Trademark Appeal Case
防護標章の周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第8907号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願標章
本願標章は、別掲(1)に示した構成よりなり、第42類「飲食物の提供」を指定役務とし、登録第2703936号商標の防護標章として、平成7年6月1日に登録出願されたものである。
第2 登録第2703936号商標
登録第2703936号商標(以下、「本件登録商標」という。)は、本願標章と同一の構成よりなり、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く)」を指定商品として、昭和52年2月21日登録出願、平成7年2月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
第3 原査定の理由
原査定は、「この防護標章登録出願に係る標章は、他人がこれを本願指定役務に使用しても役務の出所について混同を生じさせる程に需要者間に広く認識されているものとは認められない。したがって、この防護標章登録出願に係る標章は、商標法第64条の要件を具備しない。」旨認定して、その出願を拒絶したものである。
第4 当審の判断
1 請求人(出願人)の提出した証1ないし証6(第6号証)及び新たに提出された「新証拠」(以下「第7号証」という。)について検討する。
(1)証1は、昭和63年8月1日発行「月刊うまいもの/新宿」と題する小冊子と認められるところ、「CONTENTS」の「うまいもの食べ歩き」の項に「スパゲティ 壁の穴チボリ」の記載が、また、9頁には「日本一うまいスパゲティ専門店」の文字、及び、細線と太線とよりなる輪郭内に「スパゲティ」、「元祖/壁の穴」、「TIVOLI」の文字を書した商標が認められ、これらの記載内容を総合すると、証1は、「スパゲティを主とする飲食物の提供」たる役務の提供に関する広告と認められる。
その他、スパゲティを主とする飲食物の提供に関する広告と認められるものは、第6号証中の(1)−AないしLのうち、A、Iを除くすべてのもの、(2)−AないしIのうち、B、C、Iを除くもの(ただし、Fについては、「壁の穴フーズ株式会社」(以下「壁の穴フーズ」という。)に関する新聞記事である。)であり、その営業表示として「元祖壁の穴チボリ」などの名称が使用されている。
(2)本件登録商標の指定商品の一つと認められる「スパゲティ、スパゲティ用ソース(パスタソース)」の広告についてみるに、
ア.郵便局のゆうパックを利用した通信販売のための商品カタログについて
証2は、「申込期限:平成7年10月31日まで」の記載からすると、平成7年に作成されたものと認められ、商品の販売元を表したと理解される「壁の穴事業部」の記載が認められる。
第6号証の(4)−BないしH、J、L(Aは証2と同一のものと認められる。)は、平成8年ないし同10年に作成されたものと認められ、商品の販売元として「壁の穴事業部」、もしくは「新世界興業株式会社」(以下「新世界興業」という。)の記載が認められる。
同(5)−Cは、下段の「東京花王販売株式会社」の「1998中元」の記載より、平成10年に作成されたものと認められ、商品の販売元として「壁の穴フーズ」の記載が認められる。
同(5)−Fは、平成10年に作成されたとするものであって、商品の販売元として「株式会社壁の穴」の記載が認められる。
イ.新聞、雑誌、チラシ類、テレビ、インターネット等による広告について
第6号証の(1)−Aは、平成9年7月発行の「週刊上田」であって、商品の販売元として「水野商店」の記載が認められる。
同(1)−Iは、平成9年9月発行の「東京リビング」であって、スパゲティの専門店「壁の穴」がスパゲティとそのソースの新発売に際し、それらの詰め合わせセットをプレゼントすることに関しての記事が認められる。
同(2)−Bは、「超・地域限定ガイド&マップ/新宿ウォーキング/1997.VOL.5|7・8月号」であって、商品の販売元として「京王モール元祖壁の穴チボリ」の記載が認められる。
同(2)−Cは、「SumiseiNetwork/OwnersClub/スミセイ・コミュニティプラザ 創刊号」と認められるところ、その作成日は、2枚目の「会社プロフィール」の欄の「H.9年5月現在」の文字より、平成9年5月以降と認められ、商品の販売元として「新世界興業」の記載が認められる。
同(2)−Iは、平成10年10月発行の「日本食糧新聞」であって、商品の販売元として「株式会社壁の穴」の記載が認められる。
同(3)−Aは、平成9年12月発行の「TBSラジオスポット放送確認書」であって、広告主として「壁の穴フーズ」の記載が認められる。
同(3)−Bは、平成9年6月頃作成されたと認められるテレビコマーシャルの原案と認められ、その広告依頼者は「新世界興業」と認められる。
同(4)−Iは、平成10年12月頃作成のチラシと認められ、「専門店『壁の穴』の味をご家庭で」、「お求めは『壁の穴』京王モール店へ」(1枚目)、「お申し込みご相談は元祖『壁の穴』事業部」(2枚目)などの記載が認められる。
同(4)−N及び(5)−A、B、Dは、平成10年の4月から6月頃に作成されたチラシと認められ、デパートで開かれた催し物の参加業者の一つを表すものとして「壁の穴チボリ」の記載((4)−N、(5)−A)が、また、商品表示として「壁の穴レトルトパスタソース」((5)−B)、「〈壁の穴〉スパゲティ」((5)−D)の記載が認められる。
同(5)−Eは、「’98セイブのお中元」商品カタログであって、17頁の商品案内に「・・和風スパゲティ専門店の“壁の穴”で・・職人達の苦心を忠実に反映した本場の美味しさ・・」なる記載が認められる。
第7号証は、平成11年11月以降作成されたと認められるインターネットの「元祖『壁の穴』ホームページ」であって、その5枚目、7枚目、8枚目には、「ゆうパック『’99東京お中元特選品』のご案内」として、「スパゲティ専門店の美味しさをご家庭で楽しんでみては・・」、「『壁の穴』シェフの指導により調整した・・」、「毎日、レストラン『壁の穴』の厨房で作られる限定商品です。」などの記載とともにスパゲティ、スパゲティ用ソース等が紹介されていることが認められる。
(3)前記(2)の「スパゲティ、スパゲティ用ソース」の広告に使用されている商標は、証拠中の写真が小さすぎたり、不鮮明のものがあるため、明確に確認できないものもあるが、概ね別掲(2)ないし(5)に示した構成よりなるものである。
そして、第7号証2枚目には、株式会社壁の穴及び壁の穴フーズの製品に用いられる別掲(5)に示す商標は、株式会社壁の穴、壁の穴フーズの商標である旨の記載が認められる。
2 次に、本願標章が商標法第64条の要件を具備しているものであるか否かについて検討する。
(1)商標法第64条1項は、「商標権者は、商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品又は役務について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。」と規定しているところである。
(2)これを、前記1(1)(2)(3)で認定した事実に照らして本件についてみるに、特許庁備え付けの商標登録原簿によれば、本件登録商標の権利者(商標権者)は、平成7年2月28日の設定登録時は、「保谷市東伏見2−6−10」所在の「内河 煕」であったところ、商標権の移転がなされ、「東京都新宿区西新宿七丁目9番9号」所在の「株式会社壁の穴」が商標権者となり、その登録が平成10年10月19日になされていることが認められる。
然るに、本件登録商標の指定商品の一つである「スパゲティ、スパゲティ用ソース」についての宣伝、広告をしている者は、「壁の穴事業部」、「新世界興業」、「元祖壁の穴事業部」、「京王モール元祖壁の穴チボリ」、「壁の穴フーズ」等であり、本件登録商標の権利者たる「株式会社壁の穴」が宣伝広告しているものは、僅かに第6号証の(2)−I、(5)−Fにすぎないものである。
なるほど、第6号証の(2)−C、F、及び第7号証2枚目によれば、本件登録商標の前権利者である「内河 煕」は、「新世界興業」、「壁の穴フーズ」の社長であること、「壁の穴フーズ」は、平成9年12月に「壁の穴事業部」から名称変更したもので、「壁の穴事業部」は、昭和37年にイタリアレストラン「チボリ」を、昭和51年にスパゲティ専門店「壁の穴」を開店したこと、本件登録商標の現権利者である「株式会社壁の穴」と「壁の穴フーズ」は、いずれも別掲(5)に示した商標を使用していることなどが認められるが、本件登録商標をその指定商品中の「スパゲティ、スパゲティ用ソース」について使用し、これを宣伝、広告した事実は、前権利者である「内河 煕」については皆無であるし、現権利者の「株式会社壁の穴」にしても、前記したとおり、極めて少ないものである。のみならず、商品販売に関する広告の証拠を総合すれば、平成7年頃から、「壁の穴事業部」、「新世界興業」が通信販売をしていたものの、デパート等を介して本格的に販売を開始したのは、平成10年4月以降である認められ、その販売方法も、「スパゲティ専門店の美味しさをご家庭で・・」、「・・和風スパゲティ専門店の“壁の穴”で・・職人達の苦心を忠実に反映した本場の美味しさ・・」「毎日、レストラン『壁の穴』の厨房で作られる限定商品です。」などのように、スパゲティを主とする飲食物の提供に主眼が置かれているものである。しかも、別掲(2)ないし(5)に示した宣伝広告に係る商標は、本件登録商標及び本願標章とは、その構成態様において相違するものである。
(3)以上によれば、請求人の提出に係る証拠は、その大半がスパゲティを主とする飲食物の提供の宣伝広告といえるものであり、商品「スパゲティ、スパゲティ用ソース」に関する宣伝広告は、本件登録商標の権利者がしたものが極めて少なく、また、使用に係る商標も本件登録商標及び本件標章とその構成を異にするものである。
加えて、防護標章登録出願の出願人は、「商標権者」であることが防護標章登録の要件の一つとなっていることが明らかであるところ、本件登録商標の権利者は、前記したとおり、「株式会社壁の穴」であるのに対し、本願標章の請求人(出願人)は、前権利者の「内河 煕」である。
してみると、本願は、本件登録商標の権利者によってなされたものではなく、また、本件標章は、「商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合」にも当てはまらないから、他人がこれをその指定役務について使用しても、請求人の業務に係る指定商品との間に、出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認めることはできない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本願標章が商標法第64条に規定する要件を具備しないものとして本願を拒絶した原査定は妥当であって、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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