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Trademark Appeal Case

シルクフィブロインの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2000−90373(T2000−90373/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4348421号商標の指定商品中「第3類 せっけん類、おしろい、化粧水、クリーム」についての商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4348421号商標(以下、「本件商標」という。)は、「Silk Fibroin」の文字と「シルク フィブロイン」の文字とを二段に横書きしてなり、平成10年6月3日に登録出願、第3類「せっけん類,おしろい,化粧水,クリーム」、第29類「乳製品,カレー・シチュー又はスープのもと,こんにゃく,豆乳,豆腐」、第30類「菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」、第32類「ビール,飲料用野菜ジュース」を指定商品として、平成11年12月24日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

本願商標は、その指定商品中、第3類「せっけん類,おしろい,化粧水,クリーム」については、「絹」すなわち「シルク」から得られた「フィブロイン」が、パック、ファンデーションをはじめとする商品の原材料として普通に使用されており、「シルク(絹)」から得られた「フィブロイン」を「絹フィブロイン」あるいは「シルクフィブロイン」と称されているから、その指定商品中、第3類「せっけん類,おしろい,化粧水,クリーム」については、単に「シルクフィブロイン」を配合した商品であることを表す標章にすぎず、また、上記以外の商品に使用するときは、その商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反してされたものであるから、その登録は取り消されるべきである。

3 本件商標に対する取消理由

本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第第16号に該当するとして商標権者に対して通知した取消理由の要旨は、つぎのとおりである。

<取消理由>

登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る証拠によれば、蚕の繭から採った絹繊維タンパク質の主成分であるフィブロインが化粧品等に用いられているとともに、その主成分のフィブロイン(原材料)を「シルクフィブロイン」や「絹フィブロイン」とも呼ばれている事実が認められる。そうすると、本件商標を登録異議の申立てに係る指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、これより容易に化粧品等の一成分を表示したものと理解し、商品を識別するための標識として認識しないというべきであるから、本件商標は、登録異議の申立てに係る指定商品中「シルクフィブロイン(絹フィブロイン)を配合したせっけん類,おしろい,化粧水,クリーム」について使用するときは、単にその商品の品質、原材料を表示するに止まるものであり、それらの商品以外の「せっけん類,おしろい,化粧水,クリーム」について使用するときには、シルクフィブロイン(絹フィブロイン)を配合したものであるかの如く、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと判断するのが相当である。

したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、第3類「せっけん類,おしろい,化粧水,クリーム」については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反してされたものである。

4 商標権者の意見

上記3の取消理由に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べた。

(1)自他商品識別力を具備しない商標は使用しても商標の識別機能が発揮され得ないことから、商標法第3条第1項各号は、自他商品識別機能を発揮し得ない例を規定している。このような本規定の趣旨からすれば、商標法第3条第1項第3号の「その商品の原材料」とは、例えば、商品「チョコレート」の原材料である「カカオ」、「ミルク」又は「砂糖」のごとく、その商品において普通にまた広く使われる原材料の意味であり、必ずしも、その商品の中に稀に使用され、或いは含有する可能性を有する全ての材料名又は成分名を含むものではない。

申立人が主張するように、商品「せつけん類、おしろい、化粧水、クリーム」の一部に「フィブロイン」成分を含むものが存在していたとしても、これらは一般的ではなく、また、例えばせつけん類を構成する成分は、エチレングリコール等の脂肪酸、化成ソーダ化合物、保湿材、香料、各種薬剤等々多種に及ぶものであり、本件商標は「せつけん類、おしろい、化粧水、クリーム」に関して、商標法第3条第1項第3号に規定する「その商品の原材料、品質」に該当するものではない。

過去の登録例を見ても、指定商品「ビール」についてその原材料の一つとして認識され得る標章「ホップス」が登録され(乙第1号証)、当該商品の原材料又は品質を表示するものではなく、現実に自他商品識別力を発揮している。

(2)また、「Silk」(「シルク」)とは、天然繊維の「絹」を意味するもので、蚕の繭から取った特有の光沢を有する繊維であることは、一般需要者又は取引者において広く知られている。そして、「Fibroin」(フィブロイン)は、「岩波理化学辞典第4版」(甲第1号証)によると、「硬蛋白質の1つ。セリシンとともに、昆虫とクモ類のまゆ糸の主成分で、その70%を占める。」と記載されている。しかしながら、当該用語は、有機化学の一分野において使用される専門用語であって、少なくとも日常的に使用されている言葉ではなく、前記専門分野外の一般の者(化粧品等の取引者又は需要者)が、その意義を認識しているものではない。このことは、日常用語を網羅した岩波国語辞典(乙第2号証)にその記載がないことからも判断できる。

そして、本件商標は、織物用の原料繊維又は糸、織物、被服等の「Silk」(絹)について使用するものではなく、「Silk」(絹)とはおよそ無関係であろうと通常認識される「せつけん類、おしろい、化粧水、クリーム」について使用するものである。

したがって、本件の指定商品に係る需要者又は取引者は、「Silk」「シルク」についてはその一般的意義を理解できるものの、「Fibroin」「フィブロイン」については、通常その意義を認識するものではなく、本件商標は、その指定商品に係る一般需要者又は取引者に対して「硬蛋白質の1つ。セリシンとともに、昆虫とクモ類のまゆ糸の主成分」との認識を与えるものではないといえる。このことは、例えば、乙第3号証が示すとおり、商品「せつけん類」について商標「Silk/絹」が使用されていたとしても、一般需要者又は取引者は、該商標の表示に基づいて、当該商品の「せつけん類」の中にシルク(絹)又はシルクの成分が含有されていると期待し又は認識するものではなく、現実的に品質の誤認を生じさせる事態とはなっていないことにより立証される。

よって、本願商標は、その指定商品「せつけん類、おしろい、化粧水、クリーム」の商品について品質の誤認を生じさせるおそれがあるものではなく、商標法第4条第1項第16号の規定に該当するものではない。

(3)以上のように、本件商標の登録は商標法の規定に違反するものではない。

5 当審の判断

本件商標は、登録異議の申立てに係る指定商品、第3類「せっけん類,おしろい,化粧水,クリーム」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものであるとの理由によりその登録を取り消すべきものとした前記3の取消理由は妥当なものであって、これについて述べる商標権者の意見は、以下の理由により、採用することができない。

(1)商標権者は、商標法第3条第1項第3号の「その商品の原材料」とは、その商品において普通に又は広く使われる原材料の意味であり、必ずしも、その商品の中に稀に使用され、又は含有する可能性を有する全ての材料名又は成分名を含むものではない。取消理由に挙示した商品の一部に「フィブロイン」成分を含むものが存在していたとしても、これらは一般的ではなく、また、例えばせつけん類を構成する成分は、エチレングリコール等の脂肪酸、化成ソーダ化合物、保湿材、香料、各種薬剤等々多種に及ぶものであり、本件商標は取消理由に挙示した商品に関して、商標法第3条第1項第3号に規定する「その商品の原材料、品質」に該当するものではない旨主張する。

しかしながら、申立人の提出に係る証拠によれば、甲第4号証の書籍に、「シルクパウダーの特性と化粧品への応用」として、「化粧品へ配合した場合に、絹特有の優雅で美しい光沢を与え、製品のイメージアップに大いに役立つ」と記載されるとともに、シルクパウダーは100%絹フィブロインの微粉末製品である旨が記載されている。そして、甲第5号証のインターネットの「シルクパック・夢美人」と記載された化粧品の広告を掲載したホームページには、「シルク・セリシンの美肌パック 絹の不思議 夢美人」の表題で、「『乾燥カサカサ肌』がつるつるになります」、「丹後でちりめんを織った後の残り絹糸からシルク蛋白質のフィブロインが取り出せます それを特殊な方法で美顔パックにしたのがこの夢美人」と記載され、同号証の「HABA Shopping」のホームページに、「Make−upの「O/Wファンデーション」商品として、「『シルクパウダー配合』絹タンパク質のフィブロインを粉末にしたシルクパウダー配合で肌にやさしく、なめらかな感触、上品な光沢が得られる。」と記載され、さらに、同号証の「Hoyu Beauty Salon」のホームページの白髪染の商品「HOYU lumiup color『excel』」について、「『シルクプロテイン』カイコの作り出す絹繊維を構成するタンパク質成分の絹フィブロインを低分子化した成分で、毛髪との適合性に優れていますので、毛髪表面を整えツヤを与えます。」と記載されていることが認められる。

上記事実によれば、「シルクフィブロイン(絹フィブロイン)」は、その特性から化粧品に応用されている実情にある上、化粧品に「シルクフィブロイン(絹フィブロイン)」を加えたことにより、優れた効能があるものとして宣伝されていることが認められる。そうすると、たとえ「シルクフィブロイン(絹フィブロイン)」が取消理由に挙示した商品の原材料として普通に、広く使用されているものではないとしても、本件商標をこれらの商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者に、その商品の原材料の一として「シルクフィブロイン(絹フィブロイン)」が使用されているものであることを表示したものと認識させるにとどまるものであるというべきであり、本件商標は、自他商品の識別機能を果たし得ないものといわざるを得ない。

(2)商標権者は、「Silk(シルク)」は天然繊維の「絹」を意味するもので、蚕の繭から取った特有の光沢を有する繊維であることは、一般需要者又は取引者において広く知られている。しかし「Fibroin(フィブロイン)」の語は、有機化学の一分野において使用される専門用語であって、少なくとも日常的に使用されている言葉ではなく、前記専門分野外の一般の者(化粧品等の取引者又は需要者)が、その意義を認識しているものではない。したがって、取引者、需要者は、「Silk(シルク)」についてはその一般的意義を理解できるものの、「Fibroin(フィブロイン)」については、通常その意義を認識することはない旨述べる。

しかしながら、本件商標は、「Silk Fibroin」及び「シルク フィブロイン」の文字よりなるものであるから、その文字構成からすれば、「Silk」「シルク」の文字は「Fibroin」「フィブロイン」の文字との関連で考察されるべきものであって、上記(1)のとおり、現に、「シルクフィブロイン(絹フィブロイン)」を原材料に使用した化粧品が開発され、そして「シルクフィブロイン(絹フィブロイン)」を利用したことにより特別の効能があるものとして宣伝され、販売されている実情が認められるのである。

(3)商標権者は、登録例を挙げて、本件商標は登録を維持されるべきである旨述べるが、これらの登録例は本件と事案が異なるものである。

(4)加えて、「商標法第3条第1項第3号の趣旨は、同号に列挙されている商標は、商品や役務の内容に関わるものであるために、現実に使用され、あるいは、将来一般的に使用されるものであることから、出所識別機能を有しないことが多く、また、これを特定人に独占させることは適切でないために登録することができないものとされていると解される。したがって、指定商品に係る原材料名が、仮に登録査定時には、現実に使用されておらず、あるいは、一般には知られていない場合であっても、将来原材料名として使用されて、取引者、需要者の間において商品の原材料名であると認識される可能性があり、また、これを特定人に独占させることは適切ではないと判断されるときには、右の原材料名は同号に該当すると解される。」(東京高等裁判所、平成11年(行ヶ)410号、平成12年6月13日判決言渡)との判決がある。

以上からすると、商標権者の上記主張は採用することができないといわなければならない。

(5)してみれば、本件商標は、登録異議の申立てに係る指定商品中「シルクフィブロイン(絹フィブロイン)を配合したせっけん類,おしろい,化粧水,クリーム」について使用するときは、単にその商品の品質、原材料を表示するにすぎないものであり、前記商品以外の「せっけん類,おしろい,化粧水,クリーム」について使用するときは、シルクフィブロイン(絹フィブロイン)を配合したものであるかの如く、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、結論掲記の指定商品についての登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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