結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35637号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第3370582号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成6年10月25日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として同10年10月23日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録の無効の理由として引用する登録第693377号商標(以下「引用商標A」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和39年7月9日に登録出願、第16類「織物、編物、その他本類に属する商品」を指定商品として同40年12月21日に設定登録されたものである。同じく登録第701872号商標(以下「引用商標B」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、昭和39年7月9日に登録出願、第17類「被服、その他本類に属する商品」を指定商品として同41年3月18日に設定登録されたものである。同じく登録第4000550号商標(以下「引用商標C」という。)は、「BASIC」の文字を横書きしてなり、平成5年11月30日に登録出願、第25類「婦人用の洋服,婦人用のコート,婦人用のセーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,婦人用のエプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,婦人用のずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」を指定商品として平成9年5月9日に設定登録されたものである。同じく登録第4009636号商標(以下「引用商標D」という。)は、「Basic」の文字を横書きしてなり、平成5年11月30日に登録出願、第25類「セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,スポーツジャケット,スウェットスーツ」を指定商品として平成9年6月6日に設定登録されたものである。 そして、これらの登録商標(以下、まとめて「引用商標」ともいう。)は、いずれも現に有効に存続しているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第6号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)本件商標は、引用商標と類似し、その指定商品も同一である。
本件商標は、豹とおぼしき図形の上に多少修飾されてはいるがBASICとしか読めない文字を横書きにし、その下に小さくby KRIZIAと書してなる商標であり、第25類の被服を指定商品とするものである。本件商標を仔細に調べると、豹とおぼしき図形の前足の一つはBASICの文字のBの文字に引っかけてあり、Sの文字は後足のひとつの上に置いてあり、そして尾はCの文字に引っかけてある。このようにして、BASICなる文字と豹とを一体とする工夫がみられるものの、通常の需要者や取引者が一見しただけでは、豹の図を背景としてBASICという文字が記載されているとしか読み取れないものである。豹の図形の下に書かれているby KRIZIAという文字は、豹の斑点と紛らわしく、また豹の後足の延長とも見え、しっかりと読み取るには通常の取引きの実状からは期待できない程に注意深く商標を観察する必要があると思われる。
上記のような商標を取引きの実状に照らしてその外観、称呼、及び観念が需要者らにどのように記憶されるか、以下に検討する。まず、豹とBASICに比べて、余りに小さくかつ斑点あるいは後足に紛らわしいby KRIZIAの文字を瞬時に読み取る取引者、需要者は多くないと考えても大きな誤りを生ずることはないであろう。豹とBASICの間には観念的にも称呼的にも関連性は認められないし、強いて関連付けるための「豹BASIC」あるいは「BASIC豹」という文字が商標中に記載してあればまだしも、何も関連付けるものがない以上、豹とBASICを統合する単一の観念は存在しない。
本件商標を少し離して見ると、「BASIC」は多少修飾して書かれてあるものの極めて太い文字で黒々と書かれており、一方、「豹」の図形の方は太い線は一切使わず、全体として薄く描かれていることが明瞭に判別できる。したがって、需要者・取引者が本件商標を見たとき、「豹」の図形であると記憶する者と「BASIC」という文字の商標であると記憶する者とが相半ばするのではないかと思われる。後者の割合は、後述するように、既に被服に付して「BASIC」という引用商標が長年広く使用されているという取引きの実状によりさらに強められるであろう。
そして、需要者が商品購入のため、商標を時と所を変えて離隔的に観察する場合、商標のすべてを記憶して他の商標との類否を判断することは考えられず、むしろその商標の最も印象の強い部分に基づく記憶により類否判断をすることになることは経験則の教えるところである。
後述するように、被服業界においてBASICという引用商標が既に広く使用されている事実を考慮するならば、被服の需要者や取引者がBASICという商標の付された被服についての記憶を有している場合が皆無ではないと考えても誤りはないであろう。そうであるとすれば、このような需要者・取引者は本件商標を見たとき、豹よりもむしろ記憶に残っているBASICという文字に印象付けられ、BASICの商標を付した被服の出所と同一の出所あるいは少なくとも関連した業者の出所から出た被服であると混同するであろう。
(2) ここで、引用商標の取引業界における実状を述べる。
「BASIC」という言葉は、どのような英和辞典にも載っているように、普通に使用される「基本的な」という意味の重要な単語であり、したがって如何なる分野でも一般に使用されており、被服業界でも例外ではない。「basic dress」や「basic color」などの用語は被服業界でも日常使用されている。
しかし、日常用いられる用語であっても商標として登録され、取引業界において商標として、すなわち識別標識として使用されているものが無数にあることは今更いうまでもないことである。
引用商標A及び引用商標Bは、既に昭和40年及び同41年に登録されて以来、被服、織物などに使用され、商標として流通業界にしっかりと根づいている紛れもない「商標」である。これを日常用語であるから識別力を有しないなどということは商標権者として請求人は絶対に認めることはできない。そこで、以下に請求人が所有する引用商標の使用の経緯及び実状を明らかにする。
(イ)引用商標A及び引用商標Bは、現商標権者の子会社であった株式会社ベイシックが昭和40年12月21日及び同41年3月18日に商標登録を受け、織物、被服などを指定商品として同60年まで使用してきたものである。ついで該登録商標は親会社である井上定株式会社に譲渡され、今日に至っている。
(ロ)昭和60年11月には、株式会社西友に対しその類似商標「THE BASICS」について使用権を設定している。
(ハ)平成1年11月には、株式会社西友に対しその類似商標「THE BASICS」について使用権を設定している。
(ニ)平成4年12月には、類似商標である商標登録第2404292号商標「THE BASICS」について、株式会社西友に対し専用使用権を設定している。
(ホ)平成5年10月には、引用商標Bについて、株式会社サンエー・インターナショナルに対し、類似商標の専用使用権を設定している。
(ヘ)平成9年9月には、引用商標について、株式会社サンエー・インターナショナルに対し、類似商標の専用使用権を設定している。
(ト)平成5年11月には、ベーシック マーチャンダイズ エス.アール.エル(イタリア国)に対し、引用商標Bの類似商標「Basic」についての使用権の設定契約を行っている。
(チ)平成9年11月には、引用商標Dについて、カッパ イタリア エス.ピー.エイ(旧名称、ベーシックイタリア エス.ピー.エイ)に対し、専用使用権を設定している。
上記のように、被服業界における多くの企業は請求人の所有する引用商標に対し、商標、すなわち、識別標識としての価値を認め、次から次へとその使用の許諾を求めているのである。
(3) 次に、上記の使用権者らがどのような態様で商標「BASIC」を使用しているかについて説明する。
上記のうち、株式会社サンエー・インターナショナルは、使用する際、同社が所有する登録商標「NATURAL BEAUTY」という商標と「BASIC」という商標を通常2段に分けて記載した商標を使用している。このとき「BASIC」のみを赤色とし他の文字は黒色にする場合もある(甲第4号証の3及び4)。また、「NATURAL BEAUTY」と「BASIC」を続けて1段にして使用する場合もある(甲第4号証の6及び7)。さらに、場合によっては「ナチュラルビューティーベーシック」と縦書き又は横書きにして使用する場合もある(甲第4号証の8又は10)。
一方、カッパ イタリア エス.ピー.エイは、「ペリカンの図形」と「Basic」の文字とを併記したものを商標使用の1態様としている。この「ペリカン+Basic」の商標はカッパ イタリア エス.ピー.エイ社がイタリアにおいて所有する登録商標であり、同社のレターヘッドにも使用されている(甲第3号証の10及び11)。
上記のように、株式会社サンエー・インターナショナルは、自己の持つ登録商標と組み合わせて引用商標を使用する場合にも請求人に対し使用許諾を求めた後使用しているのであり、また、カッパ イタリア エス.ピー.エイも、イタリアにおいて所有する登録商標「ペリカン+Basic」をわが国において使用するに際し、請求人の引用商標の使用許諾を求めた後使用しているのである。これが被服業界における引用商標の使用の実態である。
これに反し、本件商標の権利者は、引用商標に「豹の図形」を組み合わせることにより、敢えて引用商標と非類似であると強弁するものであって、このような商標の登録を認めることは取引秩序の破壊につながりかねないものというべきである。
以上の説明から明らかなように、引用商標は、単なる日常用語のBASICではなく、取引業界で現に使用されており識別力を有しているれっきとした商標であることは疑いの余地がない。
(4) 被服について広く使用されている引用商標が既に存在する以上、被服についての「BASIC」という商標にかつて触れたことのある需要者、取引者であれば、「豹とBASIC」からなる本件商標の付いた被服を見たときにも、これは引用商標あるいは「ペリカンとBasic」の商標が付された被服と同一の出所から出たものあるいは少なくとも何らかの関連のある出所から出たものであると受け取る者が少なくないと考える。すなわち、被服に付けられた両商標について紛らわしく感じ、出所混同を生じる者が少なくない。
(5) 以上の論拠より、本件商標は指定商品「被服」について使用されると、引用商標と離隔的観察により需要者・取引者に出所混同を生じさせるおそれがあるので類似すると考える。
したがって、本件商標は、引用商標と類似し、かつその指定商品が同一であるので、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号の規定に基づきその登録は無効にされるべきである。
(6) 補足するに、請求人が本件商標の出願公告に対して申し立てた登録異議申立に対する被請求人の答弁についてその不当性を明らかにし、本件審判請求の後、請求人はたまたま被請求人の本件商標の使用の実態を知る機会を得たので本件商標の使用の実態についても明らかにし、請求人が予想したとおり、被請求人の登録異議申立に対する答弁にもかかわらず、本件商標について、請求人の所有する引用商標と出所の混同を招く使用が実際に行われていることを明らかにする。
(イ) 普通の形容詞としての「BASIC」という用語は、被服業界に限らず、あらゆる産業界で使用されており、どのような分野の書物をひろげても「ベーシック」という用語は無数に発見される。しかし、これらは、すべて普通に使用されている「BASIC(ベーシック)」という形容詞としての使用であり、商標としての使用ではない。
被請求人が引用した「田中千代服飾辞典」、「服飾辞典」、「新・田中千代服飾辞典」中の「BASIC」の文字はすべて、形容詞としての「BASIC」である。すなわち、「ベーシック・カラー」、「ベーシック・ドレス」、「ベーシック衣料」、「ベーシック・シルエット」などは「ベーシック」の形容詞としての使用である。このような形容詞としての「ベーシック」の普通の使用であれば、他の業界でも幾らでも使用されている。例えば、「ベーシック・カー」、「ベーシック・ウオッチ」、「ベーシック・ハウス」、「ベーシック・ガーデン」など枚挙に暇がないほどである。
一方、引用商標は、識別標識としての商標であって、普通の用語としての、形容詞としての「BASIC」ではない。引用商標が登録されたことについて被請求人は非難するが、被請求人の論法でいけば、造語商標を除くほとんどすべての文字商標の登録が非難されることになるであろう。しかし、実際は、商標「BASIC」は請求人が被服等を指定商品として商標登録を受けた後に、被服以外の指定商品、例えば、乾燥野菜等(商標登録第0950763号)、たばこ等(商標登録第1388438号)、履物等(商標登録第1442607号)、洗剤等(商標登録第1559953号)、装身具等(商標登録第2118924号)、電気機械器具等(商標登録第2321885号)、文房具等(商標登録第2558141号)などを対象として商標登録されているのである。商標「BASIC」が、それが有する観念に照らして、あらゆる分野で魅力ある商標となり得ることは、このように多数の分野で商標登録がなされていることからも明らかである。被服を指定商品として商標「BASIC」が30年以上前に登録されたことに対する被請求人の非難が如何に的外れであるかは明らかである。しかも、被請求人は請求人に対する「BASIC」の商標登録を非難しながら自らは豹の図形を背景にした「BASIC」の商標の登録を求めているのである。
(ロ) 上記のように、「BASIC」という文字は形容詞であって、単独で用いられることはない。稀に、「THE BASICS」(日本語では、「基本的原理、基本的なもの」の意味に訳されている)という語(「BASIC」の複数形)が名詞として使用されることもあるが、「BASIC」が単独で名詞として、それも「基本的な衣料」の意味で使われることは皆無である。被請求人の主張するような使い方ができるなら、「基本的な衣料」ばかりでなく、「基本的な自動車」、「基本的な色彩」、「基本的なスタイル」、「基本的な庭」、「基本的な時計」、「基本的な家」などなど色々な意味に使われることになり、「基本的な衣料」の意味で特定して使用することはできなくなる道理である。「BASIC」には「基本的な」の意味はあるが、「基本的」の後に名詞が続いてはじめて意味が完結するのである。「BASICDRESS」であれば「基本的な衣料」となり、「BASIC CAR」であれば「基本的な車」となり、「BASIC SHUES」であれば「基本的な靴」となり、「BASIC CAMERA」であれば「基本的なカメラ」となるのである。商標登録異議答弁書で被請求人が引用した3冊の辞典でもすべて「ベーシック衣料」、「ベーシック・カラー」など形容詞として「ベーシック」が使用されているのである。これが「ベーシック」の普通の使用法である。
したがって、「本件商標中の『BASIC』の文字は当該商品が基本的な衣料であることを示すに止まる」との被請求人の主張には全く根拠がない。
(ハ) 請求人は、平成11年1月5日にたまたま配付されたチラシ(甲第6号証の1)中に、「BASIC by KRIZIA」なる商標を付されたセーターの記事を発見し、それを同年1月8日に大阪市中央区心斎橋筋2−6−2のリチャード心斎橋本店において購入した(甲第6号証の2)。
このセーターには、甲第6号証の3から明らかなように、襟に本件商標を印刷した織りネームが縫い付けられ、この織りネームにはさらに本件商標を印刷したタグが取り付けられている。したがってこのセーターは被請求人の製造ないし販売に係る商品であることは明らかである。
(ニ) 上記のチラシには、このセーターの商標として、「BASIC by KRIZIA」という商標が使用されていることに注目すべきである。チラシは宣伝広告のための最も重要な手段であり、商標が最も多用されるものの一つだからである。
「GUCCI」、「HERMES」などの有名な商標とならべて印刷されているこの「BASIC by KRIZIA」が商標であり、宣伝広告のために印刷されていることは如何に被請求人であろうとも否定できないであろう。しかも、その宣伝の対象が本件商標を付したセーターなのである。本来ならば、本件商標を付した商品のチラシには本件商標(豹を背景にしたBASICの商標)を宣伝広告のために使用する筈である。もし、被請求人の指示なしに被請求人の製品販売者が本件商標の代わりに「BASIC by KRIZIA」を商標としてチラシの宣伝広告に使用したのであるとすれば、被請求人の主張にもかかわらず、被請求人の製品販売者ですら本件商標の中の最も重要な構成要素が「豹の図形」ではなく「BASIC」であると認識していることを示唆する顕著な証拠である。
(ホ) さらに、上記のセーターはビニール製の包装袋で包装されて購入者に引き渡されている。
このビニール製包装袋(甲第6号証の6)には、金色でチラシに印刷されていたと同様「BASIC by KRIZIA」と印刷されている。ここにも本件商標や豹の図形はそのかけらも印刷されていないのである。商標を商品の包装紙や包装袋に印刷して商品の包装に使用するのは商標の典型的な使用である。したがって、被請求人は本件商標を付した商品について「BASIC by KRIZIA」を商標として使用しているのである。
(ヘ) 甲第6号証の6に示す被請求人の製品の包装用ビニール袋の裏側には、英語、フランス語、ドイツ語等の外国語でビニール袋が玩具でないこと等の使用上の注意事項が記載されているが、日本語での記載がないことから、このビニール袋はわが国以外の国で専ら使用することを意図して被請求人により製造されたものに違いないと思われる。
他の国々では「BASIC by KRIZIA」の商標としての使用が許されるとしても、わが国では請求人の有する引用商標が存在するのである。他人の登録商標に自己の商号を付せば非類似の商標として使用可能になるなどということは商標の識別機能の維持からみても許されるべきことではない。
(ト) 被請求人は商標登録異議答弁書(甲第5号証)において、本件商標の構成要素である「BASIC」が出所を表示するものではないと強弁しているが、被請求人が被請求人の製造・販売に係る被服について本件商標と同時に「BASIC by KRIZIA」を使用し、しかも本件商標よりもむしろ「BASIC by KRIZIA」を重視し、専ら「BASIC by KRIZIA」を商標として宣伝広告に使用していることが、甲第6号証の1のチラシにおける被請求人の商品の宣伝広告及び甲第6号証の6に示す被請求人の製品の包装用ビニール袋上の印刷から明らかである。
「BASIC by KRIZIA」の中で、「by KRIZIA」は商号であるから、商標としては「BASIC」が要部となるのは至極当然である。また、本件商標と「BASIC by KRIZIA」とを同時に併用した場合(この状況が現在の使用の実態である)、本件商標から「豹の図形」のみを印象付けられる需要者・取引者がどれほどいるであろうか。おそらく、100人が100人とも本件商標から「BASIC」を印象付けられることであろう。そうとすれば、請求人の有する登録商標「BASIC」と出所混同を生ずることは避けようがないことになる。
(チ) さらに、甲第6号証の5に示す被請求人の製造・販売に係るセーターには、胸の部分に意匠として「BASIC」の文字を重ねてデザイン化した図形が大きく印刷されており、その下方に小さく「by KRIZIA」と印刷されている。この意匠をみても、被請求人が自らの出所表示及び宣伝広告に専ら使用している商標「BASIC by KRIZIA」、中でも「BASIC」こそが商標の主体であることを図らずも露呈させていると言わざるを得ない。
(リ) 以上の本件商標の使用の実態を見れば、被請求人は、請求人の有する登録商標「BASIC」のバックに豹の図形を配した本件商標の登録を受け、同時に豹の代わりに自らの商号を付しただけの「BASIC by KRIZIA」という商標を多用することにより、商標「BASIC」を自由に使用しようと意図するものであると考えざるを得ない。宣伝広告用のチラシにも商品を入れる包装用ビニール袋にも本件商標や豹の図形が全く印刷されていないことがこれを物語っている。
(8) 答弁に対する弁駁
(イ) 被請求人が強弁するように、「BASIC」の文字が「基本的な衣料」を示す用語であるとするならば、ベーシック・カーは「基本的な衣料の車」ということになり、ベーシック・ウオッチは「基本的な衣料の時計」となり、ベーシック・ハウスは「基本的な衣料の家」ということになる。
請求人が再三にわたって指摘しているように、通常用語としての「BASIC」は単なる形容詞であり、前記のベーシック・カーは基本的な車、ベーシック・ウオッチは基本的な時計、ベーシック・ハウスは基本的な家である。これに異論を挟む者は被請求人以外にはいないであろう。
そして通常用語としてのベーシックが公共の財産であり、何人も使用できることについては、請求人も全く異論はない。 請求人は商標としての「BASIC」と商標の主要構成要素としての「BASIC」を問題にしているのである。しかるに、被請求人は商標としての「BASIC」の使用の議論を通常用語としての「BASIC」の使用の議論にすり替えているのである。商標としての「BASIC」の議論に通常用語としての「BASIC」を持ち出すから、本件商標について、それを構成している主要部分であるにもかかわらず、その「BASIC」の部分は何らその出所を表示するために用いられているのではないとか、そこから商標としての称呼、観念が生ずることはないという詭弁(請求人の登録異議申立に対する被請求人の異議答弁書における主張)が生まれてくるのである。しかもこの詭弁は、被請求人自らが本件商標と同時に「BASIC by KRIZIA」を出所表示に使用していることにより根底から覆っているのである。
さらに、被請求人は、「BASIC」が通常用語であるから、「取引の自由を確保するため広く一般に開放すべき用語であって、特定人の独占に適さないものである。」と反論するが、請求人の登録商標「BASIC」が通常用語ではなく、被服業界で周知の登録商標であって長年商品流通秩序の維持に貢献しているものであることを被請求人は無視している。 引用商標の使用については、商標法第25条により、請求人に独占権が付与されているのである。被請求人が請求人の引用商標が特定人の独占に適さないと主張することは、商標法の精神を踏みにじるものであり、我が国の商標制度の破壊を意図するものであると解するほかはない。
登録商標を通常用語と強弁し、引用商標に対する請求人の独占的使用権を否定する被請求人の主張は商標制度の根幹を揺るがす主張であり、極めて不当であるというべきである。
(ロ) 請求人の登録商標については幾つもの使用権が設定されていることは既に明らかにしたところである。この契約は確かに私的自治の下で個別になされたものではあるが、その対象が請求人の登録商標についての使用に関する契約であることを被請求人は敢えて無視している。
「何人でも自由に使用できる公の財産である自他商品識別力のない言語」に対して、一体誰が使用料を払って使用権を得ようと思うであろうか。この契約が私的自治の下で個別になされたものであるが故にこそ、これらの使用権設定の契約それ自体が、請求人の引用商標が被服業界において自他商品識別力のある周知の商標であることを示す揺るぎない証拠であるというべきである。しかもこれらの使用権者には、日本国の企業に留まらず、被請求人と同じ国の企業である「Basic ltalia S.p.A.(現、Kappa ltalia S.p.A.)」も含まれている。
請求人の引用商標は、上記のように、被服業界において周知商標として認知されている登録商標であって、被請求人のいう「公の財産である自他商品識別力のない言語」に該当しないことは明らかであり、しかも商標法第25条によりその使用についての独占権が請求人に与えられている登録商標であるから、被請求人の主張はその前提も結論も誤っており、かつ答弁として的外れであるというべきである。
(ハ) 「BASIC」の文字は本件商標の主たる構成要素である。一般に商標は市場において商品流通の中で機能するものであり、その登録に際しては、その商標の使用の実態と切り離して論ずべきでないことは明らかである。本件商標は既に使用されており、その使用の実態が明らかになっている。このような状況の下では、本件商標の要部が「BASIC」にあって「豹の図形」にないことは誰が見ても明らかである。この点は被請求人も争っていない。したがって、本件商標と請求人の登録商標である「BASIC」の類否を論ずるには、本件商標が「豹の図形」を背景に有していることよりも「BASIC」という文字を主体としていることを前提とすべきであることは明らかである。「『BASIC』の文字が共通することをもって商標の類似を論ずることは無意味である。」との被請求人の主張は、その使用の実態を無視した全くの詭弁に過ぎないといわなければならない。
被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べている。
請求人は本件商標が、引用商標と類似し、その指定商品も同一であるから商標法第4条第1項第11号に該当すると主張している。その理由は、要するに本件商標の構成中「BASIC」の文字が上記引用商標の「BASIC」なる文字と類似するというにある。
しかし、本件商標の構成に含まれる「BASIC」の文字は、「極端な流行には走らないが、適度のファッション性をもつ衣料で、コーディネートによって幾シーズンも着用できる、文字どおり、基本的な衣料」を示す用語であって、被服について国際的にまた日本国内でも普通に使用されており、また取引の自由を確保するため広く一般に開放すべき用語であって特定人の独占に適さないものである。
請求人は自らが使用権を設定しているとする事案に言及しているけれども、私的自治の下で個別にどのような契約をしようが自由であるとしても、それによって公の財産である自他商品識別力のない言語の独占が肯定されるべきではない。したがって、この「BASIC」の文字部分が共通することをもって商標の類似を論ずることは無意味である。
本件商標と引用商標との類否について検討するに、本件商標は、別掲(1)のとおり、かなり図案化されているものの「BASIC」の文字を表したものと認識される肉太の文字を、豹とおぼしき図形に重ねるように描き、更に該「BASIC」中の「A」の文字の下部に「By KRIZIA」の文字を小さく横書きしてなるところ、中央に大きく顕著に表された「BASIC」の文字が、上記豹とおぼしき図形中に埋没しているとはいえず、また、「BASIC」の文字と該図形とが常に一体不可分にのみ認識されるべき格別の理由も見出し難いものであるから、「BASIC」の文字部分自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものというべきであって、簡易迅速を尊ぶ取引業界にあっては、これより生ずると認められる「ベーシック」の称呼をもって取引に資されるとみるのが相当である。そうすると、本件商標は単に「ベーシック」の称呼をも生ずるというべきである。
この点に関し、被請求人は、本件商標の構成中の「BASIC」の文字は「極端な流行には走らないが、適度のファッション性をもつ衣料で、コーディネートによって幾シーズンも着用できる、文字どおり、基本的な衣料」を示す用語であって、被服について国際的にまた日本国内でも普通に使用されており、広く一般に開放すべき用語で特定人の独占に適さないものである旨主張している。
しかしながら、「BASIC」の文字は、「基礎の、基本的な」の意味を有する英語であり、被服関連の業界においては、例えば「ベーシック・カラー(Basic color)」、「ベーシック・ドレス(Basic dress)」、「ベーシック・スタイル(Basic style)」のように他の語と結合して用いられていることが認められるとしても、「BASIC」の文字それ自体が単独で被請求人の上記主張の如き意味合いを有する語として理解・認識され、かつ、この種業界において普通に使用されているものとは認め難いし、被請求人も上記主張を裏付ける証左を何ら示していない。そうすると、「BASIC」の文字は、この種業界において直ちに自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきではなく、特定人の独占に適さない語であるともいえないから、被請求人の主張は採用することができない。
他方、引用商標は、それぞれの構成文字に相応して、いずれも「ベーシック」の称呼を生ずること明らかである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において相違するところがあるとしても、「ベーシック」の称呼及び「基本的な」の観念を共通にする類似の商標といわざるを得ない。
また、本件商標の指定商品中の「被服」は、引用商標B、C及びDの指定商品と同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであるから、その指定商品中「被服」についての登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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