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Trademark Appeal Case

著名文字商標の識別性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成2年審判第706号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第1554323号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおりの構成よりなり、昭和54年12月25日に登録出願、第21類「かばん類、袋物、その地本類に属する商品」を指定商品として同57年12月24日に登録、その後、平成5年5月28日に商標権存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

2 使用商標

請求人が本件商標の変更使用にあたると述べる商標は、別紙(2)〔以下、「使用商標(イ)」という。〕及び別紙(3)〔以下、「使用商標(ロ)」という。〕に表示した構成よりなるものである。当事者が、これらのいずれとも特定していない場合は、これらを合わせて単に「使用商標」という。

3 引用商標

請求人が雑誌「ELLE」に使用し、著名であると述べる商標(以下、「引用商標」という。)は、別紙(4)に表示したとおりの構成よりなるものである。

4 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第49号証を提出した。

(1)被請求人による商標の使用状況

使用商標を側面に大きく表示した被請求人のバッグは、例えば、神戸市中央区所在みちぐさ神戸店において、甲第2号証に示されるような状況で販売されていた。

また、東京都渋谷区所在株式会社千趣会のカタログ通信販売雑誌「BELLE MAISON」を介して、使用商標をその側面に表示した被請求人のバッグが販売されている(甲第4号証参照)。

東京都中央区所在東京駅八重洲大地下街店の中にある店舗(有)新大越において、同様に使用商標を表示した被請求人の販売になるバッグが販売されている(甲第5号証参照)。

(2)引用商標の著名性

請求人の引用商標「ELLE」は、1945年(昭和20年)に、フランスの女性ファッション雑誌「ELLE」のために、エレーヌゴードン ラザレフ(Helene Gorden Lazareff)により創作された文字である(甲第6号証及び同第7号証)。引用商標の文字の第1の特徴は、縦長であるところにある。横と縦の比は、創作以来およそ1対2.5の比をなすように表示されている。第2の特徴として、「E」の文字を構成する三本の横俸の右端は、極端に縦方向に拡大され、「L」の文字を構成する横棒の右端も同様に表示されている。第3の特徴は、使用商標の四文字がいずれも左側に太めの縦棒をもち、これが看者の注意を引くところとなっている。

引用商標は、わずか4文字のローマ字からなるものであるにもかかわらず、上記の特徴の故に看者に極めて印象深い文字となっている。

▲1▼ 請求人は、フランスに所在する法人であり、女性向けファッション雑誌「ELLE」の出版を中心として、各種商品のファッションを創作、紹介しているものである(甲第6号証参照)。

雑誌「ELLE」は、被服、身回品、化粧品、家具、食品等に関する記事を掲載する女性向けファッション週刊誌(甲第6号証参照)であり、フランスにおいては第2次大戦前から発行されていたが、現在までに約2300号を数えている。発行部数は、フランス語版が毎週555,000冊に達している。「ELLE」の姉妹誌として、現在、毎号、アメリカ合衆国で62万冊、イギリスで23万冊、スペインで12万冊、アラブで6万冊発行されており、そのうち、フランス語版、アメリカ版、イギリス版は我が国においても発売されている。

その他、発行数は不明であるが、イタリア版、ホンコン版、スエーデン版、上海版、ギリシャ版、フィンランド版、ドイツ版、オランダ版、ブラジル版、ポルトガル版が発行されている(甲第28ないし40号証)。

我が国では、株式会社マガジンハウス(以下、「マガジンハウス社」という。)が昭和57年以来、雑誌「ELLE」の日本語版を発行してきたが、現在は、株式会社タイムアシェットジャパン(以下、「タイムアシェットジャパン社」という。)がこれを承継し、雑誌「ELLE」を発行している(甲第9号証)。

これらの雑誌に掲載されるファッションは現代感覚にあふれた「ELLE」誌独自の特徴を有し、「ELLE」ファッション、「ELLE」カラーと呼ばれて全世界の女性間に広く支持者を持っている。このように、雑誌「ELLE」は、ファッションの世界的中心地たるフランスにおいて発行され世界各国に輸出されており、我が国においても「ELLE」誌及び「ELLE」ファッションは、古くから広く知られ、我が国のファッションに多大な影響を与えている。

▲2▼ 昭和57年に日本語版「ELLE」が発行される以前から、請求人は、我が国における「ELLE」誌及び「ELLE」ファッションの紹介を積極的にしてきた。すなわち、マガジンハウス社は、請求人の許諾の下に昭和45年3月に雑誌「アンアン(an.an)」を日本版「ELLE」誌と位置づけて創刊し、以来昭和57年に至るまで、「アンアン」には毎号本国版「ELLE」誌の記事を一部そのまま掲載するなど、「ELLE」ファッションの紹介、普及を図り、その表紙には必ず「ELLE JAPON」の商標を付してきた。なお、「アンアン」誌が若い女性間の爆発的な支持を受け、我が国で最も人気のある雑誌の一つであることは周知のとおりである。

また、マガジンハウス社は、「アンアン」誌のみに止まらず、その発行に係る「クロワッサン」誌等の出版物にも多数「ELLE」誌の記事を「ELLE」の名の下に記載したが、昭和57年4月に至り、マガジンハウス社から雑誌「ELLE」が発刊され、さらに、タイムアシェットジャパン社がこれを承継し、現在に至るまで、我が国における女性向け雑誌の中でも最も人気の高い雑誌となっていることは周知の事実である。ちなみに、我が国における、雑誌「ELLE」は、昭和57年4月から昭和60年4月までは月に1回、以後は現在に至るまで月2回刊行されているが、毎号の発行部数は20万冊から24万冊に達している。

これらの雑誌の「ELLE」のタイトルは、いずれもフランス語版の「ELLE」の文字を引き継いで使用している。それ故、我が国における大多数の人々が雑誌「ELLE」、「ELLE」ファッションを思いうかべる場合、引用商標の特徴ある文字を想起していることは間違いのないところである。

▲3▼ 請求人は、雑誌「ELLE」の刊行を続けるのみではなく、「ELLE」ファッションの普及を図るために、ライセンシーにこれらのファッションを商品化させる活動も行ってきた。

このために、請求人は、我が国を含め世界各国において各種商品について商標「ELLE」を登録している。各国において管理をしている引用商標「ELLE」の数はおよそ1700余りあるといわれている(甲第10号証)。

我が国においては、昭和39年以来、帝人株式会社(以下「帝人」という。)に対し、引用商標「ELLE」の独占的使用を許諾するとともに、かかる活動を推進してきた。帝人は、自ら「ELLE」ファッションに係る洋服を製造、販売する一方、その独占的使用権に基づき、婦人服、スカーフ・ハンカチ類、水着、エプロン、寝袋・寝具類、手袋について、イトキン株式会社(婦人服)をはじめとする6社に引用商標「ELLE」の再使用権を許諾した。帝人と再使用権を受けた6社は、共同して「ELLE」ファッションの宣伝、販売、普及に努め、その製造、販売に係る商品に引用商標「ELLE」を使用していた。

その後、昭和59年7月に至り、請求人は、前記帝人との関係を解約し、自ら東洋ファッション開発株式会社(以下、「東洋ファッション開発社」という。)を設立し、「ELLEファッション」の市場開発、市場調査、企画、利用をはかり、帝人の再使用権者を引きつづき使用権者として引用商標「ELLE」の普及に努めている。また、その間、婦人服、婦人ファンテジー、アクセサリー、子供服、子供ベルト、ポーチ、手袋、アクセサリー、婦人ハンカチーフ、婦人靴下類、婦人肌着ランジェリー、子供ソックス、子供靴、婦人エプロン、婦人バッグ類、婦人革小物などについて、新たな再使用者として、東京イトキン(株)ELLE事業部(婦人服)、エル ファッション(婦人バッグ類)など10数社がELLEファッションの事業に加わり、その活動範囲はますます広がりを見せている。

なお、ちなみに昭和63年(1989年)中における使用権者各社の引用商標「ELLE」を付して販売した商品の総売上額は約56億円である(甲第11号証)。これらの商品に付されている商標は、いずれも引用商標の構成からなるものである。それ故、これらの商品を通しても、引用商標は我が国国民の間に良く知られるところとなっている(甲第12号証ないし同第27号証)。

以上述べたところからも明らかなとおり、引用商標は雑誌「ELLE」による著名性、「ELLE」ファッション、「ELLE」ファッションの商品化により、我が国において著名な商標となっていることは疑う余地のないところである。

(3)使用商標の使用についての故意

引用商標は、上述のとおり極めて著名なものであり、また、これを構成する文字の横と縦の比が約1対2.5となる特殊なものであるところ、被請求人が自らの登録商標とは異なる形状の使用商標を採用したのは、明らかに請求人の商標の存在を知ってこれを使用したものであることは明らかである。したがって、被請求人は、請求人の使用商標の使用について故意が認められる。

(4)出所の混同

また、上記の如く引用商標が請求人のものとして一般的にも著名であり、また、バッグにも使用されている(甲第43号証ないし同第45号証)状況において、被請求人の販売するバッグに使用商標を付して販売すれば、看者はこれを請求人或いは請求人のライセンシーの商品と混同することは明らかである。

(5) 被請求人の答弁に対する弁駁

▲1▼ 被請求人は、使用商標(ロ)は本件商標と同一のものであると主張する。しかしながら、両商標は字体が異なるものである。また、使用商標(ロ)の両側の「ELLE」の間に大文字をもって「DE」と表示し、「DE」の両端にハイフンもない。これに対し、本件商標は小文字の「de」、及びその両側にハイフンを表示している。かかる違いがあり、両者は同一ではなく、類似するものというべきであることは明白である。

また、使用商標(イ)は、本件商標と類似しないものであると主張する。しかし、その構成からすれば、類似するものであることはいうまでもないことである。

▲2▼ 被請求人は引用商標はバッグに関して著名でないと主張する。

しかしながら、既に述べたように、遅くとも昭和57年までには引用商標が我が国において広く知られるに至っていたと認めることができるものであるのに加え、引用商標が雑誌や被服のファッションのみならず、各種商品に関し請求人の業務にかかる商標であるとして著名なものとなっている。引用商標がこのように各種商品について著名となったのは、東洋ファッション開発社を設立した昭和59年7月より遅くない時期である。

▲3▼ 被請求人は、商標法第51条の「故意」の要件を欠くと主張する。

しかしながら、同法51条にいう「故意」は、他人の利益を害する目的をもったことではなく、単に引用商標に類似する使用商標(イ)、使用商標(ロ)を使用することの認識、及び、その結果、他人の業務に係る商品との混同が生じることを認識していたことをいうものである。

被請求人は、引用商標の存在を知って本件商標に変更を加え、これに似せたものであることは明らかである。

▲4▼ 被請求人は、使用商標(ロ)を昭和54年末頃から使用していると述べるが、引用商標が雑誌「アンアン」に掲載され始めたのはそれ以前であり、昭和54年には、既に述べたとおり著名となっていたものである。それ故、この時期には遅くとも被請求人は引用商標を認識していたものと考えられる。そして、被請求人が昭和55年始めに作成したと主張する乙第4号証(被請求人の会社案内)には、本件商標の字体が表示されており、このときに使用されていたのは使用商標(ロ)ではなく本件商標であったものと認められる。それ故、引用商標(ロ)が使用されるに至ったのは、被請求人の主張する昭和54年ではなく、それよりも後のいずれかの時と考えざるを得ない。

▲5▼ 被請求人は、使用商標(イ)及び使用商標(ロ)の使用行為者ではなく、その専用使用権者の株式会社シカタクリエイティブ(現「株式会社シカタ」、現在の本件商標の商標権者、以下、「シカタ社」という。)が使用行為者であると主張する。

しかし、被請求人は、前述のとおり「昭和63年2月までの間に被請求人が使用商標(ロ)を使用継続した」と述べている。このことは、本件審判の請求の日の2年弱前に、被請求人が使用商標(ロ)を使用していたことを自白している。

使用商標(イ)は、使用商標(ロ)以上に引用商標に類似しており、かかる変化も被請求人が引用商標の存在を認識していたものであることを推定させるのに十分な証拠となるものである。

(6)結論

被請求人が自ら本件商標に類似する使用商標をその指定商品に使用しているものであり、請求人の商標と故意に混同を生ずる行為をしたものといわざるを得ない。

よって、本件商標は、商標法第51条第1項の規定により取り消されるべきである。

5 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第16号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)被請求人会社

被請求人は、乙第3号証及び同第4号証の会社案内パンフレットから明らかなように、ファッションバッグの製造と卸を事業内容として、昭和44年に設立登記された株式会社であり、その株式会社として組織化される以前の昭和37年から、創作袋物の製造を始めている。乙第3号証の会社案内パンフレットは、その「売上高・利益高の推移」と題するグラフ記事から示唆されるとおり、昭和54年の初旬に印刷されたものである。

(2)本件商標採択の事情

本件商標は昭和54年12月に出願しているが、同月には「CusCus」、「MeMe」、「effe」等の商標も出願しており、これらは、そのいずれも一定の欧文字をいわば重複する配置形態に並べて横書きしている。本件商標もこれらと相共通する創作技法のもとに、「ELLE−de−ELLE」の構成態様として出願したものである。乙第4号証の会社案内パンフレットは、上記一連の商標登録出願を行った翌年(昭和55年)の初旬に作成したものである。

(3)昭和57年以前の引用商標「ELLE」の著名性

このような昭和54から55年の当時に、請求人の雑誌「ELLE」は、我が国においてまだ発行されていない。日本語版「ELLE」の発行は昭和57年4月からである。昭和57年以前から、我が国においては「ELLE」は著名であった旨請求人は述べるが、その当時における引用商標の著名性を裏付ける証拠はない。

▲1▼ 請求人は、マガジンハウス社は請求人の許諾の下に昭和45年3月に雑誌「アンアン(an.an)」を日本版「ELLE」誌と位置づけて創刊し、以来昭和57年に至るまで、「アンアン」には毎号本国版「ELLE」誌の記事を一部そのまま掲載するなど、「ELLE」ファッションの紹介、普及を図り、その表紙には必ず「ELLE JAPON」の商標を付してきた、とも主張しているが、商標として把握するとき、「アンアン」と「ELLE」とは相互に別異であり、引用商標が当時著名であったことの証明たり得ない。

▲2▼ また、仮に、昭和57年4月以前に、引用商標が、婦人雑誌(出版物)の名として請求人の所在するフランス本国では仮りに著名であったとしても、そのことから、直ちに、かつ、当然に非類似商品のかばん類、袋物の商標として、我が国において著名であったことにはならないというべきである。まして、昭和57年4月以前において、引用商標は、かばん類、袋物に使用されていない。甲第41号証によれば、「ホワイ、別会社で『ELLE』のバッグ」と題する記事の本文中に、「ホワイが別会社『エル・ファッションアクセサリー(株)』を設立、ファッション誌『エル』ブランドのバッグの販売を始めた。・・・・これまでバッグがなかったのはおかしいくらいだ。」と記載されている。

また、「エル・ファッションアクセサリー(株)」(以下、「エル・ファッションアクセサリー(株)」を「エル・ファッションアクセサリー社」という。)は、請求人が引用商標「ELLE」の婦人バッグに関する再使用者であるという「エル ファッション」に相当することは明白である。そして、請求人が、昭和59年7月に至って帝人との関係を解約して、その間新たな再使用者となった企業として「エル ファッション」を挙げていることからすれば、「エル ファッション」が婦人バッグ類に引用商標を使用し始めた時期は、昭和59年7月以降を意味することは明白である。さらに正確に言えば、甲第41号証及び同第42号証の記載事項に徴し、1987年(昭和62年)5月である。

バッグへの使用を示す甲第43号証及び同第44号証は、1988年(昭和63年)になって発行された雑誌であるにすぎず、また、甲第45号証の写真に示すバッグ自体も、何人から何時発売されていたか全く不明である。

▲3▼ 「請求人は、雑誌『ELLE』の刊行を続けるのみではなく、『ELLE』ファッションの普及を図るために、ライセンシーにこれらのファッションを商品化させる活動も行ってきた。・・・・・帝人と再使用権者は、共同して『ELLE』ファッションの宣伝、販売、普及に努め、その製造、販売に係る商品に引用商標『ELLE』を使用していた。」と、請求人は主張し、また、雑誌「ELLE」は諸外国で発行されているとも主張しているが、甲第10号証を含む甲第6号証ないし同第41号証は、ことごとく、1986年(昭和61年)ないし1989年(平成1年)当時のものであり、請求人から帝人に対する引用商標の独占的使用許諾や、その帝人からさらに別の我が国の諸会社に対する再使用権の許諾を与えたという証拠すらも提出されていない。

▲4▼ 諸外国において各種商品につき、引用商標「ELLE」の登録を受けているからといって、引用商標が著名であるとは限らない。甲第10号証によれば、その商標登録のほとんどが出版物を指定商品としており、わずかにかばん類、袋物を指定商品に含むアメリカ合衆国の登録においてすらも、フランス本国での登録に基づく出願形式を採っており、その通商上の使用に基づく出願形式ではない。

(4)引用商標の態様

請求人は、引用商標「ELLE」の各構成文字について、特別に創作されたオリジナルなものであり、これに使用商標が類似する旨も主張しているが、この種の文字は、英語の教科書を初め一般に広く普及し使用されているものであるにすぎない。各構成文字の骨格をなす縦横の比率が、仮りに1対2.5であり特殊化されているとしても、商品の出所や品質につき、その真偽を検閲する特別な役目を果たさせるのであればともかく、商標本来の意味からいえば、そのような特殊性までも商品の取引業者や需要者が察知し、見極める必要はないというべきである。

(5)使用商標(ロ)の使用状況及び本件商標との異同

▲1▼ 使用商標(ロ)は、被請求人において、本件商標の出願当時である昭和54年末頃(日本版「ELLE」誌の発刊より約2年半前)から、その指定商品のかばん類、袋物につき使用を開始していたものであり、もともと請求人の業務に係る商品と混同又は品質の誤認を生ずるおそれがあることを認識する余地すらなかった。その後、株式会社シカタセントラルと商号変更後、昭和63年2月末まで使用を継続し、同年3月からは、新しく設立された別会社であるシカタ社が、使用商標(ロ)をかばん類、袋物に使用し、現在に至っている(乙第12号証、同第13号証、同第16号証)。

▲2▼ このように、被請求人の使用商標(ロ)は、その使用行為について、商標法第51条第1項に規定された「故意」の要件を欠くばかりでなく、本件商標と類似する商標でもない。使用商標(ロ)は、本件商標と物理的にも社会通念上も同一視される商標である。

すなわち、使用商標(ロ)は、別紙(3)に表示した構成よりなるものであって、活字体で表されており、全体的に美麗な字形を備え、整然性にも富むものである。

これに反し、本件商標は、別紙(1)に表示した構成よりなるものであって、その各構成文字があたかもフリーハンドで書かれた状態にあるため、その字形の美麗さや全体的な整然性には若干劣ることを否めない。また、「ELLE」と「ELLE」の中間位置に表された「de」が、使用商標(ロ)のそれと異なり、小文字で書されており、しかも、極めて短かいハイフンを介して「ELLE」といわば連結された形態を呈しているものである。

したがって、本件商標と使用商標(ロ)とは、その外観上、上記のような相違点を有するが、この程度の相違は、商品の取引業者や一般需要者を基礎とする社会通念上互いに同一視される事例に該当し、本件商標の使用として認識されるものというべきである。フリーハンド体から活字体への書体の変更、大文字と小文字との置換、ハイフンの有無などは、その物理的にも商品取引の経験則に徹して、ありふれた手法として行われているにすぎない至極部分的な付加・変更・削除の類型に属するものであり、本件商標の基本的な外観や称呼、観念は少しも変わらないからである。

(6)使用商標(イ)の使用状況及び本件商標との異同並びに昭和63年頃におけるかばん類、袋物についての引用商標の著名性

▲1▼ 使用商標(イ)は、別紙(2)に表示したとおりであり、フランス語の「ELLE」を2個含むものではあるが、その一方の「ELLE」は、各構成文字をいわばそのままでは読み難い寝かせた姿勢のもとに、不自然な縦方向への積み重ね配列状態として書かれており、他方の「ELLE」は、各構成文字を自然のままでも読みやすい立たせた姿勢のもとに横書きし、かつ全体的に著しく小さく表記されている、そして、その他方の小さな「ELLE」と同じ大きさのもとにフランス語の「DE」を大文字で、「ELLE」の2個がいわば縦横直交し合う境界部分に横書きで表されており、使用商標(イ)は外観上本件商標と著しく異なる。

▲2▼ つまり、使用商標(イ)は、2個の「ELLE」が、文字の配列上の姿勢と方向性につき、互いに異なる混在状態にあることに加えて、その大きさについても大小変化が与えられているため、本件商標の変更使用としては、上記使用商標(ロ)について述べたことと著しく異なり、もはや単なる部分的な付加・変更・削除の類型にとどまらず、むしろ文字商標から図形商標へのデザイン化を示唆している。

▲3▼ しかも、小さく上下2段に横書きされた「DE」と「ELLE」が、寝かせた姿勢のもとで積み重ね配列状態に大きく縦書きされた「ELLE」との関係では、いわば付記部分といえるが、その付記部分としても商品「かばん類、袋物」の用途や品質、効能などを単に表示する形容詞的な文字からなるものではなく、また、その2個の「ELLE」が縦横に直交し合う筆記配列手法も、取引上普通に採択使用されているものではない。

▲4▼ したがって、使用商標(イ)は物理的にも社会通念上も、本件商標と同一又は類似のものとはいえないというべきであり、商標法第51条第1項所定の取消要件を欠く。このことは、昭和38年審判第1310号審決例からも類推解釈することができる。

引用商標は登録第1793479号商標(乙第1号証)と同一視できるものであるが、登録第1793479号商標が、その登録審決日にはもちろん、その出願日においても甲第5号証ないし同第10号証の商標等々が先に登録されていたにもかかわらず登録された事例からも、裏付けることができるものである。

▲5▼ その意味から、別会社であるシカタ社が、その設立登記後(乙第16号証)の昭和63年中頃から、本件商標の指定商品「かばん類、袋物」につき使用商標(イ)を使用し始めたが、その後、上記登録第1793479号商標(乙第1号証)の商標権者から、被請求人宛に警告があったため、紛争回避の趣旨に基づき即刻使用を中止させ、そのまま現在に至っている。

しかし、昭和63年当時引用商標は商品「かばん類、袋物」について、まだ著名性を獲得するまでには達していなかった。当時、引用商標が婦人雑誌(出版物)の名としては、仮りにある程度の著名性を獲得していることがあったとしても、その出版物とかばん類、袋物とは互いに非類似商品であり、商品取引上も競業関係にないため、その非類似商品、かばん類、袋物に至るまでも、出所の混同又は品質の誤認を生ずる程に著名であったものと認めることは、困難である。

▲6▼ 請求人は、甲第43号証ないし同第45号証を提出の上、引用商標がバッグにも使用されていると主張しているが、前記したとおり、甲第43号証及び同第44号証は1988年(昭和63年)に発行された雑誌であり、同第45号証のバッグ自体も何人が何時販売していたものか不明である。現在販売中のそれを撮影したものであるにすぎない。

また、甲第13号証、同第16号証の商品カタログにもバツグが掲載されているが、その日付はやはり不明である。バッグ以外の商品カタログに係る甲第12号証、同第14号証、同第15号証、同第17号証ないし同第26号証、なかでも甲第14号証、同第22号証、同第24号証の記載に徴すれば、その日付は1989年(平成1年)ないし1990年(平成2年)である。

したがって、引用商標がかばん類、袋物についてまで、仮りに著名性を獲得していることがあったとしても、その獲得時期は早くとも1989年(平成1年)であると解すべきである。この場合、甲第11号証には、前記したエル・ファッションアクセサリー社が1988年(昭和63年)の前半において、バッグを約2億6千万円分販売したと計上されているが、その数値はバッグの販売個数に換算する時、決して大量といえる程のものではなく、その販売地域の分布状況や市場での占有率、まして、それ以前の時期における販売個数などは不明である。

▲7▼ 更に言えば、使用商標(イ)は、上記のとおり引用商標と非類似の商標であるため、商品「かばん類、袋物」に使用されたとしても、取引業者や一般需要者において、請求人の業務に係る商品とシカタ社のそれとの混同又は品質の誤認を生ずるおそれはなく、明確に識別され得るものというべきである。

この点、甲第43号証ないし同第45号証より、バッグに関する引用商標の使用状態を観察すると、その構成態様は「ELLE」のみではなく、その下段に、フランスのいわゆるパリモードを強く印象付けるべき「PARIS」の語が一体化されて付されている。

▲8▼ 「PARIS」は、それ自体としては一般的には原産地や販売地を意味する形容詞的な表示であるにすぎないが、この種婦人用のファッション性を生命とする商品の場合、その商標の機能としては特別に重要な役目(例えば真偽の識別)を果たし、その商品への印象付け上「ELLE」と混然一体に働くものというべきである。

これに反し、使用商標(イ)ではその構成態様中に「PARIS」の語を具備していないため、その意味からも請求人の業務に係る商品と混同又は品質の誤認を生ずるおそれはなく、取引業者や一般需要者において、明確に識別することができる。

(7)商標法第51条第1項の主体に関する要件

また、乙第13号証から明らかなように、被請求人の業務目的は「不動産賃貸業」であるのに対し、昭和62年10月14日に設立登記されたシカタ社が「袋物製造卸売業」を事業目的として(乙第16号証)使用商標を商品「かばん類、袋物」に使用していたのである。

つまり、商標法第51条第1項所定の取消要件は、「商標権者のした行為」である。この点乙第12号証及び同第13号証から明白なように、商標権者は使用行為者ではなく、その専用使用権者のシカタ社が使用行為者である(乙第12号証)。

したがって、商標法第53条の主体的取消要件に限ればともかく、同法第51条第1項の主体的取消要件を充足しないことについては、疑問の余地がない。

(8)商標法第51条第1項の客体に関する要件

さらに、商標法第51条第1項の客体的取消要件はただ単なる「登録商標の使用」ではありえない。「登録商標の使用」であれば、同法上に該当しないことはあり得る。同法上には、「商標権者が故意に指定商品についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品に類似する商品についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用」と明記されているとおり、その取消要件は、商標権の禁止権の範囲内であって、かつ、専用権の範囲外における商標の使用である。

(9)結論

以上のとおり、使用商標とその使用行為は、商標法第51条第1項所定の取消要件を充足していない。

6 当審の判断

(1)本件商標と使用商標(イ)、使用商標(ロ)の類似性

本件商標は、別紙(1)に示すとおり「ELLE−de−ELLE」の文字よりなるものであり、その構成文字に相応して「エルドゥエル」の称呼を生ずるものといえる。

これに対し、請求人が、神戸市中央区所在の「みちぐさ神戸店」において販売されていたと述べる被請求人のバッグの側面に示された使用商標(イ)は、別紙(2)に示すとおり、右に90度回転させて縦長に大きく表された「ELLE」の文字の下部に、「DE」と「ELLE」の両文字を二段に小さく表してなるものである。その構成からすれば、大きく書された右に90度回転させた文字は、多少の読みにくさはあるものの「ELLE」の文字よりなるものと看取し得るものであって、小さく書された「DE」と「ELLE」を含めてまとまりよく表されている点に鑑みれば、大きく書された「ELLE」の文字に相応した「エル」の称呼の外、小さく書された「DE」及び「ELLE」を読み込んだ「エルドゥエル」の称呼をも生ずるものと判断するのが相当である。

また、請求人が、東京都中央区所在の「(有)新大越」において販売されていたと述べる被請求人のバッグの側面に示された使用商標(ロ)は、別紙(3)に示すとおり、中央部に小さく表された「DE」の左右に「ELLE」の文字を配してなるものであり、該構成文字に相応して「エルドゥエル」の称呼を生ずるものといえる。

してみれば、本件商標と使用商標(イ)及び使用商標(ロ)とは、外観において相違するところがあるとしても、称呼上類似するものといわなければならない。

被請求人は、使用商標(ロ)は本件商標と同一視できる商標であると述べる。しかしながら、本件商標における「de」が小文字で表されているのに対し、使用商標(口)は大文字で「DE」と表されており、また、本件商標の「de」の左右に配されているハイフンが使用商標(ロ)にないことからすれば、本件商標と引用商標は上記のとおり類似するものというべきである。

(2)引用商標の著名性

請求人の請求の理由及び添付された証拠によれば以下のことが認められる。

▲1▼ 1945年(昭和10年)に創刊されたフランスの女性ファッション雑誌「ELLE」は、1988年(昭和63年)には、フランス語版で2212号に達し(甲第8号証、雑誌「ELLE」の表紙)、その発行部数は1号当たり38万部余であった。また、英国、スペイン、イタリア、香港、スウェーデン、ブラジル、中国、ドイツ、ポルトガル、ギリシャ、日本、カナダ及びオランダ等の各国語版が出版され、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、東南アジアを含めて、20か国における年間発行部数は156万7500部、売上総額で1億5800万スイスフランであった(甲第6号証、請求人会社の会長「フランク・チュノ」作成の供述書)。

▲2▼ 文化出版局発行「服飾辞典」(図書館受入54.4.21、甲第47号証)の「エル・ファッション(ELLE fashion)」の項に「フランスの女性雑誌「ELLE」によって生み出されたファッションということ。・・・」と、ダヴィッド社発行「服飾辞典」(図書館受入47.2.25、甲第48号証)の「エル」の項に「フランスのファッション・ブックを兼ねた大型女性週刊誌の名。・・・」と、また、昭和54年7月20日増補第二刷、文化出版局発行「服装大百科事典」(甲第49号証)の「エル Elle」の項に「フランスの若い女性向き週刊誌。・・・」とそれぞれ記載されている。

▲3▼ 請求人の述べるところによれば、マガジンハウス社は「アンアン(an.an)」誌(昭和45年創刊)、或いは、「クロワッサン」誌の毎号に、フランス語版「ELLE」誌の記事を一部掲載した。そして、昭和57年に日本語版「ELLE」を発刊、同60年4月まで月1回、以降は現在(平成2年)に至るまで月2回刊行されており、毎号の発行部数は20万冊から24万冊であった。

▲4▼ 同じく請求人の述べるところによれば、昭和39年以来引用商標について帝人はじめ6社に、婦人服、スカーフ・ハンカチ類、水着、エプロン等について使用許諾し、「ELLE」商標の宣伝、販売、普及に努めた。昭和59年には請求人自ら日本法人、東洋ファッション開発社を設立し、引用商標について10数社に上記商品及び婦人バッグ類を含む各種商品について使用許諾をした。

甲第11号証(日本における1988年度引用商標使用商品の販売高表)によれば、上記使用許諾をした商品の売上額の総額は、昭和63年に56億円であった。

そして、甲第11号証のほか、甲第12号証ないし同第20号証、甲第41号証ないし同第46号証(商品カタログ等)に、引用商標を付した各種商品が掲載された。

以上からすれば、女性の需要者間において、「ELLE」の文字からなる引用商標が、女性雑誌「ELLE」誌の題号として広く認識され著名性を獲得しているものと認められるが、その時期については、フランスの女性雑誌「ELLE」誌について、年間発行部数等が確認し得るのは昭和63年のみであること、また、引用商標に関する使用許諾に伴う売上額等が明示されているのは昭和63年のみであることを併せ考えれば、その時期は昭和63年頃であったものと推認せざるを得ない。

すなわち、女性雑誌「ELLE」誌はフランス語版が1945年(昭和10年)に創刊されて以来、英国、スペイン、イタリア等多数の国で発行されており、20か国で年間の発行部数が156万部を越えていると記載されているが、何時の時点のものか明記がない。また、我が国において、昭和45年創刊の「アンアン(an.an)」誌や、「クロワッサン」誌等に「ELLE」誌の記事が掲載されたと述べる点については立証がない。昭和57年に日本語版「ELLE」誌が発刊され、発行部数は毎号20万から25万冊である点についても述べるのみで証拠の提出がない。したがって、上記▲3▼に記載したように、昭和63年前に発行された書籍に雑誌「ELLE」誌に関する記載が存在するとしても、提出された証拠は、これらに記載された事項を補完すべき資料として充分なものということはできないから、昭和63年前に引用商標が著名であったものとは認められない。

また、使用商標は、上記▲4▼のように、使用許諾により婦人服、スカーフ・ハンカチ類、水着、エプロン、婦人バッグ類等についても使用されていたことが認められるが、提出された証拠は、上掲甲第11号証を除き商品カタログ、雑誌の掲載記事等に止まるものであり、単年度の販売高及びこれらの商品カタログ等を総合するも、引用商標が婦人バッグ類を含む使用許諾商品について著名性を獲得していたものとは判断し難い。

(3)使用商標(イ)

▲1▼ 被請求人は、使用商標(イ)については、昭和63年中頃からかばん類、袋物につき専用使用権者のシカタ社が使用し始めたが、件外の商標登録第1793479号商標権の商標権者から警告があり、即時使用を中止した旨述べる。

▲2▼ そこで、被請求人提出に係る乙各号証をみるに、乙第13号証(被請求人の登記簿謄本)には、被請求人会社の登記簿謄本の「目的」欄に「1.不動産賃貸業 2.前号に附帯する一切の業務」と記載され、一方、乙第16号証(シカタ社の登記簿謄本)によれば、被請求人が専用使用権者と述べるシカタ社の登記簿謄本に、同社は昭和62年10月14日に設立された会社であり、その「目的」欄に「袋物卸売業」、「袋物・日用品雑貨・衣料用繊維製品の輸入・販売」を含んでいることが認められる。したがって、これらによれば、昭和63年中頃には、被請求人は本件商標の指定商品に関する業務を行っていなかったということができるのに加え、シカタ社の業務には袋物に関する業務が含まれている点に鑑みれば、使用商標(イ)は、シカタ社が使用していたものと推認することができる。

▲3▼ してみれば、使用商標(イ)は、この商標が使用された時点においては、本件商標の商標権者以外の者により使用されたものというべきであるから、使用商標(イ)については、この点において既に、商標法第51条第1項の規定する要件を具備しないものといわなければならない。

(4)使用商標(ロ)

▲1▼ 被請求人は、使用商標(ロ)については、被請求人が、かばん類、袋物について、昭和54年末頃から同63年2月末まで使用し、同年3月からは新しく設立したシカタ社が使用し現在に至っていると述べる。したがって、使用商標(ロ)は、昭和54年末頃から同63年2月末までは商標権者が使用し、その後は商標権者以外の者が使用していたものということができる。

▲2▼ 一方、引用商標については、請求人は、昭和39年以来、帝人外6社が、婦人服、スカーフ・ハンカチ類、水着、エプロン類に使用し、さらに、昭和59年7月以降は、請求人が自ら設立した日本法人のもとに、10数社が婦人服、スカーフ・ハンカチ類、水着、エプロン類、婦人バッグ類を含む商品について使用していたと述べる。これらの商品のうち、婦人バッグ類についての引用商標の使用は、甲第41号証(雑誌「フットウエア・プレス」1987年7月号)及び同第42号証(雑誌「チャネラー」昭和62年8月号)からみて、少なくとも昭和62年中頃には使用を開始していたものということができる。

▲3▼ 以上▲1▼及び▲2▼によれば、引用商標と使用商標(ロ)は、それぞれ使用されていたといえるところ、両商標は、昭和62年中頃から、「かばん類」の範疇に属する商品に共に使用されていたものと解することができる。

▲4▼ そこで、使用商標(ロ)の使用が、商標法第51条第1項に規定する要件に該当するか否かについて判断する。

まず、両商標を比較すると、引用商標は、「ELLE」の文字よりなるものであり、該文字に相応して「エル」の称呼を生ずるものといえるのに対し、使用商標は「ELLE」、「DE」及び「ELLE」の各文字がバランス良く左右対称ともいえる構成よりなるものであり、「ELLE」の文字部分のみを捉えて認識しなければならない格別の事由が存するものとは判断し得ないから、全体の構成文字に相応して「エルドゥエル」の称呼のみを生ずるものというのが相当である。したがって、引用商標と使用商標(ロ)とは、称呼上非類似のものというべきであり、他に類似するものとすべき点は見当たらないものである。

そして、それぞれの構成からすれば、両商標は、区別し得る差異を有する別異のものといえるから、使用商標(ロ)をかばん類、袋物に使用した場合、取引者、需要者がこれから直ちに引用商標を想起し、これを請求人の業務に係るものであるかの如く混同するものとは判断することができない。

▲5▼ 請求人は、引用商標は、エレーヌ ゴードン ラザレフ(Helene Gorden Lazareff)の創作に係るものであり、「1対2.5」の比の縦長である点、「E」の文字を構成する三本の横棒の右端が極端に縦方向に拡大され、「L」の文字を構成する横棒の右端も同様に表示されている点、及び、四文字がいずれも左側に太めの縦棒を有する点に特徴を有するものであると述べる。

引用商標の創作性を否定するものではないが、引用商標における、「E」の文字を構成する三本の横棒の右端が極端に縦方向に拡大され、「L」の文字を構成する横棒の右端も同様に表示されている点、及び、四文字がいずれも左側に太めの縦棒を有する点については、例えば乙第11号証(金園社発行「基本レタリング」)によれば、被請求人が挙げるキャスロンオールド体における「E」及び「L」の文字にも上記の如き相似た特徴を備えていることが認められ、また、引用商標の縦長である点は、本件商標にも縦長である特徴がみられるものである。

そうとすれば、使用商標(ロ)における「ELLE」の文字部分は、引用商標とほぼ書体を同じくするものといえるが、その書体は、既存の文字の書体に近似するものであって、特殊な書体からなるものとは必ずしも判断し得ないから、使用商標(ロ)における「ELLE」の文字の書体は、引用商標に由来するものとも断じ得ないものといわなければならない。

▲6▼ しかも、▲2▼で述べたように、かばん類については、昭和62年中頃から、引用商標、使用商標(ロ)共に使用されていたものと解されるところであって、この点に照らしても、実際の取引において両商標は、取引者、需要者間に区別して認識されていたものというのが相当である。

▲7▼ したがって、使用商標(ロ)については、本件商標の商標権者は、故意に他人の業務に係る商品と混同を生ずる使用をしたものということはできない。

(5)結論

以上のとおりであって、使用商標(イ)及び使用商標(ロ)のいずれの使用によっても、本件商標の登録は、商標法第51条第1項の規定により取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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