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Trademark Appeal Case

著名商標の略称の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35291(T2000−35291/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4319503号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件登録第4319503号商標(以下、「本件商標」という。)は、「アトム」の片仮名文字(標準文字)を横書きしてなり、第14類「身飾品,時計」を指定商品として、平成10年4月21日出願、同11年10月1日に設定登録されたものである。

2.請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した登録第545096号商標(以下「引用1商標」という。)は、「鉄腕アトム」の文字を縦書きしてなり、昭和33年11月19日出願、同34年12月7日に設定登録され、その後、同56年9月30日、平成2年1月19日及び同11年8月31日の三度に亘る存続期間の更新登録を経て、有効に存続しており、同12年3月22日には、書換登録がなされ、書換後の商品の区分及び指定商品を「第5類『失禁用おしめ』第9類『事故防護用手袋,防火被服』第10類『医療用手袋』第14類『カフスボタン,ネクタイピン,宝石ブローチ』第16類『紙製幼児用おしめ』第21類『家事用手袋』第24類『経かたびら,布製身の回り品』第25類『洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,ねびえしらず,その他の下着,水泳着,水泳帽,胴締め,えり,その他の和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,ヘルメット,帽子,運動用特殊衣服,マラソン足袋,地下足袋,前掛け,よだれ掛け,胸当て,手甲,腕貫き,きゃはん,冠,えり飾り』第26類『帯留,衣服用ブローチ,こはぜ,ボタン』」とするものである。

同じく、登録第2476600号商標(以下「引用2商標」という。)は、「鉄腕アトム」の文字を横書きしてなり、旧第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成1年10月30日出願、同4年11月30日に設定登録されたものである。

同じく、登録第2266957号号商標(以下「引用3商標」という。)は、「鉄腕アトム」の文字を横書きしてなり、旧第26類「新聞、雑誌」を指定商品として、昭和62年7月31日出願、平成2年9月21日に設定登録され、その後、同12年5月9日に存続期間の更新登録がなされ、有効に存続しているものである。

3.請求人の主張の要点

請求人は結論同旨の審決を求め、その理由を次の(一)以下の旨述べるとともに、被請求人の答弁に対して、概略(七)の旨弁駁した。

(一)本件商標が、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであることについて

本件商標は、引用1及び2商標との関係においては、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

すなわち、本件商標は、「アトム」の片仮名文字(標準文字)を横書きしてなるのに対し、引用1商標は、「鉄腕アトム」の文字を縦書きしてなり、また、引用2商標は、「鉄腕アトム」の文字を横書きしてなるものである。

引用1及び2商標は、いずれも手塚治虫の国民的人気漫画及びアニメーション「鉄腕アトム」の題号、あるいは、当該「鉄腕アトム」におけるメイン・キャラクター(主人公)の名称から採択されたものである。

「鉄腕アトム」は、後述する「『鉄腕アトム』の歴史」及び「『鉄腕アトム』及び『アトム』の著名性について」の項で主張・立証しているとおり、昭和26年の「鉄腕アトム」の漫画出版以来、テレビ、映画のアニメーション及び商品「おもちゃ」をはじめとする各種商品化、さらには、朝日新聞をはじめとする我が国の代表的な新聞や地方新聞、少年少女雑誌等の多くのメディアによって、主人公「アトム」の名称とともに、あまねく知られるようになっているものである。

そして、「鉄腕アトム」は、一般的には、「鉄腕アトム」のほかに「アトム」とも略称され、かつ、観念されるものであって、請求人等の所有に係る引用1及び2商標「鉄腕アトム」は、商品「身飾品,時計」との関係においても、本件商標の出願前より著名性を獲得し、現在に至っている。

また、引用1及び2商標の「鉄腕アトム」からは、漫画の主人公「アトム」の図形(絵)とともに、漫画の主人公の名称「アトム」を想起、観念することは、請求人提出の各甲号証により明らかである。この点については、昭和52年代に争われた東京高裁での審決取消訴訟判決の判断が支持されるべきである。

してみると、引用1及び2商標の「鉄腕アトム」から、「アトム」が想起、観念されることで、本件商標「アトム」は、引用1及び2商標と観念上類似するものである。

従って、引用1商標は、本件商標と類似し、かつ、本件商標の指定商品中、「身飾品」と引用1商標の書換登録後の指定商品中、第14類「ネクタイピン,宝石ブローチ」とは同一又は類似するものである。

同様に、引用2商標は、本件商標と類似し、かつ、本件商標の指定商品中、「時計」と引用2商標の指定商品中、「時計」とは同一である。

なお、請求人が、「鉄腕アトム」又は「アトム」又は「アトムの図形」を用いた「身飾品」、あるいは、「時計」について使用許諾を行っているライセンシーは16社に及んでいる。

そうしたライセンシー以外にも刊行物を通じて「アトム」の腕時計、目覚まし時計の宣伝広告等を以下の(ア)乃至(ウ)のように行っている。

(ア)平成6年発行の「オレンジパル」には、「西 宝塚市立 手塚治虫記念館」の下に「アトム腕時計」の写真が掲載されている。

(イ)平成9年3月22日発行の「リビング北阪神」における「新社会人 初めの一歩に必要ですね」という欄には、「アトムと集まれキャンペーン」及び「アトムのモーニングコールでばっちり起床」という記事と目覚まし時計の写真が掲載されている。

(ウ)平成10年3月14日発行の「リビング北阪神」には、「アトムの目覚まし時計」の宣伝が掲載されている。

これらによって、請求人、あるいは、そのライセンシーが、本件商標と同じ「アトム」の文字よりなる標章を本件商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用している事実が明らかであり、なおかつ、請求人等の該標章が、「身飾品」「時計」につき著名性を獲得していることも明白である。

従って、本件商標と引用1及び2商標は、商標の称呼及び観念の点において、同一又は類似し、かつ、それらの指定商品も同一又は類似であるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。

(二)本件商標が、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることについて

本件商標は、引用3商標との関係においては、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

すなわち、本件商標は、「アトム」の片仮名文字(標準文字)を横書きしてなるのに対し、引用3商標は、「鉄腕アトム」の文字を横書きしてなるものである。

そして、引用3商標は、我が国において、「漫画の神様」と称される故手塚治虫氏による昭和26(1951)年に発表の第1作の漫画「鉄腕アトム」から採択したものであり、そのシリーズ化された漫画作品「鉄腕アトム」の題号でもある。当該「鉄腕アトム」は、第1作の発表以来、現在に至るまで約50年の長期に亘り、日本はもとより世界各国において、絶大な人気を博している。

以下、それらが周知、著名となった理由を(エ)乃至(キ)において述べる。

(エ)昭和26(1951)年に連載が開始された漫画本「アトム大使」は、翌27年には、そのタイトルを「鉄腕アトム」と変更し、本格的な長期連載(シリーズ化)がなされた。

(オ)当該「鉄腕アトム」は、「株式会社虫プロダクション」[昭和36(1961)年設立]によって、昭和38(1963)年からアニメーション化され、テレビ及び映画において放映された。

(カ)さらに、「鉄腕アトム」は、上記「株式会社 虫プロダクション」の正当な承継人である「株式会社 手塚プロダクション」[昭和43(1968)年設立]によって、昭和55(1980)年からアニメーション化され、テレビ及び映画において放映された。

(キ)上記(エ)乃至(カ)のほかに、「鉄腕アトム」、「アトム」及び「アトムの図形」については、昭和50(1975)年頃から現在に至るまでに、100社を超える法人との商品化契約が締結され、数百種類に及ぶキャラクター・グッズの商品化、販売がなされている。

このように、請求人等が、出版、映画、テレビ及び商品化に際して、大々的な展開を行った結果、引用3商標の「鉄腕アトム」の文字、前記漫画の主人公である「アトム」の名称及び「アトム」自身の図形(絵)は、請求人である「株式会社 手塚プロダクション」若しくは「アトム」のキャラクター・グッズの使用許諾を受けた会社の業務に係る商品を表示するものとして、いずれも本件出願日のはるか以前から、日本国内は勿論のこと、米国、ヨーロッパ、アジア諸国等において、周知、著名なものとして認識され、現在に至っている。因みに「アトム」が主人公となった当該漫画は、「鉄腕アトムの歴史」の項で明らかなとおり、長期連載されているものである。

また、いわゆるキャラクター・グッズとしての「アトムグッズ」は、作品名を付したNo.1からNo.112までの「鉄腕アトム」の漫画本によって商品展開がなされたものであり、しかも、「鉄腕アトム」の漫画は、「株式会社 虫プロダクション」及び同社の正当承継人である請求人(「株式会社 手塚プロダクション」)によって、テレビ及びアニメーション映画として放映され、同時に、各種の商品が、アトムグッズとして商品化、販売され、爆発的な人気を博した。

アトムグッズについて、請求人と商品化契約を締結した会社は、実に102社に及んでおり、当該商品化契約は、昭和50(1975)年11月10日から現在に至るまで約25年の長期に亘っており、対象品目も数百種類となっている。

してみれば、本件商標が、「アトム」の文字よりなるのに対し、引用3商標が、シリーズ出版された漫画本の題号にあたる「鉄腕アトム」の文字を書してなるとしても、上記諸事情よりすれば、本件商標を付した商品に接する取引者、需要者は、それをして、請求人の取扱いに係る商品、あるいは、その関連会社の業務に係る商品であると直ちに想起、観念するものといえる。

従って、本件商標「アトム」は、その出願時は勿論のこと、査定時においても引用3商標と称呼及び観念において同一又は類似するものであるから、本件商標を付した商品に接する取引者、需要者は、それが請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所について混同を生ずるおそれがあること明らかである。

よって、本件商標は、引用3商標との関係において、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。

(三)審決取消訴訟における判決について

本件審判に重大な影響を与えると思われる審決取消訴訟における判決が、東京高裁において、昭和55年3月31日に言渡されているが、本件における商標法第4条第1項第11号に関する争点は、それと同一と考えられるので、請求人は、あえて、当該「判決」について言及する。

標記判決は、特許庁の拒絶査定不服審判事件の審決を不服とした原告(請求人)が、当該審決の取消訴訟を求めたが、東京高裁は、被告(特許庁)の判断の正当性を認め、原告の請求を棄却したものである。

当該事件における商標は、「アトム」の文字を書してなり、旧第21類「かばん類、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和47年2月12日に出願されたものである。

その事件において引用された登録第545096号商標(第1引用商標)は、「鉄腕アトム」の文字を縦書きしてなるものであり、同じく、登録第713370号商標(第2引用商標)は、「鉄腕アトム」の文字を縦書きし、その上部にアトムの頭部図形を付した構成よりなるものであって、拒絶条文は、商標法第4条第1項第11号であった。

当該審決の要旨は、「かつて、『アトム』と称する少年を主人公とする『鉄腕アトム』と題する漫画が、一般に親まれ、『アトム』といえば、直ちに該漫画の主人公『アトム』(鉄腕アトム)を指称するほど人気を博し、該『アトム』の名前ないしは主人公を描いた図形(漫画)は、今なお強く印象づけられているものと容易に推認し得るところである。そこで、本願商標と各引用商標の類否について判断すると、その構成前記のとおり、前者は『アトム』、後者の一は『鉄腕アトム』の文字、さらなる一は『鉄腕アトム』の文字と前記漫画の主人公『アトム』の頭部を描いてなること明らかであるから、たとえ『アトム』の語が、『原子』という意味を有するとしても、これに接する取引者、需要者は、直ちに漫画の主人公『アトム』(鉄腕アトム)を想起、観念し、これをもって、取引に資する場合が、むしろ多いとみるのが相当である。してみれば、本願商標と各引用商標は、ともに漫画の主人公『アトム』の観念を生ずるものということができる。したがって、本願商標は、各引用商標と観念上類似の商標であり、かつ、指定商品も同一の商品を包含しているから、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。」というものであった。

これについての東京高裁の判決の要旨は、「『アトム』と称する少年を主人公とする漫画『鉄腕アトム』が、かつて人気を博した事実のあることは、原告の自認するところである。上記事実によれば、本願商標の指定商品の分野において、本願商標に接する取引者、需要者は、この商標から直ちに漫画の主人公『アトム』(鉄腕アトム)を想起、観念することが多いものと認めるのが、経験上相当である。もっとも、『アトム』は、英語の『ATOM』の発音を片仮名書きしたものとも認められ、それから『原子』を想起、観念することもあることは否定できないが、本願商標の指定商品が、第21類『かばん類、その他本類に属する商品』であって、化学や物理関係の特殊な分野における商品というよりは、誰でもが取引者、需要者になり得る一般的な分野における商品であることを考えれば、むしろ、漫画の主人公『アトム』を想起、観念することのほうが多いものと認められるのであって、これは前示認定を妨げるものではない。」・・「第1引用商標が、『鉄腕アトム』のやや図形化した文字を縦書きにしてなる構成であること、第2引用商標が、『鉄腕アトム』のやや図形化した文字を縦書きにした上部に漫画『鉄腕アトム』の頭部を描いた図形を加えてなる構成であることは、原告の自認するところである。この事実に原告が自認している前記『アトム』と称する人間を主人公とする漫画『鉄腕アトム』が、かつて人気を博したことのある事実を併せ考えれば、第1及び第2引用商標に接する取引者、需要者は、それから直ちに漫画の主人公『アトム』(鉄腕アトム)を想起、観念するものと認めるのが経験上相当である。」というものであり、結果的に、原告の請求は棄却された。

(四)特許庁における周知・著名商標の保護等に関する審査基準の改正について

平成11年6月14日に特許庁は、急激な世界経済の変動に調和させるべく、商標の使用者及び需要者の双方の利益を保護する観点から、著名商標等の強い保護を図るために、商標法第4条第1項第10号、第11号、第15号、第16号及び第19号の各規定の審査基準を改正した。

従って、本件商標が、商標法第4条第1項第11号又は同第15号の規定に該当するか否かの解釈は、新基準、即ち、周知・著名商標の類似範囲、あるいは、出所混同の範囲をより弾力的に解するという基準によって行われるべきである。

(五)「鉄腕アトム」の歴史について

(ク)「マンガ界にとどまらず、戦後の表現文化全体に影響を与え続けた故・手塚治虫氏」という名言ではじまる平成2(1990)年7月17日発行の朝日新聞夕刊における「手塚治虫展」の紹介記事には、「星のかなたからアトムが帰って来た」というキーワードに続き、手塚治虫の人生及び作品の歴史が大きく紹介されているが、同氏のユニークな人生によって生まれた数々の作品のうち、代表作「鉄腕アトム」をはじめとする多くの優れた作品が、50年もの長きに亘って人気を維持しているわけは、各漫画、とりわけ「アトム」のような主人公たちの行動の多くが、「少年らしい明るさと正義感に満ちている反面、『真の人間性とは、真の幸福とは』という問いかけを含んでおり、勧善懲悪とは一味違う奥行きを作っている。」点にあると考えられる。

(ケ)「鉄腕アトム」の歴史をまとめたものの一つとして、「鉄腕アトム 大事典」の末尾に付されている「『鉄腕アトム』全作品リスト」がある。当該リストには、作品番号と作品名が、No.1からNo.112まであり、各No.には、それぞれのタイトルが付されている。当該作品の発表期間は、昭和26(1951)年4月から昭和56(1981)年11月までに及び、発表機関は、KC版: 光文社カッパコミックス版、GC版: 小学館刊ゴールデンコミックス、SC版: 朝日ソノラマ刊サンコミックス版、全集版 KCS版: 講談社版、愛蔵版: 講談社版等々とあり、各版の発行部数は、膨大であることが、出版社の規模から考えて容易に推測できる。

(コ)昭和26(1951)年から連載が開始された漫画「鉄腕アトム」は、昭和38(1963)年には、フジテレビでアニメーションの放送が開始され、その教育的・文化的な成果が広く認められた。その結果、昭和40(1965)年に、当時の厚生大臣から表彰を受け、さらに、昭和42(1967)年には、放送批評懇談会ギャラクシー賞を受賞した。

(サ)さらに、昭和43(1968)年には、漫画制作のために「株式会社手塚プロダクション」が設立され、「鉄腕アトム」をはじめとする各種の優れた漫画の出版、テレビ及び映画、各種商品化等の活動を一挙に拡大させた。当該活動は、日本国内にとどまらず、米国、ヨーロッパ、アジア諸国へと世界的に拡張され、現在に至っている。

(シ)甲第12号証及び同第13号証は、手塚プロダクションの代表者 松谷孝征社長が記載したもので、平成1(1989)年に病没した手塚治虫氏との対話を含む各種アニメーションの作成過程のエピソード、その他を通じて示された手塚治虫氏の「夢とロマン」、そして、現在、全てに対して求められている同氏の高邁な姿勢の一端を示すものである。

(六)「鉄腕アトム」及び「アトム」の著名性について

漫画「鉄腕アトム」の主人公「アトム」の図形、「鉄腕アトム」の文字及び主人公の名前「アトム」は、昭和26(1951)年に、その漫画が出版されて以来、テレビ及び映画におけるアニメーション化、そして、各種商品化等により、子供はもとより、大人、老人に至るまで全年齢層に亘って人気を博し、その結果、本件商標の出願日である平成10(1998)年4月21日のはるか以前から、該「アトム」は、商品「おもちゃ」をはじめとして、主人公の名前、あるいは、キャラクターを表示するものとして著名性を獲得し、現在に至っている。

請求人は、以下の(1)乃至(75)の新聞、その他の文献によって、本件商標の出願日以前に、「鉄腕アトム」及び「アトム」が、アトムの図形(絵)とともに、商品「おもちゃ」等の商標として、あるいは、漫画のキャラクターの名称として、日本をはじめ世界中に広く親しまれ、周知、著名性を獲得していたことを明らかにするとともに、(76)乃至(101)により、本件商標の出願日(平成10年4月21日)以降登録査定時に至るまで及びそれ以降の「鉄腕アトム」及び「アトム」の周知、著名性を明らかにする。

(1)昭和39(1964)年1月1日光文社カッパコミックス発行の漫画「鉄腕アトム」の「アトムの大使の巻」及び「アトラスの巻」には、「アトム」がアメリカでも放送されたニュースのほかに、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、香港、南アメリカの国々でも放送されることとなった記事が掲載されており、「アトム」は、昭和39年には、すでに世界的な規模の進出をしていたことが窺える。

(2)昭和54(1979)年(発行日不明)日本電気株式会社発行のパンフレット「コンピュータ・コミュニケーション社会はよき友人会社」には「アトム」の図形が使用されている。

(3)昭和55(1980)年(発行日不明)には、バップレコードから、「鉄腕アトム」のテーマソング(作詞:谷川俊太郎/作曲:高井達雄)が、レコードとして発売されている。

(4)昭和60(1985)年(発行日不明)には、「国連人口活動基金」(UNFPA)が、人口問題と発展途上国へのUNFPAの援助(1984年現在)に関するパンフレットを発行したが、当該パンフレットには、「EXPO’85 鉄腕アトムの人口教室」のタイトルが記されており、このような国連の一機関の広報活動にも、「アトム」他のメンバーが活躍している。

(5)昭和62(1987)年2月1日ブレーンフォーラム株式会社発行の「郊外生活」には、「お父さんのひらがなストーリー『鉄腕アトム』(第1回)」という表題のもとに、米ソ両大国の冷戦時代に平和のシンボルとして生まれた「アトム」の話が掲載されている。そこには、「アトム」が、その後、玩具業界のロボットキャラクターのリーダーとなり、子供達の永遠のヒーローとなって行く過程が、わかりやすく掲載されている。

(6)平成1(1989)年8月20日JICC出版局発行の「一億人の手塚治虫」には、「海を渡ったアトム」という表題のもとに、作者本人の「アトム」に対する種々の思惑や米国NBC放送局によるアニメーション放送に至るまでのエピソードが掲載されており、「アトム」が、日本はもとより、米国の舞台においても活躍し、国際的人気を博するに至るまでの情況が明らかにされている。

(7)平成2(1990)年7月21日及び22日発行のパンフレット「青年経済人会議 in EXPO’90」の表紙には、「あのころ ぼくらはアトムだった。アトムのころの夢、そのほとんどは現実したのに、なぜか幸福を実感できない私たち。科学は進歩し、経済も発展したけれど、地球は、わがままな大人ばかり」「愛・夢・情熱、そして正義。よみがえれ、アトムのこころ。個人の自立、地域の自立、国家の自立をめざして、はばたけ!平成のアトムたち!!」という記載があり、「アトム」は、あたかも人類の救世主のように期待されている。

(8)平成2年7月22日から8月11日までに、「東京国立近代美術館」で開催の「手塚治虫展」に関する「衛星放送 夏のスペシャルプログラム」の記事。

(9)平成2年10月発行の「サンコミック朝日ソノラマ」の新書判コミックシリーズ「MIGHTY ATOM『鉄腕アトム』」の記事。

(10)平成2年11月1日MOE出版発行の雑誌「MOE モエ11月号」には、「特集 手塚治虫ワールド」が掲載されている。

(11)平成2年(発行日不明)の「PLAY FIELD」のパンフレットには、「鉄腕アトム」の文字と「アトム」の図形とが表紙にあり、「スーパーヒーロー『鉄腕アトム』が楽しいノートや鉛筆になった!」という表題のもとに、各種の商品化された商品が掲載されている。

(12)平成2年2月2日発行の日本経済新聞には、「アトム」の図形を主にした「ユニバーサル投信」の広告が掲載されている。

(13)平成3(1991)年8月19日発行の高知版朝日新聞には、「“手塚ランド”ファン感動」という表題のもとに、「私が見て育ったアトムを見せようと、子供を連れて来ました。懐かしいですね。」といった一般の来客の言葉が掲載されている。

(14)平成4(1992)年1月1日発行の読売新聞の広告頁には、「地球にとってアトムは永遠のヒーローです」と記載されている。

(15)平成4年5月23日発行の「シティリビング」には、「呼ばれてとび出てジャジャジャジャーん!」という表題のもとに、「アトム」の図形が掲載されている。

(16)平成4年6月6日発行のスポーツ報知新聞には、「第2回 三井海上全国縦断市民駅伝 札幌大会」の広告が掲載されており、その中に、「アトム」の図形が用いられている。

(17)平成4年9月3日発行の熊本日日新聞には、「漫画の神様 手塚治虫展」の記事が掲載されており、その中で「アトム」の図形の下に「日本中の子供をとりこにした鉄腕アトム」という記載がなされている。

(18)平成4年9月18日発行の読売新聞の記事には、「県下で初の『手塚治虫展』」という表題のもとに、「鉄腕アトム」の原画が掲載されている。

(19)平成5(1993)年1月1日発行の北海道新聞には、「テレビ40周年」「世相映し、時代に揺れたブラウン管」という表題のもとに、「アトム」の図形と「昭和38年に『鉄腕アトム』などが一気に始まった」旨の記載がなされている。

(20)平成5年3月24日から4月10日までに東京のラフオーレミュージアム原宿で開催の「私のアトム展」の広告パンフレット。

(21)平成5年4月16日発行のアサヒグラフの表紙「4月7日鉄腕アトム誕生」。

(22)平成5年4月23日から5月6日までに九州のラフオーレミュージアム小倉で開催の「私のアトム展」の広告。

(23)平成5年5月8日から5月22日までに四国のラフオーレミュージアム松山で開催の「私のアトム展」の広告。

(24)平成5年6月(発行日不明)発行の「NTT サンクス フェア開催」のチラシ。

(25)平成5年8月14日から8月26日までに新潟市民プラザで開催の「私のアトム展」のパンフレット。

(26)平成6(1994)年7月23日から8月28日までに長野県の清里の森(森のプラザ)で開催の「私のアトム展」のパンフレット。これには、「鉄腕アトム」は、「アトム」と称されている事実がたくさん掲載されている。

(27)平成6年10月6日発行の産経新聞の記事には、「アトム大陸→アトム大使→鉄人アトム→鉄腕アトム」といった「鉄腕アトム」というタイトルに決定するまでのタイトルの変遷に関する「戦後史開封」が掲載されている。

(28)平成7(1995)年3月1日から6月27日までに兵庫県の宝塚市立「手塚治虫記念館」で開催の「鉄腕アトム展」の記事及び雑誌漫画というメディアとテレビアニメーションというメディアとで語られる二つの「鉄腕アトム」の姿と心を表現した記事。

(29)平成7年4月29日及び同30日に各発行の日刊スポーツの記事中、「この道」の第114回及び第115回には、「『アトム』は今でも最強」の記事が掲載されている。

(30)平成7年10月発行の光文社文庫コミックシリーズ第一弾「鉄腕アトム」全15巻の広告チラシには、「アトム待望の文庫化」の記載がなされている。

(31)平成7年11月16日発行の「ゲンダイ」には、「時代をリードする栄光の鉄腕アトム」という表題のもとに、「戦後の混乱期に子供たちへ未来への夢と希望を与えた名作中の名作」という記事が掲載されている。

(32)平成7年7月11日小学館発行の「サライ 第11号」の第42頁には、「誰にも見せなかった自分だけの宝物部屋」という表題のもとに、「鉄腕アトム」を含む手塚治虫氏の関連記事が掲載されている。

(33)平成8(1996)年1月25日発行の「旬刊ファンシー第505号」には、「手塚治虫の原点の作品」及び「近い将来インターネットで情報公開」、そして、「鉄腕アトムのパソコンソフト」という記事が掲載されている。

(34)平成8年2月13日発行の朝日新聞(夕刊)には、「鉄腕アトム」等の手塚アニメが平成8年4月1日からWOWOW(日本衛生放送)で完全再放送される旨の記事が掲載されている。

(35)平成8年4月9日発行の東京新聞には、「手塚アニメ 懐かしい顔が・・・」という表題のもとに、「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」など一挙に6本407話をWOWOWで再放送開始という記事が掲載されている。

(36)平成8年4月19日発行の朝日新聞(夕刊)における「学芸」欄には、漫画家「里中美智子」氏の記事「20世紀の古典 鉄腕アトム」とアトムの声優「清水マリ」氏の記事「けなげなロマンチスト」が掲載されている。

(37)平成8年6月3日発行の週刊文春の第150頁には、沖光正氏による記事「鉄腕アトム大事典(発行元:晶文社)」が掲載されており、その文中に「幼少の頃、親に少年漫画誌を買ってもらえなかったんです。でも、カッパ・コミックス版の鉄腕アトムだけは許されて、何度も読み返していました。」との記事があり、「アトム」が、いかに教育的で健全な内容であるかを伺い知ることができる。

(38)平成8年6月11日発行の新聞「CHINESE DRAGON」の「日中インタビュー」の記事中には、株式会社手塚プロダクションの松谷孝征社長へのインタビューにおいて、中国における「アトム」の人気の様子が十分に伺える内容が掲載されている。 すなわち、「『空を超えて、ラララ星の彼方』。漫画家の故・手塚治虫さんの傑作『鉄腕アトム』の主題歌を中国人留学生の前で口ずさむと、たいてい『あっ、知ってる。アトムでしょ!』と返ってくる。中国では16年前にテレビで『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』が放送され、子供たちの間に一大手塚アニメブームを引き起こした。手塚さんの中国への思いの深さを間近に見てきた手塚プロダクションの松谷孝征社長は、手塚さんが亡くなった翌年の1990年に北京スタジオを設立。経費に見合う仕事が供給できず赤字が続いたが、中国人スタッフの描き手養成に力を入れた結果、設立6年目にして明るい見通しが出てきた。」という記事が掲載されている。

(39)平成8年11月2日発行の日本経済新聞には、「鉄腕アトム」等に関する「手塚キャラクターインテリアに登場」及び「日商岩井、セルコンと組む」という記事が掲載されている。

(40)平成8年11月7日発行の日本繊維新聞には、「セルコン手塚プロと契約」「ジャングル大帝」「鉄腕アトム」「インテリア商品化」等各種の商品化が実現するニュースが掲載されている。

(41)平成8年11月12日発行の日経流通新聞には、「手塚治虫氏のデザイン」「セルコンがインテリア」という表題のもとに、「インテリア品販売大手のセルコン(神戸市、柏瀬宏社長)は、来春、『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』のキャラクターを使ったカーテンなどを販売する。このほど手塚治虫プロダクションと契約した。リサイクル素材も活用する。手塚作品の依然衰えない人気と『環境保護』を合わせて打ち出し、手塚作品のマニアにとどまらず幅広い需要を取り込む考え。」との記事が掲載されている。

(42)平成8年11月17日発行の週刊読売には、「鉄腕アトム」の図形のほかに、「鉄腕アトムが切手に!二千万枚にマニアの興奮」という表題のもとに、郵政省による以下のコメントが掲載されている。すなわち、「昭和文化の一翼を担った手塚氏を顕彰するうえで、彼の仕事を視覚的に表現するものとしてキャラクターも図案化したいということです。」「世界的にはディズニーの切手があったりしますが、日本では初めてのキャラクター切手ということですし、やはり、光栄なことです。」。

郵便切手は、全国的かつ幼児を除く全世代に亘って使用されるものであり、「アトム」の周知・著名性獲得の重要な要素となっている。

(43)平成8年10月30日発行の産経新聞には、「鉄腕アトム記念切手に登場、マンガで初」という表題のもとに、「アトム」の図形と記事が掲載されている。

(44)平成8年12月6日郵政省発行の「『戦後50年メモリアルシリーズ第5集郵便切手』の発行について」には、発行する切手の内容として、「手塚治虫とキャラクター自画像とアトム」等の記事が掲載されている。

(45)平成8年12月7日発行の朝日新聞及びその地方版には、「庶民の人気者 ハリキッテ復活」「庶民のスター切手で復活」という表題のもとに、「手塚治虫」と「アトム」の切手が掲載されている。

(46)平成8年12月7日発行の読売新聞には、切手発行に関する記事「戦後きっての人気者」が掲載されている。

(47)平成8年12月7日発行の毎日新聞には、「懐かしのスター、切手に」という表題のもとに、「手塚治虫」と「アトム」の切手のほか、有名人の切手が掲載されている。

(48)平成8年12月7日発行の日本経済新聞には、「鉄腕アトム切手に登場」「漫画キャラクター初」という記事があり、時代を超越して、「アトム」が、いかに人気キャラクターであるかが伺える。

(49)同じく平成8年12月7日発行の読売新聞には、「ブリキの芸術品」「懐かし鉄腕アトム、鉄人28号」という表題のもとに、ブリキのおもちゃが人気を呼んでいる旨の記事が掲載されている。

(50)平成8年12月8日発行の「Asahi Evening News 関西版」には、戦後50周年を記念して、「アトム」他の有名人記念切手が発行される旨の記事が掲載されている。

(51)平成9(1997)年1月14日発行の朝日新聞には、「ブリキのアトム復刻」「1個5万円に予約集まる」等の記事が掲載されており、ブリキの「アトム」が、30代、40代にも人気がある事実が明らかにされている。

(52)平成9年1月29日発行のサンケイスポーツ新聞には、「アトム」を含む有名人の記念切手購入に「ナガ〜イ行列」ができた中央郵便局のスポット写真等が掲載されている。

(53)同じく平成9年1月29日発行の日刊工業新聞には、「手塚プロ、中国でアニメ」という表題のもとに、中国においては、「80年、82年に『鉄腕アトム』、『ジャングル大帝』を放送、爆発的な視聴率を達成した事実もある」旨の記事が掲載されている。

(54)平成9年2月1日発行の「Newtype(月間ニュータイプ2)」には、「鉄腕アトム」の「シネコルト」の宣伝広告が掲載されている。因みに、シネコルトとは、「外観は拳銃のコルトなんですが、引き金を引くと飛び出すのは、弾丸ならぬシネマ映像。簡単に言えば、ピストル型映写機...いや幻燈機です。」との説明がある。

(55)平成9年2月4日発行の流通サービス新聞には、「手塚プロが中国に新会社」「歴史故事のアニメ製作へ」「現地漫画ブームに対応」等という表題のもとに、「鉄腕アトム」の放映計画についての記事が掲載されている。

(56)平成9年2月5日発行の朝日新聞には、「鉄腕アトム」の人気が伺える「アトム切手をもっと刷って」という記事が掲載されている。

(57)平成9年2月発行の「郵趣」の表紙には、「手塚治虫」と「鉄腕アトム」の写真及び切手の拡大図が使用されている。

(58)平成9年5月1日小学館発行の雑誌「ラピタ」の中央には、「戦後最大のアニメーションヒーロー鉄腕アトム」というタイトルが掲載されている。

(59)平成9年5月3日発行の神奈川新聞には、「鉄腕アトム」等の人気アニメを刷った切手に対し、購入希望者の「長蛇の列」が生じた旨の記事が紹介されている。

(60)平成9年11月24日平凡社発行の「別冊 太陽」には、「手塚治虫マンガ大全」という表題のもとに、アトムの年代記とアトム作品の沢山の画像を通じて、アトムが手塚治虫の代表作となった経過が記載されている。

(61)平成9年12月5日朝日新聞発行の「アサヒグラフ」中の「さくら銀行」の広告頁には、「『鉄腕アトム』に会える店」という表題のもとに、手塚治虫記念館が宝塚に建設され、手塚治虫文庫も設けられた経過が記載されている。

(62)平成10(1998)年1月31日発行の日本流通新聞には、キャラクターをあしらったネクタイ「キャラタイ」の1つに「鉄腕アトム」が登場した旨の記事が掲載されている。

(63)平成10年2月14日発行の朝日新聞における「この人に再会」の欄には、「手塚治虫 夢は『ディズニーを超える』」という表題のもとに、米国NBCテレビに売りこみをした「鉄腕アトム」のアニメ人気と、その陰の苦労話が掲載されている。

(64)平成10年2月16日郵政省発行の「鉄腕アトム 絵入りはがき 発行セレモニー」のチラシがある。

(65)平成10年3月15日埼玉県環境生活部県民生活課発行の「ぷりむら」では、「鉄腕アトムの声の主は、生枠の“浦和っ子”」という表題のもとに、「アトム」の絵と声優「清水マリさん」の写真が掲載されている。

(66)平成10年4月8日発行の読売新聞には、「ガード下に手塚ワールド」「アトム“誕生地”に巨大壁画」という表題のもとに、手塚治虫ゆかりの地「高田馬場3丁目」に出現した壁画のニュースが掲載されている。この巨大壁画には、「環境美化」「自然保護」「ヒューマニズム」といった世界中ヘアピールしたいスローガンが、「アトム」他の手塚漫画の主人公たちを通じて主張されている。

(67)平成10年4月8日発行の朝日新聞には、「アトム誕生日に石像、さて何歳?」という表題のもとに、「鉄腕アトム」が、西暦2003年4月7日を誕生日としているのを記念して、墓石会社が寄贈した旨の記事が掲載されている。

(68)平成10年4月8日発行の報知新聞には、上記「鉄腕アトム」の石像の寄贈に関する記事が紹介されている。

(69)平成10年4月8日発行の東京中日スポーツ新聞には、「アトムの記念像完成」「墓石会社が手塚プロに贈呈」という表題のもとに、手塚プロダクションの松谷孝征社長のコメント(「心を形にというのは、手塚の仕事そのもの。手塚もきっと喜んでいるに違いない」)が紹介されている。

(70)平成10年4月8日発行の日刊スポーツ新聞には、「アトム甦る」のタイトルで、米国において2001年夏公開予定の映画「アストロボーイ」(「アトム」の英語名)に関する記事及び「アトム」の石像の贈呈のニュースが紹介されている。

(71)平成10年4月8日発行のスポーツニッポンには、「アトム記念像」「誕生日に贈呈式」の記事が掲載されている。

(72)平成10年4月8日発行のデイリースポーツ新聞には、「アトムの“誕生日”に記念像」という記事が掲載されている。

(73)平成10年4月9日発行の夕刊フジには、「アトム」の石像の写真及び「アトム」の絵とともに、「アトムの石像100万円」「生き続ける手塚ワールド」「キャラクターは今も健全、年商20億円」という表題のもとに、手塚作品の人気ぶりが紹介されている。

(74)平成10年4月16日発行の東京新聞には、「鉄腕アトム ハリウッドへ」のタイトルと、その右及び下の「アトム」の絵とともに、2001年に米国ハリウッドの映画会社を通じて「アトム」の映画が公開されるというニュースが掲載されている。さらには、「高田馬場に壁画も登場」という記事も掲載されており、「アトム」が、海外でも大きな人気を博している情況がわかる。

(75)平成10年4月18日発行の朝日新聞には、「壁画に手塚ワールド」「高田馬場を『夢のある、誇りの持てる街に』 商店街が4年半がかり」という表題のもとに、高田馬場の壁画紹介と手塚ポリシーである「自然保護」「平和」「人間性の回復」などを含めたテーマ「地球を救え」をアピールした記事が掲載されている。

(76)平成10年4月25日発行の「毎日新聞 ワイド きんき」のテレビ番組紹介欄には、「手塚治虫誕生70周年記念」「こどもの日にWOWOWで特番」「鉄腕アトムさよなら1963」などの記事が掲載されている。

(77)平成10年5月1日田辺茂男発行の「小学五年生」の第145頁には、「『鉄腕アトムを作れ!』と言われて ...」の記事が掲載されている。

(78)平成10年5月2日発行の毎日新聞には、「夢のある町へアトムも一役」という表題のもとに、JR高田馬場駅のガード下に登場した「アトム」他の手塚アニメキャラクターの記事が掲載されている。

(79)平成10年5月6日発行の「Newsweek(ニューズウィーク日本版)」には、「アトムがハリウッドに進出」という記事が掲載されている。

(80)平成10年5月10日発行の「Comnavi」の表紙には、「手塚治虫誕生70周年特別企画スタート」の文字と「アトム」の絵が掲載されている。

(81)平成10年5月16日発行の北海道新聞には、「JRガード下に手塚ワールド」「アトムの生地物語は続く」という表題のもとに、「アトム」をはじめとする手塚キャラクターの壁画写真が紹介されている。

(82)平成10年6月1日発行の「プレミア日本版」における「鉄」の写真の下には、「富士額のオトコは、美しい!」という表題のもとに、「鉄腕アトム」の絵が、(「天才・手塚治虫の生んだ、われらが富士額アイドルは永遠なのだ。」)というコメントとともに掲載されている。

(83)平成10年6月7日発行の朝日新聞には、「手塚治虫キャラクター図鑑」「全6巻、来月18日から配本開始」という紹介記事と、それを朝日新聞社自らが取り扱う旨の記事が掲載されている。

(84)平成10年6月8日発行の小学図書館ニュース「少年写真新聞 No.496」には、「ガード下に夢がいっぱい」「まんが家・手塚治虫さんのキャラクターが壁画になって大集合」という表題のもとに、各キャラクターの写真及び解説の頁が掲載されている。「キャラクターが勢ぞろいで、命の大切さを知り、自然や環境を守ろうと語りかけています。」という重要なメッセージとともに、外国でも有名なアトムの絵が掲載されている。

(85)平成10年7月1日発行の月刊コミックトムプラス(7月号)には、「INFORMATION」「手塚治虫 ワールドショップ開店!?」という記事が掲載されている。

(86)平成10年7月2日発行の河北新聞における「街いま」欄には、「あった 古本屋に手塚ワールド 仙台秋保」「アトムだ、レオだ、火の鳥だ」という表題のもとに、アトムらが紹介されている。

(87)平成10年7月15日発行の日刊「ゲンダイ」には、「もはや日本は“犯罪大国”アナ夕は家族をどう守るか!!」という表題のもとに、SOKホームセキュリティの広告と「アトム」の絵が掲載されている。

(88)平成10年7月17日発行の「トーハン週報」には、「編集長インタビュー」「日本人の心に生き続けるキャラクターたちが大集合」という表題のもとに、朝日新聞社発行の「手塚治虫キャラクター図鑑」全6巻に関する朝日新聞社出版企画室木元俊宏さんのインタビュー記事と「アトム」の絵が掲載されている。

(89)平成10年7月28日発行の流通サービス新聞における「商店街はいま・・・」の欄には、「東京都新宿区・高田馬場西商店街」「手塚治虫の壁画で脚光」という表題と「アトム」の写真が掲載されている。

(90)平成10年7月発行の朝日新聞(PR版)には、「手塚治虫キャラクター図鑑 刊行」「登場人物の魅力総まとめ」などの朝日新聞による広告が掲載されている。

(91)平成10年8月19日発行の熊本日日新聞には、「手塚治虫 誕生70周年」「作品の舞台化相次ぐ」「命と希望 共感呼ぶメッセージ」という表題と、有名な男女優の写真が掲載されており、「アトム世代の脚本」という欄には、「物心ついて以来、アトムと遊んで育った。」という脚本家 横内謙介氏のことばも掲載されている。

(92)平成10年9月6日発行の「ダ・ヴィンチ」における「今月の特集」欄には、「手塚治虫 キャラクター図鑑(1)(2)」及び「アトム」の絵が、ともに紹介されている。

(93)平成10年9月17日発行の朝日新聞には、「マンガ家 亡き後もキャラクター『現役』」「手塚プロ社員倍増」という記事が掲載されている。これは有名キャラクターが、いかに後世へ夢と希望を与えているかを示す現実の証拠といえる。

(94)平成10年10月1日発行の「日経トレンディNo.141」には、「鉄腕アトム」の写真の左に、「21世紀を目前に控え、鉄腕アトムが再び脚光を浴び始めた。トヨタ自動車のハイブリッドカー、プリウスや総合警備保障のホームセキュリティ、蓄熱ヒートポンプといったハイテク絡みのCMへの起用が目立つ。『技術の進歩が明るい未来につながる』というメッセージに、アトムがぴったりとあてはまるからだ。今年は手塚治虫氏誕生70周年で、手塚プロダクションの設立30周年。合わせて『100年祭』としてさまざまな記念事業を行っている。そのひとつが直営店舗の開設だ」という記事及び「手塚治虫ワールドショップ」の紹介記事が掲載されている。

(95)平成10年10月4日発行の「少年少女新聞」における「石子 順のみてみて、きいて」という欄には、「手塚治虫キャラクター図鑑(1)〜(4)」についての紹介がなされている。

(96)平成10年10月10日発行の東京新聞には、「鉄腕アトム」「お茶の水博士」「ジャングル大帝レオ」という表題のもとに、「“手塚キャラ”根強い人気。CM起用理由の共通項は、『未来型、環境への配慮』『テクノロジーの概念一致』」という記事が掲載されており、21世紀への夢と希望が「アトム」のCMとピッタリ一致する点が強調されている。

(97)平成10年10月30日発行の朝日新聞には、「手塚ワールド TVに映画に」「不安も漂う未来像に共感」という表題のもとに、「アトム」が生まれたことになっている2003年もすぐそこに来ていることと、現代の不安とが微妙にマッチしているという内容の記事が掲載されている。

(98)平成10年11月1日発行の「少年少女新聞」には、「こどもたちに 夢をあたえたい」という表題のもとに、「アトム」をはじめとして、「子どもたちに、たくさんの夢と希望と勇気をプレゼントしてくれたまんが家の故手塚治虫さんがうまれて、ことしで70年です」という記事に加え、「アトム」の勇ましい絵などが紹介されている。

(99)平成10年12月22日講談社発行の「コミックス1998」における「ソフビコレクシヨン」という欄には、「本書はマスコミ玩具としてのソフビ人形を私のコレクションの中からできる限り紹介しました」(佐藤五志氏)というコメントが掲載されており、その2頁には、数々の「鉄腕アトム」のおもちゃの写真が紹介されている。

(100)平成11(1999)年2月20日発行の「別冊 太陽」における「おまけとふろく大図鑑」における「明治 アトム・シール」には、数十種類の「アトム」のシールが掲載されている。

(101)平成11年10月27日のウェブサイト「asahi.com」には、「鉄腕アトム、2001年に米映画で復活へ」という表題のもとに、「鉄腕アトム」が、「アストロ・ボーイ」として米国の銀幕で復活することになった旨が伝えられている。

(七)被請求人の答弁に対する弁駁

本件商標が、引用1及び2商標については、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、また、引用3商標については、同第15号の規定に該当するとの請求人の主張に対し、被請求人は、それぞれを明確に分岐することなく、ひとまとめにした答弁している。

そのため、条文毎の反論は困難であるが、請求人は、適宜、商標法第4条第1項第11号と同第15号とに分離して以下の(1)乃至(4)の旨弁駁する。

(1)被請求人は、「『鉄腕アトム』の文字や『鉄腕アトム』のキャラクター漫画(以下、単に『鉄腕アトム漫画』という。)が、手塚治虫原作の漫画の名称、漫画キャラクターとして周知であることは認めるが、本件商標は『アトム』であって、『鉄腕アトム』でも『鉄腕アトム漫画』が付されているというものでもなく、片仮名三文字のみの『アトム』である。従って、各引用商標の『鉄腕アトム』や『鉄腕アトム漫画』とは非類似である。また、本件商標『アトム』から取引者、需要者が『鉄腕アトム』を連想することはなく、単なる『アトム』の文字からは、『微小存在』や『原子』という意味(あるいはそのような英語であろうこと)を連想するもので、観念においても明らかに非類似である。」と答弁している。

そこで、請求人は、上記「観念においても明らかに非類似である。」との被請求人の答弁を、請求人の主張する無効理由の一である商標法第4条第1項第11号の規定に該当しないとの意と捉えて、それに反論する。

(2)引用1及び2商標は、確かに「鉄腕アトム」という商標であり、「アトム」という商標ではないが、引用1及び2商標のいずれもが国民的人気漫画及びアニメーションである「鉄腕アトム」の題号、メイン・キャラクター(主人公)の名称から採択された商標であること及びその周知性については、被請求人自身も認めており、本件商標の出願日のはるか昔より、引用1及び2商標に接する取引者、需要者は、「鉄腕アトム」のほかに「アトム」とも略称し、かつ、「鉄腕アトム」の観念を連想、想起すること明らかである。

従って、本件商標「アトム」と引用1及び2商標は、称呼及び観念の点において、同一又は類似であり、しかも、引用1及び2商標の指定商品は、本件商標のそれと同一又は類似であるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は無効とされるべきである。

(3)商標法第4条第1項第11号に関し、請求人は、審決取消訴訟における東京高裁の判決で示された認定・判断(「観念類似に該当」)を、本件の判断においても、支持すべき旨主張しており、前記判決以降も「アトム」の著名性は益々拡大するばかりであるので、前記認定・判断に反する被請求人の解釈(縮小する解釈)は、明らかに誤りといわなければならない。

それにも拘らず、被請求人は、前記認定・判断に対し、「請求人は、『鉄腕アトム漫画』が著名であることから、『アトム』の文字についても、出所混同を生じるおそれがあるとした東京高裁の昭和54年(行ケ)第221号審決取消事件の判決(並びに拒絶審決)を提示しているが、これは20年も前の判断であり、その当時は、『アトム』や『アトミック』が『原子』を意味する英語であることの認識が現在より少なく、かつ、『鉄腕アトム』は、今よりもまだまだブームであったわけであるから、当時の判断としては、それなりの説得力があるとしても、現時点においては、もはや上記判決は当てはまらず、上記判決の引用は不適切といえる。」と強く反論している。

しかしながら、手塚治虫氏をはじめ、請求人の長年に亘る企業努力によって、「アトム」の著名性が、日本国内はもとより、国際的にも益々拡大路線をたどって現在に至っていることが、請求人提出の甲各号証によって客観的、具体的、かつ、明確に認められる以上、「アトム」の著名性が、上記判決時よりも低減しているということは考えられず、被請求人の前記主張は、これらの諸事実を完全に無視した誤ったものであるといわざるを得ない。

(4)請求人は、被請求人の答弁が、請求人の主張する無効の理由の一である商標法第4条第1項第15号の規定に該当しないとの意と捉えて、それに反論する。

請求人は、商標法第4条第1項第11号のほかに、本件商標の無効理由の1つとして同第15号違反を主張し、引用3商標を引用するとともに、甲各号証を提出することによって、本件商標の出願日である平成10年4月21日のはるか昔より、引用3商標が、請求人所有の登録商標として著名性を獲得し、現在に至っていることを主張・立証してきた。

すなわち、甲各号証に照らせば、引用3商標である「鉄腕アトム」の文字は、漫画の主人公である「アトム」の名称及び「アトム」自身の図形(絵)とともに、いずれも本件商標の出願日のはるか以前より、日本国内は勿論のこと、米国、ヨーロッパ及びアジア諸国においても、周知、著名なものとして認識され、現在に至っていることは言うまでもない。

従って、引用3商標(「鉄腕アトム」)は、アトムの図形(絵)とともに「鉄腕アトム漫画」の主人公の名前「アトム」と認識されるに至っているから、本件商標と観念において類似する。

これに対し、被請求人は、商標法第4条第1項第15号の規定、すなわち、「混同を生ずるおそれ」の文言を狭義に解して、「(三)本件商標『アトム』が、商品『指輪,時計』等の本件指定商品に使用されても、手塚治虫原作の『鉄腕アトム』と具体的な出所混同を生ずるおそれは考えられず、現に出所混同も生じていない。仮に、『鉄腕アトム』の文字及び『鉄腕アトム漫画』が著名であったとしても、各引用商標の『鉄腕アトム』の文字や『鉄腕アトム漫画』と本件商標の『アトム』とは非類似であり、また、本件商標『アトム』は、手塚治虫の漫画(『鉄腕アトム』)の著名な略称ではない。そして、『鉄腕アトム』の文字や『鉄腕アトム漫画』が著名であり、それらが単に『時計』等に商標として使用されている事実があるということのみをもって、『時計』等の商標として各引用商標『鉄腕アトム』や『鉄腕アトム漫画』が著名であるというわけではない。また、請求人は、各引用商標『鉄腕アトム』が周知であることを示す証拠のほかに、本件商標『アトム』もその略称として使用されている証拠を提出しているが、提出証拠は、いずれも『鉄腕アトム』の文字及び『鉄腕アトム漫画』が周知であることを示すにすぎないものである。すなわち、『鉄腕アトム』の略称として『アトム』が周知であると請求人が主張し、証拠提出しているものには、全て『鉄腕アトム』の文字及び『鉄腕アトム漫画』が付されている。したがって、それらの証拠中に、『アトム』の文字が単独で表現されているものはなく、請求人の提出証拠は、常に、『鉄腕アトム』の漫画、映像、キャッチフレーズ、手塚治虫漫画を表す表現に付随して使用されているにすぎない。言い換えれば、請求人の提出証拠は、『アトム』の文字単独で、『鉄腕アトム』の略称として使用されているというものはなく、必ず『鉄腕アトム』の文字及び『鉄腕アトム漫画』との関連のもとで使用されているものであるから、本件商標『アトム』の文字が単独で各引用商標『鉄腕アトム』の著名な略称となっていることを示す証拠は、何ら見当たらない。確かに、『鉄腕アトム』を『アトム』と略称して会話したり、文章表現したりすることはあるかもしれないが、『アトム』単独で『鉄腕アトム』を連想することを示す証拠は、何ら提示されていない。それゆえ、『鉄腕アトム漫画』が付されている『アトム』の文字を見れば、『鉄腕アトム』を連想することがあり得るとしても、何ら『鉄腕アトム漫画』とは関係が無く、『アトム』の文字が単独で用いられている場合には、当該『アトム』の文字から『鉄腕アトム』を想像するということはない。本件商標は、文字のみの『アトム』であり、『鉄腕アトム漫画』が付された商標ではないから、本件商標より『鉄腕アトム』を想像することはないので、本件商標と各引用商標とは、商品の出所について混同を生じない。」旨主張しているが、これは明らかに前記第15号の規定の誤解である。

特に、被請求人は、「言い換えれば、請求人の提出証拠は、『アトム』の文字単独で、『鉄腕アトム』の略称として使用されているというものはなく、必ず『鉄腕アトム』の文字及び『鉄腕アトム漫画』との関連のもとで使用されているものであるから、本件商標『アトム』の文字が単独で各引用商標『鉄腕アトム』の著名な略称となっていることを示す証拠は、何ら見当たらない。確かに、『鉄腕アトム』を『アトム』と略称して会話したり、文章表現したりすることはあるかもしれないが、『アトム』単独で『鉄腕アトム』を連想することを示す証拠は、何ら提示されていない。」旨主張しているが、この主張は、請求人が甲各号証で立証した事実に反する。

「アトム」は「鉄腕アトム」の著名な略称である。すなわち、甲各号証に照らせば、「アトム」という文字だけでも「鉄腕アトム」の漫画主人公を、子供をはじめとする一般人でさえも観念するし、本件商標の具体的商品である「時計」や「身飾品」に「アトム」が付された場合には、仮にアトムの図形(絵)がなくても「アトム」(鉄腕アトム)を連想し、観念することは明らかである。その結果、「時計」や「身飾品」について、文字のみの「アトム」を付した商品が商取引された場合、取引者、需要者は、その商品が、請求人、あるいは、これと何等かの関係のある会社の商品であると認識するに至ることは十分に予測され、いわゆる広義の出所混同を生ずるおそれがあること明らかである。

そして、単独で用いられる「アトム」の文字が、漫画のキャラクターの主人公の名前として全国的かつ世界的に有名となって用いられている事実は、請求人提出の甲各号証を通じて確認できるので、被請求人の主張は、誤ったものであること明らかである。

このように本件商標の出願日以前から、単独の「アトム」の文字が、「鉄腕アトム」の文字及びその主人公の図形(絵)(『鉄腕アトム漫画』)との関係で一体的なものとして観念されている以上、引用3商標との関係で、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当し、無効とされるべきである。

以上を総合すると、被請求人の主張は、請求人の提出した各証拠によって客観的かつ具体的に明記されている諸事実に反するから、明らかに誤った主張であり、結局、本件商標は、引用1及び2商標との関係において、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録され、かつ、引用3商標との関係において、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものというべきであるから、その登録は無効を免れない。

4.被請求人の主張の要点

(一)被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を概略(二)以下の旨述べた。

(二)鉄腕アトムの文字や鉄腕アトムのキャラクター漫画(以下、単に「鉄腕アトム漫画」という。)が、手塚治虫原作の漫画の名称、漫画キャラクターとして周知であることは認めるが、本件商標は、「アトム」であって、「鉄腕アトム」でも「鉄腕アトム漫画」が付されているというものでもなく、片仮名三文字のみの「アトム」である。

従って、本件商標は、各引用商標の「鉄腕アトム」や「鉄腕アトム漫画」とは非類似である。

また、本件商標「アトム」から、取引者、需要者が、「鉄腕アトム」を連想することはなく、単なる「アトム」の文字からは、「微小存在」や「原子」という意味(あるいは、そのような英語であろうこと)を連想するもので、観念においても明らかに非類似である。

(三)本件商標「アトム」が、商品「指輪,時計」等の本件指定商品に使用されても、手塚治虫原作の「鉄腕アトム」と具体的な出所混同を生ずるおそれは考えられず、現に出所混同も生じていない。

仮に、「鉄腕アトム」の文字及び「鉄腕アトム漫画」が著名であったとしても、各引用商標の「鉄腕アトム」の文字及び「鉄腕アトム漫画」と本件商標の「アトム」とは非類似であり、また、本件商標「アトム」は、手塚治虫の漫画(「鉄腕アトム」)の著名な略称ではない。

そして、「鉄腕アトム」の文字や「鉄腕アトム漫画」が著名であり、それらが単に「時計」等に商標として使用されている事実があるということのみをもって、「時計」等の商標として各引用商標「鉄腕アトム」の文字及び「鉄腕アトム漫画」が著名であるというわけではない。

また、請求人は、各引用商標「鉄腕アトム」が周知であることを示す証拠のほかに、本件商標「アトム」も、その略称として使用されている証拠を提出しているが、提出証拠は、いずれも「鉄腕アトム」の文字及び「鉄腕アトム漫画」が周知であることを示すにすぎないものである。すなわち、「鉄腕アトム」の略称として「アトム」が周知であると請求人が主張して証拠提出しているものには、全て「鉄腕アトム」の文字及び「鉄腕アトム漫画」が付されている。

したがって、それらの証拠中に、「アトム」の文字が単独で表現されているものはなく、請求人の提出証拠は、常に、「鉄腕アトム」の漫画、映像、キャッチフレーズ、手塚治虫漫画を表す表現に付随して使用されているにすぎない。

言い換えれば、請求人の提出証拠は、「アトム」の文字単独で、「鉄腕アトム」の略称として使用されているというものはなく、必ず「鉄腕アトム」の文字及び「鉄腕アトム漫画」との関連のもとで使用されているものであるから、本件商標「アトム」の文字が単独で各引用商標「鉄腕アトム」の著名な略称となっていることを示す証拠は、何ら見当たらない。

確かに、「鉄腕アトム」を「アトム」と略称して会話したり、文章表現したりすることはあるかもしれないが、「アトム」単独で「鉄腕アトム」を連想することを示す証拠は、何ら提示されていない。

それゆえ、「鉄腕アトム漫画」が付されている「アトム」の文字を見れば、「鉄腕アトム」を連想することがあり得るとしても、何ら「鉄腕アトム漫画」とは関係が無く、「アトム」の文字が単独で用いられている場合には、当該「アトム」の文字から「鉄腕アトム」を想像するということはない。

本件商標は、文字のみの「アトム」であり、「鉄腕アトム漫画」が付された商標ではないから、本件商標より「鉄腕アトム」を想像することはないので、本件商標と各引用商標とは、商品の出所について混同を生じない。

仮に、「アトム」の文字が、何ら意味を有しない言葉であったならば、「アトム」から「鉄腕アトム」を連想し、商品の出所について混同を生ずるおそれもあり得るが、「アトム」は「微小存在」とか「原子」という意味を有する語であり、近年では、最早「アトム」が、「原子」等の意味を有する英語であることを、ほとんどの人が知っており、それゆえ、「アトム」の文字から「鉄腕アトム」を想像する者は極めて少ないといえる。

また、「時計」等に「鉄腕アトム」の文字及び「鉄腕アトム漫画」が、商標として使用されている例についても、前述と同様に、たとえ、「鉄腕アトム」の文字及び「鉄腕アトム漫画」が著名であったとしても、商品「時計」等の商標として、「鉄腕アトム」が、著名であるという事実はない。

(四)「鉄腕アトム」が、毎週放送されており、アニメブームとなっているといった時代ならともかく、昨今においては、英語として「原子」等の意味をもつ単なる「アトム」の文字が「鉄腕アトム」を表象するものとして各引用商標との間に商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。

請求人は、「鉄腕アトム漫画」が著名であることから、「アトム」の文字についても、出所混同を生じるおそれがあるとした東京高裁の昭和54年(行ケ)第221号審決取消事件判決(並びに拒絶審決)を提示しているが、これは20年も前の判断であり、その当時は、「アトム」や「アトミック」が「原子」を意味する英語であることの認識が現在より少なく、かつ、「鉄腕アトム」は、今よりもまだまだブームであったわけであるから、当時の判断としては、それなりの説得力があるとしても、現時点においては、もはや上記判決は当てはまらず、上記判決の引用は不適切といえる。

以上のことから、本件商標「アトム」は、「鉄腕アトム」とは明らかに非類似であり、たとえ、「鉄腕アトム漫画」が著名であったとしても、「鉄腕アトム」が、商品「時計」等の商標として著名であるというわけでもなく、「アトム」の文字自体は、それ単独で、何ら「鉄腕アトム」の略称として著名というものでもないから、本件商標「アトム」が、「鉄腕アトム」の文字及び手塚治虫の著名な「鉄腕アトム漫画」と商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。従って、本件商標の登録には、何ら瑕疵はない。

5.当審の判断

本件商標は、「アトム」の文字(標準文字)を書してなり、第14類「身飾品,時計」を指定商品とするものである。

これに対して、引用1商標は、「鉄腕アトム」の文字を縦書きしてなり、その書換後の商品の区分及び指定商品中には、本件商標の指定商品中、「身飾品」と同一又は類似する商品である(第14類)「カフスボタン,ネクタイピン,宝石ブローチ」を有するものである。

同様に、引用2商標は、「鉄腕アトム」の文字を横書きしてなり、その指定商品中には、本件商標の指定商品中、「時計」と同一又は類似する商品である(旧第23類)「時計,その部品及び附属品」を有するものである。

そこで本件商標と引用1商標及び引用2商標(以下、「各引用商標」という。)との類否について検討すべく、先ず、「鉄腕アトム」及び「アトム」の著名性についてみるに、「(六)『鉄腕アトム』及び『アトム』の著名性について」における(1)乃至(101)[甲第14号証乃至同第114号証]、すなわち、昭和39(1964)年1月1日から平成11(1999)年10月27日までの新聞、雑誌等の記事によれば、漫画「鉄腕アトム」の主人公の名前及び略称として「アトム」の文字が、単独で多数用いられている事実が窺え、同様に、「アトム」と称する(ロボットの)少年を主人公とする漫画「鉄腕アトム」が、かつて、世界の多数の国々において人気を博し、それが本件商標の出願前から今日に至るまで継続して、我が国のみならず世界の国々の幅広い年齢層の人々に広く認識され、親しまれていることが認められる。

そうとすれば、本件商標の指定商品の分野において、本件商標「アトム」に接する取引者、需要者は、これより直ちに漫画の主人公「アトム」(鉄腕アトム)を想起、観念することが多いとみるのが相当である。

もっとも、「アトム」の文字が、英語「atom」の発音を仮名書きしたものとも認められ、それより「原子」の意を想起、観念する場合があり得ることをすべからく否定するというものではないが、本件商標の指定商品が、第14類「時計,身飾品」であって、化学や物理関係の特殊の分野における商品というよりも、誰でもが取引者、需要者になり得る一般的な分野における商品であるということを考慮すれば、むしろ、本件商標に接する取引者、需要者は、これより容易に漫画の主人公「アトム」(鉄腕アトム)を想起、観念するものというのが相当である。

また、被請求人は、本件商標の指定商品は、漫画と直接関わりのないものであるから、本件商標から漫画の主人公「アトム」(鉄腕アトム)が想起、観念されることはない旨主張するが、本件商標の指定商品は、前記したとおりであって、その中には、「時計,カフスボタン,ネクタイピン,宝石ブローチ」等、一般の人に身近な商品が含まれており、誰でもが取引者、需要者となり得る商品であることよりすれば、本件商標に接する取引者、需要者は、「原子」の意を想起、観念するというよりも、むしろ、漫画の主人公「アトム」(鉄腕アトム)を想起、観念することのほうが多いものと認められるので、被請求人の主張は採用することができない。

してみれば、本件商標と各引用商標は、ともに漫画の主人公「アトム」(鉄腕アトム)の観念を生ずるものということができる。

したがって、本件商標は、各引用商標と観念上類似の商標であり、かつ、その指定商品も同一又は類似であるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ず、請求人のその余の理由に論及するまでもなく、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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