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Trademark Appeal Case

著名人名商標の登録可否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35685号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4261692号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件商標

本件登録第4261692号商標(以下、「本件商標」という。)は、「TOM FORD」の欧文字を横書きしてなり、平成9年12月27日に登録出願、第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製胡桃割器・胡椒入れ・砂糖入れ・塩振出容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆・ようじ入れ・花瓶・針箱・宝石箱・蝋燭消し・蝋燭立て・がま口・靴飾り・コンパクト・財布・喫煙用具,身飾品,宝玉及び原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ,記念たて」、第18類「皮革,鞄類,袋物,携帯用化粧道具入れ,鞄金具,がま口口金,傘,ステッキ,杖,杖金具,杖の柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成11年4月16日に設定登録されたものである。

2.請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第79号証を提出した。

本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第15号及び同第7号に違反して登録されたものである。

(1)請求人の略歴

請求人(本名トーマス シー.フォード)である(甲第2号証)、「TOM FORD」(トムフォード)は、1961年アメリカのテキサス州オースティンに生まれ、ニューヨークでインテリアデザインと建築を専攻し、その後、パリに留学した。1990年にグッチのデザインチームに参加、レディースウェアのチーフデザイナーを任される。1994年にはグッチのクリエイティブ・ディレクターに就任し、グッチの全商品のデザインの責任者となった。そして、1993年頃には経営危機に陥っていたグッチを完全復活させた者としてファッション分野で著名なものとなっている。1996年には、VH−1ケーブルネットの最優秀新人デザイナー賞、CFDAインターナショナルでデザイン賞を受賞した。

(2)請求人の著名性 請求人は、「TOM FORD」(トムフォード)」が著名であることを立証する資料として朝日新聞関係の新聞・雑誌のデータベースからの打ち出し及びELNETなるデータベースから打ち出した新聞記事の写しを提出する(甲第3号証ないし甲第78号証)。

これら新聞・雑誌記事中には同人の著名性を伺わせるものが多数存在する(甲第5号証及び甲第6号証、甲第11号証及び甲第12号証、甲第16号証、甲第24号証及び甲第25号証、甲第63号証)。

なお、提出した新聞記事の中には本件商標の登録出願後のものがあるが、これら新聞記事はトムフォードの宣伝広告のためのものではない。そもそも、このような新聞記事は世間の注目を集めるものを対象にして書かれるものである。してみれば、トムフォードが新聞記事に取り上げられたこと自体が同氏がすでに著名なものとなっていたことを意味する。トムフォードは本件商標の登録出願後に突然世間の注目を集めたのではなく、クリエイティブ・ディレクターに就任した1994年以降注目を集め始めたことからすれば、1998年及び1999年に著名であれば、経験則上本件商標の登録出願された1997年12月27日以前も著名であった。

その記事中には、トムフォードの本件商標の登録出願前の業績を述べていることによって、同氏の本件商標の登録出願前の著名性を直接的に立証できるものが数多くある(甲第25号証及び甲第32号証)。また、これら記事の記載は、いずれも、トムフォードが「グッチ」を再生させてグッチの顔のような存在となっている旨が述べられている。

以上述べたこと及び提出した証拠から、「TOM FORD」はファッション関係を中心にグッチのデザイナーとして本件商標の登録出願前に本件商標の指定商品であるファッション関係の商品について需要者間で著名なものであった。

(3)商標法第4条第1項第8号違反について

本件商標「TOM FORD」は、請求人のデザイナー氏名からなるものである。よって、本件商標は、請求人を表すものと認識され、当該商標の使用は請求人の人格権を毀損する。そして、被請求人は本件商標の登録にあたり請求人から承諾を得ていない。

(4)商標法第4条第1項第15号違反について

本件商標の指定商品である商品のファッション業界ではデザイナーの氏名をブランドとして採択し、デザイナーのデザイナーズブランドが頻繁に採択使用されている。そうであるとすれば、著名なデザイナーである「TOM FORD」の氏名からなる本件商標がその指定商品に使用された場合には、商品が「TOM FORD」のデザイナーズブランドに係るものであるかの如く、商品の出所の混同を生じる。

(5)商標法第4条第1項第7号違反について

本件商標の登録出願前に、少なくとも、「TOM FORD」はグッチを再建したデザイナーとして、我が国のファッション関係者の間で知られた存在であった。つまり、「TOM FORD」のグッチを再建したという名声はすでにファッション関係では知られていた。

このような名声のある者の氏名を自己の商標として盗用することは商業道徳に反し、取引秩序を乱すものとなる。

したがって、取引の秩序を乱す商業道徳上に反して採択された本件商標はこの規定に該当する。

3.被請求人の主張

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第49号証(枝番号含む。)を提出した。

(1)請求人の提出した甲第18号証ないし甲第78号証は、本件商標の登録出願後に刊行されたものである。

商標法第4条第3項には「第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に該当しないものについては、これらの規定は適用しない。」とある。

(2)甲第2号証(現代英和辞典)の「Tom」の項に付いては争はない。

「Ford」は、「Gerald Rudolf Ford(アメリカの政治家、第38代大統領)」、「Henry Ford(アメリカの自動車製造者、Ford自動車の創業者)」とあるように、大統領から自動車王まで由緒ある姓ではあるが、ありきたりな姓である。

「Tom/トム」は、Thomasの愛称であり、日常使われている姓名の一つに過ぎない。

(3)甲第4号証(朝日新聞の「アエラ」の1996年3月5日の記事)及び第5号証(朝日新聞の「アエラ」の1996年4月22日の記事)。

トムフォードは、4回出ている事は認める。また、トムフォードに「自分独自のcollection line(収蔵品商品)を作らないかと、日本の企業から申し出が相次いでいる」と言う。このことが、トムフォードの商標を付した商品が出回っていると言う事にはならない。トムフォードは優秀な服装設計者であり、グッチを蘇らせ、売上を増加させ、ミラノを世界の一流都市にさせた功労者の一人であると言う事は認める。

(4)甲第6号証(「アエラ」の1996年6月24日の記事)。

トムフォードは衣装の設計者ではあって、ブランド・商標とは関係がない。

(5)甲第7号証(「アエラ」の1996年6月24日の記事)。

「Tom Fordは1961年にアメリカに生まれ、1990年、29歳の年に、グッチーの意匠班に入り、婦人服の主任設計者を任され、1994年に創造的な管理監督者になり、全世界に展開するグツチの広告や店頭配置の直接指導に当たっている。」と記載されているが、このことは被請求人の商標とは直接にはつながらない。

(6)甲第8号証(「アエラ」の1996年5月12日の記事)。

「各国が若手意匠設計者に切り替え、グッチ社もトムフォードで成功した。」との記事も、被請求人の商標が無効になると言うことにはならない。

(7)甲第10号証(報知新聞の1997年6月7日の記事)。

小室哲哉がグッチのチャリティーで寄付したとか、トムフォードと面識があることが、トムフォードは有名な存在であると言われても、本件商標とはあまり関係がない。

(8)甲第15号証(流通サービス新聞の1997年11月4日の記事)。

グッチと言う会社は、1922年に創業されたが、業績不振を続け、ドメニコ・デ・ソーレが経営の最高責任者に成り、トムフォードを創造的管理監督者にしてから、3年間で売上が4倍の約1000億円になった。

しかし、グツチと言う会社はグッチ銘柄が商標である。トムフォードは意匠・衣装設計者としていかに優れていても、トムフォードの商標で売ってはいない。なぜなら、トムフォードは今はグッチの看板設計者であっても、永遠にグッチの設計者であり続ける保証はない。

(9)甲第18号証ないし甲第79号証については、本件商標の登録出願後の資料であって、商標法の適用外の資料である。

本件商標の登録出願前の資料が甲第3号証ないし甲第17号証に対し、登録出願後の資料が約4倍であり、本件商標の登録出願後にトムフォードの名前が売れた事を示している。

(10)被請求人は、「FORD/フォード」(フォード自動車株式会社の名称)、「STANFORD」(STANFORD大学の名称)、「OXFORD」(オックスフォード大学の名称又は所在地)、「CAMBRIDGE」(ケンブリッジ大学の名称又は所在地)等の文字が、本人以外の者によって登録されている事実を挙げて反論する(乙第1号証ないし乙第47号証)。

(11)請求人の略歴について

請求人の略歴について、1994年には、グッチのクリエーティブ・ディレクター(創造的衣装・意匠演出家・創造的管理監督責任者)になってグッチの中興の祖になった事は認めるが、「1993年頃には経営危機に陥っていたグッチを完全復活させた者としてファッション(流行)分野で著名なものとなっている。」については争う。甲第3号証から甲第78号証には載っていない。

(12)請求人の著名性について

日本での評価は、18位で外国人だけでは8位である。トムフォードより有名な人は7人もいる訳で、世界一の意匠・衣装設計者ではない。「この利益を生む金の卵である、トムフォードにはグッチとは別に自分のコレクションラインを作らないかと、日本の企業からの申し出が相次いでいると言う」が、これは推測の記事である。

(13)商標法第4条第1項第8号違反について。

請求人は、「当該商標の使用は請求人の人格権を毀損する。」と言うが、被請求人は本件商標を使用した事はなく、人格権なるものを毀損した事実はない。使用した場合は不正競争防止法で裁判で決着を付けるべき問題である。本件商標の審判は商標法の問題であって、商標使用をめぐる不正競争防止法の争いではない。有名な地名や姓名も指定商品によっては何件も登録されている(乙第2号証ないし乙第9号証及び乙第11号証ないし乙第48号証)。トムフォードの著名性については、商標法第4条第3項で争う。

(14)商標法第4条第1項第7号違反について

請求人は、「ただ乗り(Free Ride)」と主張するが、商標法第4条第3項で争う。

4.当審の判断

請求人の提出した甲各号証の発行日をみると、甲第3号証ないし甲第17号証は、本件商標の登録出願日(1997年12月27日)前であり、それ以外の証左(甲第18号証ないし甲第79号証)は、本件商標の登録出願後のものであるから、必ずしも本件を判断する証左として採用できないとしても、以下の事実が認められる。

(1)甲第2号証(現代英和辞典)をみると、「トム(Tom)」が「トーマス(Thomas)」の愛称である、と記載されていることよりして、「TOM FORD(トムフォード)」は、請求人(トーマス シー.フォード)の略称ないしは愛称であると認められる。

(2)甲第6号証及び甲第7号証のデータベースから打ち出された、雑誌「アエラ(1996年6月24日発行)」の掲載記事をみると、「TOM FORD(トムフォード)」は、1961年にアメリカのテキサス州オースティンに生まれ、ニューヨークの「パーソンズ・スクール・オブ・デザイン」でインテリアデザインと建築を専攻、1990年にグッチのデザインチームに参加、レディースウエアのチーフデザイナーを任される、1994年にクリエイテブ・ディレクターに就任、全世界で展開するグッチの広告や店頭ディスプレイなども、直接指揮している、1996年にVH−1ケーブルネットの最優秀新人デザイナー賞、CFDAインターナショナルデザイン賞を受賞していること及びその表紙に登用されていることが認められる。

(3)さらに、甲第3号証ないし甲第17号証の雑誌・新聞等に記載された記事に徴すれば、「TOM FORD(トムフォード)」が、「グッチ(Gucci)」のクリエイテブ・ディレクターに就任し、「グッチ(Gucci)」の全商品のデザインの責任者となったこと、経営危機に陥っていたイタリアファッションの名門ブランド「グッチ(Gucci)」を、再び世界的な人気ブランドに蘇らせた原動力の一人が、「TOM FORD(トムフォード)」であったこと等デザイナーとして「TOM FORD(トムフォード)」に関する記事が頻繁に掲載されていることが認められる。

以上の事実を総合してみれば、被服等のファッションデザイナーである「TOM FORD(トムフォード)」は、請求人の略称(愛称)として、被服等のファッション関連商品の分野で、本件商標の出願前より取引者・需要者の間に広く認識されていたものと判断するのが相当である。また、現在もなおその著名性は継続しているものと認められる。

そこで、本件商標をみると、本件商標は、前記したとおり「TOM FORD」の欧文字よりなるものであり、その指定商品もファッションに関連するものであるから、請求人の氏名の著名な略称よりなるものといわざるを得ないものであって、本件商標の登録について請求人の承諾があったものということはできない。

したがって、本件商標は、他の無効理由について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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