sokuhyo

Trademark Appeal Case

氏名権と著名商標

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35676号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4283854号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4283854号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成10年1月9日に登録出願、後掲に示すとおり、黒く塗りつぶした円図形内に頭部を中心に左右対称型の横向き彫像様図形を白抜きの形象と黒色の陰影により表出し、同図形の上・下部に白抜きの「ALFREDO」、「VERSACE」の各欧文字をそれぞれ円弧状に表し、さらに、これら円図形を囲むように、装飾的図柄による肉太の円輪を描いた構成よりなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」を指定商品として、平成11年6月18日に設定の登録がされたものである。

2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第63号証並びに甲第64号証(平成12年7月10日付上申書において提出)を提出した。

(1)本件商標は、下記の各理由により、商標法第4条第1項第11号、同第8号、同第10号及び同第15号の各規定に該当する。したがって、その登録は、商標法第46条第1項第1号の規定により、無効とされるべきものである。

(2)商標法第4条第1項第11号該当について

審判請求人は、登録第3231085商標(甲第1号証)、登録第4024005号商標(甲第2号証)、登録第4126967商標(甲第3号証)、登録第3231084号商標(甲第4号証)、登録第4065615商標(甲第5号証)、登録第2708755号商標(甲第6号証)、登録第1471328商標(甲第7号証)、登録第2662689号商標(甲第8号証)、及び登録第2718477号商標(甲第9号証)の登録権利者である。

本件商標は、これら登録商標、就中、登録第3231085商標(以下、「甲第1号証商標」という)及び登録第4024005号商標(以下、「甲第2号証商標」という)と同一または類似し、これらの指定商品と同一または類似の商品に使用するものである。

したがって、本件商標は甲第1号証商標及び甲第2号証商標と同一または類似する。本件商標の指定商品が甲第1号証商標及び甲第2号証商標の指定商品と同一または類似することは疑問の余地がない。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。

(3)商標法第4条第1項第8号該当について

本件商標は、世界的に著名なデザイナーであるGianni Versace=ジャンニ・ヴェルサーチ(甲第17号証乃至甲第20号証)が1979年主宰設立に関与した本審判請求人の著名な略称「VERSACE」を含むものであり、更に、本審判請求人が昭和56年7月に設立した日本国法人「株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパン」の著名な略称である「VERSACE」=「ヴエルサーチ」を含むものである。

しかるに、被請求人(本件商標の登録出願人)は本件商標を登録出願するにつき、本審判請求人及び前記株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパンのいずれの承諾をも得ていない。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第10号該当について

「GIANNI VERSACE」、「VERSACE」、「ジャンニ ヴェルサーチ」及び「ヴェルサーチ」の商標は、周知著名なデザイナーブランドとして、本審判請求人及び前記子会社「株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパン」が取扱ってきた被服等に永年使用された結果、デザイナーGianni Versaceの案出に係る被服等の商品、本審判請求人及び前記子会社の取扱う被服等の商品を表示するものとして、本件商標の登録出願日以前に取引者・需要者の間で広く認識されていたものである。本件商標の後半部「VERSACE」は、これら周知の商標と同一または類似し、同一または類似の商品に使用するものである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に該当する。

(5)商標法第4条第1項第15号該当について

前記(4)に述べたとおり、世界的に著名なデザイナーであるGianni Versace=ジャンニ ヴェルサーチが設立し業務を主宰した本審判請求人及びその子会社「株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパン」は、「GIANNI VERSACE」「VERSACE」「ジャンニ ヴェルサーチ」及び「ヴェルサーチ」の商標を被服をはじめとして、装身品、ベルト、時計、香水等に永年使用し、これら商標は著名デザイナーブランドとして本件商標の登録出願前に周知著名となっている(甲第17号証ないし甲第63号証)。しかして、本件商標は、「VERSACE」の語を主要部としているから、前記周知著名商標と混同される蓋然性が極めて高く、少なくとも取引者・需要者をして前記周知著名商標を容易に連想せしめるものである。さらに、本件商標の指定商品と前記周知著名商標が使用されている商品とは、同一であるか又は流通経路、販売店、一般需要者層を同一にする。

したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合、恰もその商品が本審判請求人あるいはその関連会社の業務に係る商品であるかの如く、誤認混同される蓋然性が極めて高い。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当する。

3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第19号証を提出した。

(1)請求人は甲第1号証ないし甲第63号証を提出して本件商標の登録を無効とすべき旨理由を述べているが、以下に述べる理由により、その主張は不当であり、本件商標に登録を無効とされるべき理由はない。

(2)本件商標は、商標公報に示されている通り、上段に「ALFREDO」の欧文字を配し、中段に左右対称に描かれた人物の横顔図形を配し、下段に「VERSACE」の欧文字を配し、全体を装飾的な円形枠で囲った構成より成り、その指定商品及び登録に至った経緯については前出1のとおりである。

(3)被請求人「アルフレッド・ヴェルサーチ」は、製品・材料・細工品・包装(品)のファッション・デザイナーであり、本件商標右側の「ALFREDO/VERSACE」は、被請求人を表すブランドとして米国等に於いて長年使用されてきた商標である。

又、被請求人「アルフレッド・ヴェルサーチ」は、デザイナー「ジャンニ・ヴェルサーチ」とは父親同志が又従兄弟の関係にあり(乙第1号証)、被請求人の米国等に於けるデザイナーとしての活動や本件商標の使用等に関しては、「ジャンニ・ヴェルサーチ」自身が認知し、また黙認してきた経緯があり、「ジャンニ」の生存中には、両者間に何ら問題は起こらなかったものである。

しかるに、「ジャンニ・ヴェルサーチ」が暗殺された後、前記既成事実を無視するかの如く、「ジャンニ」サイドは被請求人を提訴したり(米国)、本件商標に対して本件無効審判を請求したり、他の登録商標に対して不使用取消審判(審判平10−30402)を請求してきたりしているものである。尚、前記不使用取消審判は、「本件審判の請求は、成り立たない。」との結論を既に得ている。

(4)商標法第4条第1項第8号の主張に対する反論

請求人は、本件商標がジャンニ・ヴェルサーチの著名な略称である「VERSACE」の文字を含むが故に、登録出願に際しては審判請求人等の承諾を要すると主張する。しかし、本件商標の右側「ALFREDO/VERSACE」は、現存するデザイナー「アルフレッド ヴェルサーチ」の氏名をそのまま表記したにすぎないものであり、同姓同名の他人の承諾を要するとされるのならともかく、名の異なる他人の承諾を要するとは解されない。

又、請求人は、本件商標は「ジャンニ・ヴェルサーチ」の著名な略称を含むと主張しているが、乙第2号証(PHONEDISC U.S.A.のデータベース<1995年版>より抽出)を見て戴ければ明らかな通り、「VERSACE」というイタリア系の姓をもつ人物は米国にも多数現存しており、とても「VERSACE」=「ジャンニ・ヴェルサーチ」と言える程の状況でないことは明らかである。

よって、これらの事情を勘案すれば、本件商標の登録出願に際し、審判請求人等の承諾は明らかに不要であり、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。

尚、乙第1号証のデータベースは、米国東部、西部の各住所リスト、各地区電話帳など8千3百万件から集められたものである。

(5)商標法第4条第1項第10号及び同第15号の主張に対する反論

請求人は、デザイナー「ジャンニ ヴェルサーチ(GIANNI VERSACE)」の氏名のみならず、「VERSACE」「ヴェルサーチ」の商標も又、本件商標の出願日(平成10年1月9日)以前に、既に取引者(需要者)間に広く認識されており、本件商標がその指定商品に使用された場合には、商品の出所につき混同が生ずると主張する。これに対して、被請求人は乙第3ないし第15号証を提出する。

(a)乙第3号証(イタリアに於ける判決文)

乙第3号証は、イタリアに於いて、請求人サイドが衣料品についての商標「ALFREDO VERSACE」の使用の差し止めを求めた訴訟の判決文である。一読すれば明らかな通り、該「差し止め命令」には全く根拠がなく無効である旨判示されているものである。即ち、この判決は、「GIANNI」や「ALFREDO」の本国イタリアに於いてさえ、「ALFREDO VERSACE」ブランドの商品と「GIANNI VERSACE」ブランドの商品は、出所混同を生ずる虞れがないという事実を示すものである。

(b)乙第4号証(アメリカ合衆国地方裁判所の仮処分命令)及び乙第5号証(アルフレッド ヴェルサーチの弁護士の書簡)

乙第4号証は、アメリカ合衆国に於いてなされた仮処分命令であるが、この仮処分命令は結果的に「アルフレッド ヴェルサーチ」が全ての商品に「Designed by Alfredo Versace」を使用できることを示すものである(乙第5号証の弁護士の書簡参照)。

即ち、この仮処分命令は、「アルフレッド ヴェルサーチ」に対し「VERSACE」の文字を含む商標の使用を一切禁じたものではなく、むしろ条件付きではあっても「ALFREDO VERSACE」の文字を含む商標を市場に於いて使用すること、つまり「GIANNI VERSACE」ブランドと併存することを認めたものである。

(c)乙第6号証(商品取扱店のりスト)、乙第7ないし第8号証(送り状)、乙第9ないし第14号証(写真)及び乙第15号証(アルフレッドヴェルサーチの弁護士の書簡)

乙第6ないし第14号証は、「Designed by Alfredo Versace」を附した商品が実際に米国に於いて固有ブランドの商品として販売されている事実を示す資料である。

乙第6号証は、「Designed,by Alfredo Verasce」を附した商品を販売している店舗のリストであり、乙第7,第8号証は、同リスト中の「1.ヒルトンホテル」「19.フォーマンズ」への送り状であり、乙第9ないし第14号証は、フォーマンズ(FORMANS)店に於いて「Designed by AIfredo Versace」の商品が陳列されている状況を示す写真のカラーコピーである。

又、乙第15号証は、「アルフレッド ヴェルサーチ」の弁護士が上記資料が真正なものであることを陳述した書簡である。

これら甲第3ないし第15号証を総合して勘案すれば、本件商標中の「ALFREDO/VERSACE」の文字は、米国に於いて使用が認められ、又、イタリアに於いても「GIANNI VERSACE」ブランドとの併存が許容されたものと実質的に同じであることが理解される。

よって、被請求人が本件商標を指定商品に使用しても、審判請求人等の業務に係る商品と混同が生ずる虞れかないことは明らかであり、本件商標は商標法第4条第1項第10号,同第15号に該当するものではない。

(6)商標法第4条第1項第11号の主張に対する反論

請求人は、本件商標下部の「VERSACE」は、上部の「ALFREDO」と切り離して、独立した商品の出所識別標識(商標)として機能すると主張する。

しかし、この主張は出願人・権利者である「アルフレッド ヴェルサーチ」が実在のファッションデザイナーであり、本件商標中の欧文字は視覚的に上下に分離されているとはいえ、その氏名を単に表記したにすぎないという事実を軽視した主張であり、機械的に過ぎるものである。

被請求人は、反証として「VALENTINO」(ヴァレンティノ)商標関連の4登録事例(乙第16ないし第19号証)を提出する。一見して明らかな通り、上記乙第16ないし第19号証商標はいずれもその態様中に「VALENTINO」の文字を有し、被服等の同一(類似)商品を指定商品とする商標である。

又、乙第17ないし第19号証の「VALENTINO GARAVANI」「MARIO VALENTINO」「VALENTINO ORLANDI」は、いずれも実在のデザイナー名を表すものであり、特に、乙第17号証の「VALENTINO GARAVAN1(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」は「インポートブランド(売上高)ランキング」でも常に上位にランキングされているブランドである。

即ち、本件「請求の理由」欄の考え方からすれば、二段態様の「valentino/orlandi」(乙第19号証)は勿論、乙第18号証の「MARIO VALENTINO」なども、周知・著名と解される乙第17号証商標の存在により拒絶・無効とされるべき商標と解さざるを得なくなるものである。

しかし実際には、権利者が異なるにも拘わらず、上記乙第18,19号証商標が乙第16,17号証商標と併存し、各々市場に於いて誤認混同を生ずることもなく使用されている事実からすると、実在するデザイナーの氏名を一連に表した本件商標右側の「ALFREDO/VERSACE」も又、これを分離して認識すべきではなく、常に一連一体に「アルフレッド ヴェルサーチ」とのみ称呼・観念されるものであることは明らかである。

よって、本件商標は、甲第1,2号証商標とは明らかに称呼・観念上非類似であり、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

(7)上記各理由により、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号及び同第15号に該当せず、審判請求人の主張が不当なものであることは明確である。従って、本件商標は商標法第46条第1項の無効理由を有しないものである。

5 当審の判断

(1)請求人商標の著名性について

請求人は、本件商標の無効理由の一つとして、請求人に係る「VERSACE」(ヴェルサーチ)商標の著名性を理由に本件商標の登録の商標法第4条第1項第15号違反を述べているので、この主張の当否について、判断する。

請求人「ジャンニ ヴェルサーチ エスピーエイ」(以下、「請求人会社」という。)は、イタリア国 ミラノ在住の法人と認められるところ、その提出に係る甲各号証によれば、以下の各点を認めることができる。

(ア)株式会社洋泉社1991年発行キーワード事典ファッション(甲第17号証),「ジャンニ・ヴェルサーチ」の項によれば、「イタリア、ミラノファッション界の大御所ともいえるジャンニ・ヴェルサーチは、1946年南イタリアのカラブリア生れ。ミラノで育つ。ファッション関係の仕事をしていた母の影響で幼い頃からデザイナーとしての勉強をしていた彼が独立した店を持ったのは79年のことだ。以来、完璧ともいえるデザインとカッティングで、たちまちミラノを代表するデザイナーとなった。・・・」との記述が認められる。

(イ)株式会社織部企画1990年発行新ファッションビジネス基礎用語辞典(甲第18号証),「ジャンニ・ヴェルサーチ」(Gianni Versace)の項によれば、「1946〜,・・・78年<ジャンニ・ヴェルサーチ>として、初のコレクションをミラノで発表。・・・女性美を表現するテクニックは現代イタリア・モード界の第一人者に数えられ、・・・オペラやバレエ(モーリス・ベジャール作品他)の舞台衣裳も手がける。・・・」との記述が認められる。

(ウ)株式会社研究社1990年発行英和商品名辞典(甲第19号証),「Versace」(ヴェルサーチ)又は「Gianni Versace」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「イタリアMilanoのデザイナー、Gianni Versace(1946−)のデザインした衣料品、靴など、そのメーカー(1978年創業)Milano(1979年開店)・Romaにある直営店。・・・1978年に独立し、自分の名でコレクションを発表、元来婦人服専門だったが、1978年以降紳士物カジュアルウエア・皮革衣料にも領域を拡げた。ベルト、靴なども手がけている。香水Gianni Versaceを1982年に発表(男性用香水は1984年)、・・・1988年より腕時計をデザイン・・・」との記述内容が認められる。

(エ)文化出版局1999年発行ファッション辞典(甲第20号証),「ヴェルサーチ,ジャンニ」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「・・・力強くセクシーでゴージャスな作風。一目でそれとわかる強烈な色彩のプリントとシャープなカットが特徴。’89年よりパリでオートクチュールも発表。マイアミで射殺され、妹のドナテッラが後継。」とする記述が認められる。

(オ)繊研新聞の1991(平成3年)年9月9日から同9月14日にかけて連載された「軌跡」、「ジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパンの10年」と題する特集記事(甲第21号証ないし甲第26号証)によれば、「イタリアを代表するデザイナーブランド『ジャンニ・ヴェルサーチ』を展開しているジャンニ・ヴェルサーチ・ジャパンが今年十周年を迎えた。設立されたのは1981年7月である」、「売上高の推移は86年度が19億5千万円、87年度27億8千万円、88年度34億9千万円、89年度54億4千万円、90年度77億3千万円であった」、「直営店は、1981年9月に高島屋大阪店に25平米の店を出したのが第一号。続いて、高島屋京都店(82年3月)、サンローゼ赤坂店(同9月)と出店していき、販路獲得の突破口にしていった」、「同社の営業の柱になってきたのは24店舗の直営店網だ・・・」等々の記事解説が認められる。

同じく、1991年1月8日付繊研新聞(甲第28号証)によれば、「伊ヴェルサーチ・グループ」、「日本市場は合弁3社体制に」、「中核はヴェルサーチ・ジャパン」、「3月にヴェーザ・ジャパン設立」とする記事見出しの下、第一面のトップ記事として取り上げられたことが認められ、同じく、1991年2月12日付及び同5月13日付繊研新聞(甲第29号証、甲第30号証)によれば、「ヴェルサーチ社長」(サント・ヴェルサーチ社長)に係る申立人会社の事業運営に係る談話及び「ヴェルサーチスポーツ」なるブランドを紹介する記事であって、申立人会社に係る国内における事業展開の状況を報ずる記述が認められる。

さらに、1992年1月14日付繊研新聞(甲第32号証)によれば、ミラノで開催された92年秋冬メンズコレクションに「ヴェルサーチ」も他のいわゆるファッションメーカーとともに出品した旨を報ずる記事、また、1992年1月24日付繊研新聞(甲第33号証)によれば、福岡市在の輸入ブランド品を主力とする婦人服専門店において、「ヴェルサーチ」ブランドが40%増となったことを報道する記事、或いは、1992年1月27日付繊研新聞(甲第34号証)によれば、ヴェルサーチ社は91年春夏から92年にかけてメンズ重衣料主体の「V2」を発売した旨を報ずる記事、さらに、1992年7月2日付繊研新聞(甲第35号証)によれば、ヴェルサーチのメンズ新ブランド「V2」を紹介する報道記事が認められる。

(カ)株式会社講談社発行世界の一流品大図鑑1983年版(甲第38号証)及び同1985年版(甲第39号証)、「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「当年34歳。イタリアのファッション関係者、ジャーナリストの間でいちばんもてはやされているデザイナーのひとりです。・・・」、「卓越したセンスのよさと現代感覚は定評あるところ。・・・ヴェルサーチ独特のカラーバランスが生かされています。」等々と解説され、また、別項において、「輸入元、三井物産(株)」、「発売元、(株)ジャンニ・ヴェルサーチジャパン」なる記載が認められる。

また、同じく、世界の一流品大図鑑1989年版ないし同1998年版(甲第40号証ないし甲第49号証)においても、他のファッションメーカーと並んで「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)に係る婦人服、紳士服等が紹介されていて、それら製品が大阪、東京に拠点を置く前記販売会社を通じて国内各地の主要都市の百貨店等に向けて供給されている状況が認められる。

(キ)世界文化社昭和58年発行家庭画報編「世界の特選品’84・LADIES’」(甲第50号証)、「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「イタリアンコレクションならではの色づかい、ヴェルサーチ35歳、イタリアの名高いデザイナーのなかでも、その若さを生かした大胆なカッティング、色づかいは常に注目を集めています」、「シャープな女性らしさを感じさせてくれる・・・ヴェルサーチが今後の課題とするシンプル化を象徴しています。」等々と解説され、また、別項において、「輸入元三井物産(株)、発売元(株)ジャンニ・ヴェルサーチジャパン」とあり、同時に、「販売店」が国内各地の百貨店ほかブランド品関連の衣料品店とする状況が認められる。

同じく、世界の特選品(別冊家庭画報)「’90年版」、同「’93年版」、同「’94年版」及び同「’95年版」(甲第51号証ないし甲第54号証)の「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「’90にひときわ輝きを放つ素敵でエクセレントなブランド10を特集」とする記事見出しの下、「ミラノの知性派の代表デザイナーとして・・・」、「イタリアの粋と知性を合わせて意欲的に展開する美の秘密は・・・」等々の解説と共に、そのデザインに係る男性用、女性用の衣服が紹介されていて、さらに別項において、取扱いに係る商品がレディスバッグほか革製小物、子供服、時計、スカーフ等の雑貨類にも及ぶこと、そして、前記同様に「輸入元」「発売元」及び「販売店」の紹介記事が認められる。

(ク)株式会社講談社発行男の一流品大図鑑1981年版(甲第55号証)、「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項においても、「30歳にしてイタリア・モード界を背負うリーダーの一人となったヴェルサーチ」とする紹介記事とともに、そのデザイン・素材の特徴等、前記同様の記述解説が認められる。同じく、男の一流品大図鑑「’92年版」、同「’93年版」、同「’95年版」及び同「’97年版」(甲第56号証ないし甲第59号証)の「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、紳士服、コート、ブルゾン、セーター、ネクタイ等の衣料品のほか、手袋、ベルト、キーケース及び革小物等雑貨品も扱っていることが認められる。そして、前記同様に「輸入元」「発売元」及び「販売店」の紹介記事が認められる。

(ケ)日本交通公社出版事業局1988年12月発行「ヨーロッパの一流品’89EUROPIAN BEST」及び同「’90EUROPIAN BEST」(甲第60号証、甲第61号証)、「GIANNI VERSACE」(ジャンニ・ヴェルサーチ)の項によれば、「世界的なリーダーシップをとるデザイナーとして常に新しさをアピールし続けるヴェルサーチ。・・・’80年、ゴールデンアイ賞を受賞。・・・」「・・・ジャンニ・ヴェルは・・・世界のファッション・リーダーとして活躍している。・・・優れたデザイナーに贈られるゴールデン・アイ賞をはじめとして、数々の栄誉ある賞が与えられている」旨解説されていて、取扱いに係る商品を紳士・婦人服とするほか、前記同様に「輸入元」「発売元」の紹介記事が認められる。

(コ)請求人会社は、わが国において早い時期から「GIANNI VERSACE」及び「ヴェルサーチ/VERSACE」商標について、旧類別(平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令第1条に基づく商品の区分)第17類「被服、布製身回品、寝具類」及び同第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品とする商標登録を取得し(商標登録第1471328号)、その後もこれら「GIANNI VERSACE」又は「ヴェルサーチ/VERSACE」標章を主要部とする関連商標について衣料品関連の商品分野において商標登録を取得し、その販路確保を図っていた状況が認められる(甲第1号証ないし甲第9号証)。

(サ)上記のほか、本件とは別件の無効審判事件、すなわち、当事者及び事件の内容を全く同一とし本件審理の心証形成においてその斟酌すべき要を認める無効審判事件(平成10年審判第35183号)において、請求人(本件請求人に同じ)が証拠として提出した成立に争いのない1991(平成3年)年8月4日付日本繊維新聞及び同年9月5日付繊研新聞(同事件の甲第48号証,甲第49号証)によれば、「インポートブランド売上高ランキング」又は「インポートブランドランキング」として、「ジャンニ・ヴェルサーチ」に係る製品売上高がルイ・ビトン、シャネル、ハンティング・ワールドに次いで第4位であったことが認められる(因みに、同記事コピーのリスト上には被請求人に係る事業者名ないし当該ブランド名は見出すことができない。)。

以上、認定の事実を総合するに、「GIANNI VERSACE」、「Gianni Versace」(ジャンニ・ヴェルサーチ)、「VERSACE」又は「Versace」(ヴェルサーチ)の文字よりなる標章(以下、これら標章を一括して「VERSACE商標」という。)は、イタリアの服飾デザイナーとして世界的に知られるGianni Versace氏の氏名又はその著名な略称として、また、同氏に係るいわゆるデザイナーズブランドを表彰し或いは同氏の創立に係り現在その親族により受け継がれる請求人会社ほか国内の関連会社等その事業全体を表彰するいわば代表的出所標識として、1980年(昭和55年)頃よりすでにわが国の取引者、需要者一般において広く認識せられていたものと認められる。

そして、同氏又は請求人会社に係る衣料品を中心とするいわゆるファッション関連各商品は、国内輸入会社(三井物産株式会社)、国内販売会社(株式会社ジャンニ・ヴェルサーチ ジャパン)又は国内各地の直営店、販売店を通じて、当時より現在に至るまでの間、営々として消費者の需要に供されてきた状況が認められる。

ところで、前記認定のGianni Versace氏がその後1997年7月、米国マイアミビーチにて不遇の死を遂げたことはすでに当庁において顕著な事実であるが、その後の新聞報道その他の客観状勢よりすれば、同氏に係る事業運営は、兄弟、遺族等により受け継がれ、引き続きその取扱いに係る衣料品等は、以前と同様に輸入、販売されていることは顕著な事実であって(前出「世界の一流品大図鑑’98」等より)、該ブランドが依然としてわが国ファッション界の一角を占める輸入ブランドであるとする状況に特段の変化はなく、その知名度、市場シェア等がその後急速に衰えたとする事情は些かも見出すことはできない。

(2)混同を生ずるおそれについて

本件商標は、その構成後掲に示すとおり、黒く塗りつぶした円図形内に頭部を中心に左右対称型の横向き彫像様図形を白抜きの形象と黒色の陰影により表出し、同図形の上・下部に白抜きの「ALFREDO」、「VERSACE」の各欧文字をそれぞれ円弧状に表し、さらに、これら円図形を囲むように、装飾的図柄による肉太の円輪を描いてなるところ、該図形部分は、独創的な図柄よりなるものであって、直ちに特定の観念・称呼を生ぜしめるものでなく、また、意味上において文字と図形の全体を常に一体のものとして把握しなければならないような特段の事情はないから、かかる場合、本件商標に接する取引者・需要者は、構成中の親しみやすく馴染み易い欧文字部分に注意を惹かれ、同文字部分をもって強く印象づけられるものとみるのが相当である。

そして、本件商標は、その指定商品を洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,靴下,スカーフ,手袋,ネクタイ,帽子等の衣料品ほかの商品を指定商品とすること前述のとおりである。

しかして、商標自体とそのほか本件商標の指定商品の分野における需要者一般の注意力、当該他人の使用にかかる商標の著名性及び両商品間の関連性等、取引の実情に照らして総合判断するに、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者は、前記認定のVERSACE商標の著名性並びに商品分野を共通にする事情よりして、構成中の「VERSACE」の文字部分に注意を惹かれ強く印象づけられるとともに、容易にVERSACE商標を想起し又はその事業主体に係る商品等と関連づけて認識し把握するとみるのが相当である。

してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ないから、その登録は商標法第4条第1項第15号に違反してされたものというべく、この点を述べる請求人の主張は理由あるものといわなければならない。

(3)被請求人の主張について

被請求人は、「アルフレッド・ヴェルサーチ」は製品・材料・細工品・包装(品)のファッション・デザイナーであり、本件商標右側の「ALFREDO/VERSACE」は、被請求人を表すブランドとして米国等に於いて長年使用されてきた商標であり、また、被請求人は、デザイナー「ジャンニ・ヴェルサーチ」とは父親同志が又従兄弟の関係にあり(乙第1号証)、被請求人の米国等に於けるデザイナーとしての活動や本件商標の使用等に関しては、「ジャンニ・ヴェルサーチ」自身が認知し、また黙認してきた経緯がある旨主張する。

しかしながら、被請求人(「ALFREDO VERSACE」)がその名称をもって我が国の需要者一般に広く認識せられているのであれば格別、かかる事情は全く見出せないから、この点を述べる被請求人の主張は俄に首肯し難いものであって、採用の限りでない。そして、我が国における商標登録の適否は、専ら我が国商標法の律するところであって、商標を使用する者の業務上の信用維持と需要者の利益保護等を主眼とする我が国商標法にあって、同法第4条第1項第15号の法条の趣旨はその法目的を具現化すべく他人のいわゆる著名商標と紛らわしく或いはその出所について混同を生ずるおそれのある商標の登録を排除することにあると解するのが相当であって、被請求人の述べる米国事情又は伊国事情は本件の審理判断に影響を及ぼし得るものでなく、前記法目的に照らし本件は前記認定・判断を相当とするから、その主張は採用することができない。

また、被請求人は、伊国における請求人間との「ALFREDOVERSACE」商標の使用差止を巡る係争事件の判決文であるとして乙第3号証を提出し、本国イタリアにおいてさえ、「ALFREDO VERSACE」ブランドの商品と「GIANNI VERSACE」ブランドの商品とが出所混同を生ずる虞れがない旨判示されている旨述べている。

しかし、他国の商標事情が我が国における商標登録の可否判断に直接関係するものでないこと前述したとおりであって、その主張は本件の審理判断に影響を及ぼし得るものでないから、採用の限りでない。

さらに、被請求人は、乙第4号証(アメリカ合衆国地方裁判所の仮処分命令)、乙第5号証(アルフレッドヴェルサーチの弁護士の書簡)、乙第6号証(商品取扱店のりスト)、乙第7号証ないし乙第8号証(送り状)、乙第9号証ないし乙第14号証(写真)及び乙第15号証(アルフレッドヴェルサーチの弁護士の書簡)を挙げ、米国においてアルフレッドヴェルサーチが全ての商品に「Designed by Alfredo Versace」として使用できることことが許容されており、また、同商標に係る商品が実際に販売されているものであって、この事情は伊国同様であるから、被請求人が本件商標を指定商品に使用しても、請求人等の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはない旨主張する。

しかしながら、米国において「Designed,by Alfredo Verasce」商標に係る商品が当該店舗において販売されているからといって、直ちに我が国において本件商標の商標登録を容認し得るものでないこと前示のとおりであって、我が国における被請求人商品の流通事情ないしはその周知事情に言及せず、また、仮にそうであるとすれば、証拠に基づき客観的に明らかにすべきであるにも拘わらず、その事情について全く触れないまま、米国又は伊国事情のみに固執して述べる被請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。その他、被請求人の主張を認めるに足りる証拠はない。

(4)結語

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は、同法第46条第1項により、無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。