結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第30041号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
1.本件商標
本件登録第2076432号商標(以下、「本件商標」という。)は、「Bear」の欧文字と「ベアー」の片仮名文字とを上下二段に書してなり、第3類「塗料」を指定商品として、昭和60年8月15日に登録出願、同63年9月30日に設定登録され、その後、平成10年10月27日に商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。
2.請求人の主張
請求人は、「登録第2076432号商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由および被請求人の答弁について次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第3号証を提出している。
(1)本件商標の商標権者は、日本国内において、本件商標を継続して3年以上「塗料」について使用していない。また、商標登録原簿上は、本件商標に専用使用権或いは通常使用権が設定・許諾されている事実も見当たらない(甲第1号証)。
よって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)被請求人は、平成10年2月10日の納品に係る総合カタログ(乙第1号証)の表紙・裏表紙・第2頁及び第3頁の記載を摘示し、本件審判請求に係る本件商標は塗料に属する「シャーシーペイント」について使用されていると主張しているが、被請求人が使用していると主張する商標(以下、「使用商標」と称す。)の態様は何れも「ベアーブランド」であって「Bear/ベアー」ではない。このように標章の構成語それ自体が異なる以上、これと取消請求の対象となっている本件商標との間で同一性を欠くこと明らかであるから、被請求人は登録商標の使用を証明していないというべきである。
この点について被請求人は、使用商標の後半に位置する「ブランド」の語が、「商標そのものを意味する語として、取引会で常用されて」おり、「自他商品識別力を有するもの」ではないことを理由に、両者は社会通念上同一の商標と目するべきと主張する。
しかしながら、商標の構成語の一部が自他商品識別力を有するか否かということは、類似範囲の決定に当たっては重要な意味を持つものの、対比すべき商標が同一であるか否かという問題とは直接関係がない。法が「同一」という概念のほかに「類似」概念を採用している以上、要部の共通する商標を全て「同一の商標」として取り扱うが如き被請求人の主張は失当である。本件商標と使用商標とは、相互に類似の関係にあるやもしれないが、これを社会通念上「同一」の商標と解することは無理があるといわざるを得ない。平成8年法律第68号による改正後の不使用取消審判の規定で社会通念上同一と解し得る商標の範囲が例示されたこと(法第50条第1項括弧書き)の経緯や、旧商標法(平成8年法律第68号)下での更新登録出願の審査で用いられていた登録商標と使用商標との同一性の判断基準等に照らしても、被請求人の主張が合理性を欠くことは明らかである。
なお被請求人は、本件商標「Bear/ベアー」と使用商標「ベアーブランド」が社会通念上同一であると主張する一方で、同人の取扱商品の殆どをカバーする「化学品」については、自然的称呼が「ベアーブランド」となるような商標を登録しているようである(甲第2号証及び甲第3号証)。本件商標と使用商標が社会通念上同一であることの認識の下で自己の業務に係る商品を表象するのであれば、化学品についてのみ「ベアーブランド」の自然的称呼を生ずるとする商標を登録する必要はない(因みに被請求人の有する登録商標の殆どは化学品に係るものである。)。このような事情からすると被請求人の主張は一貫性を欠くといわざるを得ないし、「ベアー」と「ベアーブランド」が同一であるというような無理な解釈をしてまで本件商標の登録を維持させるだけの合理性も乏しいものというべきである。
(3)請求人は、インテリア及びエクステリア用の塗料について「ベアプレミアムプラス」の自然的称呼を生ずる商標を出願したところ、これに対して本件商標を引用され拒絶理由を通知されている。請求人の出願に係る前記商標の付された商品と本件商標の付された商品との間で真に出所混同が生ずのかどうか未だ疑問の残るところではあるが、少なくとも、本件商標が被請求人による「ベアプレミアムプラス」の権利取得の障碍となっていることは事実である。
このように、他人の商標登録を排除できるだけの努力を登録商標に与える以上、それに求められる使用義務もある程度は厳格なものでなければならない。そうとすれば、商標の相違が一般的に用いられる「ブランド」の語の有無のみによるものとしても、本件商標そのものが使用されているわけでないことを重視し、権利収得に対し制約を受けている本件審判請求人(類似と認定された)商標の登録の途を与えることこそが、登録主義に修正を施すという意味で商標法の目的に叶ものである。本件は、和英二段書きの登録商標が欧文字のみ、或いは、片仮名文字のみで使用されているといった単純な事例ではないので、両商標の間の齟齬を請求人の不利となるように解する必要はない。本件商標と使用商標との不一致により受けるべき不利益は、使用義務を果たしているとは言い難い商標権者こそが負うべきである。
(4)その他、提出されている各乙号証をみても、本件商標が使用されている事実を示すものは何ら提出されていない。
よって、その余の被請求人の主張を検討するまでもなく、提出された各証拠によっては登録商標の使用が立証されていないものである。
3.被請求人の主張
被請求人は、結論掲記の審決を求める、と答弁し、その理由及び被請求人の弁駁について次ぎのようの述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第3号証を提出している。
(1)本件商標は、本件審判請求日前より審判被請求人である商標権者によって使用されている。
(2)本件商標は「ベアーブランド」商標として商品「塗料」に使用されている。
1)総合カタログでの使用
審判被請求人は商標権者として自ら、「ベアーブランド」商標を総合カタログ中で使用している(乙第1号証添付のカタログ参照)。
この総合カタムグでは、表紙と裏表紙、3頁の塗料である商品「シャーシーペイント」について商標「ベアーブランド」が使用されている。即ち、総合カタムグの表紙には、表題部分に「ベフーブランド」と表記されている。また、裏表紙には「ベアーブランド」に対応する商品名が一覧表形式で表示されている。更に、2頁左上段には「ベアーブランド」の文字が表記されており、3頁左欄には、下記の3種類の商品が表示されている。
「14 シャーシーペイントブラック 油性」
〈WD〉水溶性 」
ここで「シャーシーペイント」は、自動車のシャーシーに用いられる防錆塗料であり、「ブラック」は黒色であることを示している。この総合カタログは最新のものであるが、乙第1号証に示すように、株式会社第二印刷所が印刷して平成10年2月10日に10000部が審判被請求人に納品されている。
2)商品での使用
乙第1号証に添付の総合カタログの3頁左欄の各写真で明らかなように、商品「シャーシーペイント」の容器には商標「ベアーブランド」が付されている。
この「ベアーブランド」商標が付された「シャーシーペイント」の販売例として、1998年12月22日に審判被請求人から明治産業株式会社宇都宮営業所に20缶が販売されている。
即ち、乙第2号証で示す1998年12月22日付けの審判被請求人の売上伝票には、明治産業株式会社宇都宮営業所あてに「CF512 シャーシーペイントブラックWD 14Kg」が20缶販売された記載がある。ここで上記「CF512」は乙第1号証に粉部のパンフレットの3頁左欄の最下段の票の最下行に表示されているように「シャーシーペイントブラック」の品番であり、また「WD」は区分(オールシーズンタイプ)である。 上記乙第2号証の売上伝票に対応して、乙第3号証には、上記商品1998年12月22日付けで20缶購入した事実が購入者の明治産業株式会社宇都宮営業所の営業所長 松原 茂氏により証明されている。
3)「ベアーブランド」商標について
本件商標は「ベアー」であり、使用商標は「ベアーブランド」である。「ブランド」は商標そのものを意味する語として、取引界で常用されている語であるから自他商品識別力を有するものではなく、「ベアーブランド」は社会通念上「ベアー」と同一であり、本件商標と同一性を有するものである。
(3)請求人は、使用商標「ベアーブランド」が、本件商標「Bear/ベアー」とは社会通念上同一でない、と主張している。
請求人は、その理由として商標法第50条第1項但し書きの規定と、更新登録出願の際の同一性の判断基準があるとしているが、請求人の主張を裏付ける具体的内容については何も明らかにしていない。
ここで、商標法第50条第1項但し書きの規定は、改めて述べるまでもないが、社会通念上で同一であると認識しうる範囲の使用を登録商標の使用と認める運用をより一層弾力的なものとするために行われるものであって、パリ条約5条C(2)の趣旨の我が国への適用を明確にしたものと謂え、同一性の範囲を限定した規定ではない。
また、使用商標で付加された「ブランド」の語は、自他商品識別力がなく「商標」「銘柄」「印」などを意味する語として広く親しまれており、この「ブランド」を商標に付加して「○○ブランド」と使用していることは例を挙げるまでもなく産業界において広く行われている。
このような産業界の実情に照らせば、前記使用商標は、本件商標と社会通念上同一であると、謂わなければならない。
また、更新登録出願の際の同一性の審査基準との関係では、「登録文字と他の文字、図形または記号との同時使用の場合」の例として、「VHC」→「水冷VHC圧縮機」が同一性を有するとされている。
したがって、商標に識別力の無い語を付加した場合は同一性はなく類似となる、とするのは請求に人の独自の解釈に過ぎず合理性がない。
(4)請求人は、各乙号証をみても、本件商標が使用されている事実を示すものは何ら提出されていない、と主張しているが、前述のように「ベアーブランド」は本件商標と社会通念上同一であるから、使用の事実は明らかである。
(5)請求人は、被請求人が第1類で自然的称呼が「ベアーブランド」となるような商標を登録していると、主張して商標登録第1998541号と商標登録第2081657号を甲第3号証として提出している。
しかし、甲第号証のリストには何故か記載されていないが、被請求人は、このように「ベアー」を要部とする種々の商標を「ベアーブランド」だけでの商標管理をしているものでないので、請求人の主張の誤りを指摘ししておく。
4.当審の判断
被請求人の提出に係る乙1号証ないし同第3号証を総合勘案してみれば、被請求人(商標権者)は、商品「シャーシーペイント」について「ベアーブランド」の文字よりなる商標を付して、平成10年12月22日付けで「シャーシーペイントブラック20缶」、明治産業株式会社宇都宮営業所に販売したことが認められる。そして、上記事実については、当事者間に争いがない。
そして、「ベアーブランド」の文字よりなる商標は、その構成中の「ブランド」の文字が「商標」「印」等を意味する「brand」に由来する外来語として広く知られている語であって、該語は他の文字に付されて「○○ブランド」のように使用されるところであるから、自他商品の識別標識としての機能を有するものとはいえず、「ベアーブランド」の文字よりなる商標に接する取引者・需要者をしてその構成中の「ベアー」の文字を自他商品識別標識としての機能を果たし得る部分と認識される。
そうしてみると、「ベアーブランド」の文字よりなる商標と「Bear/ベアー」の文字よりなる本件商標とは、その標章の構成において差異を有するとしても、その差異が登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えず、かつ、商標の同一性を損なわない場合に該当するものであるから、両者は社会通念上同一の商標として認識・把握される。そして、商品「シャーシーペイント」は本件商標の指定商品中に包含されているものである。
してみると、被請求人は、本件商標と社会通念上同一のものと認め得る商標を本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件指定商品中「シャーシーペイント」に使用していたものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべき限りでない。
以上のとおりであり、請求人の審判請求は理由がないから成り立たないものとし、審判費用の負担については、商標法第56条第1項、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。
よつて、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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