結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35389号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4162870号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、第21類「装身具,ボタン,かばん類,袋物,宝玉及びその模造品,造花,化粧用具」を指定商品として、昭和63年4月22日に登録出願、平成10年7月3日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第19号証を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号、同第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(1)本件商標は、前記のとおり登録されたものであるが、被請求人、すなわち商標権者は、本件商標を取得すべく商標出願を昭和63年に行った。その後、被請求人は請求人との間で1990年(平成2年)本件商標にかかる商標の使用許諾に関するライセンス契約を行った。しかし、このライセンス契約は、被請求人による契約違反により、後述するように1994年(平成6年)11月14日に解除された。したがって、被請求人はこの時点で、出願にかかる商標を使用することができず、また日本において商標登録を受けることが許されないものであった。しかし、かかる経緯について審判官は知得していないので、平成10年に登録すべき旨の審決を行い、よって登録されるに至ったものである。
(2)本件商標は、イタリア共和国の北部の都市、ブレシアを中心に過去数十年間にわたって行われてきた自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマーク(以下、単に「1000 MIGLIAマーク」ともいう。)である。すなわち、本件商標は、右向きの矢印マーク内に「1000」と「MIGLIA」を2段書きしたものであるが、「MIGLIA」は英語の「MILE」(マイル)を意味し、全体としては「1000マイル」(約1、600km)を意味している。なお、「1000」はイタリア語で「ミッレ」と発音されるので、「1000 MIGLIA」は「ミッレ・ミリア」と発音されるのである。
(3)この自動車レース「ミッレ・ミリア」の歴史は非常に古く、20世紀の初めに始り、現在も毎年ブレシアをスタートし、ローマを経由してブレシアに戻るルートで行われている。このレースは単に速さを競うものではなく、フェラーリなどのビンテージカーを使用する、極めて格調の高いレースである。自動車レースとして日本ではFIや、パリ・ダカールラリーが有名であるが、「ミッレ・ミリア」の歴史はそれらより古く、人気も劣らないくらいである。また、「ミッレ・ミリア」は現在ではイタリアのみならず、南米版「ミッレ・ミリア」、米国版「ミッレ・ミリア」、日本版「ミッレ・ミリア」などが開催されるに至っているのである(甲第5号証)。また、日本では、本場イタリアの「ミッレ・ミリア」がテレビ放送され、人気が高まっている(甲第10号証)。
(4)本件商標と同一の商標は、イタリアにおいてブレシア自動車クラブ(ACB)が所有しているが、自動車レース、「ミッレ・ミリア」を開催・運営している主催者である請求人は、ブレシア自動車クラブ(ACB)から、この商標の使用を許諾され、かつサブライセンスを与える権能をも与えられている。請求人はかかる状況の基に被請求人に対し1990年3月23日付けでサブライセンスを与えた(甲第1号証及び同第2号証)。
(5)ところが、被請求人は、サブライセンス契約に定められた口イヤリティを請求人に支払わなかった。その結果、請求人は1994年11月14日、被請求人とのライセンス契約を解除した(甲第3号証及び同第4号証)。したがって、被請求人はこの商標を使用することができないばかりか、日本において登録を受けることはできないはずである。しかし、かかる経緯を認識していない審判官は、登録すべき旨の審決を行ったのである。すなわち、登録すべき旨の審決の行われた平成10年3月25日(甲第7号証)は、上記契約が解約された後であることから、審決時においては、被請求人は本商標の使用及び登録を受けることについて請求人から何等権原を与えられていないのである。
(6)かかる経緯と事実関係の基で、被請求人が本件商標について登録を受けることは、請求人との信義に反し、法律上も許されないものである。また、イタリアにおいて、権威のある自動車レースのシンボルマークを、イタリアにおける本来の権利者の意向に反して、信義に反した者に対して登録を認めることは、国際的な公序良俗、国際的信義に反するものである。
(7)被請求人は、本件商標と同一の商標を第17類の商品を指定して平成2年9月28日に出願し、平成7年2月27日に出願公告されている。しかし、請求人は、平成7年4月27日に上記と同様な公序良俗違反を理由とする登録異義由立てを行い、その結果、平成10年5月15日に、登録異義理由ありの決定(甲第8号証)と、拒絶査定(甲第9号証)が出されている。
(8)以上の経緯から、本件商標は公序良俗に反して登録されたものであり、審判官が上記経緯を認識していれば本来登録すべき旨審決はされず拒絶されていたはずである。被請求人は、請求人とのライセンス契約が解除されたことを審判官に通知すれば、出願が拒絶されることを認識していたが、審判官には通知せずに登録を受けたものであり、この点からも公序良俗違反である。このように本件商標は、上記経緯を認識し得なかった審判官が商標法第4条第1項第7号に反して過誤により登録したものである。
(9)更に、本件商標は上述のように自動車レースの愛好家の間では世界的に認知され、日本でも日本版「ミッレ・ミリア」として、1992年(平成4年)からクラシックカーによる1000マイルの走行デモを伴うイベントが開催されており、そのシンボルマークとして、本件商標が使用されている。したがって、日本国内及び外国の自動車レースの愛好家や、関連業界の人々にとって、本件商標は極めて周知なものである(甲第10号証ないし同第17号証)。請求人との契約が解除された後において、被請求人への登録を認めることは、被請求人が請求人の意志に反して日本において本件商標を使用することを容認することとなり、被請求人による本件商標の使用は商標法第4条第1項第19号にいう不正の目的をもって使用するものとなる。よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当し、上記経緯を認識し得なかった審判官が商標法第4条第1項第19号に反して過誤により登録したものである。
(10)更に、本件商標が被請求人の権利として認められていると、被請求人がその業務にかかる商品について本件商標を使用したとき、請求人あるいは、請求人が許諾した者の業務にかかる商品と需要者が混同することが予想される。よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当し、上記経緯を認識し得なかった審判官が商標法第4条第1項第15号に反して過誤により登録したものである。
被請求人は、請求人の請求の理由に対し、何ら答弁するところがない。
本件商標について無効理由があるか否かについて、検討する。
(1)自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークにつて
甲第5号証(「ミッレ・ミリア」のパンフレット)、同第10号証(日本におけるミッレ・ミリアの関連番組の放送一覧)、同第11ないし同17号証(イタリアにおけるミッレ・ミリアを紹介した写真集1991年〜1997年版の表紙の写し)によれば、自動車レース「ミッレ・ミリア」はイタリア都市ブレシアをスタートし、ローマを経由してブレシアに戻るルートで行われる自動車の都市間ロードレースである。その歴史は非常に古く、20世紀の初め(1927年)に始り、第二次世界大戦で一時中止されたが、戦後再開され、1957年まで続けて開催、しかし同年の事故等で中止、その後、1982年復活し現在も行われている。このレースは、単に速さを競うものでなく、フェラーリなどのビンテージカーを使用するものであり、この間、特にイタリアのフェラーリの活躍は目覚ましく自動車ファンに愛され続けられているものである。そして、日本においても、本場イタリアの自動車レース「ミッレ・ミリア」が1990年(平成2年)より1998年(平成10年)に亘り毎年テレビ放送された。特に1992年は、復活後10周年記念として名ドライバー、女優等も参加し、華やかな開催となり、日本からもプロドライバー及び芸能人が参加したことが紹介された。また「ミッレ・ミリア」は現在ではイタリアのみならず、日本版「ミッレ・ミリア」が同じく1992年(平成6年)10月末から11月初めに盛大に開催され、名車の展示及び富士スピードウェイ、鈴鹿サーキットでレースが行われたことが認められる。
そして、自動車レース「ミッレ・ミリア」にあっては、そのシンボルマークとして黒く塗りつぶし縦幅がやや広い右向きの矢印図形内の上部に「1000」の文字を、下部にややデザインをした「MIGLIA」の文字及び矢印の先端に沿って「く」の字状逆向き図形のそれぞれを白抜きに表示してなる標章を同レースのパンフレット、写真集等に使用されているものである。
以上の事実によれば、自動車レース「ミッレ・ミリア」及びそのマークは、イタリアが誇る世界的自動車レースとそのマークであり、そしてテレビ放送等により近年のモータースポーツの発展は目覚ましいものがあり、我が国においても本件商標の登録時には、自動車ファンを初め一般にも相当程度知られるに至っていたものと判断される。右認定を左右する証拠はない。
(2)自動車レース「ミッレ・ミリア」のマークに関する請求人と被請求人とのライセンス契約の内容等
甲第1、2号証(請求人と被請求人とのライセンス契約書、同翻訳文)及び同第3、4号証(請求人から被請求人へのライセンス契約解除通告、同翻訳文)によれば、次の記載(抜粋)が認められる。
(ア)ダルマ(請求人の略称、以下同じ。)は、ACB(「ブレシア自動車クラブ」の略称、以下、同じ)より「1000Miglia」のマークをいろいろな種類の製品やサービスに使用するライセンスの許可を得ていると記載。
(イ)ダルマは、ACBから外国でのマークを使用する権利を取得したとの記載。
(ウ)当該マークの所有権は、ABCの管轄にあると記載。
(エ)ダルマはサブライセンシー(被請求人)に「1000Miglia」のマークの使用権を譲渡すると記載。
(オ)サブライセンスの対象となる商品は、衣料、アクセサリ、装身具類、宝石、時計、旅行かばん類、バッグ、文房具、書籍、ペン、カレンダー、紋章、灰皿、ライター、キーホルダー、カーモデル、ナイフ、皿、旗、財布、ダイヤ、メガネとサングラスと記載。
(カ)対価として、サブライセンシー(被請求人)はダルマに金額を払うと記載。
(キ)Mille Miglia CO,LTDは日本において添付したリストのカテゴリーに関してマーク「1000Miglia」を登記したと記載。
(ク)Mille Miglia CO,LTDは、取消不可能な現在の法的行為でダルマに登記の全ての権利を渡す、この譲渡の対価は、ダルマからMille Miglia CO,LTDへのサブライセンスの契約の規定に決められていると記載。
(ケ)請求人から被請求人へのライセンス契約解除通告、同翻訳文
1994年11月14日貴社(ミッレ・ミリア株式会社=被請求人)と当社(ダルマ エス アーエル=請求人)間の契約は、契約に基づく貴社の金銭的義務の不履行に関する契約違反のため今を以って中途終了しましたと記載。
以上の事実によれば、請求人は、自動車レース「ミッレ・ミリア」を開催・運営している主催者と認められる。また同シンボルマークはイタリアにおいては「ブレシア自動車クラブ」が所有しているが、請求人は、同自動車クラブよりいろいろな種類の製品やサービスに使用するライセンスの許可を得ているものである。
請求人は、被請求人との間で被請求人が同シンボルマークを衣料、アクセサリ、装身具類、宝石、時計、旅行かばん類、バッグ、文房具、書籍、ペン、カレンダー、紋章、灰皿、ライター、キーホルダー、カーモデル、ナイフ、皿、旗、財布、ダイヤ、メガネ及びサングラスに使用することを許諾し、対価として金額を支払うサブライセンスの契約を1990年3月23日付けでした。しかしながら、1994年11月14日付けでこの契約は被請求人の金銭的義務の不履行に関する契約違反のため中途終了したものと認められる。右認定を左右する証拠はない。
(3)本件商標と自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークとの比較
本件商標は別掲のとおりであり、また自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークは前記のとおりであり、両者は同一のものであること明らかである。
(4)ところで、商標法は、公正な競争を図り、取引秩序を維持することを目的とする競業秩序を維持する面を持っているものであるが、商標法第4条第1項第7号は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録を受けることができない」旨を規定しており、その趣旨は商標の構成自体が公序良俗に反する場合だけでなく、一般に国際信義に反する場合も含まれると解され、また、その判断時期は査定時又は審決時である。
(5)以上、上記(1)から(4)を踏まえて、本願商標と自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークとについてみれば、請求人は、世界的に知られるイタリアの自動車レース「ミッレ・ミリア」を開催・運営している主催者であること、請求人はブレシア自動車クラブから自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークに関して外国での使用する権利を取得していること、本件商標は被請求人により商標登録出願をされたが自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークとは同一のものであること、そして、本件商標については請求人と被請求人との間で自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークの使用許諾に関するライセンス契約を行った。しかし、このライセンス契約は、1994年(平成6年)11月14日に中途終了していたこと、自動車レース「ミッレ・ミリア」及び同マークは、世界的なレースで、またそのシンボルマークであり、本件商標の登録査定時には、我が国においても自動車ファンまた一般にも相当程度知られるに至っていたものであること前記のとおりである。
してみると、かかる経緯と事実関係からして、本願商標を被請求人の商標として登録することは、自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークとして知られているものを正当な権限を有する請求人以外に認めることであり、また請求人と被請求人との間で商標の使用許諾に関するライセンス契約も中途終了していることからも信義則に反し、さらに、我が国の国際的な信頼も損なうおそれがあると言うべきであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為と言わざるを得ない。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといわなければならない
(6)したがって、本件商標は、請求人の他の主張について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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