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Trademark Appeal Case

著名商標の冒認出願

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35481号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第1729585号商標(以下、「本件商標」という。)は、後掲【1】表示したとおりの構成よりなり、第17類「帽子、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和52年9月26日に登録出願、昭和59年11月27日に設定登録がされたものである。

2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証、本件商標に係る登録原簿(写)及び商標公報(写)を提出している。

(1)請求の理由

本件商標を構成する「波乗り図形」は、そもそも、図形のモデルとなっているプロ・サーファー「ショーン トムソン(Shaun Tomson)」を中心として設立されたインスティンクト(Instinct)社の所有に係る著名な商標である(甲第1号証及び甲第2号証)。

そして、請求人は、インスティンクト社の当該商標に関する権利の正当な承継人である。

また、本件商標中のサーファーの姓名「Shaun Tomson」の使用は、同人の一身に専属する人格権に含まれるものであり、同人の同意なく出願、登録された本件商標は、同人の人格権を害し、国際信義に反し、公序良俗に反する。

してみれば、請求人の所有に係る商標及び同意のない第三者の姓名を含む商標を自己の商標として出願、登録した本件商標は、第三者の権利に属するものをそれと知りつつ冒認するものであり、国際信義に反し、公序良俗に反する。

更に、本件商標がその指定商品に使用された場合には、請求人の著名商標と出所の混同を生じるおそれがあり、また、その出願は他人の所有に係る商標であることを知って不正になされたものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第4条第1項第15号に該当し、同法第46条の規定により無効となるべきものであり、本件審判請求については、同法第47条の除斥期間の適用はない。

(2)弁駁の理由

(ア)被請求人は、本件商標を構成する「波乗り図形」がインステインクト社の著名商標であることの証拠を見ていないと言うが、甲第1号証として提出した特許庁の拒絶理由通知書、及びその根拠となった「ザ ブランド」の掲載記事がその証拠である。

(イ)請求人が、インスティンクト社の「波乗り図形」に関する権利の正当な承継人であることを、以下に証する。

(a)請求人は、本件商標の図形と同一の「波乗り図形」を我が国では平成1年8月16日に平成1年商標登録願第93359号として出願しているところであって(以下、「後掲【3】出願商標」という。)、これに対し、平成3年8月30日(発送日)付けで、商標法第4条第1項第15号に該当する旨の拒絶理由通知を受けている(甲第1号証)。

すなわち、後掲【3】出願商標は、平成3年には特許庁においてINSTINCT社がマリンスポーツ用品等に使用し著名な商標と認識されていたものであるが、特許庁が把握していたインスティンクト社の商標は、甲第2号証として提出した「ザ ブランド」に掲載された「波乗り図形+INSTINCT」(後掲【2】)である。

(b)後掲【3】出願商標は、人が波乗りをしている情景をシルエットとして図形化されたものであるが、このモデルとなっているのは南アフリカ生まれのプロフェッショナルサーフライダー「ショーン トムソン」(Shaun Tomson)であって、元来、「ショーン トムソン」が仲間と共に設立した南アフリカ法人「INSTINCT SPORTSWEAR(PROPRIETARY)LIMITED」の所有に係る商標である。

甲第5号証は、「波乗り図形」と英文字「INSTINCT」を組み合わせた商標(以下、「後掲【4】米国登録商標」という。)で米国子会社の使用を基に米国で登録されたものである。

インスティンクト社は、本図形のモデルとなった「ショーン トムソン」を中心に1980年に南アフリカで設立された会社であるが(甲第2号証)、同社は、当該商標に関する権利を、後掲【3】出願商標の当初の出願人であった「ビーチ グラジュエイツ リミテッド」に譲渡した(甲第5号証)。

さらに、1993年3月11日付けで「ビーチ グラジュエイツ リミテッド」から「ビーチ グラジュエイツ エスタブリッシュメント」に名義変更が行われた(甲第6号証)。

その後さらに、出願人「ビーチ グラジュエイツ エスタブリッシュメント」から、「ベア サーフウエア リミテッド」にその営業と共に譲渡が行われ、名義変更手続がなされた(甲第7号証)。

(c)以上のとおり、後掲【3】出願商標の出願人は、特許庁において把握する著名商標の正当な権利者と認められ、拒絶理由も解消し公告決定の運びとなったものである(甲第3号証)。

よって、後掲【3】出願商標の出願から公告の経過をみれば、請求人こそが、後掲【3】出願商標の真の権利者であり、本件商標は過誤登録と考えざるを得ない。

すなわち、本件商標も後掲【3】出願商標も、インスティンクト社の著名商標を起源とするものであるが、請求人は、正当な権利者であり、その事実は、特許庁においても認められている。

したがって、被請求人が、本件商標に対する正当な権利を主張するのであれば、その正当性を自ら証明すべきである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、また、請求人の弁駁に対する答弁をし、その理由を要旨次のように述べている。

(1)答弁の理由

(ア)被請求人は、請求人が本件商標の構成、指定商品、出願等の経緯について述べる事項について、サーファーを「Shaun Tomson」と断言できるか否かを除いて、それを否定するものでない。

(イ)請求人は、本件商標を構成する「波乗り図形」がインステインクト社の著名商標であると主張しているが、被請求人は、その主張の根拠(証拠)をみないので、その主張を認めることはできない。

(ウ)請求人は、請求人がインスティンクト社の当該商標に関する権利の正当な承継人であると主張しているが、被請求人は、その主張の根拠(証拠)をみないので、その主張を認めることはできない。

(エ)請求人は、本件商標が人格権を害し、かつ、冒認によるものであるから商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張しているようであるが、被請求人は、本件商標が人格権を害し、かつ、冒認によるものであるとする根拠(証拠)をみないので、その主張を認めることはできない。

(オ)請求人は、本件商標が請求人の著名商標(業務に係る商品の間違いであると思われる)とその出所の混同を生じるおそれがあるから商標法第4条第1項第15号に該当する旨主張しているようであるが、被請求人は、上記した(イ)及び(ウ)の理由から、その主張を認めることはできない。

(2)弁駁に対する答弁の理由

(ア)請求人は、拒絶理由通知書における「後掲【3】出願商標の出願前に著名となった図形商標」が「ザ ブランド」(甲第2号証)に掲載されている商標である旨述べているが、後掲【3】出願商標が「波乗りの図形」のみからなるところ、「ザ ブランド」に掲載されている商標が「INSTINCT」の文字列と「波乗りの図形」と他の2つの文字列とからなるものであって、後掲【3】出願商標が「ザ ブランド」に掲載されている商標と類似であると直ちに認められるものでないことから、拒絶理由通知書における「後掲【3】出願商標の出願前に著名となった図形商標」を、直ちに、「ザ ブランド」(甲第2号証)に掲載されている商標と認めることはできない。

したがって、拒絶理由通知書(甲第1号証)が、本件商標を構成する「波乗り図形」がインスティンクト社の著名商標であることの証拠になり得ないことは明らかである。

(イ)また、「本請求人が後掲【3】出願商標の現在の出願人である」ということは認め得ても、a)インスティンクト社の設立が1980年であるとされていることから、及び b)仮に、「ザ ブランド」(甲第2号証)に記載のインスティンクト社が米国登録商標第1371370号(甲第5号証)の権利者である「INSTINCT SPORTWEAR(PROPRIETARY)LIMITED」であり、かつ「ザ ブランド」(甲第2号証)に掲載されている商標が後掲【4】米国登録商標(甲第5号証)の商標と同じであるとしても、その米国登録商標の商標の出願日が1983年4月7日付であって、その商標の使用が1980年11月であるとされていることから、「ザ ブランド」(甲第2号証)に掲載されている商標が、著名商標であるとしても、その著名商標が著名になったのは、本件商標の出願日(1977年3月24日)から少なくとも8年近くも遅れてからのことであるとしか考えられない。

したがって、請求人が述べることは、全く理由のないものである。

4 当審の判断

(1)本件商標は、後掲【1】に示したとおり、欧米人の姓名とみれる「Shaun Tomson」文字とデフォルメして描いたチューブ状波の中を波乗りをしている図形を表現してなるものであって、同様に「ザ ブランド」(甲第2号証)に掲載されているとする商標の図形部分は、後掲【2】に示したとおりであり、両図形は僅かに波の下部分に三角形状の図形の有無が認められるとしても、同一の構成態様からなる図形といって差し支えないものである。

しかしながら、本件商標と「ザ ブランド」に掲載されている商標の図形部分とが同一の構成・態様からなることについては上述したとおり認め得るが、請求人において、後掲【1】若しくは後掲【2】に係る商標をもって、「被服」等の製造・販売の事業を盛んに行っている等の格別の事情が存するものとは認められず、また、請求人は、被請求人の上記「3(1)(ア)」のとおりの「本件商標を構成する『波乗り図形』がインステインクト社の著名商標であるとの主張を認めない。」及び「本件商標が人格権を害し、かつ、冒認によるものであるとの主張を認めない。」旨の指摘に対し、「拒絶理由通知書(甲第1号証)及び『ザ ブランド』(甲第2号証)における掲載記事がその証拠である。」と述べるのみで何らその証拠を補充すところがない。

しかして、その「拒絶理由通知書」は、平成1年8月16日に出願された平成1年商標登録願第93359号に係る拒絶理由通知書であって、その起案日は平成3年8月7日付とするものであり、また、「ザ ブランド」における掲載記事には、「インスティンクト社は、1980年に設立された会社である」旨の記述は認め得るもののほかは、奥付の添付もないところであって、その発行日も不明である。

そうとすると、「Shaun Tomson」の表示及び波乗り図形を表現してなる本件商標は、たとえこれが「南アフリカ生まれのプロフェッショナルサーフライダー『ショーン トムソン』」を表現してなるものであるとしても、請求人の提出に係る上記証拠をもってしては、直ちに、当該サーフライダーが現存し、保護されるべき特定者とも認め難く、かつ、これをその指定商品に使用した場合、その登録出願時はもとより登録時においても、我が国の取引者、需要者により商品の出所の混同を生じ、国際信義に反し、及び公序良俗に反するとした請求人主張の如き商標であると理解、認識されることはなかったものといわざるを得ない。

なお、請求人は、後掲【3】出願商標の出願から公告の経過、及び後掲【4】米国登録商標の譲渡の事実をもって、インスティンクト社の「波乗り図形」に関する権利の正当な権利者である旨主張・立証しているが、これらの図形においてチューブ状波の中を波乗りをしている図形を表現してなる点において同じくするものであるところ、「ザ ブランド」掲載の著名であるとする図形商標とは、必ずしも同一構成・態様になるものでなく、如何なる事由をもって当該著名商標を採択し登録出願に及ばなかったかは別としても、後掲【3】出願商標は、その出願人が請求人と同一人であること、及び【4】米国登録商標は、その権利状況等を認め得るに止まり、前記認定を覆すに足りない。

してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第4条第1項第15号に違反して登録されたものとは認定し得ないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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