Trademark Appeal Case
著名人名の商標登録と公序良俗
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第12158号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本出願に係る商標(以下、「本願商標」という。)は、後掲したとおり「GRAND’PA PICASSO」の欧文字(花文字風にやや装飾を施したもの)を上部に向けて半円状に表してなり、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成8年10月22日に登録出願されたものである。
2 原査定における拒絶の理由 原査定は、「本願商標は、スペインの画家として世界的に知られている「Picasso(1881〜1973)」の文字を有してなるから、該画家と無関係にある出願人がこれを商標として採択、使用することは該画家(死者)の名誉を毀損しあるいは遺族の名誉を毀損することにつながるばかりでなく、国際信義の見地からも穏当を欠くものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」との理由をもって本願を拒絶したものである。
3 当審の判断 本願商標は、前記のとおり「GRAND’PA PICASSO」の欧文字よりなるところ、構成中左側部分の「GRAND’PA」の文字部分は、一般に「おじいちゃん」の意味合いをもって「グランパ」と読まれる英語(会話語)と理解されるものであり、また、同右側部分の「PICASSO」の文字部分は、その独特な作風とともに世界的に知られるスペインの画家「Pablo Picasso(1881−1973)」の姓名またはその著名な略称と認められる「ピカソ」を容易に想起させるものといえる。そして、これら文字の全体より直ちに特定・固有の名称を指称するものとはいい難く、また、その構成を常に一体のものとして把握しなければならないような特段の事情も見出せないから、本願商標にあって「PICASSO」の文字部分は主要な構成部分というべく、看者の印象に強く残る部分といわなければならない。
しかして、ピカソについては、「(抜粋)彼こそは20世紀前半の美術の最大の巨匠であり、偉大な革命児であった。」(岩波書店1997年発行世界人名辞典「ピカソ」の項より)とする解説にみられるように、その作風は世界の人々に大きな感動を与え、故人となった今もなお惜しみなく賞賛が送られ、その名声はなお衰えるところがないというべき著名な者であることは社会的な事実であり、また、同人の所産(作品、遺産、署名その他の遺物)がその遺族によって専ら運営・管理されていること等の事情は、すでに知られるところである。
そうとすれば、世界的著名人というべき「PICASSO」(ピカソ)の文字を有し、かつ、それ自体が主要な構成部分をなすというべき本願商標を本件請求人(登録出願人)が商標登録することは、ピカソの名声に便乗しその指定商品についての使用を独占しようとする意図が窺われ、不正の目的を十分推認させるものといわなければならない。そして、世界的に著名な画家の名声を一私人というべき請求人(登録出願人)が何らその正当な理由を有しないにも拘わらず本願商標を商標登録し当該商品を市場の流通に供するとした場合、単に故人の名声・名誉を毀損するおそれがあるのみならず、商品の流通市場における公正な取引秩序を乱し、あるいは、我が国の国際的な信頼関係を阻害し国際信義に悖るおそれなしとしないから、結局、本願商標は、公序良俗に違背するものというべく、商標法第4条第1項第7号に該当するものといわなければならない。
請求人(登録出願人)は、請求の理由において、(1)本願商標は、同書体の花文字で半円状に一連に書してなるものであり、分離するとしても、記号「’」を境に「GRAND」と「PAPICASSO」とするのが自然である。(2)称呼においても一連に称呼されるものであり、区切って称呼するとしても「グランド」と「パピカソ」とに分離するのが自然であって、「ピカソ」とのみ聴別できるものでないから、画家「Picasso」とは認識されない旨述べ、本願商標の商標法第4条第1項第7号非該当を主張している。
しかしながら、昨今、この種外国文字、特に英語への理解と習熟度が急速に進んでいる外国語事情も併せ考慮するに、本願商標は前記認定の如く認識し把握されるとみるのが相当であって、その構成または称呼が請求人の述べる如く分離して看取されるというべき合理的理由はなく、また、本願商標が常に一体不可分の特定・固有の名称とはいえないこと前記認定のとおりであるから、この点を述べる請求人の主張は採用することができない。
また、請求人は、「ピカソ」、「Picasso」または「PICASSO」に関する商標登録例(甲第1号証の1ないし甲第1号証の11)を挙げ、本願商標の登録性を述べているが、それら登録例は指定商品その他において本件とは事案を異にするものであり、また、査定時または審決時における登録の適否を判断すべき本件審判にあって、近時の電子商取引を初めとする国際的商品流通の実情をも併せ考慮するに、それら先登録例を本件の判断基準とするのは必ずしも適切でないから、その主張は採用の限りでない。
このほか、請求人の述べる理由をもって前記認定を覆すことはできない。
したがって、本願商標を前記法条の規定に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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