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Trademark Appeal Case

周知商標と不正出願

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35592号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4166538号商標(以下「本件商標」という。)は、平成7年12月7日に登録出願され、「PAO」の欧文字と「パオ」の片仮名文字を2段に横書きしてなり、第42類「求人情報の提供」を指定役務として、平成10年7月17日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第12号証を提出した。

(1)商標登録無効の理由の要点

本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。

(2)商標法第4条第1項第10号違反について

請求人は、平成2年4月に風俗産業従事者を主たる対象とする求人情報誌「Paoぱお」を創刊し、現在に至るまで月2回継続して発行している。

該雑誌は当初関西地区からの求人者の広告のみを掲載し、関西地区においてのみ販売を行なっていたが、平成4年10月より求人者地域及び販売地域を日本全国に拡大した。そして、本件出願時である平成7年12月7日には本雑誌は合計約1万5千部、本件登録査定時である平成10年1月16日には合計約3万部発行されていた。

その出願日前後及び登録査定日直前の本雑誌を甲第1号証ないし同第6号証として提出する。

本雑誌の題号は、ややデザインが施されているとはいえ、「Pao」なる英3文字から成るものと容易に理解される。また、「ぱお」とひらがな2文字が丸枠に囲まれて該題号に添えられている。

一方、本件商標は上段に「PAO」と英大文字3文字を、下段に「パオ」とカタカナ2文字を配したものである。

したがって、両者は、英文字において2文字目以降の大小文字の違いがあり、ひらがなとカタカナの違いがあるとはいえ、その本質において英文字・力ナとも同一であり、その称呼においても同一である。

したがって、本件商標は甲第1号証ないし同第6号証の雑誌の題号に類似する。

本雑誌は求人情報誌であり、正に本件商標の指定役務「求人情報の提供」について使用されるもの(商標法第2条第1項第2号)に該る。

本雑誌には、発行号により異なるが、北海道から九州まで全国各地の店舗の求人広告が掲載されている。

また、甲第3号証誌(平成7年11月10日号)及び甲第6号証誌(平成10年1月25日号)の全国への配本状況を示す資料を甲第7号証及び同第8号証として提出するが、これらより明らかなとおり、本雑誌は実際に相当部数が全国各地に配本されている。

以上、本件商標は、出願時及び登録査定時の双方の時点において、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似する商標であって、しかも、その役務と同一の役務について使用をするものであるので、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものである。

(3)商標法第4条第1項第19号違反について

本件商標の商標権者である株式会社日研は、本件商標の出願日平成7年12月7日の前である平成6年2月8日に、請求人との間で、上記「求人情報誌Paoぱお」の求人広告掲載業務に関する契約を交わしていた(甲第12号証)。

この契約書は、後述の商願平6ー81855号(商公平9ー33583号)登録異議申立に対して、その答弁書と一緒に本件商標権者自身が特許庁に提出したものであって、本件商標の商標権者は本件商標の出願時において、請求人が行う求人情報の提供役務について使用していた商標「Paoぱお」が存在することを知っていたことはもちろん、その商標を使用した求人情報誌の掲載広告を委託される立場にあった。そのような立場を利用して、本件商標権者は、請求人に無断で本件商標の出願を行ったものである。

本件商標権者は、本件商標の出願の直前である平成7年11月20日に、本件商標と同一形態の商標について、「第35類 広告」等を指定役務として商標登録出願を行っている(商願平7ー120882号)が、その前である平成6年8月11日に上記のとおり商願平6ー81855号商標登録出願を行っている。該出願は、甲第10号証に示すとおり、第35類「広告、職業のあっせん」を指定役務とするものであり、その商標の態様は本件審判請求人の発行に係る上記「求人情報誌Paoぱお」に用いられている題号と全く同一のものである。このような商標形態の一致は決して偶然には生じ得ないものであり、また、上記広告契約の存在を勘案して該出願の指定役務を考慮すると、商願平6ー81855号商標登録出願における本件商標権者の不正の意図を認めざるを得ない。なお、商願平6ー81855号出願は平成9年4月21日に商公平9ー33583号として出願公告されている(甲第10号証)が、請求人は当然それに対して異議申立を行った(甲第11号証)。

このような事実が存在するところに、本件商標の出願が、上記商願平7ー120882号出願と同一の形態の商標について、請求人の該商標を用いて行っている業務に深く関係する役務を指定して、ほぼ同時期に行われていることを考慮すると、本件商標の出願においても本件商標権者の不正の意図を認めざるを得ない。

本件商標は他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。)をもって使用をするものといわざるを得ない。すなわち、本件商標は商標法第4条第1項第19号の規定にも違反して登録されたものである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、本件商標の登録無効審判請求に対し、要旨次のように答弁した。

(1)本件登録無効審判の請求の理由は、いずれも根拠がなく、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同第19号の規定に違反しないから登録されたものである。

(2)請求人の理由は、請求人の出版する「Paoぱお」が、本件商標の出願日以前に出版され、一般に広く知られた求人雑誌であるから、本件商標の出願時において他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標と同一であり、本件商標の指定役務は、他人の業務に係る商品または役務に類似する、ことを請求理由としていると思われる。

上記請求理由につき検討すると、本件商標は第42類の「求人情報の提供」を指定役務としている。この第42類の役務である「求人情報の提供」は、求人広告の掲載とか求人情報を希望する顧客の確保を目的とする被請求人が行なう代理店業務としてのサービスである。

これに対し、請求人が出版する「Paoぱお」は雑誌に用いられているものであり、仕事を探す人々がこの雑誌を購入するものである。したがって、本件商標の使用役務と請求人が使用している商品とは流通経路が相違し混同のおそれは全くない。

4 当審の判断

本件商標は、「PAO」、「パオ」の各文字よりなるものであり、請求人の使用に係る標章(以下、「引用標章」という。)は、「Pao」「ぱお」の各文字よりなるものであるから、両者は、構成各文字に相応して、いずれも「パオ」の称呼を生ずるものと認められるところである。

そこで、本件商標の指定役務と請求人の引用標章が表示されている商品(以下、「引用商品」という。)が類似するか否かについて検討する。

商標法は第2条第5項において、商品と役務との間に類似関係があることを規定しているところ、商品と役務の類否を判断するに際しては、例えば、イ)当該商品の製造・販売と当該役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか、口)当該商品と当該役務の用途が一致するかどうか、ハ)当該商品の販売場所と当該役務の提供場所が一致するかどうか、ニ)当該商品と役務の需要者の範囲が一致するかどうかを総合的に考慮して具体的に判断すべきものと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、本件商標の指定役務は、第42類「求人情報の提供」であり、この役務は求人広告の掲載又は求人情報を希望する顧客に提供することなどを目的とするいわゆる代理店業務としての役務と認められるものである。

これに対し、請求人の使用に係る引用標章が表示されている引用商品は、「求人情報誌」であって、月2回、継続して発行されるというものであるから、いわゆる定期刊行物といえるもので商品及び役務の区分第16類に属する「印刷物」中の「雑誌」の範疇に属する商品と認められる。なお、請求人は、「請求人が行う求人情報の提供役務について使用していた引用標章〜」とも述べているが、引用標章が使用されているのは「雑誌(求人情報誌)」であることは、提出に係る甲第1号証ないし同第6号証から明らかである。

以上のことからすると、本件商標の指定役務と引用標章の引用商品とは、それぞれの業務に係る事業者並びに役務の提供場所と商品の販売場所が異なる上、その取引形態、流通経路等も共通にするものではなく、また、需要者の範囲が必ずしも一致するものともいえないから、これら取引の実情を合わせ考えると、両者を類似のものと判断することはできない。

そして、この認定を覆すに足りる証拠はない。

加えて、請求人の使用に係る引用標章が需要者の間において広く知られているとして提出された証拠は、甲第7号証及び同第8号証の「配本業者が発行したとの請求書の写し」といえるところ、引用商品が「雑誌(求人情報誌)」である以上、少なくともその販売部数、売上金額等がどのくらいであるかを証する取引書類の提出が必要とされるところ、その提出がないので、前記甲第7号証及び同第8号証のみでは引用標章の周知性を立証するには不十分であるといわざるを得ない。

してみれば、本件商標と引用標章が称呼において類似するとしても、引用標章の周知性が認められず、かつ、本件商標の指定商品と引用標章が表示されている引用商品とは類似しないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものということはできない。

また、前記のとおり引用標章の周知性が認められない以上、本件商標は、請求人の引用標章の出所表示機能を希釈化させたり又はその名声を毀損させるなど不正の目的をもって出願されたものとはいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものということはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に違反して登録されたものとはいえないから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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