Trademark Appeal Case
著名商標と騎馬図形の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成9年異議第90539号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標の構成
本件登録第4030470号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示した構成よりなり、平成7年10月23日登録出願、第25類「靴類(靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具を除く),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊靴(乗馬靴を除く),乗馬靴」を指定商品として、平成9年7月18日に設定登録されたものである。
2 本件商標に対する登録異議の申立
登録異議申立人(以下、「申立人」という。)は、別掲(2)に表示した構成よりなる標章(以下、「引用標章」という。)を引用して、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから取り消されるべきであると申し立て、甲第1号証ないし同第10号証を提出した。
3 本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立があった結果、本件商標の登録を取り消すものとして商標権者に対して通知した取消理由は次のとおりである。
<取消理由>
A 本件商標の構成
本件商標は前記したとおりの構成よりなるものであって、疾走する馬に人物が騎乗し棒状の道具を振りかざしている図形(以下、「本件図形」という。)の周囲に、これを囲むように「JASS INTERNATIONAL INC.」の文字を配してなるものである。
B 引用標章について
(1)ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)について
申立人の提出に係る甲第3号証、及び、「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」(サンケイマーケテイング(サンケイ新聞データシステムマーケティング事業部)昭和58年9月28日発行)によれば、以下の事実が指摘できる。
a)ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)は、1967年ネクタイメーカーのボー・ボランメル社にデザイナーとして迎えられ、幅が広いネクタイをデザインし、これが若者に支持され、世界に広まったこと。
b)ラルフ・ローレンは、翌年独立し、社名を「ポロ・ファッションズ」(現在の「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッドパートナーシップ」の前身)として、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、カバンなどのデザイン製作を開始し、1971年には婦人服デザインにも進出したこと。
c)ラルフ・ローレンは、アメリカのファッション界では最も権威のある「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞するとともに、他にも賞を受賞し高い評価を受け、そのブランドを世界に通用させたこと。
d)そして、ラルフ・ローレンは、自己の取り扱いに係る商品に使用する商標を「ポロ競技」にヒントを得て採択したこと。
(2)引用標章の我が国での使用・紹介について
申立人の提出に係る甲第7号証(昭和63年10月29日付日経流通新聞の記事)、及び、「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」(株式会社洋品界 昭和55年4月15日発行)の「ポロ」の項、「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」(ボイス情報株式会社 昭和59年9月25日発行)の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項を総合すれば、我が国においては、ポロ・ファッションズ社(あるいは、ラルフ・ローレン)との契約に基づき、西武百貨店が、昭和52年にラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴の取り扱いを、同53年からは婦人服の取り扱いを開始したことが認められる。
また、申立人の提出に係る甲第3号証、同第4号証、及び、前掲の「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、並びに、昭和53年2月16日付日本経済新聞(夕刊)、昭和53年9月21日付日本経済新聞(夕刊)、「世界の一流品大図鑑’80」(株式会社講談社 1980年6月20日発行)を総合すれば、引用標章は、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、ジャケット、シャツ、ネクタイ、眼鏡等ファッション関連の商品に広く使用されているといえるものである。
以上を総合して検討すれば、引用標章は、我が国においては、遅くとも本件商標の出願の時までには、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして、被服類、眼鏡等のいわゆるファッション関連の商品分野の取引者、需要者の間において広く認識され、かつ著名となっていたものと判断され、その状態は現在もなお継続しているというのが相当である。
そして、他にこの判断を覆すに足りる証拠はない。
C 出所の混同のおそれについて
本件商標は、前記した構成よりなるものであって、これを一体不可分のものとして把握しなければならない特別な理由・事情があるものとも認められず、その構成中の、「本件図形」部分も看者の注意を引くものというのが相当である。
しかして、「本件図形」と引用標章とを比較するに、両者はともに疾走する馬に人物が騎乗し棒状の道具を振りかざしている図形を描いてなる点において構成の軌を一にするものといえるものである。
一方、前記認定のとおり、引用標章は、我が国において、遅くとも本件商標の出願の時までには、「ラルフ・ローレン」のデザインに係る商品である被服類、眼鏡等のいわゆるファッション関連の商品を表示するものとして、当該商品に関する取引者、需要者の間において著名となっていたといい得るものである。
しかして、本件商標の指定商品は、前記したものであり、引用標章が使用されている商品がファッション性を有する商品であって、本件商標の指定商品もファッションに関連の深い商品であることから、これに係わる取引者・需要者が、本件商標に接した場合には、本件商標がその構成中に有する「本件図形」部分において、引用標章と多少の差異が認められるものの、その著名性ゆえ、引用標章を連想・想起し、それがあたかも、「ラルフ・ローレン」、あるいは、同人の事業と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきであり、本願商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわなければならない。
4 商標権者の意見
上記3の取消理由通知に対し、商標権者は、意見書において、「東京高等裁判所は取消理由とは逆の判断をしている(東京高裁平成11年(行ケ)第253号、東京高裁平成11年(行ケ)第254号)。商標権者は、『JASS INTERNATIONL INC』の登録商標、及び、各種図形を円形輪郭図形で囲みその周囲に『JASS INTERNATIONL INC』の文字を合成した登録商標を得ており、本件登録異議の申立は理由がない」旨述べ、乙第1号証ないし同第4号証を提出した(この書証に関して商標権者は、甲号証として番号を付しているが、これは乙号証とすべきところを誤記したものとみなす)。
5 当審の判断
本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものとした先の取消理由(上記3)は妥当なものであって、これについて述べる商標権者の意見は、以下の理由により採用できない。
商標権者が引用する東京高等裁判所の判決のうち、平成11年(行ケ)第253号にかかる商標は「PALM SPRINGS POLOCLUB」および「パームスプリングスポロクラブ」の文字を二段に表示してなるものであって、本件とは対比すべき商標を異にし、また、東京高裁平成11年(行ケ)第254号の判決は、商標法第56条で準用する特許法第150条第5項に定める手続の瑕疵を理由として審決が取り消されたものであって、商標法第4条第1項第15号の判断が争われたものではないから本件とは事案を異にするものである。
さらに、商標権者の主張する登録例の中には、本件図形を含まない登録商標があるが、これらは本件とは事案を異にするものであり、本件商標と同一構成の商標の登録例については、上記3の取消理由で述べたように、本件商標は、引用標章との関係で出所の混同を生ずるおそれがあるというべきであるから、これらの登録例をもって、本件登録異議の申立は理由がないとの商標権者の主張を是認する証左とすることはできない。
以上のとおり、商標権者の主張は妥当なものとはいえず、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであって、商標法第43条の3第2項により取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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