Trademark Appeal Case
「ふくだけ」の識別力と称呼
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 判定2000−60147(T2000−60147/J6) |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | other |
理由テキスト
1 本件商標
本判定請求に係る登録第4366654号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示したとおりの構成よりなり、第21類「清掃用具及び洗濯用具,靴磨き布,家事用手袋」を指定商品として、平成12年3月10日に設定登録されたものである。
2 イ号標章
請求人が商品「洗浄成分を染み込ませた自動車ボディー洗車用不織布」に使用する標章として示したイ号標章は、別掲(2)に表示したとおりの構成よりなるものである。
3 請求人の主張の要点
請求人は、「商品『洗浄成分を染み込ませた自動車ボディー洗車用不織布』について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する」旨の判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第15号証を提出している。
(1) 請求人は、本件商標の商標権者であるが、イ号標章が商品「洗浄成分を染み込ませた自動車ボディー洗車用不織布」に使用される場合に、イ号標章の使用は本件商標の商標権の効力の範囲に含まれるものであるか否か、本件商標の商標権の効力の範囲を中立的立場から判断される判定を請求し、その結果により本件商標の商標権の効力の範囲を客観的に確認したい。よって、本件判定を求める次第である。
(2) 本件商標の構成中の「ふくだけ」の文字及びイ号標章の構成中の「ふくだけ」の文字は、双方共に自他商品識別の機能を有する。なぜなら、「ふくだけ」の文字からは「何がどうなる」といった事項の一切が不明であって、何ら商品の品質等の意味合いを有するものではないからである。このことは、例えば、指定商品との関係において、本件商標及びイ号標章の「ふくだけ」の文字部分と似通った意味合いを有してながらも登録されている事例があることからもわかる。
(3) イ号標章の構成中の「ザ」の文字は、「ふくだけ」の文字に英語の定冠詞として知られる「the」の表音をカタカナ書きで冠してなるものであって、「ふくだけ」の文字を強調するためのものであると考える。また、イ号標章の構成中の「・」の中黒は、「ザ」の文字と「ふくだけ」の文字を区切るためのものである。しかも、「ザ」の文字はカタカナ文字、「ふくだけ」の文字はひらがな文字で書しており、これもまた異なっている。したがって、簡易迅速を旨とする取引の場では定冠詞の部分を省略し、中黒で区切られた、ひらがな文字の「ふくだけ」の文字より生じる称呼を以て取引に当たる場合もあると考える。よって、イ号標章からは「フクダケ」の称呼も生じる。このことは、過去に同様の審決例があることからもわかる。
(4) 上述したことからすれば、本件商標及びイ号標章の構成中の「ふくだけ」の文字は、自他商品識別の機能を有する。そして、イ号標章からは「フクダケ」の称呼も生じる。一方、本件商標は、「図形+SOFT99/ふくだけ」の文字よりなるものであるので、その構成からは「ふくだけ」の文字部分が視覚的に分離されて「フクダケ」の称呼も生じる。よって、両者は称呼において互いに類似する。また、本件商標に係る指定商品とイ号標章の使用商品である「洗浄成分を染み込ませた自動車ボディー洗車用不織布」とは、同一又は類似の商品である。以上のとおり、イ号標章は、本件商標と称呼において相紛れる恐れのある類似の商標であり、イ号標章を使用する商品が本件商標に係る指定商品と相抵触するものである以上、イ号標章をその商品「洗浄成分を染み込ませた自動車ボディー洗車用不織布」に付して使用することは、本件商標の商標権の効力の範囲に属する。
4 当審の判断
本件商標とイ号標章は、上記のとおりの構成よりなるところ、いずれにも「ふくだけ」の平仮名の文字が含まれているが、その平仮名に相応するものとしては、「福だけ」、「拭くだけ」、「吹くだけ」、「噴くだけ」、「葺くだけ」、「服だけ」等の意味を異にする種々の文字がある。しかして、本件商標の指定商品は、例えば、雑巾、モップ、靴磨き布等を含むものであり、また、イ号標章の使用に係る商品は、「洗浄成分を染み込ませた自動車ボディー洗車用不織布」であるところ、その種の商品分野をみるに、例えば、1991年11月7日の朝日新聞(大阪地方版/兵庫)には、「新タイプのぞうきん(使ってみました)」の見出しの下に「・・・ふくだけで落ちる新しいタイプのぞうきん。手あか、油汚れ、湯あかも洗剤を使わずに落としてくれます。」と、1996年2月23日の毎日新聞(東京朝刊)の23頁には、「床をピカピカに保つために...ワックスを上手に−−年1回は塗り直したい」の見出しの下に「車磨きは多種多様――洗剤とワックス兼用、スプレー式、ふくだけ...」とあり、さらに、「・・・ふくだけでいい布などもでき、簡単で安くが研究目標になっている。」と、1999年10月27日の読売新聞(東京朝刊)の24頁には、「環境にやさしい超極細繊維 ふきん、ぞうきんに 洗剤不要で繰り返し使える」の見出しの下に「『洗剤不要 水をつけてふくだけ、ミクロの繊維が汚れを落とす』がうたい文句。」と、1996年8月1日の読売新聞(大阪朝刊)の22頁には、「[ひろば]アクセサリーの手入れ 素材に合わせた洗剤や布使って」の見出しの下に「〔研磨剤入りクロス〕セーム革と同じようにふくだけでよい。」と、2001年1月23日の日経流通新聞の20頁には、「洗剤いらずのふき掃除クロス、旭化成(新製品)」の見出しの下に「油と水の両方によくなじみ、さっとふくだけで汚れを容易に除去できる。」と、2000年8月5日の日経流通新聞の5頁には、「ガラスふき、曇りも防ぐ」の見出しの下に「不織布に洗浄液を含ませたシートタイプなので手軽に窓ガラスや鏡などの掃除ができる。軽くふくだけでほこりや手あか、たばこのヤニが落ちる。」と、1989年11月21日の日経流通新聞の20頁には、「ペーパータイプ台所用クリーナー――2度ぶき不要で除菌も(売れ筋)」の見出しの下に「・・・不織布(繊維を織らずに、シート状にした布)などに界面活性剤やアルコールを染み込ませており、そのまま汚れた所をふくだけでいい。」と、1988年12月3日の日経流通新聞の14頁には、「水でふくだけ新素材ふきん、ミナト製薬(新製品)」の見出しの下に「水でぬらしてふくだけで汚れが落ちる化学ふきん・・・」と、1988年3月3日の日経流通新聞の17頁には、「細い綿糸使用ミニモップ、ダイジン接毛(新製品)」の見出しの下に「使い方は接着面の布と表の布の間に手を入れてふくだけ。自動車、ガラス、鏡、靴など、いろいろと使える。」と、また、1987年11月3日の日経流通新聞の17頁には、「ティッシュ式の油汚れ落とし、積水化学工業(新製品)」の見出しの下に「あらかじめ洗浄液を浸み込ませた不織布が一枚ずつ引き出せる。換気扇や電子レンジなど台所周りの油汚れをふくだけで落とす。」と記載されている。そして、これらの記事に徴すれば、その種の商品を取り扱う業界においては、布、不織布、紙などで「ふくだけ」で、簡単に、ほこりや汚れを除去し、清掃や洗浄の効果を得られる旨を謳った商品の開発、広告等が普通に行われていることが認められる。
してみれば、本件商標及びイ号標章の双方の構成中にある「ふくだけ」の文字部分については、たとえ、平仮名の「ふくだけ」に相応して異なる意味の種々の文字があるとしても、「拭く」の語が「布、紙などでよごれをぬぐう」を意味するものであることから、その取引者、需要者をして、「拭くだけ」の意を表すものと容易に理解し、ほこりや汚れを除去し、清掃や洗浄の効果を得るためには「拭くだけ」でよい旨の商品の品質を謳った部分と認識するにとどまるとみるのが相当である。
そうとすれば、需要者、取引者をして、殊更に、商品の品質を謳った部分と認識する「ふくだけ」の文字部分だけを分離抽出し、その文字部分より生じる「フクダケ」の称呼をもって取引に資するとは考え難いことから、本件商標とイ号標章の双方より「フクダケ」の称呼が生ずることを前提に、本件商標とイ号標章が称呼において類似するとした請求人の主張は、採用することができない。
その他、本件商標とイ号標章を外観又は観念において類似するとしなければならない理由も見出し得ない。
したがって、本件商標とイ号標章は、外観、称呼、観念のいずれにおいても類似するということはできないから、商品「洗浄成分を染み込ませた自動車ボディー洗車用不織布」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものと認める。
よって、結論のとおり判定する。
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