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Trademark Appeal Case

トライアスロンの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35380号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第3101946号の指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授(但し、トライアスロンに関するものを除く)」についての登録を無効とする。
その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件商標

本件登録第3101946号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成4年9月30日に登録出願され、「トライアスロン」の文字を横書きしてなり、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授(但し,トライアスロンに関するものを除く),図書及び記録の供覧,美術品の展示,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上演・制作又は配給,演劇の演出又は上演,放送番組の制作,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,電子計算機端末による通信を用いて行うゲームの提供,興行場の座席の手配に関する情報の提供,映写フィルムの貸与,テレビジョン受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与」を指定役務として、平成7年11月30日に設定登録されたものである。

2.請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。

(1)本件商標は、指定役務との関係で、提供に係る役務の内容を表すものと認識されることから自他役務の識別機能を有せず、また、提供に係る役務の内容等を誤認させるおそれがあるものであり、商標法第3条第1項第3号又は第4条第1項第16号に該当するものであるから、その登録は同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。

(2)本件商標を構成する「トライアスロン」は、「鉄人レース」のようにも呼ばれる運動競技を表す普通名称である。

1974年(昭和49年)アメリカのサンディエゴで開催されたのが最初といわれ、日本では、1981年(昭和56年)鳥取県皆生で初のレースが行われ、昭和60年には沖縄の宮古島で本格的なレ一スが行われるなど、急速に全国に普及してきたものである。

トライアスロンの発祥についての記述は、区々に亘るが、トライアスロンなる語は、広辞苑その他の辞典類にも早くから掲載されているほど一般化している言葉である(甲第3号証ないし甲第5号証)。

全国的に競技活動が盛んになるにつれて、多くの愛好会や開催団体が出現し、これらが順次組織化されていき、現在では、本件審判請求人が代表者となっている日本トライアスロン連合に集大成されているところである。

日本トライアスロン連合は、財団法人日本体育協会に加盟し、また、財団法人日本オリンピック委員会に準加盟という団体であり、トライアスロン競技規則、トライアスロン運営規則などのルールを策定してわが国における競技界を統括しているほか、国際トライアスロン連合あるいはアジアトライアスロン同盟等と連携を図り、普及に努めているものであり(甲第6号証及び甲第7号証)、トライアスロンがオリンピック種目に採択されるなどの動きから、その活動は、大方の注目を集めているものである。

このような状況にあるから、本件商標の出願時である平成4年9月30日のかなり以前から、「トライアスロン」の表示に接する者は、直ちに、競技としてのトライアスロンを認識するものとなっていたことは明白なところである。

本件商標は、「技芸・スポーツ又は知識の教授(但し,トライアスロンに関するものを除く)」とか「運動施設の提供」「録画済み磁気テープの貸与」などを指定役務としている。

「技芸・スポーツ又は知識の教授」については、「(但し,トライアスロンに関するものを除く)」とされているものの、「運動施設の提供」とか「録画済み磁気テープの貸与」などにおいては、かような措置はとられていないので、いわば「トライアスロンに関するものを含む」ことになる指定になっているものである。

本件商標を「運動施設の提供」とか「録画済み磁気テープの貸与」などのうち、「トライアスロンに関するもの」について使用するときは、利用者、需要者は、その役務がトライアスロン用の運動施設の提供であること又はトライアスロンに関する録画テープを貸与するものであることを表示したものと見るのが普通であり、役務の内容を表したものと認識するのみであるから、自他役務の識別標識としての機能を有しないものである。

また、本件商標を「技芸・スポーツ又は知識の教授(但し,トライアスロンに関するものを除く)」役務について使用するときは(言い換えれば、テニスの教授、水泳の教授について使用するときは)、それがトライアスロンに関するものであるかのように誤認することは明白であり、また、「トライアスロンに関するもの」ではない内容の「運動施設の提供」とか「録画済み磁気テープの貸与」などについて使用するときは、それが「トライアスロンに関するものであるかのように誤認するおそれがあることもまた明らかなところである。

(3)被請求人は、請求人が本件商標の登録を無効とすべき理由としてあげた主張に対し、トライアスロン教室とかトライアスロン競技場のようなものはないから、本件商標が特定の役務を表示するものとはいえないと主張している。

これは常識を無視したものであり、全く理由のないものである。

いわゆる「トライアスロン」の名でスポーツ教室とか運動施設を宣伝すれば、 現在、「トライアスロン」の名でスポーツ教室とか運動施設が開設されているかどうかに関わりなく、それが「トライアスロン」に関するものであると認識するであろうことは、詳述するまでもなく、自明のことである。

いうまでもなく、スポーツの健全な発展を図るためにも、その名称の使用が商標の登録によって制約を受けるようなことがあってはならず、かような事態は当然に避けるべきものであり、これに反することになる本件商標の登録は、無効とされるべきである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号に該当するものである。

3.被請求人の主張

被請求人は「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求める、と次のように答弁している。

(1)請求人は、本件商標について、その登録を無効とするとの審決を求めている。しかし、被請求人は、請求人の主張には、到底納得しがたいものがあるため、以下のとおり答弁する。

(2)本件商標は、確かに、請求人の提出した証拠資料を待つまでもなく、運動競技を示す名称である「トライアスロン」と同一のカタカナ文字を書してなるものである。

このため、被請求人は、本件商標が運動競技関連の商品や役務、即ち、本件商標についていえば、「スポーツの教授」や「運動施設の提供」に使用された場合には、当該競技と関連せられた認識を生じさせるものであることを認めるにやぶさかではない。しかし、テニス教室のように、「トライアスロン教室」が巷間で広く開設されている訳でもなく、「サッカー場」のように特定の「トライアスロン競技場」なるものが存在している訳でもない。

むしろ、トライアスロンは、選手の全体力の限界に挑戦する耐久レースであって、テニスやサッカー、野球とは異なり、競技特有のテクニックも施設も必要とはせず、それ故に「教室」の如き教授や特定の運動施設も必要としない競技である。

してみれば、「スポーツの教授」や「運動施設の提供」に本件商標を使用しても、直ちに特定の役務の内容を示すものとは言えない。むしろ、本件商標は、「トライアスロン」の語源から「耐久」に関連した役務の質・態様を暗示・示唆させるに過ぎない。

請求人は、「トライアスロン」なる名称が運動競技を示す名称であることを立証する証拠を多数提出しているが、いずれも本件商標の商標登録後に刊行された資料であり、また、巷間に「トラアスロン教室」や「トライアスロン競技場」なる「役務の提供」の存在も示していない。本件商標の登録が商標法第3条第1項第3号に該当することを直接に示す証拠は提出されていない。

(3)また、運動競技とは関連しない役務についても、例えば、本件商標についていえば、「技芸の教授」や「知識の教授」について本件商標を使用しても当該役務の質に関し誤認を生ずるとは到底認められない。運動競技を示す名称が各種の商品や役務について使用されている例は殊更示すまでもなく、巷間によく見受けられる。請求人のいう「録画済み磁気テープの貸与」にしても、「貸与」自体運動競技とは何らの関係もない役務であり、本件商標が使用された場合、その需要者をして本件商標が運動競技を示す名称であると認識させたとしても、直ちに、「貸与」自体の役務の質について誤認を生じさせることはないと考える。これは、例えば、コンピュータに関する知識の教授なる役務について使用されたとしても同様である。

以上のとおり、本件商標は、その指定役務のいずれに使用されても、役務の質そのものを表示させるものでもなく、また、役務の質の誤認を生じさせるものでもないため、商標法第3条第1項第3号にも商標法第4条第1項第16号に該当するものでもない。

ここに、答弁趣旨どおりの審決を求めるものである。

4.当審の判断

本件商標は、前記したとおり「トライアスロン」の文字よりなるところ、甲第4号証(自由国民社発行、「現代用語の基礎知識」1996年版)によれば、「トライアスロン」は、水泳、自転車、ランニングの3種目を1日で競う過酷な競技。ロング・タイプ、ショート・タイプ、ミニ・タイプの3タイプがあり、最も規模の大きいロング・タイプ(フル・トライアスロン)では水泳3.9キロメートル、自転車180.2キロメートル、ランニング42.195キロメートル、合計226.295キロメートルで、超人的な体力と精神力が必要とされ、アイアンマン(鉄人)レースとも呼ばれている。この競技はアメリカ海兵隊員たちの発想で発祥し、1978年に第1回大会が行われた。日本では1980年(昭和55年)の鳥取県での競技を皮切りに、1985年には沖縄県で「全日本宮古島大会」、同年滋賀県で「アイアンマンびわ湖」が開催され、現在では日本各地で行われている。1982年には国際トライアスロン連盟(FIT)が設立され、日本でも1986年に日本トライアスロン協会が誕生し、競技人口が急速に増えつつある旨記載されており、また、甲第6号証によれば、日本にトライアスロンが導入されてから14年目の1994年に日本を代表する唯一のトライアスロン組織として日本トライアスロン連合(JTU)が発足したことが記載されている。

これらの記述からすると、「トライアスロン」の語は、本件商標の出願時及び登録査定時にはスポーツに関心のある者はもとより広く国民に上記競技を指称する語として認識されるに至ったと認められるものである。

そうすると、「トライアスロン」の文字よりなる本件商標を、「トライアスロンに関する技芸・スポーツ又は知識の教授」に使用するときは、役務の質、内容を表示するものと認められるものであり、トライアスロン以外の「技芸・スポーツ又は知識の教授」について使用するときは、役務の質について誤認を生ずるおそれがあるものと認められる。しかしながら、本件指定役務は、「技芸・スポーツ又は知識の教授」のうち、「トライアスロン」に関するものが除かれていることは、原簿記載のとおりであるから、結局、本件商標をその指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授(但し、トライアスロンに関するものを除く))」について使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標といわざるを得ない。

しかしながら、本件商標を前記指定役務以外の指定役務に使用したとしても、例えば、「運動施設の提供」については、トライアスロン競技が特定の施設において実施されるものではないこと、また、「録画済み磁気テープの貸与」については、トライアスロンの語が貸与という役務の内容を直接的に表現しているものとはいえず、したがって、「トライアスロン」の文字は、いずれの役務の質、内容を具体的に表示したものということはできないものであり、かつ、いずれの指定役務に使用しても役務の質の誤認を生じざせるおそれはないものといわなければならない。

5.むすび

したがって、本件商標は、その指定役務中、「技芸・スポーツ又は知識の教授(但し、トライアスロンに関するものを除く)」については、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号によりその登録を無効とすべきものであり、その余の指定役務については、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に違反して登録されたものではないから、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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