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Trademark Appeal Case

結合商標と著名商標の称呼類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35105号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4113385号商標(以下、「本件商標」という。)は、「DIESELVOX」の欧文字を書してなり、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成8年9月20日に登録出願、同10年2月13日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2273385号商標は、「DIESEL」の欧文字を書してなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、昭和63年4月18日に登録出願、平成2年10月31日に設定登録されたものである。同じく、引用登録第3252866号商標は、「DIESEL」の欧文字を書してなり、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成5年10月27日に登録出願、同9年1月31日に設定登録されたものである(以下、まとめて「引用商標」という。)。

3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第10号証を提出した。

(1)請求人の調査した範囲においては、本件商標の商標権者が本件商標の指定商品に係る業務を行っている事実は発見できなかった。よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品について使用する商標」の要件を具備しない。

(2)本件商標は、引用商標と類似し、指定商品も抵触する。本件商標は、「DIESEL」と「VOX」の語を単に羅列した商標であり、「ディーゼルボックス」と一連にのみ称呼すべき特別の理由はないから、簡易迅速を尊ぶ商取引の場においては、本件商標からは、「ディーゼル」の称呼が生ずる可能性があると言える。特に、引用商標が世界的に著名になっている点を考慮すれば、その可能性は極めて高いものといえる。

そうとすれば、本件商標は、引用商標と「ディーゼル」の称呼を共通にする称呼上類似の商標といえる。

したがって、本件商標は、引用商標と称呼上類似する商標であり、指定商品も抵触するから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)請求人は、イタリアで設立された会社で、「かばん、靴、被服」等のファッション関連商品に、引用商標を10年以上に亙り世界的に使用している。日本では、1990年より三菱商事株式会社及び株式会社ワールドとの提携により、引用商標を付した「かばん、靴、被服」等のファッション関連商品が販売され、現在では、大阪市中央区南仙波2−7−11に住所を有する株式会社パンドラを通じて日本で販売されており、新聞や雑誌にも頻繁に広告・宣伝・紹介されている(甲第1号証ないし同第3号証)。

引用商標は、日本では、国際分類に基づく新分類3,9,14,16,17,18,25類、日本分類に基づく旧分類17,21,25類において出願公告又は登録されており、外国では、英国、米国、カナダ、韓国、台湾、フイリピン、シンガポールで登録されている(甲第5号証)。

以上より、請求人の引用商標が、本件商標の出願日前より、我が国において、「かばん、靴、被服」等のファッション関連商品の商標として著名になっていたことは明らかである。本件商標と引用商標が称呼上類似することは、(2)で述べたように明らかである。また、引用商標の使用商品も本件商標の指定商品とファッション関連商品という意味で抵触・近似するものである。

よって、本件商標は、請求人の著名商標と類似し、その商品も抵触、近似し、本件商標は請求人の商標のただ乗りに該当するから、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当することは明らかである。

このような著名商標からなる結合商標については、その著名な部分からも称呼が生ずることは、社会通念に照らし明らかであるからである。審査基準、審決、判決も同様の考えに立脚している。特許庁審査基準は、「指定商品又は指定役務について著名な商標と他の文字を結合した商標は、原則として、その著名な商標と類似する」と記載されており(甲第7号証)、その判断に基づく審決がある(甲第8号証)。

(4)本件商標は、請求人の著名な略称である「DIESEL/ディーゼル」を含むから、商標法4条1項8号に該当する。

(5)本件商標は、請求人の使用する引用商標の名声にただ乗りするものであるから、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。

(6)以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、同法第4条第1項第1I号、同第10号、同第15号、同19号、同8号及び同第7号に該当する商標であり、その登録は無効とされるべきである。

(7)被請求人の答弁に対する弁駁

(ア)乙第1号証及び同第2号証について

乙第1号証及び同第2号証は、1998年に出された異議決定であり、WIPOの周知商標の保護に関する勧告、周知商標に関する特許庁の審査基準改定前のものである。WIPOの勧告の受け入れを世界に表明した日本の特許庁及び新しい商標審査基準の下では、当然、本願商標は、商標法4条1項11号、同第15号、同第10号、同第19号、同第8号及び同第7号に基づき無効とされるべきである。

商標の周知性・類似性・混同の可能性は、売上高だけでなく、広告量、商標の名声、商標の識別力の強さを総合して判断するものである。引用商標の広告量は、甲第1号証及び同第2号証より膨大なものとなっており、商標の名声については、イタリアの著名ブランドとの評価を日本、イタリア及び海外で得ている(甲第1号証及び同第2号証)。また、商標の識別力の強さについては、引用商標は、本願の指定商品(ファッション関係)と全く関係のない言葉で(重厚長大産業で使用されるディーゼルエンジンの「DIESEL」である)あり、意外性のある言葉である。

よって、商標の識別力も強く、当該商品分野においては、SONY、KODAK、SUNTORYと同様の造語に近いものと言えよう。

特許庁審判部もかかる観点より、別の案件で、登録商標「DIESELCRUZE/ディーゼルクルーズ」(25類)は、先登録商標「DIESEL」に類似すると判断している(甲第10号証)。

(イ)商標法3条1項柱書について

被請求人は、商標法3条1項柱書の無効理由について何ら答弁していない。よって、斯かる点からも、本件商標は無効とされるべきである。

4 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求め、要旨次ぎのように答弁し、証拠方法として乙第1号証ないし同第5号証を提出した。

(1)請求人は、被請求人の所有する本件商標及び登録第4113386号商標(ROCK DIESEL)に対し、本件無効審判請求と同一理由及び同一甲号証でもって、商標登録異議の申立を行っており、これに対して、請求人の異議の申立は理由がないものとして、本件商標及び前記登録商標は、登録を維持する旨の決定を受けているものである。したがって、請求人の請求はその前提において理由がないものである(乙第1号証及び同第2号証)。

(2)請求人の引用商標は、元来ドイツの発明家の略称として、又「ディーゼルカー」「ディーゼルエンジン」として、古くから我が国において一般大衆に親しまれておるうえに、永年、我が国の世界に冠たる大企業が社名の略称及びその商標として、「ヤンマーデイーゼル」「日産ディーゼル」「ディーゼル機器」なる標章を使用し、これが著名周知性を獲得していることは明らかである。

したがって、独自性がなく、自他商品識別力が乏しい引用商標が、個別的商品の商標としてその周知性を確立するためには、継続的かつ強力な広告宣伝と一定規模以上の販売量が確保されない限り、既に存在している著名周知の同一又は類似の標章を超越し、引用商標が、我が国において、需要者をして周知ならしめることは極めて困難であるといわざるを得ない。

しかし、本件商標の出願日前における、請求人の広告宣伝とその販売数量は、これを充足せしめるに至っていないことは明らかである。

(3)請求人は、引用商標が、本件商標の出願日前より、我が国において、「かばん、靴、被服」等のファッション関連商品の商標として著名になっていたと主張しているが、しかし、引用商標は、1999年7月14日現在においても、特許庁ホームページ「日本国周知、著名商標検索」掲載の商標として掲載されていないものである。

(4)さらに、請求人は、本件商標の商標登録異議申立事件の平成10年9月14日付手続補正書(乙第4号証)において、引用商標を使用したかばん、靴、被服等の我が国での売上は、、下記のとおりであることを述べているが、かかる微少の販売量と売上高では、引用商標が本件商標の出願時に取引業者間のみならず一般消費者間においても、その周知性を確立していたとはいえないものである。

1995年 1000個 7百万円

1996年 8000個 5千万円

(5)してみれば、請求人の引用商標は本件商標の出願時及び登録査定時のいずれの段階においても、我が国において、「かばん、靴、被服」等の商標としてその周知性を確立していないことは明らかである。

よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第I1号、同第10号、同第15号、同第19号、同第8号及び同第7号のいずれの規定にも該当しないものである。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項柱書について、

請求人は、請求人の調査した範囲においては、本件商標の商標権者が本件商標の指定商品に係る業務を行っている事実は発見できなかったと主張しているものであるが、業務を行っていないとする何らの証拠も提出していない。したがって、本件商標に係る出願の願書の出願人の業務欄に出願人が本件商標を使用する意思として指定商品に関する業務を記載しているものであり、業務を行っていないとする何らの証拠が提出されていない以上、商標権者が本件商標を自己の業務に係る商品について使用をしないとは認定し得なく、請求人の主張は、採用できない。

よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないとはいえない。

(2)引用商標の著名性について

請求人は、引用商標の著名性について甲各号証を提出しているので検討する。

甲第1号証は、業界紙等の新聞の写しと認められるところ、新聞名、発行日が表示されていないか、あるいは、それらが手書きで記載されたものである(甲第1号証に綴られている最後の新聞は手書きの記載もない。)。また、当該新聞が請求人の主張するとおりに発行されたものであるとしても、いずれも、本件商標の出願日以降のものである。そして、これら新聞記事より、請求人は、我が国において「ディーゼル」の商標に関する「被服、かばん、靴」を株式会社パンドラ社を通じ販売していることが窺えるとしても、その掲載は1997年3〜4月に3回を含め合計5回程度であり、これらには、「ディーゼル」「伊・ディーゼル社」の文字は表されているものの引用商標の「DIESEL」の文字の記載はみられないものである。

甲第2号証は、雑誌広告の写しと認められるところ、広告等が掲載された頁に雑誌名と何月号かは記載されてはいるものの発行年が明らかでない(1997年9月号「FINE BOYS」を除く。)。また、当該雑誌が請求人の主張するとおりに発行され、「被服、かばん、靴」の広告がなされたとしても、本件商標の出願日前の雑誌広告は、1996年のみであり、その6誌中、1996年4月号「POPEYE」、同年5月号「SMART」の2誌は引用商標の「DIESEL」の文字が明らかでなく、同年7月号「LIGH TNING」、同年4、7月号「ASAYAN」及び同年4月号「CAZICAZI」の3誌は「ディーゼル」の文字の使用であり、出願日以前で引用商標が使用されているのは、同年8月号「VIVI」の1誌の広告のみである。そして、本件商標の出願日後の雑誌広告の18誌中、1997年1月号「CHECKMATE」、同年4月号「Sesami」の2誌は引用商標の使用が明らかでなく、同年11月号「MORE」、同年10月号「HOT DOG」、同年6月号「JJ」、同年6月号「流行通信」、同年9月号「FINE BOY」、同年11月号「VIVI」、同年(1998年の誤記)5月号「宣伝会議」の7誌は「ディーゼル」の文字の使用である。

さらに、これら雑誌の発行部数、地域についても明らかでない。

してみれば、甲第1号及び同2号証によっては全体として引用商標が、本件商標の出願時に我が国において、請求人の業務の係る商品を表示するものとして広く認識されていたものとは認められないし、また、請求人の著名な略称であるということもできない。他に前記認定を左右する証拠の提出はない。

さらに、甲第3号証の請求人の商品カタログ、甲第4号証の引用商標に関する日本おける他類の登録公報写し及び甲第5号証の引用商標に関する外国に関する登録公報写しを併せみても、引用商標が本件商標の出願時に外国及び我が国における需要者の間で広く認識されていたものと、かつ、登録査定時までにおいても需要者の間で広く認識されていたものと認めることができない。

(3)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、上記のとおり、外観上まとまりよく一体的に表してしてなり、これより生ずると認められる「ディーゼルボックス」の称呼も冗長でなく、また、「DIESEL」の文字が、上記に認定したとおり需要者の間で広く認識されていないばかりでなく、外に該文字を着目してみる等の特段の事情も有しないものであるから、本件商標は、需要者にあっては、その構成文字全体をもって一種の造語と把握、認識されるとみるのが相当である。

そうとすれば、本件商標は、その構成文字に相応して「ディーゼルボックス」の称呼のみが生ずるものであり、「デーゼル」の称呼が生ずる引用商標とは、称呼上類似しない。また、本件商標と引用商標は、上記のとおりであるから外観上区別し得るものであり、観念においては、本件商標は特定の観念を有しない造語よりなるものであるから、比較することができない。

したがって、本件商標と引用商標は、その称呼、外観及び観念のいずれにおいても類似しないものである。

(4)商標法第4条第1項第7号、同8号、同第10号.同第15号及び同第19号について

引用商標は、本件商標の出願前より我が国または外国において広く認識されていたものとは認められず、請求人の著名な略称であるとも認められないこと前記のとおりであり、また、そのような引用商標にただ乗りしたとも考え難く、不正の目的をもって使用するものと認め得る証左もないことから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第15号及び同第19号に関する請求人の主張は、いずれも採用することができない。

(5)したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書き、さらに、同法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号の規定に違反して登録されたものではないから、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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