Trademark Appeal Case
機能表示と商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 判定2000−60169(T2000−60169/J6) |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | other |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第3120489号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成4年12月24日登録出願、第25類「洋服,コ―ト,セ―タ―類,ワイシャツ類,水泳着,水泳帽,靴下,スカ―フ,手袋,マフラ―,耳覆い,帽子,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成8年2月29日に登録されたものである。
第2 イ号標章
請求人が商品「帽子」に使用する標章として示したイ号標章は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなるものである。
第3 請求人の主張
請求人は、「商品『帽子』について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の範囲に属しない」旨の判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1および第2号証(枝番を含む。)を提出した。
1 判定請求の必要性
帽子の一部材であるビンカワ(帽子の内側の頭が直接当る部分のテープ状の布。以下、同じ意味で使う。)で、伸縮自在の機能をもつものは広く使用されており、別紙新聞広告(甲第1号証)のような商標権の拡大主張と解釈は、商標を悪用してフィット機能のある帽子の独占販売を計るもので、帽子業界全体に与える影響が大きい。
2 イ号標章の説明
帽子の裏側にフレックスフィットと織り込んだビンカワを使用し、伸縮自在、ピッタリするという機能の表示を行っている。
また、帽子表面には、別途有名かつ周知性のある商標を表示している。(甲第2号証の1、2)
3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属さないとする説明
(1)本件、フレックスフィットの表示は、伸縮自在の機能のある帽子の裏側にあるビンカワの機能を表示しているものにすぎない。
(2)フレックス、フレキシブルは伸縮自在、フィットはピッタリした、という意味で日本語としても定着している。
(3)商標とは、その商品の出所を明らかにし、混同を防止することを目的とすることから、特に、帽子表面に別途有名な周知性のある商標が附されている場合は、それが出所品質を保証する商標であって、本件のようなフレックスフィットの表示は、商標使用には該当しない。
4 結び
よって、請求の趣旨のとおりの判定を求める。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、「請求人が商品『帽子』に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の範囲に属する」との判定を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第10号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求人の「イ号標章の説明」に対する反論
請求人は、甲第2号証の帽子の裏側のビンカワに「フレックスフィット」の文字が表示されているとしているが、甲第2号証の2を見る限り、そこでの表示は「FLEXFIT」であって同書・同大・同間隔で一連書きされたものである。
また、請求人は甲第2号証の帽子表面には有名かつ周知性のある商標を表していると主張しているが、帽子表面の商標が周知であるとする事実は認められないし、その立証もない。
2 請求人の「イ号標章が商標権の効力範囲に属さないとする説明」に対する反論
(1)「FLEXFIT」の自他商品識別力について
英語的語感を持つ「FLEXFIT」は、英語の辞書を繙くまでもなく造語であって、これからは格別の観念が自然発生的に生じるものではない。これを「フレックスフィット」と一連に称呼して何の不自然さもないものであるから、「フレックス」と「フィット」とに敢えて分断し、強いて個々の意味を問うべき筋合のものでもない。もとより、「FLEXFIT」ないし「フレックスフィット」が、「伸縮自在でピッタリ」を意味する機能表示として慣用されている事実もない。却って「FLEX」これ単独でも、数多の商標登録例が存在する(乙第2ないし第7号証)。
(2)ビンカワに織り込み表示することが商標の使用になるかどうかについて
例えば、手近なスーツ、ワイシャツなどの被服類において商標が表示される「織ネーム」で明らかなとおり、もともと商標はデザインではないから、商品の見易い位置に見易い方法で表示されるべきものではない。帽子においても然りである。帽子の本体前面にある種の図形や文字が大きく表示されていても、それは多くの場合にデザインであって、商標的機能を発揮する場合もあるにすぎない。帽子の商標は、本来的には帽子の裏側に表示されるべきものだからである。現に甲第1号証の帽子も外側には何らのデザインが施されていない。
この点について、3種類の帽子を例に挙げる(乙第8ないし第10号証)。乙第8号証の帽子は、伸縮性を有するビンカワに「STUSSY」の標章が一定間隔置きに織り込み表示されており、これを以て帽子本体の外側前面に表示された図形が「STUSSY」のサイン的な崩し文字であることが判る。つまり乙第8号証の帽子は、ビンカワの「STUSSY」の文字があることにより、「ステュ−シー」の称呼を生じる商標が付されていることが判る。乙第9号証の帽子は、伸縮性を有するビンカワに「FUBU FLEX」の標章が一定間隔置きに織り込み表示されている。乙第10号証の帽子は、帽子本体の外側前面に「ONEILL」の文字を含む図形を表示し、伸縮性を有するビンカワに同じ「ONEILL」の標章を一定間隔置きに織り込み表示し、帽子裏側の織ネームに「FLEXFIT」の標章を表示してなる。
これらの現物の帽子からも判るように、ある種の帽子は、ビンカワに一定間隔置きに商標を織り込んで表示することが業界内で慣用化していることが判る。これらの業界内の慣用によっても、甲第2号証商品における「FLEXFIT」の標章の織り込み表示は、商標的使用態様であることが明らかである。
(3)請求人は、帽子の外表面に周知商標が用いられている場合、帽子の内側に使用の商標が商標的機能を失うかの如き主張をしているが、論外と言わざるを得ない。ひとつの商品にハウスマーク的商標とペットネーム的商標とが併用されることは、周知の事実である。現に、先の乙第10号証の帽子においても、「FLEXFIT」と「ONEILL」の商標が併用して用いられていることに注目すべきである。
3 結び
以上みたとおり、例えば乙第8ないし第10号証に示すように、ある種の帽子においては、固有の商標を一定間隔置きに織り込んだ伸縮性ゴム帯をビンカワに用いることが慣用化されているところ、イ号標章もそれに倣って同じ形態でビンカワに表示してなるものである。従ってイ号標章は、伸縮性ゴム帯これ自体の商標でもないし、その機能を表示するために入れたものでもない。
しかるに、本件商標「FLEXFIT」とイ号商標「FLEXFIT」とが、外観上において類似し、称呼上において同一であることは、論を俟たない。
よって、答弁の趣旨のとおりの判定を求める。
第5 当審の判断
請求人は、帽子の一部材であるビンカワに織り込んだ「FLEXFIT」の文字は、伸縮自在、ぴったりするという機能を表示するために使用しているのであり、別途有名かつ周知性のある商標が当該帽子表面に付されている場合には、該「FLEXFIT」の表示は、商標使用には該当しない旨主張するが、この主張は以下の理由により採用できない。
イ号標章を構成する「FLEX」または「FIT」の各文字は、それぞれ個々別々にみれば請求人主張の如き意味合いの語と理解されるとしても、この両文字(語)を連結した「FLEXFIT」の文字が、帽子の品質、機能等を表示するものとして一般に認識されているとか、またはそのようなものとして普通に使用されているといった事実は認められない。
してみると、「FLEXFIT」の文字よりなるイ号標章は、特定の語義を有しない造語よりなるものと認めざるを得ない。
したがって、イ号標章は、商品「帽子」について使用しても、請求人の主張する伸縮自在、ぴったりするという品質等を表示するものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を充分に果たしうるものというべきである。
次に、帽子の一部材であるビンカワへの織り込み表示が当該帽子についての商標の使用といえるかどうかについて判断するに、通常、帽子の商標は、その裏側に織ネームを貼付し、そこに表示されるものであるが、かかる方法だけに限られるものではなく、被請求人の提出した乙第8ないし第10号証によれば、ある種の帽子は、その商標を、ビンカワに一定間隔置きに織り込んで表示する方法も一般的に行われていることが認められる。そして、甲第2号証におけるイ号標章はこれらと同様の使用態様のものである。
そうすると、帽子の一部材であるビンカワに織り込んだ「FLEXFIT」の文字よりなるイ号標章は、当該帽子についての商標の使用と解される。
そして、本件商標及びイ号標章は、それぞれ別掲のとおりの構成よりなるものであって、欧文字(部分)の綴りを同じくすることから、その称呼「フレックスフィット」を共通にするばかりでなく、外観においても近似した印象を与えるものであり、称呼および外観上互いに紛れるおそれのあるものである。
したがって、イ号標章は、本件商標に類似するものであり、かつ、本件商標の指定商品中に含まれる商品「帽子」についての商標の使用と認めうるものであるから、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
よって、結論のとおり判定する。
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