Trademark Appeal Case
ステッチ図形の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第12092号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本出願に係る商標(以下、「本願商標」という。)は、後掲(1)に示す図形を表してなり、第25類「被服(和服を除く),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(乗馬靴を除く)」を指定商品として、平成7年4月19日に登録出願されたものである。
2 引用商標
原査定が本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するものとしてその拒絶の理由に引用した登録第1592525号商標(以下、「引用商標」という。)は、昭和46年2月24日登録出願、後掲(2)に示す図形を表してなり、旧第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同58年5月26日に設定の登録がされ、該商標権は、平成5年7月8日存続期間の更新登録がされているものである。
3 当審の判断
(1)本願商標は、その構成前記したとおり、上辺が水平で、その左右両辺が下方にやや狭まりながら垂下し、その左右下端から各々水平方向やや外側に折れ曲がって繋がる一本の細線によって形づくられる輪郭図を丁度その下部の中心に頂点を有する左右対称の五角形を形づくるように表し、同輪郭図の内側内周に沿って形づくられる2本の破線による2つの五角形ないしは五角形様線図形をその上部上辺の一部を相互に交錯させるように表し、また、前記輪郭図の左右両辺やや下部位置の一点からそれぞれ中心部に向けて山形又は波形に湾曲しかつ徐々に角度を持たせて拡がる各2本の破線を丁度その交錯する中心部において小菱形を形づくるように交錯させ、さらに、この小菱形はその左右両角を結ぶ破線により上下一対の小三角形に分かつものである。
(2)これに対して、引用商標は、本願商標の場合と同様に、上辺が水平で、その左右両辺が下方にやや狭まりながら垂下し、その左右下端から各々水平方向やや外側に折れ曲がって繋がる一本の細線によって形づくられる輪郭図を丁度その下部の中心に頂点を有する左右対称の五角形を形づくるように表し(五角形の左辺やや上部位置に「LEVI’S」の極小文字を縦書きに表した小片状ラベルが表示されている。)、同輪郭図の内側内周に沿って形づくられる2本の破線による2つの五角形ないしは五角形様線図形をその上部上辺の一部を相互に交錯させるように表し、また、前記輪郭図の左右両辺やや下部位置から中心部に向けて山形又は波形に湾曲しかつ平行する2本の破線を丁度その交錯する中心部において小菱形を形づくるように表し、さらに、この小菱形は左右両角を結ぶ実線により上下一対の小三角形に分かつものである。
そして、引用商標にあって、図形部分は、前記文字部分に比して圧倒的顕著に表されていて視覚印象の強い部分であり、かつ、その特徴的な図柄と相俟って、それ自体は独立して自他商品の識別標識としての機能を有するものといえる。
(3)しかして、この種線図形又はステッチ(縫い目)のかたち(形)は、細綾織りの綿布製のズボン、すなわち、ジーンズの製造・販売に係るメーカー各社がその製品の後側のいわゆるヒップポケットに縫い付けるステッチとして使用(表示)していることはすでに当業界において顕著な事実であって、特に、前述五角形又はこれに近似した外形を実線で表してなる点はジーンズメーカー各社に共通する図柄といえるものである。そして、その外形実線の内側内周に二重の破線図形を配し、あるいは、そのさらに内側空間に独特のステッチ模様を表出するなどしてメーカー各社それぞれにステッチ(縫い目)のかたち(形)に特徴を持たせているのが実情である。
(4)上記ジーンズ業界固有の取引事情を考慮の上、本願商標と引用商標との外観上の類否について検討するに、両商標は、共に、上辺が水平で、その左右両辺が下方にやや狭まりながら垂下し、その左右下端からそれぞれ水平方向やや外側に折れ曲がって繋がる一本の細線によって形づくられる五角形の輪郭図、すなわち、ジーンズメーカー各社に共通する五角形よりなる点で一致し、また、輪郭図の内側内周に沿って形づくられる2つの破線図形を有する点及びその上部上辺の一部を相互に交錯させるなどした手法も同じで、かつ、輪郭図内部空間に表出された山形又は波形の2本の破線による図柄を表してなる点も共通するものであるから、これら図柄の特徴を同じくする点で両者は構成の軌を一にするものというべきである。
そして、たとえ、両者が輪郭線内部の山形又は波形の破線図の図柄等においてやや相違するものとしても、2つの山形又は波形の図柄であるという特徴が一致し、また、中心部の小菱形又は小三角形の表出方法も極めて近似したものといえるから、結局、両商標を時と処を異にして離隔的に考察した場合、その差異は微差というべく、必ずしも看者の印象に強く残る部分とはいい難いものであるから、両者は全体の外観印象において彼此相紛らわしく、互いに類似のものと判断するのが相当である。
(5)請求人は、請求の理由において、(a)(ジーンズ業界においては)パッチ・ポケットのステッチ模様は同ポケットが五角形の定形のものであることから、ポケットの周囲のシームは一様であって区別がなく、ポケットの内側の左右より伸びるステッチ模様の差異で区別されており、近似したものであっても僅かな差異で識別されているのが実情である。(b)本願商標は五角形の内側の二本の波形の点線が左右両端は一点で、そこから急勾配で二本の点線となり、中央部分になるほど太くなっているのに対し、引用商標は、左右の両端から二本の点線が緩やかな波形で平行して描かれているものであるから、両者はこの相違により、前者は大きな鳥が飛んでいる様を印象づけられるのに対し、後者は、そういう感じはなく、強いていえば、橋の欄干の感じを受けるものであって、この差異が図形全体に及ぼす影響は大きく両者から受ける知覚印象は全く別異のものであるから、時と処を異にして離隔的に観察するも、外観において相紛れるおそれのない非類似のものである。(c)ジーンズ業界の取引の実状は、ジーンズという特定の商品であるところから、業者の数も限られていて、それらが同一の専門店で販売されることも多くあるが、本願商標を付した商品につき取引者・需要者から引用商標を付した商品との誤認、混同の話は一度もなく、この点は両者が相紛れるおそれのない非類似のものであることを示している等の点を述べ、証拠方法として、ステッチ模様に関連する登録事例(第1号証の1ないし第4号証の2)を挙げている。
しかしながら、たとえ、ジーンズ業界においてパッチ・ポケットのステッチ模様がポケットの内側の左右より伸びるステッチ模様の差異で区別され、あるいはその僅かな差異で識別されている状況があるとしても、本件の如く、一部の点を除いて構成各部の特徴並びに全体から受ける外観印象を同じくする場合にあっては、いかに、各々の五角形内部の二本線の表し方において請求人の述べる如き差異があるとしても、これに接する取引者・需要者が常にその細部に亘る点までを正確に記憶に留めそれぞれを確然と区別し得るというよりは、むしろ、前述構成各部の特徴並びに全体から受ける外観印象の方がより強く看者の脳裏に刻まれるとみるのが相当であって、両図形がこれら各点を共通にするものである以上、両者は互いに紛れ得るものというべく、両商標を外観上類似のものとした前記認定を相当とするものであるから、請求人の主張は採用の限りでない。
また、本願商標に係る商品と引用商標に係る商品とが取引場裡において誤認、混同したことがない旨述べる請求人の主張は、該事実を客観的に認め得る証拠はなく、また、該事実を窺わせるような状況も全く見出せないから、この点を述べる請求人の主張は俄に認め難く、採用することができない。
さらに、請求人の挙げるステッチ模様に関連する登録事例(第1号証の1ないし第4号証の2)は、対比される各商標の構成又は比較的簡明な図柄相互間におけるステッチ幅の相違等により、それぞれより受ける外観印象が異なる事例に関するものであって、それら事例をもって直ちに本件の類否判断の基準とするのは必ずしも適切でないから、その主張は採用の限りでない。
このほか述べる請求人の主張をもって、前記認定を覆すことはできない。
(6)以上のとおり、本願商標は引用商標と商標において類似し、その指定商品においても引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものであるから、結局、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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