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Trademark Appeal Case

著名商標の無効審判

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35366号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4122674号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4122674号商標(以下「本件商標」という。)は、「CELIO」の文字を書してなり、平成7年8月17日に出願され、第25類「被服」を指定商品として、同10年3月13日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると主張するとともに、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第69号証を提出している。

本件商標は、以下の理由から明らかなように、商標法第4条第1項7号、10号、15号及び19号に該当するものであるから、同法第46条第1項1号によって無効にすべきものである。以下に、その理由を詳述する。

1 請求人の使用する商標の著名性について

請求人マルクローランエス.アー.は、1978年にフランス国の法律下に設立され、以降フランスを代表するメンズカジュアルウェアのブランド「CELIO」をフランス国内外でチェーン展開し、店舗名及び商標として「CELIO」の名称を使用して、被服、履物、かばん類、皮革製品、その他の小物類の製造販売を行うものである(甲第2号証)。

「CELIO」ブランドは1978年にマルク(Marc)とローラン(Laurent)のグロスマン(Grosman)兄弟が、フランス・パリ、サンラザール通りの婦人服販売の店舗「CLEO」を父より譲り受け、店舗名を「CELIO」に変更するとともに、紳士服販売に乗り出したことに始まる(甲第3号証)。「CELIO」の名称は「CLEO」に「I」を加え、「E」の位置を移動して兄弟が創造したものである。以来、「CELIO」の商標は全ての「CELIO」店舗内で販売される全商品について付されることになる。

「CELIO」ブランドの取扱商品はメンズカジュアルウェアを中心とし、水着、帽子、ベルト、ネクタイ、リュック、アイウェアなどである(甲第4号証)。

企業コンセプトである「独立性」を推し進め、積極的な多店舗展開により(甲第14号証及び同第17号証)、1995年に展開店舗数が150店を超え、フランスのメンズ・ウエアの小売りチェーン業界で店舗数1位の座を占める(甲第4号証)。そして、「CELIO」店舗は1999年現在までにフランス国内で151店、ベルギー、スペイン、ポルトガルの3国を合わせて16店、さらにギリシャ、レバノン、チュニジア等の遠隔の国々ではフランチャイズ展開で8店と、飛躍的に店舗数を増やした(甲第4号証)。

1998年1月の決算期においておよそ420億円の年間売上げとなった(甲第4号証)。

1997年の紳士プレタポルテブランドの知名度に関するソフレス(フランスの代表的調査会社)による市場調査によると、パリ在住の15才から49才の消費者を対象とした全体的認識率において91%を獲得し、すなわち、調査対象の91%が知っているブランドとして「CELIO」を挙げ、「リーバイス」「シェビニオン」の国際的ブランドに次いで第3位を占めた。「良く知っている」という回答に関しては、1位を獲得している(甲第4号証)。

1999年5月の同様の調査では、「良く知っている」という回答において調査対象1415人を総合して「リーバイス」と並んで1位を獲得し、「積極的に知っている」と答えた割合は人口10万人以上の都市では「リーバイス」「シェビニオン」を抜いて1位である(甲第6号証)。

メンズの店舗でありながら、顧客の購買時に支払いをする人の57%が女性であるというデータが示すように、ブランドへの信頼は非常に高く、安心して家族や友人に着せられるブランドの代名詞ともなっている(甲第4号証)。

さらに、「CELIO」ブランドはテレビ、雑誌から路上、地下鉄フォーム、電車内、バス停留所に至るまで、あらゆる広告媒体を通じて積極的な広告・宣伝キャンペ一ンを行ってきた。1995年には1億4千3百万フラン(約28億6千万円;1フラン20円)の広告宣伝費を投じている(甲第4号証、同7号証及び同8号証)。また、「CELIO」の商品は雑誌や新聞等多数の刊行物に次々と掲載され、独自のブランドコンセプトを印象的に紹介され、広く消費者に浸透していったものである。雑誌の掲載にあたっては、ブランド創設者のマルクとローランのグロスマン兄弟のサクセスストーリーとともに、ショップ内にカフェを設けるなど、常に新しい話題を提供している(甲第9号証ないし同第52号証)。

また、店舗を置いていないドイツでも「CELIO」の成功は紹介されるに至っている(甲第42号証)。さらに外国人向けのパリ案内にも、パリの有名デパート「サマリテーヌ」などと共に「CELIO」が紹介されている(甲第50号証)。

以上のように、競争の激しい衣料品業界において、「CELIO」は独自のブランドコンセプトを貫き、不動の地位を獲得している。「CELIO」の衣料品業界における強い立場は最近の仏大型衣料品安売りチェーン「夕チ」の買収にセリオが有力候補として名前が挙がったことにも象徴される(甲第53号証及び同第54号証)。

また、これに伴って、請求人は「CELIO」の商標を、1978年にフランスで登録したのを初め(甲第55号証)、その後ロゴと組み合わせるなどして30カ国をこえる世界各国で商標登録を行っているがこれらはいずれも一貫して「CELlO」の文字を要部とするものである(甲第4号証及び同第56号証)。

したがって、本件商標の出願時である1995年(平成7年)8月17日においては、すでに請求人が紳士服等のファッション関連商品に使用する商標「CELIO」は、フランスを代表するカジュアルブランドとして、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者・取引者の間に著名性が確立されていたというべきである。

さらに、本件商標の出願時である1995年(平成7年)8月17日において、また査定時である平成9年12月15日においてもフランス、パリはファッションの中心地であり、また、日本における外国ブランドのライセンスによる製造販売や、取引・情報のグローバル化の状況、また、パリが日本人に最も人気のある観光地で、毎年多数の日本人が旅行に訪れショッピングを楽しんでいるという事情、さらに「CELIO」の店舗がパリを拠点として、フランス全土及び諸外国の立地条件の良い場所、例えばパリを訪れる観光客であれば必ず訪れるオペラ座やシャンゼリゼ界隈などに広がっている事実(甲第2号証、同第47号証及び同第51号証)を考慮すれば、我が国のファッション業界の取引者においては当然のこと、需要者にもフランスを代表するカジュアルブランドとして「CELIO」の名称は浸透していたということができる。

さらに、フランス工業所有権庁が著名商標の保護を要請して日本国特許庁に提出した「外国周知商標集」にも、請求人の使用する「CELIO」と旗の図形を組み合わせた商標が掲載されている(甲第57号証)。すなわち、フランス工業所有権庁が周知・著名商標として特に保護に値するとしたものである。目本国特許庁も平成11年7月1日より審査基準を改正し、「外国周知商標」(外国政府又は外国政府に準ずる公益団体から特許庁に提出されたもの)は商標審査便覧上周知・著名であると推認するとしている。WIPOやAPECの場においても周知・著名商標保護の重要性が頓に指摘されている(甲第58号証)。

上記のような、国際的な周知・著名商標保護の要請に鑑みても、出願人の使用する著名な商標は適切に保護されるべきものである。

2 出所の混同について

本件商標は、アルファベット「CELIO」の構成よりなり、「CELIO」の外観、「セリオ」の称呼を生ずる商標である。

ここで、請求人が使用する著名な商標「CELIO」と本件商標とを比較すると、共に同一の文字からなり、また同一の称呼を生ずる。すなわち、両商標はまったく同一の商標であると言うことができる。また、請求人は主に紳士服を中心とした「被服」等の商品に商標を使用し、著名に至っている一方、本件商標も同じく第25類の「被服」をその指定商品とするものであるから、両商標は、同一の指定商品について使用するものである。

従って、本件商標がその指定商品に使用されるときには、これに接する取引者・需要者は、恰も請求人又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品、またはそのシリーズ商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。

3 信義則違反について

本件商標は請求人に係る著名商標と同一の構成として認識され、また同一の称呼を生ずるものである。

そして、また、前述のように、「CELIO」商標は請求人が、父親から譲り受けた店舗の名称「CLEO」からフランス人独特の言葉遊びの感覚で創造した造語であるから(甲第4号証)、いかなる理由でこのような造語を被請求人が採択するに至ったのか、甚だ疑問である。

しかるに、請求人の使用する商標は、本件商標の出願時である1995年(平成7年)8月17日において、また査定時である平成9年12月15日においても、すでに外国でファッション関係の取引界において極めて広く知られていたものである。

前述のように、フランス工業所有権庁が著名商標の保護を要請して日本特許庁に提出した著名商標リストにも「CELIO」と旗の図形を組み合わせた商標が掲載されている(甲第58号証)。

従って、「被服」等のファッションに関係する商品を指定している被請求人が、その出願時に、著名な商標「CELIO」の存在を知っていた可能性は高いものであると言うことができる。

また、被請求人は「成和毛織株式会社」なる商号を「株式会社セリオ」に変更し、たて網ニット生地製造業を営むものである(甲第59号証)。商標というものが、自己の業務に係る商品等を他人の業務に係る商品等と区別するための標識として使用されるものであることに鑑みれば、その商標の採択・使用に当たっては、かかる営業の範囲、すなわちたて網ニット生地について、また商号から自然に生じる文字「セリオ」あるいはアルファベット表記として「SERIO」若しくは「SELIO」を採択するのが、少なくとも自然であると思われる。日本の多くの「セ」で始まる会社名において、「CENTRAL」「CEMEDINE」等のもともと英語が社名の由来となっている名称以外はほとんどが社名の英文表記を「SE」からなる構成としていることからも、被請求人が「CELIO」を採択したことの不自然さが裏付けられるものと考える(甲第60号証)。

実際に被請求人は、平成6年5月30日に商標登録第3334886号「セリオ」を旧第24類「織物(畳べり地を除く),メリヤス生地,フェルトおよび不織物,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,ろ過布」について出願し平成9年7月25日に登録されている(甲第61号証)。被請求人は旧第17類の「被服」に関しても平成1年2月13日に商標出願しているが、この際には「セリオ」及び「SELIO」のロゴのみであり(甲第62号証及び同第63号証)、その後平成7年8月17日に本件商標「CELlO」の出願が行われているが、約6年半も後のことである。

以上の事実より、1995年(平成7年)の本件商標の出願時に請求人の「CELIO」が外国で著名となっていることを知った被請求人が、自己の商号及び所有商標が同一の称呼「セリオ」を生ずるのを奇貨として、「SELIO」の「S」を「C」に変えて「CELIO」を出願し、外国著名商標の将来的な日本への参入を阻もうとする意図が伺える。そのような意図を持って為された本件商標は不正の目的をもって出願されたものであるといわざるを得ない商標である。

従って、本件商標は請求人の永年にわたる営業努力により獲得した商標の信用、名声を不正に利用し、請求人の出所表示機能を希釈化させ、その名声を毀損させる、不正の目的で出願されたものであり、信義則に反する。

本件商標は、商標法第4条第1項第19号の適用以前の出願ではあるが、当該規定の立法趣旨ひいては商標法自体の立法趣旨に立ち戻るべきである。そもそも本件商標のような外国著名商標の名声にフリーライドする商標の登録を認めることは、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護するという商標法の目的に合致しないことが明らかである。

なお、前述の審査基準の改正により、商標法第4条第1項第19号の適用にあたっては、「一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似」し、かつ「その周知な商標が造語よりなるものであるか、若しくは、構成上顕著な特徴を有するもの」であるという要件を満たす場合には、「他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うもの」とされている(甲第58号証)。

本件商標は、上記の要件を共に満たすものであり、まさに商標法第4条第1項第19号が適用されるべきであるといえる。

4 以上のとおり、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する需要者・取引者は、恰も請求人の業務に係る商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項10号及び15号に該当し、さらに、他人の著名な商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから信義則に反するものであり、商標法第4条第1項7号又は19号に該当し、無効とされるべきものである。

5 答弁に対する弁駁

(1)商標法第4条第1項10号及び15号該当性について

被請求人は、請求人の提出した証拠からは日本国内での請求人の商標「CELIO」の周知性は認められないと主張する根拠は、日本国内において「CELIO」商標につき広告・宣伝活動をしていない、すなわち使用の結果としての周知著名性を獲得したことが証明されていない、というものである。

しかるに、日本国内において広告・宣伝活動をしていないからといって、外国周知・著名商標が日本においてその周知性を認められないとの被請求人の帰結は成り立たないものと考える。この点については「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標(いわゆる、周知商標)」には「主として、外国で商標として使用され、それがわが国に報道、引用された結果、わが国おいて需要者の間に広く認識されるようになった商標含むものと解するのが相当である。」旨を判示した平成4年2月26日東京高裁判決、さらに同判決を引用し、たとえ主として日本国内において使用されていなくても、商品の出所混同防止の観点から商標法第4条第1項第10号の適用を認めるべきであるとした平成1年審判第4345号審決がある(甲第64号証及び同第65号証)。

また、被請求人は外国を訪れた際に目にするブランドがすべて我が国で周知であると主張することは、余りにも現実と懸け離れたことであると述べているが、昭和39年4月1日の海外旅行の自由化の施行に伴い、日本の一般世人の多数の者がパリへも行っているものと推認されるところ、パリの名所といえる程に広く知られているナイトクラブである「MOULIN ROUGE(ムーランルージュ)」と同一の称呼を生じる商標につき、ファッション性の高い部類である化粧品等を指定商品として使用するときはその需要者層に鑑みて、出所の混同を生じるおそれがあるものとみるべきである、とする平成2年審判第11615号審決がある(甲第66号証)。この審決の示唆するところは、いわゆる周知・著名商標といえるためには、日本国内における商標の使用を必ずしも要件としないというものであると考える。近時におけるマスメディア、交通手段の発達により諸外国の情報を容易に知り得る状況、さらに国際的な周知・著名商標保護の要請に鑑みても合理的かつ妥当な判断と思料する。

よって、被請求人の答弁によっては、本件商標の指定商品への使用が請求人の周知商標「CELIO」に関係する商品であるとして出所についての混同を生ずるおそれがあることは否定できないものと考える。

(2)商標法第4条第1項7号及び19号該当性について

被請求人は、「CELIO」商標の採択の経緯として、そもそも「SELIO」を被請求人の商標として決定した旨述べた上で、被請求人の登録商標「セリオ」の防衛の意味で「CELIO」を出願したとして不正の目的を否定している。

しかしながら、繊維製造を業とする繊維と密接に関係するファッション業界に関連する情報については比較的容易に入手できていたと考えられ、本件商標出願時における請求人の商標「CELIO」のフランス及び諸外国における著名性の獲得の状況に鑑みて、また被請求人自ら述べているように、被請求人としては使用する意図がなく現在も使用していない商標「CELIO」をあえて出願するにいたった事実を考え合わせればなおのこと、不正の目的を見て取るのは自然なことである。もちろん、被請求人の名誉感情を害するつもりもない。被請求人が使用する意図の全くない商標を出願し登録した点については、そのような行為自体商標法の趣旨に反するものであり、また、従前の連合商標制度が、登録商標の防衛のための規定でないことは勿論である。

さらに、被請求人は、商標法第4条第1項第19号の規定に関して、「そもそも同規定は、本件商標の出願後である平成8年の一部改正で導入されたものであるから、本件商標に何等の関連性も有しないことが明らかである」とし、「請求人の主張は、およそ法律の適用に関する基礎的事項をわきまえない者の妄言と断ずる外はない。」とすら述べている。

本件商標は、平成7年8月17日に出願され、平成10年3月13日に登録されたものであり、商標法第4条第1項19号の規定は、平成8年法律第68号により、平成9年4月1日から施行されているものである。

而して、前記改正法において、法施行前にした既存の商標登録出願であっても、商標法第4条第1項第19号の規定が適用されることは自明である。なお、被請求人の参考に供するため、特許庁総務部総務課工業所有権制度改正審議室編「平成8年改正工業所有権法の解説」(抜粋)を甲第67号証として本書に添付し、実際の適用例として、甲第68号証及び同第69号証を提出する。

さらに、被請求人は、フランス及び諸外国における請求人の商標「CELIO」の著名性に関して、何等反論を行っていない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求める」と答弁し、その理由及び請求人の弁駁に対する答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。

1 請求理由に対する答弁

(1)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当しない理由

(ア)商標法第4条第1項第10号は、「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」であることを要件としている。

ここで広く認識されている程度、すなわち「周知の程度」が及ぶ地域的範囲は、商標法が日本国内でのみ有効であることに鑑みれば、いうまでもなく日本国全域を最大範囲とするものであって、これに外国が含まれないことは極めて当然のことである。外国で使用されたために、その外国で周知となっていても、我国の需要者・取引者間において広く知られていなければ、我国の商標法上周知商標としての保護を受けられないことは、従来より判例の認めるところである(大判大3.5.12・大2(民)513・民録20輯382頁)。

(イ)従って、請求人が同法違反を本件商標の登録無効理由とするからには、請求人の商標である「CELIO」が、本件商標の登録査定の時点において、日本国で客観的に周知になっていた事実を立証しなければならない。そこで審判請求書第2頁〜第9頁および添付の甲第2号証ないし同第57号証について精査したところ、請求人の商標「CELIO」が日本国内で周知になっていた事実を証明にするものでは全くない、という事実が判明した。

すなわち請求人は、甲第2号証〜同第57号証の内容を種々説明すると共に、総括的に「本件商標の出願時である1995年(平成7年)8月17日においては、すでに請求人が紳士服等のファッション関連製品に使用する商標「CELIO」は、フランスを代表するカジュアルブランドとして、需要者・取引者の間に著名性が確立されていたというべき」であり、また「査定時である平成9年12月15日においてもパリはファッションの中心地であり、多数の日本人が旅行に訪れショッピングを楽しんでいる事情...を考慮すれば、我国のファッション業界の取引者においては当然のこと、需要者にもフランスを代表するカジュアルブランドとして「CELIO」の名称は浸透していたということができる。」と述べている。

(ウ)しかし甲第2号証〜同第57号証は、何れも外国で展開された各種事象を書面で提出しただけのものであって、最も肝腎である筈の日本国内で展開された広告・宣伝活動等については一切触れられていない。従って甲第2号証〜同57号証は、前掲の請求人の主張を裏付けたり、また該主張の信憑性を証拠付けたりする資料には到底なり得ない。すなわち、請求人が商標「CELIO」を日本国内で使用した結果として周知著名になった、という証拠を提出しない限り、前記の如き甲号証を如何に大量に提出しても何等の証明にもならないことを請求人は知るべきである。

殊に、「パリはファッションの中心地であるから、同地を旅行で訪れショッピングを楽しむ多数の日本人により、フランスの代表的ブランドとして『CELIO』の名称が浸透していた」という主張は、正に我田引水の極まりと非難されても仕方がないであろう。我々が外国を訪れると、夫々の国で多数のブランドを目にすることになるが、だからといって当該のブランドが全て我国で周知であると主張することは、余りにも現実と懸け離れたことである。

(エ)また請求人は、審判請求書第8頁下段において、「フランス工業所有権庁が日本国特許庁に提出した外国周知商標集にも、請求人の使用する『CELIO』と旗の図形を組み合わせた商標が掲載されている」と述べている。しかし、このような外国周知商標集に掲載されたからといって、その商標が日本で周知になっていることを意味しないことは極めて明らかな事実である。

なお、我国で現実にそれほど使用されていなくても、外国での使用により周知となった結果、我国の需要者・取引者間にも広く認識されているような商標については周知商標として保護しても良いのではないか、との説があることは被請求人も承知している。しかし請求人の商標「CELIO」は、先に明らかにしたように、外国での使用により周知となった結果、我国の需要者・取引者間にも広く認識されるに至ったものでは決してなく、また、我国において広告を含めた使用の実績すら全くないのであるから、前記の説によっても、商標法第4条第1項第10号の規定を適用する余地は皆無である。

以上の如く、請求人の商標「CELIO」が日本国内で周知になっているという事実は全くないから、本件商標が商標法第4条第1項第10号の規定に該当するという請求人の主張は根拠がないものとして、斥けられるべきである。

(2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない理由

商標法第4条第1項第15号は、「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標」の登録を排斥する規定である。請求人は、審判請求書第9頁において、「本件商標は、請求人が使用する著名な商標「CELIO」と共に同一の文字からなり、同一商標であるから、本件商標がその指定商品に使用されるときには、これに接する取引者・需要者は、恰も請求人またはその関連会社の取り扱い業務に係る商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある」と述べている。既に述べた如く請求人の商標「CELIO」は、我国で著名な商標となっているものではないことは明らかであり、しかも該商標「CELIO」が我国において広告を含めた使用の実績すら全くない。従って本件商標と、請求人の商標「CELIO」との間には、商品の出所の混同につき具体的な混同のおそれがないことは勿論、一般的な混同のおそれもないものである。

このように商品の出所につき混同のおそれはあり得ないから、本件商標が商標法第4条第1項第15号の規定に該当する旨の請求人の主張は全く根拠がなく、斥けられるべきである。

(3)商標法第4条第1項第7号または第19号に該当しない理由

商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」の登録を排斥する規定である。また同法第19号は、「他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするもの」の登録を排斥する規定である。但し、この規定は、本件商標の出願後である平成8年の一部改正で導入されたものである。

この点に関し請求人は、審判請求書第9頁中段以下において、本件商標の登録が信義則に違反している旨を縷々主張している。何れも全く根拠のない言掛りとでも云うべき内容であって、まともに反論するに値しないものであるが、一部看過し得ない主張がなされているので、以下の通り反論する。

(ア)すなわち審判請求書第10頁中間付近に、「以上の事実より、1995年(平成7年)の本件商標の出願時に請求人の「CELIO」が外国で著名となっていることを知った被請求人が、自己の商号及び所有商標が同一の称呼「セリオ」を生ずるのを奇貨として、「SELIO」の「S」を「C」に変えて「CELIO」を出願し、外国著名商標の将来的な日本への参入を阻もうとする意図が伺える。そのような意図を持って為された本件商標は不正の目的をもって出願されたものであるといわざるを得ない商標である。」との記載がなされている。

しかし、これは事実と全く相違する。甲第59号証に示される如く、被請求人の商号は「成和毛織株式会社」(せいわけおり)であったが、現在の商号に変更するに当り、新たな商標の選択作業を昭和63年頃に行なった。この作業は、英語、フランス語およびイタリア語の各辞典を渉猟し、響きや語感の良い単語を100余り抽出することで行なわれた。次いでこれら100余りの候補から10の候補に絞ったが、何れもそれはイタリア語であった。この絞られた候補の中に、「誠意、真心」の意味を有する「SERIO」という語が存在した。それまでの商号「成和毛織株式会社」のイニシアルは「S」であり、これは代表者の名前である「精二」の「S」、および「誠意」の「S」に通ずるので、この「SERIO」を商標とすることに決定した。

しかるに「SERIO」のロゴをデザインする段階で、デザイナーから真中の「R」を「L」にして、「SELIO」とした方が納まりが良いとの助言があったために最終的に「SELIO」を商標とすることに決定し、併せて商標出願を行なうことで第2407083号の登録を取得した。また相互に連合商標となる商標「セリオ」についても、同じく第2361054号として登録を取得した。そして本件商標「CELIO」は、この登録商標「セリオ」を防衛するために平成7年8月17日付けで、該商標「セリオ」の連合商標登録願として出願されたものである(乙第1号証)。

なお、連合商標制度は、その後の平成8年に廃止されたために、甲第1号証に添付の商標公報から判明する如く、「連合商標」の表示はなされていない。

このように本件商標は、被請求人が所有する別の登録商標「セリオ」(第2361054号)を防衛する観点から出願し、かつ登録を取得したものであって、請求人が主張する如き不正の目的をもって出願したものでは断じてない。すなわち本件商標が信義則に違反して登録を取得した如き事実は全くなく、商標法第4条第1項第7号の規定の適用があり得ないことは明らかである。

(イ)商標法第4条第1項第19号に関しては、そもそも同規定は、本件商標の出願後である平成8年の一部改正で導入されたものであるから、本件商標に何等の関連性も有しないことが明らかである。請求人の主張は、およそ法律の適用に関する基礎的事項をわきまえない者の妄言と断ずる外はない。

以上に説明した如く本件商標は、商標法第4条第1項第10号、第15号、第7号及び第19号の規定の何れにも該当するものではなく、従って請求人の主張は全て根拠のないものである。

2 弁駁に対する答弁

(1)既に述べたところであるが、重要な点であるから再度、本件商標の採択の経緯について説明する。

(ア)先ず、被請求人は登録第2407083号商標「SELIO」(以下「メイン・ブランド」という)の商標権者であるが、該商標はイタリア語の「SERIO」(誠意)をベースにすると共に、専門家の意見等も参考にして作り出された造語「SELIO」であって、これを自己の商標として採択したものである。このメイン・ブランドの採択は、我国の企業に「CI」の動きが活発化した1983年に、旧社名(「成和毛織株式会社」)の変更に伴いなされたものであり、もとより請求人の商標とは何等の関連性もない。なお答弁書(第1回)の第5頁において被請求人は、「新たな商標の選択作業を昭和63年頃に行なった」と述べたが、実際はそれより以前の昭和58年始めであり、訂正する。

(イ)前記のメインブランドは、主として被請求人の商品「織物等」に使用してきたが、1988年頃からは商品「被服」についても使用している。すなわち被請求人は海外の有名ブランド商品(被服)のOEM(相手先ブランド)供給を行なってきた結果として、その被服のデザイン、製造等を通して被服分野についても高い技術力を蓄積するに至った。このため被請求人は、その技術力を活かして被服分野への進出を果たし、自社ブランド(メイン・ブランド)による被服(ポロシャツ等)の製造・販売を行なっているからである。

現在、被請求人における商品構成は、商品「織物」が約60%、商品「被服」が約40%の割合となっているが、将来的には被服の占める割合が更に大きくなるものと予想される。このような被請求人における被服事業の進展に鑑み、「メイン・ブランド」の保護強化を図ると共に、将来の事業拡大にも対応すべく「メイン・ブランド」の派生ブランドとして本件商標の出願登録を行なったものであって、もとより「不正の目的」などはある筈もない。

(ウ)使用の事実がなくとも、「抽象的な使用意思」に基づきこれを商標出願することは法律上全く問題がないのみならず、一般に行なれているところである。

ちなみに請求人も商標「celio」に関して、「被服」をカバーする第25類だけでなく、その他の第3類、第9類、第14類、第16類、第18類を指定して出願を行なっている事実がある(商願平11−24627号)。従って請求人が、本件商標につき使用の事実がない点を捉えて、「被請求人は使用する意図が全くない」と断定した上で、「本件商標を登録した点については、そのような行為自体商標法の趣旨に反する」と述べたことは、被請求人の名誉感情を著しく害するものであって到底是認できない。

(2)商標法第4条第1項第10号および第15号の該当性

(ア)請求人は、被請求人の答弁に対して、「日本国内において広告・宣伝活動をしていないからといって、外国周知・著名商標が日本においてその周知性を認めらないとの被請求人の帰結は成り立たない」と弁駁している。

しかし日本国内における広告・宣伝活動につき言及したのは、(A)外国で周知であるからといって、そのことの故に直ちに本号による保護が与えられるものではなく(外国の周知商標をそのまま保護する規定ではないと解すべきである)、(B)日本国内における周知性が要件とされている以上、このような立証義務を負う請求人に対して、(C)広告・宣伝活動に基づく我国における周知性の立証を求めたものに他ならない。

(イ)我国における広告・宣伝活動の姿が、我国における周知性の唯一の立証手段ではないことは勿論であるが、周知性の獲得とその立証に、広告・宣伝活動が通常は極めて有効且つ基本的な手段であるところから、そのような具体的な活動の有無について指摘したものである。外国における周知性を強調する一方、それを以って国内でも周知であるかのような印象を与えるという論法に依拠するのであれば、極めて説得性に乏しいと云わざるを得ない。

この点について請求人が引用する東京高裁の判決は商標法第4条第1項第10号所定の他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者に広く認識されている商標」の意義に関し、「我国において商標として使用された結果、...広く認識されるようになった商標だけでなく、主として外国で商標として使用され、それが我国において報道、引用された結果、我国において...広く認識されるようになった商標も含むと判示している。すなわち、外国での商標の周知性に基づく場合は、外国で獲得された周知性が「報道、引用」などの伝達あるいは伝播により我国で周知になったという(因果)関係が認められなければないと判示している。また請求人が引用する特許庁審決も、同様の趣旨を述べている。

(ウ)周知性の我国への伝達あるいは伝播の媒介項として、請求人は我国のフランスへの観光客を挙げている。海外旅行の普及と大衆化に伴い、かなりの数の日本人がパリを訪れていると推認されるとしても、その数は「日本の需要者の全体」からすればごく僅かであって、量的な絶対数において不足していることは明らかである。この意味において、フランスを訪れる一般観光客を媒介項として我国の「一般需要者」における周知性を導き出す請求人の論法には大きな無理があり、従ってまた「外国(特にフランス)を訪れた際に目にするブランドが全て我国で周知であると主張すること」は、現実と全くかけ離れたものであると云わざるを得ない。請求人は、パリ・ファッションに対する関心の高さを指摘しているが、観光客にとってその主たる対象は一般的に「セリーヌ」、「ルイ・ヴィトン」および「シャネル」などのいわゆる有名・高級ブランド品といわれるものであり、「カジュアル・ウエア」のブランドは未だこのような興味の対象となっていないのが現状である。

(エ)更に、請求人が援用する「MOULINROUGE(ムーラン・ルージュ)」の審決について言及すれば、「ムーラン・ルージュ」(赤い風車)は古くからの有名なパリの名所の1つであり、東京の浅草にも同名の演技場があった程に(その是非は別として)、我国でも広く知られて馴染みのある名称であった。すなわちその名称は、「エッフェル塔」ほどの知名度はないとしても、種々の媒体を通じて我国に伝達されあるいは伝播し、その結果として我国においても周知になっていることは否定できない。これに対して、「CELIO」の商品を扱う店舗にこのような周知性は全く認められないのであるから、これを「MOULINROUGE」のケースと同一に論じること自体が既に大きな間違いと云うべきである。

要するに本件については、例えば「CELIO」の商標が各種メディア等で報道や引用等がなされて、我国に広く伝達され、あるいは伝播し、その結果としてこれが我国で周知になっているという事実を全く認めることはできないのであるから、同号の適用はないものである。

(3)商標法4条1項第7号および第19号の該当性

(ア)既に冒頭で述べたように、本件商標はメインブランド「SELIO」をベースとした派生ブランドとして、その登録を取得したものである。すなわちメインブランドの保護を確実にする(防護的側面)と共に、将来の事業展開をも視野に入れて、更にその保護の強化および発展を図る(使用範囲の拡張などの積極的側面)ため登録したものである。これは事業発展の過程でなされた極めて自然な行為であり、また広義の保存行為ともいうべきものである。もとより、周知著名であると主張されている他人の商標にフリーライドする如き低俗な意図の下になされたものではない。

(イ)ここで「不正の目的」の意義を明確にするために、これを関連する概念との対比において観察すると、「不正の目的」の概念は、他人の商標の存在を知っていたにすぎないという単なる「悪意」(mala fide)よりは狭い概念であり、従って、更に「不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的」等の一定の意図が必要であるとされている(「不正の目的」の定義規定参照)。このため自己のメイン・ブランドの保護強化の目的でなされた本件商標の出願においては、このような「不正の目的」とは本質的に無関係である。

従って本件商標は、例えば、(A)外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我国で登録されたことを奇貨として、これを高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、(B)又は外国の権利者の国内参入を阻止し、(C)若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願した」(審査基準参照)というような事情とは全く無縁である。この意味において、請求人が本件商標の出願をもって、「外国著名商標の将来的な日本への参入を阻もうとする意図が伺える」とした上で、「そのような意図を持ってなされた本件商標は「不正の目的」をもって出願されたもの」とするのは、本件商標を出願するに至った前記の動機を無視した牽強附会の論と云うべきである。

この場合に、請求人の商標(CELIO)が被請求人のメイン・ブランドあるいは派生ブランドに類似するとして、法的にその使用が禁止され、その結果として請求人の商品の日本市場への参入が阻止されることはあるかもしれないが、それは 被請求人のブランド、根本的にはそのメイン・ブランドに係る商標権が備える排他的効力の適用による反射効に過ぎないのであって、ここでいう主観的な「不正の目的」とは全く別個の問題である。また外国有名商標集に登載されているブランドであっても、この「不正の目的」の要件を充足するものでなければ、商標法第4条第1項第19号の保護の対象にならないのは勿論である。

(ウ)引用商標の「フランスおよび諸外国」における「著名性」に何等反論するところがない、とする点については、外国の取引の実情が明らかでない状況の下、フランスのみならず、諸外国についてまでコメントを求められても反論し得る訳がない。敢えて云えば「不知」と答えるしかないし、また一般論としては、請求人により提出された程度の資料では、例えば「フランス」における引用商標の「著名性」を立証するのには全く不充分である。

(エ)改正商標法で新設された商標法第4条第1項第19号の遡及的な適用については、これを否定的に解すべきものであって、「法施行前にした既存の商標出願であっても、同号の規定が適用されることは自明である」とすることはできない。蓋し、既得権の保護に関する法理は法解釈上の大原則である以上、その例外である遡及的適用は限定的になされるべきだからである。

そこで遡及的適用を認める根拠について、「平成8年改正工業所有権法の解説」は、商標法等の趣旨、つまり「制度利用者の利便性の向上、手続の簡素化、国際化等」を挙げているが、これらは何れも両当事者の既得の利益を害しない範囲において認められるべきものであり(通常、制度利用者の利便性の向上、手続の簡素化は両当事者に有利に作用するものと考えられるが、「国際化」についてはその意味するところは必ずしも明らかでない)、本件の商標のように当事者の一方の利益、特に法律上認められた既得の権利を害するような場合には、権利濫用等に該当するなど格別の事情がない限り、その適用はないというべきである。

すなわち、本件商標の出願については「不正の目的」が認められないのであるから、同号の適用はない。

第3 当審の判断

請求人の提出した甲各号証をみるに、以下の事実を認めることができる。

(1)請求人マルクローランエス.アー.に関するフランス国商業登記簿、同訳文及びマルク・グロスマン氏作成の公証宣誓供述書、同訳文によれば、請求人は、1978年にフランス国の法律下に設立された会社であり、メンズカジュアルウェアを中心とし、水着、帽子、ベルト、ネクタイ、リュック、靴類、アイウェアなど被服、履物、かばん類、皮革製品、その他の小物類の製造販売を行っているものである。請求人の経営方式としてはフランス国内外でチェーン店を展開し、また、そのチェーンのを名称及び取り扱い商品に「CELIO」標章を使用しているものである(甲第2号証の1、2及び同第4号証の1、2)。

上記「CELIO」の名称は、1978年にマルクとローランのグロスマン兄弟が、フランス・パリ、サンラザール通りの婦人服販売の店舗「CLEO」を父より譲り受け、店舗名を「CELIO」に変更するとともに、紳士服販売に乗り出し、商品には「CELIO」標章を使用したことに始まり、「CELIO」の名称は「CLEO」に「I」を加え、「E」の位置を移動し創造したものと認められる(甲第3号証)。

(2)「CELIO」の名称の展開店舗数は、1995年(平成7年)に150店を超え、フランスのメンズ・ウエアの小売りチェーン業界で店舗数第1位の座を占め、1999年現在までにフランス国内で151店、ベルギー、スペイン、ポルトガルの3国を合わせて16店、さらにギリシャ、レバノン、チュニジア等の遠隔の国々ではフランチャイズ展開で16店となっているものである(甲第4号証)。

(3)売上実績は、1993年度1,072百万フラン、1994年度1,095百万フラン、1995年度1,189百万フラン、1996年度1,268百万フラン、1997年度1,480百万フラン、1998年度1,698百万フランである(甲第4号証の1、2)。

(4)1997年(平成9年)年の紳士プレタポルテブランドの知名度に関するソフレス(フランスの代表的調査会社)による市場調査によれば、パリ在住の消費者を対象として、調査対象の91%が知っているブランドとして「CELIO」を挙げ、「リーバイス」「シェビニオン」の国際的ブランドに次いで第3位を占めるに至っている(甲第4号証)。

(5)「CELIO」標章に係るチェーン店名及び取り扱いに係る商品の広告宣伝は、テレビ、雑誌、新聞、路上、地下鉄、電車内、バス停留所等に広告・宣伝キャンペ一ンを行い、1994年度6.5百万フラン、1995年14.3百万フラン、1996年度16.9百万フラン、1997年度19.9百万フラン、1998年度26.9百万フラン、1999年51百万フランの広告宣伝費を投じているものである(甲第4号証、同第7号証及び同第8号証)。

(6)「CELIO」標章は、甲第9号証ないし同第41号証、甲第43号証ないし同第49号証、甲第51号証及び同第52号証によればフランス国内の多くの雑誌、新聞の刊行物の外、ベルギー、スペイン雑誌に、例えば「グロスマン兄弟は『退屈以外すべてあり』を目的にした、洋服の『Celio』は知性豊かなトップだ。カラーが豊富で、それでいてクラシックな紳士服、才能溢れるアイディア、『Celio』は本当のサクセスストーリーを展開し、フランスに100%直営の127店舗を有する」(甲第43号証の1、2)等、チェーン店の成功例と共に取り扱い商品に付し使用されていることが掲載されているものである。

また、店舗を置いていないドイツにも請求人が経営するチェーン店「CELIO」の成功がドイツ雑誌「TXTILEーWIRTSCHAFT」(1994年2月号抜粋、同訳文)(甲第42号証の1、2)に紹介され、さらに外国人向けのパリ案内「WHERE」(1957年7、8月号抜粋、同訳文)にも紹介されている(甲第50号証の1、2)。

(7)本件商標の出願後の1999年の資料であるが、仏大型衣料品安売りチェーン「夕チ」の買収にセリオが有力候補として名前が挙がり、インターネット及び日本の新聞にも掲載されたものである(甲第53号証及び同54号証)。

(8)フランス工業所有権庁は、著名商標の保護を要請し、日本国特許庁に提出した「外国周知商標集」に請求人の使用する「CELIO」と旗の図形を組み合わせた商標が掲載されているものである(甲第57号証)。

(9)請求人は「CELIO」標章を、1978年にフランスで商標登録、その後、ロゴと組み合わせるなどして30カ国の世界各国に商標登録を行っている(甲第55号証及び同第56号証)。

以上の事実によれば、請求人が販売店舗名及び販売各商品に使用している「CELIO」標章は、その店舗数(フランス国内ばかりでなくヨーロッパ外の国にもあり)、売上額の推移、投入した広告宣伝費と期間、フランス有力雑誌を始めとする多くの雑誌、新聞にチェーン店の成功例と共に取り扱い商品に付し使用されていることが掲載されていること、市場調査によれば「リーバイス」「シェビニオン」の国際的ブランドに次いで「CELIO」ブランドは第3位を占め、そして、フランス工業所有権庁が著名商標の保護を要請し、日本国特許庁に提出した「外国周知商標集」にも請求人の使用する「CELIO」と旗の図形を組み合わせた商標が掲載されたものであることを総合勘案すると、本件商標の出願時である1995年(平成7年)8月17日頃まで及び査定時である平成9年12月15日頃においても引き続き請求人の業務に係る商品の被服等を表示する標章として、フランス国内及び一部の外国の需要者・取引者の間に広く知られるものと認識されていたというのが相当である。そして、上記認定を左右する証拠はない。

なお、被請求人は、請求人が「CELIO」標章はフランス及び諸外国でで周知であるとの主張に対し、具体的に反論をしていない。

ところで、本件商標の出願当時(平成7年)、既にわが国における需要者、取引者の外国ブランドに対する関心の高さは広く知られた事実である。これに伴うライセンスによる販売が行われる等この種商品の当業者又は取引者は需要者以上に、海外ブランド事情に関心を寄せている実情である。

そして、「CELIO」標章は、被服、身回品、身飾り品等を扱う当業者又は取引者間ではことのほか注目されるフランスの標章であること、日本でも知られる新聞「LE FIGARO」、またファッションの情報源として日本でも特によく知られるフランスの「ELLE」「VOGUE」等の有力雑誌、新聞(日本版でなくても)への掲載がされたこと、本件商標の出願後の1999年の資料であるとしても、仏大型衣料品安売りチェーン「夕チ」の買収に請求人チェーン「CELIO」が候補として挙がったことがインターネット及び日本の新聞にも掲載され、被服、身回品、身飾り品等を扱う取引界では相当以前から注視されていたことが窺え、競争の激しいファッション業界の特殊性、そして国際化、情報化社会において情報の入手は容易になっていることを考慮すれば、わが国の被服等の一般需要者とまでは行かなくても、少なくとも海外ブランドの輸入品等を扱う我が国の当業者又は取引者間においては本件商標の出願時である1995年(平成7年)8月17日頃まで及び査定時である平成9年12月15日頃においても引き続き請求人の業務に係る被服等を表示する標章として周知性は認識されていたものとみるのが相当である。

この点に関し、被請求人は、「CELIO」標章が各種メディア等で報道や引用等がなされて、我国に広く伝達され、あるいは伝播し、その結果としてこれが我国で周知になっているという事実を全く認めることはできないと主張しているが、海外ブランドの輸入品等を扱う当業者又は取引者間における取引の実情、「CELIO」標章がおかれている状況、情報化社会の観点から、前記の判断がされるものであり、この判断を左右する証拠の提出がないから、請求人の主張は採用できない。

そうすると、請求人が引用する「CELIO」標章は、当業者又は取引者間においては、前記のとおり本件商標の出願時及び査定時にはフランスを代表する標章として周知性が認識されていたものであり、また、本件商標と請求人が引用する「CELIO」標章とは構成文字が同一にして、「セリオ」の称呼が生ずることは明らかであり、両者は同一のものと認められ、かつ、本件商標の指定商品と請求人の引用する標章の使用する商品は共に「被服」の同一の商品に使用するものであること前記のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に該当するものと認められる。

したがって、本件商標は、請求人の他の主張について検討するまでもなく、同法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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