国内及び国外での社会的・経済的な環境の変化に鑑みると、一私人の被請求人が本件商標を独占的に使用することができる商標権者であり続けることは、ワールドカップ・サッカー大会の権威を損なうとともに、現在においては、もはや世界のサッカー界・スポーツ界のみならず、世界の経済界の国際信義に反し、商品取引上の秩序を害するおそれがあるといわざるを得ないから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し同法第46条第1項第5号の規定により、その登録は無効とされるべきものである。
(1)本件審判請求の理由及び請求人提出の各甲号証を総合勘案するに、我が国におけるサッカーのワールドカップに関心を有する者の人数及びその推移を明確に示す証拠はないが、1993年5月のJリーグ(日本プロフットボールリーグ)発足とともにサッカーに関心を有する者が増加したということができること、ワールドカップ・アメリカ1994年大会において、全世界で延べ320億人がテレビ観戦したといわれ、我が国ではNHKが衛星放送で全52試合のうち44試合を生中継、残りも録画で放映していること及び当時、日本サッカー代表が同大会の最終予選まで進出し、マスコミ報道も盛んに行われていたこと等を併せ考えると、「サッカーのワールドカップ」は、同大会が開催された1994年(平成6年)6月以降に、我が国のサッカーファンのみならず、その他のスポーツ愛好者や一般の人々にも広く知られるようになったものと判断するのが相当である。
一方、「ワールドカップ」「WORLD CUP」の語については、単に「ワールドカップ」「WORLD CUP」といった場合には、サッカーを含む複数のスポーツの国際大会を意味することは認められるものの、「サッカーのワールドカップ(W杯)」や「FIFA(国際サッカー連盟)」のみを指称するとの事実は認められず、また、新聞・書籍・雑誌等で使用されている「ワールドカップ」「WORLD CUP」及び「W杯」の語も、それらの語にサッカーと関係のある他の語が伴っているものとか、或いは、サッカーに関する解説ないし記事が伴って使用されているものであって、いずれも一般の人々に、サッカーのワールドカップ(W杯)を意味することが理解できるような全体の使用態様となっているものであるから、請求人提出に係る各甲号証のみをもってしては、「ワールドカップ」「WORLD CUP」の語が、「サッカーのワールドカップ(W杯)」或いはその主催者の「FIFA」を表すものとして一般に認識されているとはいい難い。そして、他にこれを左右するに足る証拠はない。
(2)本件商標登録の無効審判の請求は、商標法第46条第1項第5号に基づくものであり、いわゆる後発的公益的不登録事由を規定する同法第4条第1項第7号に本件商標が該当するかどうかが論点である。
ところで、我が国において、著名な外国の団体(国際的な団体を含む。以下同じ。)と無関係の者が、当該団体の承諾を得ずに当該団体の名称又はその略称、或いはその者が行う事業を表す標章と同一又は類似の商標に係る登録出願については、その商標が商標法第4条第1項第8号、第15号、第19号等によって登録を受けることができない場合に当たらないとしても、当該団体やその者が行う事業の名声を僭用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正な意図をもってなされたものと認められる限り、商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為といえるから、その場合には、同法第4条第1項第7号によってその商標の登録を受けることができないものと解すべきであるが、その商標の登録出願の際には、当該団体もその者が行う事業も我が国において著名ではなく、そのため登録出願が上記のような不正な意図を伴うものでなかった場合には、その登録出願後に、当該団体の名称又はその略称、或いはその者が行う事業を表す標章が我が国において著名となったとしても、そのことをもって、直ちに当該商標権に係る商標が公序良俗を害するものになるとは解し難い(東京高裁平成10年(行ケ)第11号、同第12号判決参照)。もし、そのことをもって、当該商標権に係る商標が公序良俗を害するものであるとして、その登録を無効にするとすれば、それまで平穏無事に当該商標権に係る商標をその指定商品に使用して獲得してきた信用等の利益を一方的に奪うことになるおそれがあり、経済活動の衡平性の観点から妥当性を欠くものといわざるを得ない。
(3)これを本件商標についてみると、前記(1)の認定のとおり、本件商標と同一構成の「ワールドカップ」の文字が、直ちにサッカーのワールドカップやその主催者のFIFAを特定する語とはいえず、一般的にも、それらを表す語として広く認識されているとは認められない以上、本件商標の登録自体がサッカーのワールドカップやその主催者のFIFAの権威を損ね、ひいては国際信義に反するものになっているとはいえない。
また、仮に「ワールドカップ」の文字がサッカーのワールドカップの著名な略称といえたとしても、サッカーのワールドカツプが我が国において著名となったのは平成6年(1994年)6月以降であって、本件商標の登録出願があった昭和43年6月当時は、サッカーのワールドカップの存在及びその主催者のFIFAが我が国において広く知られていたとは認められないこと等から、本件商標の登録出願が前記(2)にいうような不正な意図をもってなされたとはいえないばかりでなく、他に本件商標をその指定商品に使用しても、直ちにこれが商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害するおそれがあるものになっているともいえない。
なお、本件商標の商標自体が、矯激、卑わい、差別的又は不快な印象を与えるようなものでないことはいうまでもない。
(4)請求人が挙げる我が国における過去の審査・審判の判断例及び外国の判断例について、前者は、本件商標とその商標の構成、指定商品・役務、証拠関係、判断時期等を異にするものであるほか、商標法第4条第1項第7号該当の判断時点についても、本件商標は設定登録された後の当該時であって、前者における判断例の商標はいずれも設定登録時である点でも事案を異にするものであり、後者は、当該商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるかどうかは、それぞれの国の社会・経済状況や文化、生活慣習、法制度等の相違により異なるものといえるから、上記判断例に基づく主張はいずれも採用の限りでない。
その他、本件審判請求の理由及び請求人提出の各甲号証を総合してみても、先の認定を覆すに足りない。
(5)以上のとおり、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するものとなっているとはいえないから、その登録を商標法第46条第1項第5号により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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