結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 昭和63年審判第9214号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
1.本件登録第1952708号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第3類「塗料、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和59年6月19日に登録出願され、同62年5月29日に登録がなされたものである。
2.請求人が引用する登録第634592号商標(以下「引用A商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第3類「染料、顔料、塗料(電気絶縁塗料を除く)くつずみ」を指定商品として、昭和37年1月23日に登録出願され、同39年1月17日に登録がなされたものであり、
同じく、登録第1178281号商標(以下「引用B商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第3類「染料、顔料、塗料、印刷インキ、くつずみ、」を指定商品として、昭和45年8月13日に登録出願され、同51年1月8日に登録がなされたものであり、
同じく、登録第1393229号商標(以下「引用C商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第3類「染料、顔料、塗料、印刷インキ、くつずみ、つや出し剤」を指定商品として、昭和45年8月13日に登録出願され、同54年9月28日に登録がなされたものであり、
同じく、登録第1609761号商標(以下「引用D商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第3類「ラッカー」を指定商品として、昭和53年12月26日に登録出願され、同58年8月30日に登録がなされたものであり、
同じく、登録第1609762号商標(以下「引用E商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第3類「ラッカー」を指定商品として、昭和53年12月26日に登録出願され、同58年8月30日に登録がなされたものである。
3.請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第7号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、図形のみからなり、しかも、その図形はある種の鳥を描いたものであることは明らかである。
ところで、動物や鳥が商標として採択されることは決して珍しいことではなく、同じ動物でもライオンの特徴を表していれば「ライオン印」、象の特徴があれば「象印」と称呼されるものであり、鳥にりいてもワシのマーク、ツバメのブランドであればそれぞれ「ワシ印」、「ツバメ印」といったように○○印、△△印という表現は古くから広く一般になされているものである。
したがって、当該図形が動物なり鳥の特徴をどの程度表現しているかによってその称呼は決められるべきであり、原査定のように図形が図案化されているからといって,特定の称呼が生じないとするのは取引の経験則に反するものである。
(2)いうまでもなく、商標は、自他識別の機能を有することにより商標として認められるものであり、特に図形商標の場合、文字をモノグラム化したものと異なり本件商標のようにかなり具体的に描出された図形から特定の称呼、観念が生じないのであれば、商標としての機能を失しているといわざるを得ない。即ち、本件商標から特定の称呼が生じないとする判断はこれが鳥であって烏でないというに等しく法解釈として非論理的であり類否決定の理由としては肯首し難いものである。
本件商標が「オウム」又は「インコ」を表したものであること、決してツバメやハトではないことは明々白々であり、この図形が商品に付されて販売された場合、これより何の称呼も生じないとしたら他商品との区別はどのようにしてなされるものであろうか。
無論商品には、本件商標のみが付されて販売されるとするのは非現実的ではあるが、実務においてはたとえ被請求人の、商号が実際には商品に付されるから取引場裡では問題にならないとしても、類否の判別が出願された商標において対比されることは論を待たない。
(3)そこで、本件商標は、仔細に観察するまでもなく、そのくちばしに大きな特徴があり、さらに、脚及び羽で本件商標が鳥類のうち何を表現したものかは明らかであり、仮に、十人中十人が特定の鳥を描いたものではない、あるいはどのような鳥を描いたのか不明であると答えれば格別、恐らく半数以上がこれを「オウム」あるいは「インコ」とみなすであろうし、また、外観上はその与える印象が文字・図形商標である引用各商標と異なるとはいえ、称呼、観念において相紛らわしく商標法上類似の商標と考える。
(4)一般に取引場裡において、商品の判別はまず新商品の参入により視覚で確認され、その後、称呼によることが多いことは予想されるところであり、本件商標を付した商品を他と判別するため外観において類似するものでないからといって、これより「オウム」印あるいは「インコ」印の称呼が絶対に生じないと全面的に否定できない。何故なら、取引者、需要者を始め、一般人の図形の記憶はそれほど確かなものとはいい難く、時間の経過と共に変化していくものであるから、誰かが本件商標を先入観なく素直にオウムと判断し「オウム」と称呼しようとする者の間においてその図形自体に多少の差があっても称呼において同一である限り混同が生ずることは明らかである。
したがって、図形商標の場合、その図形が写実的であろうと、図案化されたものであれ、さらに、擬人化されているとしても該図形がそのものの特徴をどの程度表現しているかによって判別されるべきであり、本件商標が引用各商標に比べてやや具体性に欠けるとはいえ「オウム」あるいは「インコ」とみなすに充分な特徴を備えたものであることは否定し得ない。
また、異議決定における判断は、専門的にみた両商標の対比観察による結果であり、商標の専門的知識を有しない一般の取引者、需要者が特に時と所を異にして離隔的に観察した場合、同じようなオウムのマークと認識するであろうことは論を待たない。
(5)次に、本件商標の色彩について述べるに、これが青、黄、白と三色を施してなることは指定商品(塗料)との関係で烏の中でも特に羽色の美しさで知られる鳥を意識しており、漫画風に親しみ易く描かれているのは野生の鳥ではなく、飼育用の、あるいは一般に馴染み深い身近な烏であり、このような条件においても本件商標がどのような鳥を意味するのか取引者、需要者間で判別できないとは思われない。
本件商標を付した商品を手に取りこれより何らの称呼が生じないとするより、全体の一部にでも特徴があればそれを以て称呼を特定しこれが自然の称呼として採択されるであろうことは、取引上の混同をさけるためにも必要であるし、また、被請求人も答弁書おいて本件商標が「オウム」あるいは「インコ」であることを全面的に否定しているものではなぐ、その4頁目において「本願商標からは、概念的或いは上位概念としてオウム若しくはインコの称呼・観念が生じるかもしれないが、商標の機能たる自他商品識別力における称呼・観念からは、少なくとも抽象的なオウム若しくはインコという称呼・観念は生じず、生じるとしてもより具体的な称呼・観念が生じると考える。」と述べられるが、「オウム」若しくは「インコ」の称呼・観念が抽象的であるとすれば、より具体的な称呼・観念とは一体何を指称しようとするのであろうか。「オウム」若しくは「インコ」の称呼が抽象的ということは、例えば「オウム」といわれても暖昧で具体的イメージがわかないということであり、それ以上のイメージは、芸術(絵画)の世界の話しであって一図形商標の及ぶところではない。本件商標は、概念がどうの、上位概念がどうのと難しく考える前に、誰がみても“鳥”の図形であり「鳥印」では商品が特定できないことから、常識としてより具体的に称呼を決定することによって取引きの円滑さが確保されるのであるから、本件商標の態様が称呼の特定に戸惑うほど抽象的、不明確に鳥が表現されたものでないと判断されるものである。
(6)以上により、本件商標は、「オウム」又は「インコ」の称呼・観念において引用各商標と同一であり、また、指定商品も同一又は類似するものであるから、その登録は商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とさるべきものである。
4.被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び同第2号証を提出した。
請求人は、本件商標が登録第634592号、同第1178281号、同第1393229号、同第1609761号、同第1609762号の各商標と類似し、登録を無効にすべき旨を主張する。
その理由として『そこで、本件商標は、仔細に観察するまでもなく、そのくちばしに大きな特徴があり、さらに、脚及び羽で本件商標が鳥類のうち何を表現したものかは明らかであり、......恐らく半数以上がこれを「オウム」あるいは「インコ」とみなすであろうし、また、外観上はその与える印象が文字・図形商標である引用各商標と異なるとはいえ、称呼、観念において相紛らわしく商標法上類似の商標と考える。』と述べている。
なるほど、昭和61年2月12日付で提出された商標登録異議申立理由補充書の甲第4号証の2によれば「オウム類に属するものでもインコの名で呼ばれることもあり(オウムとインコの)厳密な区別はない。」と記載されている(乙第1号証)。
したがって、請求人は、本件商標から「オウム」印あるいは「インコ」印の称呼が生じると主張する。
しかし、同理由補充書の甲第4号証の1及び甲第4号証の2には、一般的にはオウムとインコとは区別されている旨が述べられている(乙第1号証)。
即ち、甲第4号証の1には、
「おうむ〔鸚鵡〕......ふつう羽冠があり、体色は多くは白で赤または黄、ときに灰か黒色がまじる。インコのように緑色を呈するものはない。くちばしは短く、先端は鋭く下方に曲がり、尾は短く幅は広い。」と記載されている。
また、甲第4号証の2には、
「一般的には羽冠があつて、体色が白、黒、灰などのものをオウム、羽冠がなくて体色が赤、緑、黄などの鮮美なものをインコと呼んでいる。」
さらに、広辞苑〔第三版〕の一部を抜粋すると、
「いんこ〔鸚哥、音呼〕オウム目に属する鳥類の一群、オウムに似るが尾羽が長いか羽冠がないものをいう。以下省略」
「おうむ〔鸚鵡〕▲1▼オウム目に属する大形の鳥のの総称。嘴が太く著しく湾曲し、脚は前後おのおの二趾。頭に羽冠があり尾は短く白色の種類が多い。以下省略」
以上のように、オウムとインコとは、専門的な分類はともかくとして一様両者は区別されていると解される。
本件商標の烏の図形は、▲1▼羽冠があって▲2▼くちばしは短く、先端が鋭く下方に曲がり▲3▼尾は短く、体形はオウムの特徴を有しているが、しかし、体色は青色でオウムとは全く異なる。
したがって、本件商標の図形は、オウムをアレンジし、漫画風に図案化したものではあるが正確にはオウムではなく青色の鳥を図案化したものである。原査定において「本願商標は、羽根を広げた鳥を図案化したものと認められるところ、このように図案化された図形からは特定の鳥を表現したものとは理解し得ない......」とするのは妥当な解釈である。
他方、引用各商標の図形は▲1▼羽冠がなく▲2▼尾は長く、インコを写実的に表現したものである。
したがって、需要者、取引者は、本件商標からは、原査定のごとく何らの称呼、観念を想起しないか又はより具体的には特定のキャラクターを有する青色鳥の称呼、観念を想起し、引用各商標のインコの図形とは明確に区別できる。
この点に関し、審判請求書では「いうまでもなく......、特に図形商標の場合......本件商標のようにかなり具体的に描出された図形から特定の称呼、観念が生じないのであれば、商標としての機能を失しているといわざるを得ない。即ち、本件商標から特定の称呼が生じないとする判断はこれが鳥であって鳥でないというに等しく法解釈として非論理的であり......」と主張している。
しかし、図形商標の全てに特定の称呼、観念が生じるとはかぎらない。例えば、幾何図形の商標には、特定の称呼、観念が全く生じないものもあり、このようは商標でも、商標の機能を失しているということは出来ない。
本件商標の場合も、オウムを漫画風にアレンジすることにより特定のキャラクターを有する鳥となって、もはや特定の称呼、観念で認識することは弱くなってくる。例えば、ミッキーマウスの図形を見た者はねずみを想起するよりも特定のキャラクターを持った動物を認識するのと同様である。
そもそも、商標は、消費者の側からみて過去において、一定の商標を使用した商品を買って満足したから同じ商品を買うつもりで一定の商標を目印としたが、買った商品は全然出所の異なったものであったというのではその利益を害することになるから、一定の商標を使用した商品は、一定の出所から流出するように登録して保護されるものである。
したがって、需要者等が時と所を異にして商品を買う場合に、商標によって商品の混同を生じなければよいと解される。
そこで、本件商標と引用各商標とを比較すると外観上明確な相違があり、時と所を異にして需要者、取引者が混同を生じるとは考えられない。
この点に関し、審判請求書では『......本件商標を付した商品を他と判別するため外観において類似するものでないからといって、これより「オウム」印あるいは「インコ」印の称呼が絶対に生じないと全面的に否定できない。何故なら、取引者、需要者を始め、一般人の図形の記憶はそれほど確かなものとは言い難く、時間の経過と共に変化していくものであるから......オウムと判断し「オウム」と称呼しようとする者の間においてその図形自体に多少の差があっても称呼において同一である限り混同が生ずることは明らかである。』と主張している。
しかし、人間の図形に対する記憶は請求人が主張するごとく不確かで、時間の経過と共に変化していくとは思われない。人間が図形等のパターンを認識し記憶する場合、比較的正確な場合が多い。例えば、人の顔を例にとれば、通常、人は顔を記憶する場合、細部にわたって記憶してはいないが、以前会った人かどうかは良く認識できる。
したがって、名前が同一であっても異なる人物を同一人物と見まちがえることはまず起こりえない。
図形商標の場合も、一度見た図形商標を時と所を異にして見たとしても以前見た図形であるかどうかは十分識別できる。特に、本件商標と引用各商標のように形体や色彩も異なり、躍動的な図形と、正反対の静的な図形とは明確な差異を有し、混同を生じるとは考えられない。
最後に、請求人は、被請求人の答弁書において引用各商標の登録を否定する旨の主張がされている。
しかし、被請求人は、引用各商標の登録まで否定するものではなく、商標登録異議申立書において『本願引用面商標からは何れも「オウム」乃至「インコ」の称呼観念が生じることは明らかであるから、両商標は上記の称呼観念を共通するものとして相類似する商標と云わねばならない。』と記載されている(乙第1号証)。
この主張が正当であるならば、同じく「オウム」又は「インコ」の称呼が生じる引用各商標より先願先登録がある場合、自己の登録商標をいかに説明するのか、自己の権利には瑕疵はないが、被請求人の権利には瑕疵があるとするのは、矛盾が有るのではないかと述べたまでである(乙第2号証)。この矛盾は、本件審判の請求にもいえることである。
以上のごとく、本件商標は、引用各商標とは明確なる外観上の差異を有し、しかも「オウム」又は「インコ」の称呼、観念は生じない。
よって、本件商標は、商標法第46条の無効理由は存在しない。
5.請求人は、被請求人の答弁に対して、何ら弁駁をしていない。
6.よって、本件商標と引用各商標との類否について判断するに、本件商標は、別紙のとおり烏と認められる図形よりなるところ、この鳥は、図案化されていて、くちばし、羽及び色彩等にある程度の特徴は表されているが、その特徴をもってしても、直ちに特定の鳥であることを認識し得るとはいえないものであるから、これよりは特定の称呼、観念を生ずるものとはいい得ない。
他方、引用A乃至D商標は、別紙のとおり図形と文字との組合せよりなるところ、該構成中顕著に描かれている鳥と認められる図形は、くちばし、尾等に特徴がある鳥を写実的に表しているが、これらの特徴をもった鳥の名称が広く知られているとはいえないものであるから、引用A乃至D商標中の鳥の図形よりは、直ちに特定の称呼、観念を生じないものとみるのが相当である。
また、引用E商標は、別紙のとおり引用A乃至D商標の文字部分を除いた構成よりなるものであるから、前記と同様に引用E商標中の烏の図形よりは、直ちに特定の称呼、観念を生ずるものとはいい得ない。
そうとすれば、本件商標と引用各商標中の鳥の図形とは、特定の称呼、観念を生ずるものとはいえないから、その点について比較すべくもない。また、本件商標と引用各商標とは、他に、称呼、観念において類似する点を見出すこともできない。
さらに、本件商標と引用各面標とは、その構成別紙のとおりであるから、外観においても相紛れるおそれはないものといわなければならない。
してみれば、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点よりみても類似しないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということができないから、商標法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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