結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35252号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
1本件商標
本件登録第3128003号商標(以下「本件商標」という。)は、欧文字「GIS」をやや右斜体に横書きしてなり、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を指定役務として、平成4年9月30日登録出願、同8年3月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第16号証を提出した。
(1)本件商標の「GIS」なる語は、Computer Science(コンピュータ科学)の分野で使用されている「Geographical Infomation System」の略語であり、地理関係(Geographical)の取引者、需要者においては、GISなる語はコンピュータ用語として認識されている(甲第1号証)。
(2)「GIS」は、Geographic Infomation System(地理情報システム)の略語であり、土地情報に種々の付加価値情報を加えたデータベースに関連する語として説明されている(甲第2号証)。
(3)さらに「GIS」は、Geographic Infomation Systemの略語(日本語では「地理情報システム」と翻訳)であり、地理情報をコンピュー夕を用いてデータベース化したシステムと位置付けされている(甲第3号証)。
(4)甲第4号証には、「コンピュータ時代の地図」と題する項目中に「GIS」の説明がある。この説明によれば、GIS(地理情報システム)に関するソフトウエアは「汎用コンピュータ、ミニコンピュー夕、ワークステーション、パソコンなど幅広く適用できる」という記載がある。即ち、GISなる語と電子計算機のプログラム(ソフトウエア)とは、本件商標の登録査定時には、極めて密接な関連性を有するに至っていたことが判る。
(5)GISがコンピュータの出現によって初めて可能になったことを示唆し、GISなる語はコンピュータのソフトウエア及びハードウエアと密接な関係にあることを示している(甲第5号証)。
(6)本件商標の登録査定時には、非常に多くのGIS関連図書が出版されていることが判る。一覧表の図書のタイトルから、GISなる語は「地理情報」関係者(学者、業界、需要者)にとってコンピュータ用語であることは明らかである(甲第6号証)。
(7)上述した如く、GISなる語は、本件商標の登録査定時には、Geographical Infomation Systemの頭文字を取った略語として「地理情報システム」を示すものとして取引者、需要家において普通に使用されるようになっており、GISがコンピュー夕を使用した膨大なデータ処理を前提として成立し、したがってGISは少なくとも「地理情報処理との関連において」コンピュー夕用語として認識され、このような「GIS」を「電子計算機のプログラムの設計・作成及び保守」に使用した場合、取引者、需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認識することができない。
(1) GISなる語がコンピュ−タ用語として現実に使用されていたからこそ、辞典(甲第1号証)は「GISはコンピュータ用語である」と言っている(追認している)。
(2)GISを研究する学会として「地理情報システム学会」が設立されており、平成5年3月には「GIS一理論と応用」というタイトルで第1号の学会誌が刊行されている(甲第7号証)。上記学会発行の第3号学会誌は平成7年8月刊行である(甲第8号証)。
(3)関係省庁の密接な連携の下に「GISの効率的な整備及びGISの相互利用の促進を図る」ために、GIS関係省庁連絡会議の設置が申し合わされている(平成7年9月26日 甲第9号証)。
(4)GISは電子計算機のプログラムと不可分の関係にある。即ち、
(イ)GISが地理情報を処理するハードウエアとソフトウエアからなるシステム商品である(甲第7号証及び甲第8号証)。
(ロ)GISとは、ディジタルマッピング等で作成された地図データをユーザーの利用目的に合わせて構造化した地図データベースを基にしたものである(甲第10号証)。
(ハ)GISはソフトウエアとコンピータ・システムとの組合わせにより実現されると説明し(発明の詳細な説明の欄の段落【0038】 甲第11号証)。
(ニ)地理情報システム(GIS)の3つの主要な構成部分の一つとして、一連のアプリケーション・ソフトエアを挙げ(第8頁)、更に、「どのGISも各々のデー夕構造を持っておりそれはソフトウエアによって制御される」と説明し(第199頁)、付録2に非常に多くのGIS用のソフトウエア提供者を挙げ(第205頁及び付録2)、付録1のGI S関連用語一瞥すれば「GISがソフトである」ことが如実に示されている(甲第12号証)。
(ホ)地理情報システム(GIS)にとってコンピータは欠かすことのできない存在である(甲第13号証)。
(ヘ)GISの要素としてソフトウエアを挙げると共に、ソフトウエアはGISとして包括されるとも説明されている(甲第14号証 第127頁)。
(ト)書籍の付録としてGISのデモソフトをフロッピーディスクで提供している(甲第15号証)。
(5)「GISソフトウエア」なる語が普通に使用されている。
「GIS」と「ソフトウエア(或いは単にソフト)」とを連結した「GISソフトウエア」が一語として普通に使用されている。
この事実は、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」の役務、つまり、「ソフトウエアの設計・作成又は保守」の役務にGISを使用した場合、「取引者、需要者が何人かの業務に係る役務であるか認識することができない」ことを示している。
(イ)甲第7号証には、「IDRISI(Eastman,1990)と呼ばれるラス夕−型GISソフト」なる記述が存在し(第31頁)、
(ロ)甲第8号証には、「SURFERというGISソフトウェアで表示した...」、「IDRISIというGISソフトウェアを使って、...」、「いろいろなGISソフトウェアを組み合わせることにより...」、「GISソフトATLAS GISによる事例を紹介し、...」等の記述があり、
(ハ)甲第12号証には、「GISソフトウェアの構成」(第9頁)、「GISのためのソフトウェア・パッケージは...」(第9頁)等の記載があり、
(ニ)甲第14号証には、「デー夕;GISソフトウェアで生成される図形データ...」(第128頁)、「前述のGISソフトウェアの中の...」(第129頁)の記述があり、
(ホ)甲第15号証には、「MapGraffix」は米国ComGrafix社で開発されたGISソフトウェアです」(序文第2頁)、「本書に付属のGISソフト...」及び「GISソフトウェアが起動します」(共に添付ソフトの説明文)等の記載があり、
(ヘ)甲第16号証には、半透明マーカーがで示した9つの個所に「GISsoftware」なる記載がある。
(6)「GIS program」なる語が普通に使用されている。
「GIS」と「 program」とを連結した「GIS program」が普通に使用されている(甲第17号証)。
(7)つまり、提出した甲第1号証〜甲第16号証を勘案すれば、GISを本件商標の役務である「ソフトウェアの作成等」に使用した場合、“自他役務識別力”は全くといっていいほど存在しないことは明々白々である。
3被請求人の主張
被請求人は、「本件請求は成り立たない。」との審決を求め、要旨次のように答弁した。
(1)請求人は、請求の理由において「GISなる語は、本件商標の登録査定時には、.[Geographical Information System]の頭文字を取った略語として『地理情報システム』を示すものとして取引者、需要者において普通に使用されるようになっており、GISがコンピュータを使用した膨大なデータ処理を前提として成立し、したがってGISは少なくとも「地理情報処理との関連において」コンピュータ用語として認識され、このような『GIS』を『電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守』に使用した場合、取引者、需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認識することができないと解する。」と、主張する。
(2)「地理情報システム[Geographical Information System]」が、「GIS」の略称で使用されていることがあることを反論するものではないが、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」の役務に商標として使用された場合に、「取引者、需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認識することができない。」との主張には、到底承服できない。
本件商標の役務である「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」は、いわゆるソフトウエア業者が提供する役務である。簡単にいえば、依頼人からの委託を受けて、特定業務などを電子計算機で処理するために電子計算機プログラムを設計・作成するものである。請求人は、ソフトウエア業者とコンピュータとは、密接な関係であることから、本件商標と「地理情報システム」の略称が同一であるとして、本件商標の無効理由として取り上げているが、ソフトウエア業者の業務範囲は産業界全体に及んでいるのであって、たまたま登録商標と同じ欧文字の構成からなる「GIS」なる語が、ある特定分野(ここでは地理関係の取引者、需要者)においては、違う意味の略称として理解されることがあるとしても、商標として使用された場合に「取引者、需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認識することができない。」などと、商標の識別力を有しないとの主張は、無謀極まりない論理である。
(3)請求人は、本件商標が商標法第3条第1項第6号に該当する旨主張するが、第6号に規定する登録を認められない商標とは、多数人が現に使用しつつあるゆえに識別力の認められない商標、公益上特定人に独占させることが不適当と認められる商標であって、第3号から第5号には該当しないものである。本件商標は、多数人が、現に使用しつつある訳でなく、また、公益上の理由により、商標権者が独占させることが不適当でないことは明らかであるから、本件商標が、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標でないことは反論の余地もない。本件商標が本質的機能としては自他役務を区別し、それが一定の出所から流出したものであることを一般的に認識させることができれば十分であるから、本件商標は、請求人の無効理由に該当しないことは明らかである。
(4)以上述べたとおり、本件商標は請求人の主張する事項に該当するものでないことは明白であり、本件審判請求は理由がない。
よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。
4当審の判断
そこで、本件商標がその登録時前において請求人主張の法条に該当するものであったか否かについて検討する。
請求人の提出した甲各号証によれば、次のことが指摘できる。
(1)「情報・通信 略語辞典 第2版 」(日刊工業新聞社 1994年2月28日 発行)332頁に、「GIS Geographic Infomation System 地理情報システム:」として用語の説明が掲載されている(甲第2号証)。
(2)「電子情報通信ハンドブック 第2分冊 」(社団法人 電子情報通信学会 昭和63年3月30日 発行)27ー33頁に、「...このシステムは、GIS(Geographic Infomation System)と呼ばれ『地理情報システム』と訳されている。...」と記載されている(甲第3号証)。
(3)「情報・知識イミダス 1993 」(株式会社集英社 1993年1月1日 発行)852頁に、「地理情報システム(GIS Geographic Infomation System)」として用語の説明が掲載されている(甲第4号証)。
(4)「地理情報システム(GIS)入門」(社団法人 日本測量協会 1992年6月10日 発行)5頁に、「...GISがコンピュータによって圧倒的大きなデータ・情報処理能力、ネットワーク能力を持っている点にある。...」と記載されている(甲第5号証)。
(5)「GISデータブック94/95 (日本の地理情報システムの紹介)」(財団法人 日本建設情報総合センター 平成7年4月)268頁の「GIS関連図書一覧」の項に、「...地理情報システムを導入・運用する上で参考になる図書を紹介します。...」と記載されている(甲第6号証)。
(6)「GISー理論と応用」(地理情報システム学会 1993年3月)の見開き紹介部分に、「GISは地理情報を処理するハードウエア(コンピュータと周辺機器)とソフトウエアからなるシステム商品と理解される...」と記載されている(甲第7号証)。
(7)「地理情報システム(GIS)関係省庁連絡会議の設置について」(平成7年9月26日 関係省庁申合せ)表紙の1.趣旨に、「各行政機関による地理情報システム(GIS)の効率的な整備及びその相互利用...」及び13頁の1.に、「現在、各行政分野において地理情報システム(GIS)の導入が図られ、情報化の進展に対応したデータの整備、システムの開発が進められている...」と記載されている(甲第9号証)。
(8)「ディジタルマッピング」(建設省国土地理院監修 【財】日本測量調査技術協会編 鹿島出版会 1989年4月25日 発行)34頁に、「GIS(Geographical Infomation System以下、地理情報システム)とはディジタルマッピング等で作成された地図データをユーザーの利用目的に合わせて構造化した地図データベースを基に、行政情報等種々の属性情報を結合し、計画・管理等多用な利用を可能とするものである。...」及び「...これらのシステムは...近年のコンピュータの発達に伴い、実用化されてきたものである。」と記載されている(甲第10号証)。
(9)「地理情報システムの原理」(古今書院 1990年6月4日 発行)序文に、「...なぜ地理情報システムがこのように流行してきたか考えてみることは意味がある。表面的な理由は、コンピュータの向上した性能と低下した価格によって複雑なデータの処理が容易になつたこと、...」と記載されている(甲第12号証)。
(10)「コンピュータマッピング」(株式会社 昭晃堂 1992年10月16日 発行 )4頁に、「地理情報システムにとってコンピュータは欠かすことのできない存在である。従来の紙地図が今日の要求に十分応えられない理由の一つとして、大量に保管されている地図から目的に合った情報を検索する手間があげられる。地図をコンピュータで管理することによって、この要求に応えることができる。...」と記載されている(甲第13号証)。
(11)「コンピュータマッピング入門」(日本経済新聞社 1988年11月4日 発行 )129頁に、「GIS機能の核となるものは、前述のGISソフトウェアの中の...」と記載されている(甲第14号証)。
(12)「触って覚えるGIS」(株式会社 山海堂 1995年5月20日 発行 )の「はじめに」の項に、「...コンピュータシステムを用いた計画支援システムの利用が早くから考えられてきました。地理情報システム(GIS)はその代表的なものです。...」及び「...GISも同様な状況です。計画立案者はコンピュータの前に座り、自分の考えを画面上の地図と対話方式で表現できるようになっています。」と記載されている(甲第15号証)。
以上の甲各号証よりすれば、「GIS」の文字は、「Geographic Infomation System」若しくは「Geographical Infomation System」の略語であって、土地情報にさまざまの付加価値を加えてデータベース化したシステムで「地理情報システム」といわれており、少なくとも、本件商標の登録(平成8年3月29日)前の平成6年2月28日には、前記の意味を有する略語として普通に使用されていることが認められる(甲第2号証ないし同第4号証及び甲第10号証)。
そして、GIS(地理情報システム)は、電子計算機の向上した性能と低下した価格によって複雑なデータの処理が容易になつたため(甲第12号証)、電子計算機用のプログラムとして組み込まれて用いられていることが認められる(甲第13号証及び甲第14号証)。
ところで、被請求人は、「地理情報システム[Geographical Infomation System]が、『GIS』の略称で使用されていることがあることを反論するものではないが、...本件商標の役務である『電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守』は、いわゆるソフトウェア業者が提供する役務である。...ソフトウェア業者の業務範囲は産業界全体に及んでいるのであって、たまたま登録商標と同じ欧文字の構成からなる『GIS』語が、ある特定分野において違う意味の略称として理解されることがあるとしても、...本件商標が本質的機能としては自他役務を区別し、それが一定の出所から流出したものであることを一般的に認識させることができれば十分である。」と主張する。
しかしながら、「地理情報システム(GIS)」ついては、その効率的な整備及び相互利用の促進のため、関係省庁(19省庁)の連絡会議が設けられ、同連絡会議で情報交換及び意見交換を行うことを平成7年9月26日付けにて申し合わされており(甲第9号証)、また、学界及び各機関誌において平成7年及び平成5年にその内容が報告・紹介されているものであるから(甲第6号証、同第7号証)、被請求人の「ある特定分野において違う意味の略称として理解されることがあるとしても、...」という上記主張は、採用し難いものである。
そうとすれば、本件商標登録時において、本件商標「GIS」をその指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に使用するときは、該役務の取引者・需要者は、それが前記「地理情報システム」意味する略語であって、地理情報システムに関する役務と理解するに止まり、自他役務識別標識とは認識しないものというべきである。
したがって、本件商標を商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、同法第46条の規定により、登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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