結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成7年審判第25356号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第2693822号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示した構成よりなり、第32類「うどんめん」を指定商品として昭和61年4月17日登録出願、昭和63年1月22日拒絶査定、その後、拒絶査定不服審判において審理された結果、商標法第3条第2項に該当するものとして平成6年8月31日に登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とするとの審決を求め、その理由を概要以下のように述べるとともに、証拠方法として甲第1号証乃至甲第27号証(枝番を含む)を提出した(なお、甲第3号証、同第6号証、同第8号証及び同第9号証に示された標章を別掲(2)乃至(5)に表示した)。
A 本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
本件商標は、請求人が「うどんめん」に使用している標章「氷見糸うどん」(甲第3号証)、「氷見名物 糸饂飩」(甲第6号証)、「高岡屋 いとうんどん」(甲第8号証)、及び「氷見名物 糸うんどん」(甲第9号証)と類似する。請求人の使用するこれらの標章は、本件商標の出願日である昭和61年4月17日には既に十分周知性を有しており、かつ拒絶査定不服審判の審決時である平成6年4月26日においてもその周知性は変わっていない。
上記請求人の有する周知商標は、いずれも地名「氷見」と形状を表す「糸」と普通名称「うどん(うんどん・饂飩)」とを要部とする結合商標として構成され、「ヒミウドン」の称呼が生じるゆえに、本件商標に類似するものである。
この類似性を示す例として、雑誌・新聞等の記事、カタログの記載等(甲第10号証の15及び同17、甲第11号証の5及び同10、甲第11号証の13及び同23、同25、同39、同49、同53、甲第13号証の9の1及び同9の2)があり、これらの記載により上記請求人の周知商標と「氷見うどん」とが同一視されていることが伺え、「氷見糸うどん」等の通称が「氷見うどん」とされているようである。
特に、甲第16号証の1の1及び同2における件外百貨店の証明によれば、「氷見うどん」の称呼は請求人のうどんめんを示すことを認めており、本件商標と請求人の有する周知商標とが出所混同することは明らかである。
B 本件商標は、商標法第3条第1項第3号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
本件商標は、拒絶査定不服審判において商標法第3条第2項に規定する使用による識別性の主張が認められた結果、登録に至ったものである。しかしながら、本件商標は、商標法第3条第2項に規定する使用による識別性の主張が本来認められないものである。
すなわち、氷見の土地では古く江戸時代よりうどんが製造され、今日、うどんが氷見の名物・特産品として需要者間に広く知られおり(甲第10号証の15及び同17、甲第11号証の5及び同10、甲第11号証の25、甲第11号証の49及び同53、甲第13号証の9の1及び同9の2、甲第16号証の1の1等)、少なくとも「氷見うどん」のみからなる本件商標が、審決時において被請求人の業務に係る商品であることを認識できるほど、需要者間に広く認識されていたということはできない。
また、本件商標は、その使用開始前既にこれと抵触する商標が他人によって使用されており、或いは周知となっていることを知りながら、その使用を続けることによって周知商標としての既成事実を作りあげ、又は、虚偽文書を含む周知性立証の証拠により拒絶査定不服審判の審理において周知性の判断が誤ってなされたと思料され(甲第18号証乃至同第20号証)、本件商標は、商標法第3条第2項に規定する使用による識別性の主張が本来認められないものであり、その結果、同法第3条第1項第3号の規定により登録を受けることができないものである。
C 本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
被請求人が、本件商標をうどんめんに使用することにより、請求人の商標「氷見名物 糸饂飩」と出所の混同が本件商標の出願日である昭和61年4月17日より生じ、又は生じるおそれのあったことは明らかである。このような出所混同のおそれは、審決時である平成6年4月26日においても同様に認められる。
D 本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
被請求人は、250年にわたる老舗高岡屋の業務に係る著名商標「氷見名物 糸饂飩」に只乗りし、該著名商標の持つイメージを僭用することにより、その商標の持つ強力な表彰力を希釈化して長年の努力により蓄積された請求人の業務上の信用を害している。
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を概要以下のように述べるとともに、証拠方法として乙第1号証乃至同第8号証(枝番を含む)を提出した。
A 本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するとの主張について。
請求人の引用する標章「氷見糸うどん」は、本件商標出願後の平成4年5月15日から使用し始めたとのことであり、標章「高岡屋 いとうんどん」は不使用であり、また、標章「氷見名物 糸うんどん」は使用時期が不明であるから、本件商標は、商標法第4条第3項の規定により、商標法第4条第1項第10号には該当しない。
本件商標と請求人の引用する標章「氷見名物 糸饂飩」との類否についてみれば、本件商標から生ずる「ヒミウドン」の称呼と標章「氷見名物 糸饂飩」から生ずる「ヒミメイブツイトウドン」又は「ヒミメイブツイトウンドン」(甲第7号証の2)の称呼は同一又は類似とはいえず、また、この標章が、本件商標の出願時に「氷見うどん」と略称されて使用され且つその略称が周知になっていた、という事実も証拠も全く認められない。
B 使用による識別性を拒否する主張に対する反論
請求人の主張は単なる言が掛りにすぎない。事実は、被請求人の陳述書の通りである(乙第1号証、乙第2号証の1乃至4)。請求人が、甲第19号証及び甲第20号証をもって主張している点は陳述書(乙第1号証)の通りであり、何らの故意も悪意もあるものではない。
C 請求人が請求の理由として、商標法第4条第1項第15号の規定を補充した件、及び同じく商標法第4条第1項第7号の規定を補充した件は、いずれも認めることはできない。
本件商標が登録されるに至った過程で出願人・審判請求人(本件被請求人)が、当該商標登録出願に係る商標は商標法第3条第2項の要件を満たしていると主張して提出した書証に関し、「氷見うどん」の文字と円輪郭を有するデザイン化された「海津屋」の文字とが一体的に表されているものが見受けられたので、本件商標と同一の構成の商標が審決時において、使用された結果、自他商品識別標識としての機能を果たし得る状態に至っていたものであるかどうかを判断するため、審判長は審尋書を発し被請求人に意見を求めた。
これに対して、被請求人は、概要以下の意見を述べた。
「商標と屋号との関係は様々な使い方をしており、多くの場合は、製造・販売元を表わす屋号『海津屋』及びそのマークと、本件商標とは、きちんと分離して使用している(乙第7号証の1ないし15)。
本願商標の出願以前に、商品『うどんめん』に名称として『氷見うどん』を付して製造・販売していた業者は海津屋のみで、請求人もその他の何人も、商品『うどんめん』に対して『氷見うどん』なる名称を使っていた業者例は、一件たりともなかった。
本件商標は、海津屋創業の昭和50年4月から本件商標の出願・登録に至るまで、海津屋のみが商標『氷見うどん』を使用していたので、本件商標と屋号『海津屋』のマークとの一体化された使用があっても、その一体化とは関係なく、商標『氷見うどん』は、海津屋が製造・販売する『うどんめん』であるとして、全国的に周知となっていたものである。」
さらに、被請求人は、「被請求人は自己の登録商標『氷見うどん』を、請求人高岡屋はやはり自己の登録商標『氷見名物手打糸うどん』をそれぞれ使用しており、お互いの出所の混同は全く生じていない。」旨主張して資料1乃至6を提出した。
A 本件商標が商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるか否かについて
本件商標は、前記した構成よりなるものであって、これより「ヒミウドン」の称呼が生ずるものである。
これに対して、請求人が引用する各標章は、それぞれ前記した構成よりなるものであって、これらより、「ヒミイトウドン」、「ヒミメイブツイトウドン」、「タカオカヤイトウンドン」、「ヒミメイブツイトウンドン」の各称呼が生ずるとともに、単に「イトウドン」「イトウンドン」の称呼をも生ずるものと認められる。
しかして、本件商標より生ずる「ヒミウドン」の称呼と、各引用標章より生ずる上記各称呼とを比較するに、これらは互いに語韻・語調を異にし十分区別できるものである。
請求人は、各引用標章は、いずれも地名「氷見」と形状を表す「糸」と普通名称「うどん(うんどん・饂飩)」とを要部とする結合商標として構成され、「ヒミウドン」の称呼が生じる旨主張し、また、各引用標章と「氷見うどん」とが同一視されているとして各甲号証(甲第10号証の15及び同17、甲第11号証の5及び同10、甲第11号証の13及び同23、同25、同39、同49、同53、甲第13号証の9の1及び同9の2)を提出しているが、これらにおける「氷見うどん」の文字の記述は、商品の品質・産地を表示するものとして使用されているとみるのが相当であって、これらが、請求人の「氷見糸うどん」をはじめとする各引用標章を指称するものとして使用されているとの証左ということはできず、請求人の主張は採用できない。
また、甲第16号証の1の1及び同2は件外百貨店の部長の証明であって、この号証のみでは「『氷見うどん』の称呼(文字)が請求人のうどんめんを示す」との証左とするには十分とはいえず、本件商標と請求人の有する周知商標とが出所混同することが明らであったということはできない。
その他、本件商標が各引用標章と類似するとの証左もない。
したがって、本件商標と各引用標章とが類似するとはいえないから、本件商標が商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたということはできないものである。
B 本件商標が商標法第3条第2項の要件を満たしていないにもかかわらず登録されたものであるか否かについて
本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当する商標であったことについては当事者間に争いはない。
そこで、以下、本件商標が商標法第3条第2項の要件を満たしていないにもかかわらず登録されたものであるか否かについて検討する。
1) 前記「4」の審判長による審尋書への回答に添付された乙第7号証の1乃至4によれば、本件商標の登録前に本件商標と社会通念上同一と認め得る態様の商標が指定商品に使用されていたことが認められ、また、乙第7号証の5乃至15によれば、この態様の商標が現在も使用されていることが認められるところである。
さらに、本件商標の態様は、「ど」の文字部分が崩し字風に表され、かつ、全体の構成において一定の特徴を有する商標ということができるものである。
そうとすれば、本件商標は、その特徴ある態様において使用された結果、審決時において、需用者が被請求人の業務に係る商品であることを認識することができるものとの認定・判断がなされたとみるべきであり、本件商標は商標法第3条第2項の要件を満たすものとして登録されたというべきである。
2) 請求人は、各甲号証(甲第10号証の15及び同17、甲第11号証の5及び同10、甲第11号証の25、甲第11号証の49及び同53、甲第13号証の9の1及び同9の2、甲第16号証の1の1等)を示して、本件商標が審決時において被請求人の業務に係る商品であることを認識できるほど、需要者間に広く認識されていたということはできない旨主張している。
しかしながら、本件商標が、その特徴ある態様において使用された結果、審決時において、需用者が被請求人の業務に係る商品であることを認識することができる商標であったと判断したこと前記のとおりであり、各甲号証にみられる「氷見うどん」の文字の記述・使用の事実は、本件商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するとの証左とはなり得ても商標法第3条第2項の要件を満たしていなかったとの証左とするには十分なものということはできない。
3) 請求人は、本件商標は、その使用開始前既にこれと抵触する商標が他人によって使用されている旨主張している。
この点については、甲第13号証の7,同9の1,同9の2の各パンフレットによれば、商品「うどんめん」に関して「氷見うどん」の文字が表示されていることが認められるものであるが、これらは、商品の包装などに直接表示されているものではなく、かつ、その表示方法は、商品の品質・産地を表示するものとして使用されているというべきものであり、自他商品を識別するための標識として使用されているとは認め難いものである。また、その他の各甲号証における「氷見うどん」の文字の記述・記載も自他商品識別標識として使用されているとはいえないものである。
なお、甲第16号証の1の1、同2及び甲第19号証は、「氷見うどん」の標章は請求人が使用していたものであること、あるいは、同標章は請求人を指称・認識させる旨の第三者による証明書であるが、これらは間接証拠であって、請求人が標章「氷見うどん」を商品「うどんめん」に、自他商品識別標識として使用していたことを示す直接証拠は提示されてはおらず、これらの間接証拠のみによっては、「本件商標と抵触(類似)する商標が他人(請求人)によって使用されていた」旨の請求人の主張は採用できない。
4) 請求人は、被請求人による虚偽文書を含む周知性立証の証拠により拒絶査定不服審判の審理において周知性の判断が誤ってなされたと思料されるとして、甲第18号証乃至同第20号証を提出している。
そこで検討するに、甲第18号証は、本件商標に係る拒絶査定不服審判において提出された、本件商標の著名性を証明する氷見市観光協会会長の証明書であり、甲第19号証は、同観光協会会長による、甲第18号証の証明書を発行するに至った経過の証明書であり、甲第20号証は、被請求人が請求人の店舗で約半年間うどんづくりを修行したとの記事が掲載された「北陸中日新聞」(昭和50年5月9日付)の記事である。
しかして、甲第19号証には、「『氷見うどん』の名称は、被請求人の開店以前より請求人が使用していたものであり、請求人の了解がない限りにおいては、(甲第18号証の)証明書の発行はできない旨回答した」、「数日後、再度被請求人が当観光協会を訪れ、請求人の了解を得たので証明書を発行してもらいたい旨、口頭で申し入れがあったので、依頼のあった(甲第18号証の)証明書を発行した。」旨の氷見市観光協会会長による甲第18号証の証明書に係る経緯の記載があることが認められるが、甲第18号証は、本件商標の周知著名度に関する氷見市観光協会の認識を表明したものであるから、それに請求人が同意しないからといって、証明者による本件商標の周知著名性の認識度が増減することはないというべきであって、甲第19号証をもって甲第18号証の証明書が虚偽文書であったとみることはできない。
また、甲第20号証の記事が事実に反するものであったとしても、そのことで本件商標の周知著名度に影響を与えるとはいえないものである。
したがって、甲第19号証及び同第20号証をもって、本件商標に係る拒絶査定不服審判の審理において周知性の判断が誤ってなされたということはできないものである。
しかも、本件商標が商標法第3条第2項に該当するとの判断がなされたのは、甲第18号証のみが根拠となったのではなく、提出された各書証を総合的に検討した結果というべきであるから、上記請求人の主張は採用できない。
C 本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるか否かついて
請求人は、「被請求人が本件商標をうどんめんに使用することにより、請求人の商標『氷見名物 糸饂飩』と出所の混同が生じ、又は生じるおそれのあったことは明らかである。」旨主張しているが、本件商標と「氷見名物 糸饂飩」の文字よりなる標章は別異のものというべきであり、混同を生ずるおそれがあったとはいえないものである。一方、被請求人が提出した資料2及び3によれば、被請求人は本件商標を、請求人は「氷見名物手打糸うどん」の標章を使用しており、商品「うどんめん」について互いに異なる商標(標章)を使用している事実が認められるものの、請求人は商品の出所の混同を来していることを示す証左を示してはいないから、この請求人の主張は採用できない。
D 本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるか否かついて
請求人は、「被請求人は著名商標『氷見名物 糸饂飩』に只乗りし、該著名商標の持つイメージを僭用することにより、その商標の持つ強力な表彰力を希釈化して長年の努力により蓄積された請求人の業務上の信用を害している。」旨主張しているが、被請求人が本件商標を採択・使用する過程において社会一般の商道徳に反するような方法をもって本件商標の登録を得、また、請求人の営業上の信用を害したといい得る証左は認められないから請求人の主張は採用できず、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する商標であったということはできない。
以上、本件商標は、審決時において商標法第3条第2項に該当するとして登録されたものであって、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15に該当していたとはいえないから、本願商標を第46条第1項第1号の規定により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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