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Trademark Appeal Case

立体商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第19138号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第9類「スピーカーシステム」を指定商品として、平成10年4月23日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由

原査定は、「本願商標は、容易に『スピーカー』の形状のひとつと認識し得るものであるから、これをその指定商品に使用したときには、その商品の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。

立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。

そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。

また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。

そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。

立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。

(2)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲に示した構成のとおり、外側に湾曲させた曲線部分を正面とし、5角形の2辺が交わる部分を背面とする5角柱の全体形状からなり、その背面部分のほぼ中心部分に裾の広い円筒形の突起物を、その左右に一個ずつ、先端に小さな突起を有する円筒形の突起物を配してなる形状よりなるものであるところ、背面に配置された3個の突起部分は、スピーカーの構成要素の一つであるダクトを看取させるものであり、本願商標は、全体としてスピーカーのエンクロージャーの形状の一形態を表したものと認められるから、これをその指定商品「スピーカーシステム」について使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。

(3)請求人は、「本願商標は、1967年に請求人が開発及び販売を開始した独創的な形状よりなるものであって、世界中でこれと同一の形状のものはない。」旨主張する。

しかしながら、本願商標は、前記認定のとおり、ややその形状が特異なものであっても、それは商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品等の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって、自他商品の識別力を有するものとは認められないことは前示(1)で述べたとおりである。

(4)請求人は、「本願商標は、1967年の発売開始以来、30年もの間、継続して販売され続け人気を博している『スピーカーシステム』であり、更に、我が国のオーディオ雑誌及び音楽雑誌に広告掲載された結果、需要者・取引者の間では、請求人の業務に係る商品『スピーカーシステム』であることを認識することができるに至っているものであるから、商標法第3条第2項により登録されるべきである。」旨主張し、第1号証乃至第22号証を提出している。

そこで、以下、請求人の前記主張について検討する。

ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られるものである。

したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章より構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。

ただし、使用に係る商標の形状の全体を観察した場合、その立体的形状部分と出願に係る商標とが同一であり、その立体的形状が識別標識として機能するには、そこに付された平面標章部分が不可欠であるとする理由が認められず、むしろ平面標章部分よりも立体的形状に施された変更、装飾等をもって需要者に強い印象、記憶を与えるものと認められ、かつ、需要者が何人かの業務に係る商品等であることを認識することができるに至っていることの客観的な証拠(例えば、同業組合又は同業者等、第三者機関による証明)の提出があったときは、直ちに商標の全体的な構成が同一ではないことを理由として商標法第3条第2項の主張を退けるのではなく、提出された証拠から、使用に係る商標の立体的形状部分のみが独立して、自他商品又は役務を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて判断する必要があるというべきである。

そこで、これを本願についてみれば、請求人提出の第1号証、第2号証、第3号証、第4号証及び第22号証によれば、本願商標とほぼ同一の形状のスピーカーシステム(901シリーズ)を請求人が、製造・販売していることが確認できる。しかしながら、それら商品には、いずれも、前面左下方部分又は右下方部分に「BOSE」の文字からなる標章が表示されていることが確認できる。

そうとすれば、請求人の使用に係る商標は、立体的形状と文字の平面標章より構成されており、本願商標と同一のものとはいえず、むしろ、そこに表示された前記の文字(商標)によって、商品の出所について識別されているものとみるのが商取引の実情に照らして自然というべきであり、これらによって、本願商標の立体的形状それ自体が自他商品の識別標識として認識されたということはできない。

次に、本願商標に係る立体的形状部分のみが独立して、自他商品を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて検討するに、請求人は、「本願商標に接する需要者・取引者は、本願商標の立体形状をみれば、本願商標の出願人の製造・販売に係る商品であると直ちに認識できる。」旨主張し、その根拠として、オーディオ評論家斉藤宏嗣氏他16名の者の記名・押印のある証明書を提出している(第5号証乃至第21号証)。

しかしながら、これらの証明書は、その内容がほぼ同一であって、あらかじめ準備されたと推認される書式に証明者が安易に記名・押印したのではないかとの疑問を否定し得ず、かつ、本願商標が立体商標として使用され、その立体的形状部分のみが、請求人の取り扱いに係る商品「スピーカーシステム」を表示するものとして取引者・需要者間において周知・著名になっていることを客観的に証明するには十分といえないものである。

その他、請求人提出の書証を総合してみても、本願商標それ自体が自他商品の識別標識としての機能を有するに至っているとするには十分とはいえないものである。

4 結論

してみれば、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項の要件を具備していないとした原査定の認定、判断は妥当なものであって取り消すべき理由はない。

よって、結論のとおり審決する。

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