結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2000−35167(T2000−35167/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第3198926号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、第42類「しゃぶしゃぶ・すきやき・ステーキを主とする肉料理の提供」を指定役務とし、商標法の一部を改正する法律(平成3年65号)附則第5条第1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張し、平成4年9月30日に登録出願、同8年9月30日に特例商標として設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第120号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、「神戸屋」の文字を要部とするものである。この文字「神戸屋」は、我が国でも有数の大手製パン会社、株式会社神戸屋を中心とし、ベーカリーレストランなどで著名な株式会社神戸屋レストランも属している我が国有数の企業グループの名称であって、本件商標は、この神戸屋グループが長年にわたって使用し著名となっている商標「神戸屋」、「KOBEYA」等と類似するものである。
したがって、本件商標は、これを使用すると、一般需要者・取引者にその役務が神戸屋グループの業務に係るものであるとの誤認を生ずる。
(イ)株式会社神戸屋(パンの神戸屋)の著名性について
パンのメーカーである株式会社神戸屋は、1918年(大正7年)に神戸屋合資会社として創業された。1923年(大正12年)には大阪市内の食堂・レストランなどの市場の9割を占めるまでに成長した。1932年(昭和7年)に組織変更によって現在の株式会社神戸屋となってから、1968年(昭和43年)には一日あたりの受注食数が200万食を超えるパンメーカーとなった。
また、1970年(昭和45年)からは東京を起点に関東地方に進出し、ほぼ全国的に著名となった(甲第3号証及び甲第4号証)。食品業界ににおいて、神戸屋の著名性はその売上の面からも明らかである。
パン業界の売上ランキングでは1991年(平成3年)の時点で第5位(甲第5号証)、洋菓子パン両業界のランキングでも平成7年4月から平成8年3月期の第7位(甲第6号証)に位置している。
(ロ)株式会社神戸屋レストランの著名性について
株式会社神戸屋は、1975年(昭和50年)に、兵庫県西宮市にレストラン(ベーカリーレストラン)神戸屋を開店した(甲第3号証)。
1983年(昭和58年)には外食産業部門を独立させ、株式会社神戸屋レストランを設立した(甲第8号証)。
株式会社神戸屋レストランはその本拠を東京に置き、それまでの関西地方中心の展開から、関東地方にも神戸屋レストランを開店し、現在では全部で22店舗を関東地方、関西地方を中心に全国各地で営業している(甲第4号証及び甲第8号証)。
(ハ)ベーカリーレストラン神戸屋(神戸屋レストラン)の著名性について
神戸屋レストランは、店舗数も多く、飲食店のなかでも高い実績を上げているフランチャイズチェーンのレストランである。売上高に関しては、1992年度飲食業売上高ランキングで155位(甲第9号証)、1995年度の同ランキングでは98位(甲第10号証)、1995年度及び1996年度の同ランキングではそれぞれ94位、98位(甲第11号証)、1997年度の同ランキングでは103位にランクされている(甲第12号証)。
1998年の日経産業消費研究所による調査によれば、ファミリーレストランの人気度調査では第14位にランクされている(甲第14号証)。
更に、雑誌や新聞でも、神戸屋レストランを取り扱った記事が数多く掲載されている(甲第50号証ないし甲第56号証)。
また、「日経レストラン外食用語辞典」(甲第57号証)においては、近年外食用語としてすっかり定着した語「ベーカリーレストラン」の代表例として、神戸屋レストランが挙げられている。
神戸屋レストランのフランチャイズ店が関東地方と近畿地方を中心に全国的に展開されていくなか、株式会社神戸屋レストランは、神戸屋キッチンのフランチャイズ展開を開始し、現在では19店舗が営業している(甲第4号証)。
この神戸屋キッチンも、雑誌等への紹介記事も多い(甲第58号証ないし甲第72号証)。
また、パンを主とする軽食レストラン、神戸屋サンドッグインの営業も開始した。現在、この神戸屋サンドッグインは3店であって店舗数は多くないが、いずれの店舗も大都市の駅構内等、多数の人が訪れる地に位置し、雑誌等にも、紹介記事が多数掲載されている(甲第73号証ないし甲第75号証)。
(ニ)神戸屋ブランドについて
株式会社神戸屋(パンの「神戸屋」)と、その子会社である株式会社神戸屋レストランとは、それぞれの分野において著名である。
しかして、雑誌、新聞等においても株式会社神戸屋と神戸屋レストランとは区別して記載されていないことが多い(甲第7号証及び甲第39号証、甲第51号証ないし甲第54号証、甲第57号証、甲第64号証及び甲第76号証ないし甲81号証)。
株式会社神戸屋、株式会社神戸屋レストラン両社が各社個別にではなく企業グループ、神戸屋として認識されるに至ったのは、この2社をはじめとする神戸屋グループに属する企業の多くが神戸屋の名を社名の一部として、また商標として共通に使用している(甲第3号証、甲第4号証、甲第77号証、甲第81号証及び甲第82号証)。
このように、神戸屋の名には、パンの神戸屋(株式会社神戸屋)とレストランの神戸屋(株式会社神戸屋レストラン)をはじめとする神戸屋グループの企業に対する業務上の信用が集約されて、統一されたブランドイメージが確立されている。これは一般に、神戸屋ブランドと呼ばれる(甲第13号証及び甲第25号証、甲第83号証及び甲第84号証)。
(ホ)神戸屋グループによる商標の使用について
神戸屋グループは、社名の神戸屋或いはその英語表記「KOBEYA」の文字を含む商標の商標権を所有し、長年にわたって使用している。この結果、「神戸屋」、「KOBEYA」等の文字は神戸屋グループに属する企業の業務に係るものとして著名になっている。
神戸屋グループは、甲第85号証ないし甲第100号証の商標権を所有する。
神戸屋グループによるこれらの商標の使用例の一部を提出する(甲第3号証、甲第21号証、甲第25号証、甲第101号証及び甲第102号証)。
(ヘ)本件商標の出所混同のおそれについて
株式会社神戸屋、株式会社神戸屋レストランをはじめとする、神戸屋グループは非常に著名であって、この神戸屋グループ内の企業がその社名の一部としてまた商標として共通に使用している文字、神戸屋は本件商標の出願時から現在まで、いわゆる、神戸屋ブランドとして非常に著名なブランドとなっている。
したがって、神戸屋の文字を要部とする本件商標に接した一般需要者・取引者は、これを製パン大手の株式会社神戸屋を中心とする、神戸屋グループの業務に係るものであると認識する。
(ト)指定役務との関連性について
本件商標の指定役務は、「焼肉・しゃぶしゃぶ・ステーキを主とする飲食物の提供」である。一方、株式会社神戸屋レストランの役務は、洋食レストランや軽食喫茶におけるパンや洋食メニューなどの飲食物の提供である。
両役務は、主たるメニューが「焼肉・しゃぶしゃぶ・ステーキ」と「パンや洋食メニュー」とで異なっているものの、いずれも外食産業であって、一般需要者にとって混同を生じやすい類似の役務である。
(チ)本件商標の使用の実情について
請求人の入手したところによれば、被請求人である神戸屋商事株式会社は、甲第104号及び甲第105号証のような態様で商標を使用している。
本件商標は「しゃぶしゃぶ・すきやき・ステーキ」の文字の下に、神戸屋の文字を配した態様で登録されているが、これらの証左をみると、「RESTAURANT」の文字と「神戸屋」の文字とを組み合わせた態様で使用されている。このような態様の使用は、請求人の所有する登録第3180416号(甲第95号証)、及び商標登録第3180420号(甲第97号証)と混同を生ずるおそれが大きい。しかも、株式会社神戸屋レストランの経営する、神戸屋レストランが代名詞ともなっている、ベーカリーレストランについてまで、神戸屋の文字が使用されている(甲第103号証)。
(2)商標法第4条第1項第8号について
神戸屋は、上記のとおり著名な会社である株式会社神戸屋、株式会社神戸屋レストランの著名な略称である。したがって、「神戸屋」の文字を含む本件商標はこれに該当する。
(3)答弁に対する弁駁
(イ)本件商標の周知性について
被請求人は、被請求人経営の飲食店、神戸屋の周知性を主張しているが、本件商標の周知性を証明するような証拠は何等提出されていない。
乙第2号証及び乙第3号証をみても、これらは被請求人の代表者である須賀碩二氏個人を紹介した記事にすぎない。被請求人経営の飲食店、神戸屋については、取材対象である須賀碩二氏の職場として紹介されてはいるが、この記事からわかるのは、この飲食店、神戸屋の店舗が愛知県豊田市と名古屋市とで4軒あることぐらいである。
即ち、乙第2号証及び乙第3号証は、被請求人経営の飲食店、神戸屋についての記事ではないから、この飲食店の周知性を証明するものではない。
しかも、これらの記事は本件商標登録出願後の平成6年及び平成7年に発行されたものであるから、これらの記事によって周知となったという事実もない。
また、被請求人は、被請求人経営の飲食店、神戸屋について地元名古屋を中心としたマスコミからの出演・取材依頼が多数来ているとし、その主たるものを記載している。
しかしながら、これらの出演・取材が実際に行われたという証拠は一切提出されていない。
そして、仮にこれらの出演・取材に関する記載を認めるとしても、本件商標の登録出願時以前のものは1978年と1990年のテレビ番組のみである。
これらの出演・取材に関する記載も、本件商標の周知性の証明とはなり得ないことは明らかである。
被請求人が愛知県豊田市(3軒)及び同名古屋市(1軒)に経営する飲食店について本件商標を使用していることは請求人提出の甲第103号証からも認められるものの、本件商標が周知であるとは到底認められない。
(ロ)請求人グループの著名性について
株式会社神戸屋のパンは中部地方においても複数の大手・中堅スーパーマーケットチェーン等を通じて相当数販売されており、「神戸屋」「KOBEYA」の商標は中部地方においても著名である。
請求人グループの中には、静岡県に本社をおく、株式会社マルト神戸屋が含まれており(甲第3号証)、株式会社神戸屋のパンは、中部地方のうち愛知県、静岡県に関してはこのグループ会社、株式会社マルト神戸屋を通じて製造・販売するという方式を採用している。この方式を採用したのは昭和56年からであり(甲第3号証)、以降神戸屋パンは中部地方における売上を伸ばし、本件商標の登録出願時から現在まで、愛知・静岡両県においても著名性を確保している(甲第106号証及び甲第107号証)。
なお、実際に、株式会社マルト神戸屋を通じて神戸屋のパンが愛知県及び静岡県で販売されていることを示すため、各県における大手スーパーマーケットとの契約書及び商品の受領書を各1例ずつ提出する(甲第108号証ないし甲第111号証)。
また、株式会社神戸屋の商品が直接又はグループ企業を通じて販売されているエリアは、関東、関西、そして上記の中部地方だけでなく北海道から九州地方そして沖縄までのおよそ日本全国であることを付け加える。
(ハ)神戸屋の顕著性について
本件商標は、「しゃぶしゃぶ・すきやき・ステーキ」という提供される飲食物の内容を普通に表示した文字と、「神戸屋」の文字とからなるものであるから、その要部は「神戸屋」の部分である。この文字部分「神戸屋」は、輪郭が若干ギザギザと不揃いになったペン字風の文字で記され、また、周囲を網線で縁どりするように囲ってはあるものの、ごく普通の文字体といえる態様で表示されている。したがって、本件商標がその特徴的な書体や構成によって一般需要者に識別されているとは到底考えられない。
しかも、現実に、本件商標は、「神戸屋」又は「KOBEYA」の文字を含む請求人の登録商標8件(甲第95号証ないし甲第99号証)と重複して登録されている。このことは、「神戸屋」の文字がそれ自体自他役務の識別機能を具備するものとの判断によるものである。
よって、「神戸屋」の文字を含む本件商標は、請求人グループの業務に係るものであるとの出所混同を生ずるおそれがある。
請求人グループの使用に係る商標「神戸屋」、「KOBEYA」は、その著名性に疑いのないものである。一方、本件商標「しゃぶしゃぶ・すきやき・ステーキ/神戸屋」は、周知であるとは認められず、少なくとも請求人グループの使用に係る商標とはその周知度において全く比較にならないものである。
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁しその理由を要旨次のように述べ、その証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
(1)本件商標は、請求人の商標と重複登録されたものである。請求人が提出したいずれの主張及び証拠を検討しても、請求人の商標のみが著名なものとは認められないから、請求人の商標と被請求人の商標が、共に同程度に周知であるとして重複登録された本件商標の登録は適法なものである。
請求人の商標と被請求人の商標との間には、その周知性に差異はない。
(2)被請求人の商標の顕著性について
被請求人の現在の代表者が第1号店を出店したのは1970年(昭和45年)であることは、請求人が提出した甲第103号証にあるとおりであるが、被請求人の代表者の父である須賀哲夫が、1952年(昭和27年)に名古屋市内で食堂、神戸屋を開業したのがそもそもの発祥である。
自己の出身地、自己の姓(「神戸」という姓は多数存在する)、あるいは取扱商品の名産地に「屋」を付けた屋号は、三河屋・長崎屋・越前屋・越後屋・松阪屋・丹波屋・伊勢屋・近江屋など、全国各地で無数に採用されているため、「〇〇(地名)屋」という商標は、比較的顕著性の低い標章であり、「神戸屋」もその一つに過ぎない。
また、NTTインターネットタウンページで「神戸屋」を検索した結果、586件もヒットし、その大半が飲食店であった。しかし日本全国には、この586件以上の「神戸屋」が存在する。そして、神戸の名産の一つ「神戸牛」の影響か、焼肉・ホルモン料理店,しゃぶしゃぶ料理店,ステーキハウスなど、特に肉料理を主として提供する店において、「神戸屋」の名称が多数見受けられた(乙第1号証)。
このように同一の役務「飲食物の提供」を業とする店舗について、全国に多数の「神戸屋」が存在しながら、互いに何ら混同を生じることもなく営業を継続しているのは、この「神戸屋」という語の顕著性の低さによるものである。すなわち、飲食店、特に神戸出身者が経営する店、あるいは肉料理を主として提供する飲食店において、比較的普通に採択され得る商標であるから、需要者は、その商標の構成(書体など)に着目して、どの「神戸屋」であるかを識別しているのが現状である。
そのような事情を背景として請求人の提出した資料を見ると、役務「飲食物の提供」に関する請求人の登録商標(甲第95号証ないし甲第99号証)はいずれも、特徴的な書体、あるいは図形との組み合わせより構成されており、顕著性が認められる構成となっている。しかし、提出された甲各号証の中には、これら商標の使用の事実は、ほとんど認められない。
よって、請求人が提出した証左からは、請求人の使用に係る商標「神戸屋」の著名性は認められない。
(3)被請求人の周知性について
被請求人が経営する、神戸屋は、本件商標の指定役務のとおり、ステーキ・焼肉・しゃぶしゃぶなどを主として肉料理を提供する飲食店であって、1970年(昭和45年)に第1号店を開店して以来、創業30年の歴史を誇る老舗である。現在は、愛知県下に4店舗を有しており、すべての店舗で本件商標にある独特な書体を用いている。
被請求人又は同代表者である須賀碩二に対して、特に地元名古屋を中心としたマスコミからの出演・取材依頼が多数来ている。テレビでは、その番組のメインテーマとして取り上げられた。また、「名古屋食べ歩きマップ」「東海ウオーカー」「ブルゾン」「ケリー」などの、地元の雑誌のグルメ特集においても頻繁に取り上げられている。
このような地元での活躍が認められ、毎日新聞の「時の素顔」欄で「厨房にて」と題して被請求人の代表者である須賀碩二が取材を受け、神戸屋の歴史が大きく取り上げられている(乙第2号証)。少なくとも中部地方における周知性を不動のものとしている。
神戸屋という名称自体は顕著性は低いながらも、独特な書体より構成された本件商標は、被請求人が使用した結果、一般需要者に広く浸透し、良く知られたものとなっている。
(4)株式会社神戸屋(パンの神戸屋)の著名性について
本件商標の指定役務は、「ステーキ・焼肉・しゃぶしゃぶなどを主とした肉料理の提供」である。一方、請求人は株式会社神戸屋(パンの神戸屋)の著名性を主張する。しかし、当該指定役務において提供される「ステーキ・焼肉・しゃぶしゃぶなどを主とした料理」を商品としてみたとしても、商品「パン」とは非類似な商品であるから、これが「飲食物の提供」という役務において提供されたとしても、出所混同を生ずるおそれはない。
請求人が提出するいずれの証拠を検討しても、特定地域のみにおいて知られたものであることを示すに過ぎず、その意味において、商品としての「パン」についての「神戸屋のパン」の周知性は、役務「ステーキ・焼肉・しゃぶしゃぶなどを主とした肉料理の提供」における被請求人の商標の周知性との間に大差はない。
請求人が提出した証拠のいずれを検討しても、同人が関東・関西以外の地域においても著名であることを示す証拠は一切提出されていないのみならず、少なくとも被請求人の営業範囲である中部地方においては、その著名性が認められないことは、甲第6号証を検討すれば明らかである。
(5)株式会社神戸屋レストランの著名性について
株式会社神戸屋レストランの著名性についても、請求人はこれを立証すべく証拠を提出しているが、そこには自己の登録商標を使用している事実はほとんど見当たらない。
請求人の提出した証拠は、いずれも、神戸屋レストランが関西と関東という一地域内における周知性を証明するものではあるが、北海道・東北・中部・中国・四国・九州などの、関東・関西以外の地域においても著名であることを示すものではない。
よって、関東2都県、中部1県、関西2府県の5都府県に店舗を有するのみの請求人の商標は、全国で著名とは認められないものである。
株式会社神戸屋レストランが関東・関西において知られていることについては否定しないが、それ以外の地域では著名とは考えられない。請求人は、関東・関西という特定の地域においてその名が知られている程度に過ぎず、中部地方において名が知られている被請求人と、その周知度において大差はない。
以上のとおり、本件商標は被請求人の使用にかかる中部地方における周知な商標であり、一方、請求人の使用にかかる標章は関西・関東地方における周知な商標であるから、その周知度において同程度であり、請求人の商標のみが著名なものではない。
よって、請求人の商標と重複登録された本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第8号のいずれにも該当しない。
(1)請求人の企業グループ「株式会社神戸屋」、「株式会社神戸屋レストラン」、「神戸屋キッチン」及び「神戸屋サンドッグイン」の著名性について
請求人が使用する標章として、又は、請求人企業グループの略称として周知著名であるとして提出した甲各号証をみるに、本件商標の登録出願時以前の証左は、甲第3号証、甲第5号証、甲第8号証、甲第13号証、甲第21号証、甲第22号証、甲第52号証、甲第53号証、甲第72号証、甲第78号証及び甲第82号証であり、それ以外の証左は、本件商標の登録出願後のものであるから、必ずしも周知・著名性を判断するものとして採用できないとしても下記の事実が認められる。
(イ)株式会社神戸屋は、1918年(大正7年)に神戸屋合資会社として創業され、1932年(昭和7年)に株式会社神戸屋と組織変更された会社であること(甲第3号証)。
(ロ)株式会社神戸屋は、関西を主とするパンメーカーであり、1970年(昭和45年)ころから関東地方等にも進出し業務を行っていること(甲第3号証)。
(ハ)その売上をみると、パン業界の売上ランキングでは1991年(平成3年)で第5位(甲第5号証)、洋菓子パン両業界のランキングで平成7年4月から平成8年3月期では、洋菓子パン企業の申告所得ランキングが第7位(甲第6号証)であること。
(ニ)株式会社神戸屋は、1975年(昭和50年)に、兵庫県西宮市にレストラン(ベーカリーレストラン)、神戸屋を開店し(甲第3号証)、1983年(昭和58年)には外食産業部門を独立させ、株式会社神戸屋レストランを設立したこと(甲第8号証)。
(ホ)株式会社神戸屋レストランはその本拠を東京に置き、関西地方中心の展開から、関東地方にも神戸屋レストランを開店し、現在では全部で22店舗を関東地方、関西地方を中心に営業していること(甲第4号証及び甲第8号証)。
(ヘ)雑誌や新聞等でも、神戸屋レストランを取り扱った記事が掲載されていること(甲第50号証ないし甲第57号証)。
(ト)神戸屋レストランのフランチャイズ店、神戸屋キツチンが関東地方と近畿地方を中心に現在19店舗営業していること(甲第4号証)。
(チ)パンを主とする軽食レストラン、神戸屋サンドッグイン、の店舗数は3店であること(甲第73号証ないし甲第75号証)が認められる。
さらに、請求人の使用する標章をみると、その使用態様は、「神戸屋」の文字と図形を結合して使用しているものが多く、その他、その名称をそのまま「株式会社神戸屋」、「株式会社神戸屋レストラン」、「神戸屋キッチン」、「神戸屋サンドッグイン」の名称を使用している事実は認められるが「神戸屋」の文字のみを使用している証左は乏しい。
しかして、上記した甲各号証を総合してみると、請求人の使用する標章は、いずれもも関西と関東という一地域内における周知著名性を証明するものであり、その証左に照らすと関西、関東地方において著名性を認め得るとしても、全国的に著名であると認め得る証左は見あたらないから、全国的に著名であるとは認められない。
(2)本件商標の著名性について
被請求人の主張及び被請求人の提出した乙第1号証ないし乙第3号証及び請求人の提出した甲第103号証ないし甲第105号証をみると、下記の事実が認められる。
(イ)被請求人が営業する神戸屋は、ステーキ・焼肉・しゃぶしゃぶ等を提供する飲食店であり、1970年(昭和45年)に開店して以来、創業30年の歴史をもつ老舗であること。
(ロ)現在、愛知県下に4店舗を営業していること。
(ハ)被請求人又は同代表者である須賀碩二に対して、名古屋を中心とした放送、テレビ番組等で取り上げられたことが推認されること。
(ニ)毎日新聞の「時の素顔」欄で「厨房にて」とする企画特集「いい夫婦の日」と題して被請求人の代表者である須賀碩二が取り上げられ、その記事の中で神戸屋の歴史が掲載されたこと(乙第2号証及び乙第3号証)。
(ホ)被請求人は「神戸屋」の文字を、輪郭が若干ギザギザと不揃いになったペン字風の文字で記され、また、周囲を網線で縁どりするように囲ってはある特殊の態様で使用していること(甲第104号証及び甲第105号証)。
(ヘ)神戸屋若しくは神戸屋を含む名称は、NTTインターネットタウンページに照らし、飲食店の名称として多数存在すること(乙第1号証)が認められる。
以上の証左を総合してみると、被請求人の営業する店は愛知県に集中して4店舗あり、広域的にみれば店舗数として、さほど多くはないとしても、本件商標は被請求人の使用にかかる商標として一部地方においてある程度の周知性を獲得していることが認められる。
しかして、「神戸屋」の文字は、神戸屋若しくは神戸屋を含む名称が飲食店として全国に多数存在するものであって、これに接する需要者は、地理的名称「神戸」に「屋」を表示したものと認識、理解されるものであり、採択され易い名称てあるところから、比較的顕著性の乏しい標章であること、請求人の使用する標章と本件商標を使用する商標とが、著名度において多少の差異は認められるとしても、その周知・著名性は共に一地域に限られていること、本件商標の構成が特殊の態様であること、本件商標の指定役務は、「焼肉・しゃぶしゃぶ・ステーキを主とする飲食物の提供」であるのに対し、請求人の役務に係る業務は、洋食レストランや軽食喫茶におけるパンや洋食メニューなどの飲食物の提供であり、主とする飲食物の種類が異なる嗜好性の強い役務に使用していること等を考慮すれば、被請求人が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者をして、請求人の使用する商標を想起又は連想させるものとは認められず、その商品が請求人の又は同人と関係ある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
また、本件商標は請求人の名称の略称を含むものと認識、理解されないものというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に違反して登録されたものでないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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