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Trademark Appeal Case

「プラス」の識別力と称呼類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2000−35586(T2000−35586/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4211418号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件商標

本件登録第4211418号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲に示すとおり、「パブロン」と「プラス」の仮名文字を二段に併記してなり、平成9年2月18日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同10年11月13日に設定の登録がされたものである。

2.請求人の引用する商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第434141号の1商標は、「プラス」の文字を縦書きしてなり、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品とし、昭和26年11月28日に登録出願、同28年10月31日に商標登録第434141号として設定登録され、その後、昭和58年8月15日に商標権の分割移転の登録により、その指定商品を第1類「化学品、薬剤及び医療補助品、但し、化学品を除く」とするものである。また、本商標権は3回に亘る商標権の存続期間更新登録されていて、現に有効に存続しているものである。

同じく、登録第2098289号商標は、「PLUS」の文字を横書きしてなり、昭和60年7月18日に登録出願、第1類「薬剤」を指定商品として、同63年11月30日に設定登録され、その後、本商標権は商標権の存続期間更新登録されていて、現に有効に存続しているものである(以下、合せて、「引用各商標」という。)。

3.請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第18号証(枝番号含む)を提出している。

(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

(2)本件商標は「パブロン/プラス」と二段併記してなる構成であるから、各段は分離して称呼されるのが自然であり、他にこれを一連に称呼しなければならない特別な事情は見あたらない。

また、本件商標は全体として一体の意味は生じないので、上下段の文字部分が不可分一体のものと認識されるものではなく、各段の文字部分に照応して別個の称呼、観念を生ずるものである。

そして、本件商標中、上段の「パブロン」は、被請求人の販売する風邪薬に使用されている代表的な商標として広く一般に知られているものであり、風邪薬「パブロン」印のシリーズ商品28品目の統一商標として使用されているものであるから、その下段の文字部分である「プラス」は、上段の「パブロン」印のシリーズ商品28品目中の1つである「プラス」印の商品を指称する識別表示として機能しているものである。

(3)本件商標中、下段の「プラス」の文字部分は、その指定商品との関係においても十分識別力を有するものである。

確かに、「プラス」「PLUS」の文字が「加えること、足すこと」の意味を有することはこれを否定するものではないが、それを理由に当該文字の識別力を否定するのは即断に失するものといわざるを得ない。

例えば、「カルシウムプラスビタミンC」「ビタミンEをプラス」といったように、加える内容を具体的に表示した場合には、商標法第3条第1項第3号にいう商品の品質、原材料等の表示に該当するものと思われるが、「プラス」「PLUS」の文字自体から生ずる意味は抽象的なものであるから、何ら上記条項に該当するものではない。

(4)してみれば、本件商標からは、「ハブロンプラス」の称呼のほか、「プラス」の称呼、観念をも生ずるものである。他方、引用各商標からは、その構成から「プラス」の称呼、観念が生ずること明かである。したがって、本件商標と引用各商標は、称呼上及び観念上類似の商標であり、かつ両者の指定商品は同一又は類似のものである。

4.被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第3号証(枝番号含む)を提出している。

(1)本件商標は、片仮名の「パブロン」を上段に、「プラス」を下段に配してなるものであるところ、上段の「パブロン」は、被請求人が永年にわたってその商品「風邪薬」に使用してきたものであり、取引者、需要者がこれに接したときは、直ちに被請求人の風邪薬を想起する程度に周知、著名になっている商標である。

一方、下段の「プラス」は、「(ア)加えること、(イ)加号または正の数の符号、(ウ)陰、陽に分けられるものの、陽の方、(エ)剰余、付加、等」(広辞苑)の意味を有し、本件商標の指定商品である薬剤の分野においては、「既存の商品に新たな成分などを加えたもの」等の意味を表すために形容詞的な用法で従来の商標に付加して使用されることが常套となっている用語であって、商品の出所識別標識として用いられているものではない。

(2)本件商標は、上記のとおり2つの語が二段に表記されているとはいえ、各語は同書、同大で中央揃いにひとかたまりにまとまり良く配置されており、「パブロン」が著名商標であって「プラス」がこれに形容詞的に付加されて使用される傾向を有する用語であることを併せ考えると、本件商標は一塊にまとまった一連の商標と認識するのが常識的である。したがって、本件商標の指定商品の取引者、需要者が本件商標に接したときは、一連の商標として「新たな成分や効能が付加されたパブロン」ないし「強力パブロン」のごとき観念を想起し、「パブロンプラス」の称呼をもって認識するとみるのが自然である。

なお、本件商標が二段に構成され、それぞれの語の識別力に格段の差があることを考慮すれば、著名な商標である「パブロン」の部分が看者に強い印象を与え、この部分のみが抽出、略称されて「パブロン」の称呼をもって取引に供されることがあるであろうことを否定するものではない。

しかしながら、本件商標の「プラス」の部分が商品の出所識別機能を有するものでないことは前記のとおりであるから、本件商標が「プラス」の部分のみをもって取引の場で使用されることはありえないところであって、「プラス」のみの称呼、観念が生じないことも明らかである。

(3)請求人は、本件商標が二段併記してなり、全体として一体の意味は生じないので、各段は分離して観察され各段の文字部分に照応して別個の称呼、観念が生ずるとし、「パブロン」の文字部分は被請求人販売に係るシリーズ商品(風邪薬)の統一商標であり、「プラス」の文字部分は、上段の「パブロン」印のシリーズ商品28品目中の1つである「プラス」印の商品を指称する識別表示として機能しており、個々の商品を識別するための商品商標ということができるから、これに照応した「プラス」の称呼をも生ずると主張するが、甲第4号証(「医薬品・医療衛生用品 価格表2000」抜粋)に記載されている請求人のいわゆる「個々の商品を識別するための商品商標」とは、「パブロン」の用途、品位、成分、形状などを表示する「うがい薬」、「ゴールド錠」、「生姜」、「せき止め」、「点鼻」、「トローチ」、「ドロップ」、「のどスプレー」等の語を指していると思われるが、これらの表示は商品の出所を識別する標識としては使用されていない。薬剤の分野においてこのような品位、効能、形状等を表示する語には他に、「エース」、「スーパー」、「クール」、「40E」、「強力」等多様な語がある(乙第1号証)が、これらがいずれも商品の出所識別標識として機能していないものであることは明らかであって、東京高裁平成10年(行ケ)第148号「SUNTORY/南アルプス天然水」審決取消請求事件の判決例の説示からも疑問の余地がない。

(4)引用各商標からは、いずれも「プラス」の称呼が生ずることは明らかである。これに対して、本件商標からは前述のとおり、「パブロンプラス」あるいは「パブロン」の称呼が生ずる。したがって、本件商標と引用各商標とは、称呼において相紛れることのない非類似の商標であり、また、本件商標と引用各商標が、観念、外観の点においても類似するものでないことは説明するまでもないことであるから、本件商標が全体として引用各商標と混同することのない非類似の商標であることは明らかである。

上記被請求人の非類似の主張を引用各商標の登録と併存して、「プラス」「PLUS」を含む商標が多数登録(乙第3号証)されている実例をもって根拠付ける。

5.当審の判断

本件商標は、その構成別掲に示すとおり、「パブロン」の仮名文字と「プラス」の仮名文字とを二段に横書きした構成よりなるところ、「パブロン」と「プラス」の文字は、その構成上明らかに分離して看取されるものであるばかりでなく、構成中、上段の「パブロン」の文字部分は、被請求人(商標権者)が、商品「風邪薬」に永年使用してきた結果、取引者・需要者間に広く認識されている商標であるのに対し、同下段の「プラス」の文字部分は「加えること、足すこと」等の意味合いを有する語であることをそれぞれ認め得るものであるから、両文字間には常に一連一体に称呼し、全体として一般に親しまれる熟語的意味合いを有するというような格別の事情があるものといい得ないものである。

そして、「プラス」の文字(語)は、被請求人提出の証拠によれば、例えば、「・・・ビタミンをプラスすることで・・・」(乙第1号証の1)、「・・・成分に胃粘膜保護剤をプラスし・・・」(乙第1号証の2)、「・・・に防カビ効果をプラス」(乙第1号証の4)のように「加えること、足すこと」等の意味合いの語として使用されていること、製品名として「○○○プラス」「△△△プラス感冒薬」等の使用例が認められるとしても、これら証拠(乙第1号証)の用例をもってして、被請求人の主張のように、商品「薬剤」の分野において、「プラス(PLUS)」の文字自体が単独に「既存の商品に新たな成分などを加えたもの」等の意味を表すために常套的に使用されているものとは俄に認め難いところであるから、「プラス(PLUS)」の文字が、その指定商品との関係において自他商品識別標識としての機能を有しないということはできない。

したがって、「パブロン」と「プラス」の文字を二段に併記してなる本件商標のかかる構成及び「パブロン」の文字が商標権者の商標として周知・著名である事情等を併せみれば、本件商標の構成中、下段の「プラス」の文字部分は、それ自身単独で自他商品識別力を有するものと判断するのが相当であり、本件商標はその構成文字に相応して「パブロンプラス」及び「パブロン」の称呼を生ずるとともに、単に「プラス」(加えること、足すこと等)の称呼、観念をも生ずるものといわざるを得ない。

他方、引用各商標は「プラス」、「PLUS」の各文字に相応し「プラス」称呼、観念を生ずること明らかである。

してみれば、本件商標と引用各商標とは、「プラス」の称呼、観念において類似する商標であり、この点において相紛らわしく、このほか、外観の差異を考慮するとしても、両者はその出所について混同を生ずるおそれのある類似のものと判断するのが相当であり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一又は類似するものである。

なお、被請求人が引用する登録例は、本件商標とは商標の具体的構成において事案を異にするものであって、それらを本件の類否判断の基準とするのは必ずしも適切でなく、この点について述べる被請求人の主張は採用することができない。

結局、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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