結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35797号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4115181号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり「ICHANELI」の欧文字を横書きした構成よりなり、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品として平成8年9月3日に登録出願され、同10年2月20日に設定登録されたものである。
結論同旨の審決を求める。
(1)請求人の引用する商標(甲第2号証ないし甲第10号証)
(イ)登録第785680号商標(以下「引用A商標」という。)は、別掲のとおり「CHANEL」の欧文字を横書きした構成よりなり、第21類「装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝玉及びその模造品,造花,化粧用具」を指定商品として、昭和40年11月2日登録出願、同43年7月10日設定登録されたものである。
(ロ)登録第860151号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲のとおり「CHANEL」の欧文字を横書きした構成よりなり、第17類「被服(運動用特殊衣服を除く),布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和40年11月2日登録出願、同45年6月12日設定登録されたものである。
(ハ)登録第1218150号商標(以下「引用C商標」という。)は、別掲のとおり「CHANEL」の欧文字を横書きした構成よりなり、第4類「せつけん類(薬剤に属するものを除く),歯みがき,化粧品(薬剤に属するものを除く),香料類」を指定商品として、昭和45年9月18日登録出願、同51年9月13日設定登録されたものである。
(ニ)登録第1458925号商標(以下「引用D商標」という。)は、別掲のとおり「CHANEL」の欧文字を横書きした構成よりなり、第23類「時計,眼鏡,これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和47年4月20日登録出願、同56年4月30日設定登録されたものである。
(ホ)登録第2153054号商標(以下「引用E商標」という。)は、別掲のとおり「CHANEL」の欧文字を横書きした構成よりなり、第27類「たばこ,喫煙用具,マッチ」を指定商品として、昭和57年12月24日登録出願、平成1年7月31日設定登録されたものである。
(ヘ)登録第1824054号商標(以下「引用F商標」という。)は、別掲のとおり「CHANEL」の欧文字を横書きした構成よりなり、第22類「はき物(運動用特殊靴を除く),かさ,つえ,これ等の部品及び附属品」を指定商品として、昭和58年1月25日登録出願、同60年11月29日設定登録されたものである。
(ト)登録第2581618号商標(以下「引用G商標」という。)は、別掲のとおり「CHANEL」の欧文字を横書きした構成よりなり、第25類「紙類,文房具類」を指定商品として、昭和57年12月24日登録出願、平成5年9月30日設定登録されたものである。
(チ)登録第3009777号商標(以下「引用H商標」という。)は、別掲のとおり「CHANEL」の欧文字を横書きした構成よりなり、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引き防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,ふきん,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,シャワーカーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,布製ラベル,ビリヤードクロス,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」を指定商品として、平成4年4月20日登録出願、同6年11月30日設定登録されたものである。
(リ)登録第3009778号商標(以下「引用I商標」という。)は、別掲のとおり「CHANEL」の欧文字を横書きした構成よりなり、第26類「編レース生地,刺しゅうレース生地,組みひも,テープ,房類,リボン,ボタン類,針類,編み棒,裁縫箱,裁縫用へら,裁縫用指抜き,針刺し,針箱(貴金属製のものを除く。),被服用はとめ,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,腕止め,帯留め,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアーカラー(電気式のものを除く。),靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具,造花,漁網製作用杼」を指定商品として、平成4年4月20日登録出願、同6年11月30日設定登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、請求人の取り扱い業務に係る商品を表示するものとして著名な引用A商標ないし引用I商標(甲第2号証ないし甲第10号証)の語頭及び語尾部に、単に「I」の文字を付加したにすぎない類似の商標であって、その実際の使用態様は著名な「CHANEL」を容易に想起させるものであるから、著名な商標「CHANEL」に化体した業務上の信用にフリーライドする目的をもって使用するものというべきである。
(3)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、著名な引用A商標ないし引用I商標の語頭及び語尾部に、単に「I」の文字を付加したにすぎず、またその実際の使用態様からも明らかに「CHANEL」の持つ著名性にフリーライドする社会一般道徳に反する商標といえるものであって、かつ、国際信義にも反する商標であるというべきである。
(4)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、請求人が使用する商標として著名な引用A商標(甲第2号証)と類似する商標であり、また同一又は類似の指定商品を含むものであるから、本件商標がその指定商品に使用された場合、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
(5)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、引用A商標(甲第2号証)と類似する商標であり、また同一又は類似の指定商品を含むものであるから、本件商標がその指定商品に使用された場合、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
(6)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、請求人が使用する商標として著名な引用A商標ないし引用I商標と全く同一の文字をその構成中に有するものであるから、本件商標がその指定商品に使用されるときには、これに接する取引者・需要者は、あたかも請求人又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品、またはそのシリーズ商品であるかのごとく認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
(7)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号、同第7号、同第10号、同第11号、同第15号に違反して登録されたものである。
したがって、同法第46条の規定により、その登録を無効とすべきものである。
請求人は、審判請求書及び弁駁書に記載のとおり、甲第1号証ないし甲第82号証(枝番号を含む。)を提出した。
「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める。
(1)請求人は、本件商標は「CHANEL」の語頭及び語尾部に単に「I」の文字を付加したにすぎないと主張しているが、本件商標は各文字が同書、同大、等間隔に一連にまとまりよく表示されている。
文字の種類や大きさが異なったり、途中に間隔を有する等の事情があれば、当然ある部分を抽出することも考えられるが、本件商標の構成から特定の文字部分のみを抽出するのは、いかにも機械的で不自然である。
このように、本件商標は一体不可分の商標であり、「CHANEL」を想起させるようなものではない。
本件商標が、上記のような一体不可分の商標であることは、被請求人「イカネリ コーポレーション」の名称を表示してなるものであることからも明らかである。
被請求人の上記主張については、平成10年異議第91281号の異議決定(乙第1号証)でも、「本件商標の構成各文字は、同書、同大、等間隔に一連にまとまりよく書されてなるものであり、構成中『CHANEL』の文字が常に独立して認識されることはないものとみるのが相当である。本件商標は、上記のとおり、まとまりよく一体的に表してなり、殊更、構成中の『CHANEL』の文字のみを分離して看取しなければならない特段の事情も見当たらない。」と判断されている。
(2)また、上記の主張は、平成6年(行ケ)第157号審決取消請求事件判決(乙第2号証)が示すように、商標中の一部が著名であったとしても、「構成各文字が外観上まとまりよく一体的に表現されていて、しかも全体をもって称呼してもよどみなく一連に称呼し得ることや、結合商標の一部の文字部分の間に特に間隔があるわけでもなく、書体の大きさや表示態様を異にするものでもないような商標は、構成全体をもって一体不可分の造語よりなるものと認識し把握されるものとみるのが相当である。」と判断している。
(3)被請求人は、本件商標のように、将来問題となりそうな商標を使用するときには、必ず専門官庁である特許庁の判断を仰いでから使用するようにしている。
本件商標は、審査官及び異議申立てに係る審判官が何れも、問題ないとして、その登録を認めているものである。
本件商標は、これが異議申立てと変わりばえしない理由や証拠により無効とされることがあれば、特許庁はその判断についての一貫性が全くなくなるばかりか、特許庁の審査や異議申立ての審判は、全く尊重されなくなってしまう。
(4)むすび
以上に述べた理由により、本件商標は、一体不可分の商標であり、特定の文字部分を分離して看取されることを前提として、商標法第4条第1項第19号、同第7号、同第10号、同第11号、同第15号の何れかに該当するとした主張は妥当なものではない。
被請求人は、答弁書に記載のとおり乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)甲第12号証(主婦と生活社、1978年刊、「世界の逸品百科事典」)、甲第13号証(サンケイマーケティング、1982年刊、「’82ザ・ブランド」)及び甲第15号証(読売新聞社、1986年4月17日発行、「The 一流品」)によれば、以下の事実が認められる。
「CHANEL」は、フランスの服飾デザイナー「ガブリエル・シャネル」(通称「ココ」)が創業した「シャネル社」の商標。
ガブリエル・シャネルは、1883年フランスのソミュール生まれ。パリに出てコスチューム・デザインの仕事をはじめ、デザイナーとして認められるようになった。1910年にはパリ・カンボン通りに初めて店を開いた。
以来、当時としては革命的ともいえる機能性を重視したシンプルなデザインで独自のスタイルを築き上げている。それまで紳士用の素材であったジャージーを使ってドレスを仕立て、一躍脚光を浴びた。また、黒いドレスは喪服とされていたが黒を基調としたドレスを日常のものにしたり、カーディガン風ジャケットとスカートの組み合わせのシャネル・スーツを発表し、ひとつの生活様式といわれるほどになった。
さらに、香水事業に進出し、1924年に「CHANEL No.5」を市場化した。
(2)そして、前記甲第12号証、甲第13号証及び甲第15号証のほか、甲第14号証(株式会社世界文化社、昭和58年11月1日発行、「世界の特選品’84」)、甲第16号証(株式会社婦人画報社、1989年1月1日発行、「25ansヴァンサンカン」)、によれば、引用商標は「婦人用衣料品、バッグ、靴、ネクタイ、ベルト、時計、アクセサリー、香水、化粧品」等の商品に使用されているものであることが認められる。
以上によれば、引用商標は遅くとも本件商標の出願時には、前記の商品について使用された結果、取引者、需要者間において著名商標となっていたものと認められる。
本件商標は、別掲のとおり、「ICHANELI」の欧文字を横書きしてなり、アルファベット8文字で構成されているものである。そして、これはわが国において外国語として何らかの意味を持つものとして親しまれているものとは認められない。そうすると、わが国における最も親しまれた外国語の英語読み風にしたがえば、これよりは「イシャネリ」又は「イカネリ」の称呼を生ずるものと認められる。しかし、本件商標から「イカネリ」又は「イシャネリ」の称呼を生じても、これらの称呼もまた、特定の意味を持つものとは認められない。
一方、引用商標は「CHANEL」の文字よりなるものであり、アルファベット6文字で構成され、この文字全体で何らかの意味を有するものではない。
本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標は、引用商標と同一の綴りに、冒頭及び末尾において「I」の文字を付加してなるものである。
(1)前2で認定のとおり、本件商標は全体の文字が一体となって特定の意味を構成するものでなく、また、本件商標から「イシャネリ」又は「イカネリ」の称呼を生じても、「イシャネリ」又は「イカネリ」もまた、特定の意味を持つものとは認められない。
(2)本件商標の指定商品は「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ」等の商品であり、一方、引用商標に係る商品も「婦人用衣料品、バッグ、靴、ネクタイ、ベルト、時計、アクセサリー、香水、化粧品」等の商品であり、「かばん類」については同一又は類似する商品であるほか、いずれもファッションに関係する商品である。
したがって、本件商標に係る指定商品と引用商標の商品との間には高い関連性がある。
(3)そうすると、本件商標の出願時において本件商標が指定商品に使用された場合には、本件商標に接した取引者、需要者は、本件商標全体としては特定の意味を把握できないこと、本件商標を構成する文字の最初と最後に単純な形状の「I」が同じように配置されていること、引用商標が著名であること、及び本件商標が付された商品と引用商標に係る商品との間に高い関連性があることから、本件商標に含まれる「CHANEL」の文字を認識し、本件商標を、引用商標の両側に飾りが付されているにすぎないものである等と誤認して、その結果、請求人の業務に係る商品との間に出所の混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
また、本件商標の商標登録出願後、登録査定日(平成9年11月28日)までの間に、前記出所の混同を生ずるおそれが消滅するような事情は窺えないから、上記登録査定日においても前記出所の混同が生ずるおそれは継続していたものと認められる。
(4)被請求人は、東京高等裁判所の判決を引用し、本件商標と「CHANEL」の商標との関係も当該判決と同じように判断されるべきであると述べている。
しかし、引用された判決は、対象とする商標の構成もそれぞれの商品の関連性も異なるものであり、本件商標とは事案を異にするものである。
(5)被請求人は、「本件商標は、審査官及び異議申立ての審判官が何れも、問題ないとして、本件商標の登録を認めているものであり、また、本件商標が、異議申立てと変わりばえしない理由や証拠により無効とされることがあれば、特許庁はその判断についての一貫性が全くなくなる。」と主張する。
しかし、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正をはかるために、何人も申立てできる登録異議申立制度と、特許庁が行った商標登録の処分の是非を巡る当事者間の争いを解決することを目的とし、利害関係人が請求する無効審判制度とは、それぞれの目的において異なり、審理の方法も原則異なるものであるから、商標登録について異議申立てがなされ、商標登録の維持決定がされた商標登録を、無効審判において無効とされたとしてもやむを得ないものである。この点に関する被請求人の主張は採用できない。
(6)むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号、同第7号、同第10号、同第11号に違反して登録されたものかどうか判断するまでもなく、同第15号に違反して登録されたものである。
よって、本件審判請求については、商標法第46条第1項の規定により、本件商標の商標登録を無効にすることとし、審判費用の負担について商標法第56条第1項、特許法第169条第2項、民事訴訟法第61条を適用して、結論のとおり審決する。
(審理終結の日 平成12年12月22日)
本件商標
引用A商標及び引用B商標
引用C商標及び引用D商標
引用E商標ないし引用G商標
引用H商標及び引用I商標
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