Trademark Appeal Case
周知商標との混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90457号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4216724号商標(以下「本件商標」という。)は、平成8年5年10日に商標登録出願され、別掲のとおり「BEVERLY HILLS POLO CLUB」の文字を表してなり、第27類「敷き物,洗い場用マット,人工芝,体操用マット,プラスチック製の壁板・タイル及び床板,リノリューム製の壁板・タイル及び床板,壁掛け(織物製のものを除く。),壁紙」を指定商品として、同10年12月4日に設定登録がなされたものである。
2 取消し理由の要旨
本件商標は、「BEVERLY HILLS POLO CLUB」の欧文字を表してなるものである。
ところで、馬に乗ったポロ競技プレーヤーの図形及び「POLO」「Polo」「ポロ」等の文字よりなる商標は、以下の証拠により、アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンに係るものとして、商品「被服、装身具、香水、眼鏡」等に長年使用され、本件商標に係る出願前から需要者の間に広く知られている商標と認められる。
すなわち、株式会社講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」、サンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」の記載によれば、以下の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出し、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞した。1974年に映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。その頃からその名前は我が国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字と共に「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の各商標が用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれている(別掲引用商標参照)。
そして、株式会社洋品界昭和55年4月発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」「ポロ/Polo」の項及びボイス情報株式会社昭和59年9月発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項の記述及び昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、我が国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。また、ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、株式会社スタイル社1971年7月発行「dansen男子専科」を始め、前記「男の一流品大図鑑」、株式会社講談社昭和54年5月発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、株式会社チャネラー昭和54年9月発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」(昭和55年11月発行)、「世界の一流品大図鑑’80年版」(昭和55年11月発行)、婦人画報社昭和55年12月発行「MEN’S CLUB1980,12」、「世界の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年6月発行)、前記「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、株式会社講談社昭和60年5月発行「流行ブランド図鑑」のそれぞれにおいて、眼鏡については、「世界の一流品大図鑑’80年版」、「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」、「世界の一流品大図鑑’81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下に紹介されていることが認められる。
以上によれば、本件商標は、その構成中に「POLO」の文字を有するものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合には、前記実情から、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「POLO」の文字に注目して、前記周知になっているラルフ・ローレンに係る商標を連想・想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標権者の意見の要旨
(1)そもそも「POLO」の語は、馬上球技の名称であるところ、ポロ競技者が愛用したシャツ類が「ポロシャツ」と一般的に呼ばれているように普通名称に過ぎない。
(2)また、本件商標は上記の構成よりなるところ、これよりは「ビバリーヒルズポロクラブ」の称呼及び「ビバリーヒルズのポロ愛好者クラブ」と言った観念を生ずるものである。したがって、かかる構成からすれば、本件商標が単に「ポロ」とのみ認識されることは想定できない。このことは、平成11年(行ケ)253号高裁判決の内容からも明らかである。
(3)また、商標権者は、1985年に当時ラルフ・ローレンの商標を所有していたポロ・ファッションズ・インコーポレイテッドと同意契約書(乙第2号証)をかわしており、商標権者による本件商標の使用及び登録は、当該同意契約書によって、ラルフ・ローレン社側が同社の「POLO」商標とは明確に区別されるものとして容認しているところである。この同意契約書は米国のみならず全世界における商標の使用及び登録を対象とする包括的なものであって、契約締結者の承継人をも拘束するものである。
したがって、本件商標の使用及び登録に関しては、ラルフ・ローレン側及びその承継人が何ら異議を唱えるようなものではなく、更に両当事者が認めているとおり、本件商標は、ラルフ・ローレン側の商標と出所混同を生ずるおそれがあるものではない。また、上記契約書締結以降既に10余年にわたり、本件商標は我が国において各種商品につき使用されてきたが、現にラルフ・ローレン側の商標との混同による問題は生じていない。
さらに、本件商標権者とラルフ・ローレン側の両当事者の各商標が、世界主要国において区別されて登録されていることが明らかであり、特に商標権者による広範囲の商標登録の存在は、国際的レベルにおいて、それがラルフ・ローレン側の商標との「出所の混同」等を問題にされるようなものではない。
4 当審の判断
本件商標登録については、平成12年5月23日付けで前記2の取消理由を通知したものであるところ、この取消理由は妥当なものと認められる。
商標権者の意見は以下の理由で採用できない。
(1)商標権者は、そもそも「POLO」の語は、馬上球技の名称であるところ、ポロ競技者が愛用したシャツ類が「ポロシャツ」と一般的に呼ばれているように普通名称に過ぎないと述べる。
しかし、東京高裁平成11年(行ケ)290号判決(平成11年12月16日判決言渡)及び東京高裁平成12年(行ケ)49号判決(平成12年7月18日判決言渡)において判示しているように、「ポロシャツ」を「ポロ」と略称される例があるとしても、商品に使用された「POLO」の語に接した取引者・需要者がラルフ・ローレンあるいはポロ社に関係する商品と識別するか否かにそのことが関係するのは、「POLO」の語が普通名称として用いられている可能性が認識される場合に限られ、本件指定商品のように、「ポロシャツ」が含まれないような場合には関係しないことは明らかである。
(2)商標権者は、東京高裁平成11年(行ケ)253号の平成12年1月27日付け判決では、結合商標中に「POLO/ポロ」が含まれているから、ラルフ・ローレンの「POLO/ポロ」を連想するかどうかは個別具体的に判断するべきと判示した上で、「PALM SPRINGS POLO CLUB/パームスプリングスポロクラブ」は世界的に有名な保養地である「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」と認識されるため、ラルフ・ローレンの「POLO/ポロ」が有名であったとしても「PALM SPRINGS POLO CLUB/パームスプリングスポロクラブ」より「POLO/ポロ」の文字のみが注目されると解することはできないと判示していると述べる。
しかし、商標「ROYAL PRINCE POLO CLUB」において、東京高等裁判所における平成11年(行ケ)第290号審決取消請求事件(平成11年12月16日判決言渡)では、「一方、球技としてのポロは、わが国においてはほとんどなじみのないものであることは、当裁判所に顕著な事実である。そうすると、被服等のファッション関連商品に『POLO』,『Polo』,『ポロ』の文字が使用されると、これに接した取引者・需要者は、球技としてのポロに関係する商品とは認識せず、ラルフ・ローレンあるいはポロ社に関係する商品と認識する蓋然性が極めて高いということができる。そして、本願商標の指定商品はファッション(装身に関する流行)関連商品にほかならないから、これに『POLO』の文字を使用した場合も、これに接した取引者・需要者は球技としてのポロに関係する商品とは認識せず、ラルフ・ローレンあるいはポロ社に関係する商品と認識する蓋然性が極めて高いことになるのである。」と判示しており、さらに商標「ASCOT PARK POLO CLUB」における東京高裁平成11年(行ケ)第340号審決取消請求事件(平成12年7月18日判決言渡)、商標「HOLLYWOOD POLO CLUB」における東京高裁平成12年(行ケ)第49号審決取消請求事件(平成12年7月18日判決言渡)、商標「ROYAL PRINCE POLO CLUB」における東京高裁平成12年(行ケ)第92号取消決定取消請求事件(平成12年10月16日判決言渡)も同様の立場に立った判示をしているものである。
本件商標中の「BEVERLY HILLS」の文字がわが国においてよく知られているものであるとしても、「BEVERLY HILLS」及び「POLO CLUB」が意味する「ビバリーヒルズのポロクラブ」が我が国においてよく知られているものとは認められないこと、また、球技としてのポロは我が国においてはほとんどなじみのないものであること及び本件指定商品はファッション関連商品を含むものであるか若しくは同一デザイナーによる統一ブランドの下にトータル的にファッションをまとめようとする商品群の一つとなりうるものであることよりすれば、前記認定のとおり本件商標に接した取引者・需要者は、球技としてのポロに関係する商品とは認識せず、ラルフ・ローレンあるいはポロ社に関係する商品と認識する蓋然性が極めて高いというのが相当である。
(3)また、商標権者は前記3(3)のように主張しているところ、乙第2号証によれば、商標権者はラルフ・ローレンの商標を所有していたポロ・ファッションズ・インコーポレイテッドと同意契約書をかわしており、その中で商標権者による本件商標の使用及び登録は、ラルフ・ローレン社側が容認し、また、ラルフ・ローレン社側は商標権者に対しての商標権侵害等の主張をしない契約をしている事実が認められる。
しかし、本件商標と、ラルフ・ローレンの「POLO」の商標とが、全く混同を生ずるおそれがなければこのような契約がなされることはないというのが自然である。また、商標権者は上記契約締結以来10余年にわたり、本件商標は我が国において各種商品につき使用されてきたが、現にラルフ・ローレン社側の商標との混同による問題は生じていないと述べる。しかし、上記契約の締結をした結果、契約当事者間で問題が生じていないにすぎないと考えられ、そのことをもって取引者・需要者において商品の出所の混同を生ずるおそれがないとはいえない。
さらに、本件商標と、ラルフ・ローレンの商標とが我が国以外の国において区別され登録されているとしても、我が国の取引の実情からすれば、両商標を使用したときに、商品の出所の混同を生じないということはできない。
(4)以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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