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Trademark Appeal Case

著名商標の不正目的と混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成9年審判第8450号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1.本件登録第2715244号商標(以下「本件商標」という。)は、「BATMAN」の欧文字を横書きしてなり、第13類「手動利器、手動工具、金具」を指定商品として、平成1年11月29日に登録出願、同8年7月31日に登録されたものである。

2.請求人は、「登録商標第2715244号登録の第13類の全指定商品についての登録を無効とする」との審決を求め、その理由を次のように主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)無効原因

本件商標登録は、商標法第46条第1項第1号の規定によって無効とさるべきである。

(2)無効とすべき理由

(イ)本件商標は、上記構成の商標であるから「バットマン」の称呼及び観念を生ずる。

(ロ)請求人は、1939年にその発行するコミック雑誌「Ditective Comics」に発表されて以来、コミックスとして、また、映画化され、それ以降今日に至るまで60年間の永きに亘って全世界で親しまれている「BATMAN/バットマン」の著名なキャラクターの名称であり、またライセンス事業を通じて各種商品の商標としても著名となっている「BATMAN/バットマン」を引用する。請求人は、各種商品においてライセンスを通じて使用されている名称「BATMAN/バットマン」をその不正使用から保護するため、日本においては下記のとおり商標登録を行っている。

(ハ)本件商標は、本件商標出願前から著名である請求人制作の映画のキャラクターの名称でありまた著名な商標でもある「BATMAN/バットマン」と同一または実質的同一である。

従って本件商標は、請求人の著名なキャラクターの名称であり、著名な商標である「BATMAN/バットマン」の著名性を正当な理由なくして自分の有利に利用しようとする不正の目的で出願したものというべきであり、このような行為は国際信義に反するものというべきである。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号または第19号の規定に違反して登録されたものである。

また請求人は、後述の通り、本件商標出願の以前から日本において広くライセンス事業を行っているので、本件商標がその指定商品に使用されるときは、それらが請求人からライセンスを受けているものであるかの如く、請求人の業務と混同を生ずるおそれがある。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。

(ニ)「BATMAN/バットマン」が本件商標出願の日(1989年11月29日)以前において、請求人制作にかかるコミック映画のキャラクターの名称及びライセンス商品の商標として需要者間に周知されていた事実について述べる。

コミックス「BATMAN」が誕生したのは、1939年請求人発刊のコミック雑誌「Ditective Comics」に発表されたときであるが、映画化されたのは1940年のコロンビア映画によってシリーズ映画として制作されている。

その後1966年には、テレビに登場し、1980年代にはコミックスが新しい発展を見せ、それを基にした映画が爆発的な成功をおさめている。1989年には、大作「BATMAN/バットマン」が映画化され、同年6月に全米で封切りされるや、3日間で映画史上最高の記録を樹立させた。同年12月には、日本に輸入され、東京の各映画館で上映されている。

コミックス/映画「BATMAN/バットマン」は、戦後米国での人気をそのまま日本にも伝えられ、コミックスとして、映画として、広く日本の大衆に親しまれてきた。

従って、1989年当初に史上最高の記録を樹立した「BATMAN/バットマン」は、即座に日本にも伝えられ、1989年12月の日本封切を前に前評判は最高であった(甲第3号証)。

ライセンス事業は、Warner Bros.Consumer Products Japan(東京都港区浜松町1−2−4)に委託して行われているが、「BATMAN/バットマン」に関し、本件商標出願前に日本の企業にライセンスした件数は41件、産品アイテムは衣類、時計、織物、おもちゃ等多岐に亘っている(甲第4号証及び第5号証)。

前述の通り、1989年12月に映画「BATMAN/バットマン」の新作が日本で封切られ、上映されたが、同年9月から12月上旬まで、朝日、読売、毎日、東京、報知、産経、スポーツニッポン、日刊スポーツ、ジャパンタイムズ、アサヒイブニングの各紙に大々的に宣伝広告を行った。その額は1億2千万円に上っている(甲第6号証)。

更に、1989年10月及び11月には、映画雑誌として最も広い読者層をもっているキネマ旬報にBATMANの特輯記事を掲載した(甲第3号証)。

これらPR活動の他、映画のノベライゼーションとして、竹書房から文庫版の「バットマン」を発売した。

上記した各種活動を通じ、「BATMAN/バットマン」は、請求人制作の映画「BATMAN」のキャラクター名称として、また各種ライセンス商品の商標として、本件商標出願の当時には、需要者間に周知されるに至っていた。

3.被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように主張した。

(1)請求人制作の映画のキャラクターであり、かつ請求人所有の商標である「BATMAN/バットマン」が本件商標出願前から著名であったとは言えない。

映画については、その宣伝がなされるようになったのは1989年9月、すなわち本件商標出願(11月)の直前からであり、しかも新聞広告のみによる宣伝であり、かつそのうち甲第6号証の15〜27は本件商標出願後の広告である。なお、映画の日本封切りも本件出願後の12月である。

したがって、本件商標出願前の新聞による広告期間は実質2ヵ月半程度であり、この間に日本国内において周知著名性を獲得するのは全く不可能である。

請求人所有の登録商標についても、使用実績についての証明がなされておらず、到底著名であったとは言えない。また、請求人が防護標章登録を全く受けていないことも、著名性欠如に起因するものである。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものではない。なお同項第19号は本件商標の登録後に創設された規定であるから、無効理由とはなりえない。

(2)上記で述べたように「BATMAN/バットマン」が著名ではないため、請求人が日本においてライセンス事業を行っていたとしても、それは単に請求人あるいはライセンサーとライセンシーとの間の問題に過ぎない。

したがって、ライセンス事業の存在と、本件商標をその指定商品に使用することとは全く無関係であり、請求人の業務と混同を生ずるおそれもない。なお、ライセンシーによる「BATMAN/バットマン」の使用実績の証明、ましてや著名性の証明もない。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものではない。

なお、請求人所有にかかる登録商標の指定商品及びライセンス商品について付言すれば、これは理化学機械器具等(旧第10類)、装身具等(旧第21類)、はき物等(旧第22類)、おもちゃ等(旧第24類)、印刷物等(旧第26類)、茶等(旧第29類)、衣類、時計、織物等(ライセンス商品)であり、いずれも本件商標の指定商品「手動利器、手動工具、金具」とは生産部門、販売部門、用途及び需要者の範囲のいずれにおいても一致するところがなく、明らかに非類似の商品というべきである。

そのため、本件商標がその指定商品に使用されても、請求人の商品と出所の混同を生ずることはない。

また、甲第3号証のキネマ旬報、甲第7号証の双書、雑誌、甲第8号証のビデオカセット注文書等は、いずれも限られた一部のファンや読者向けのものであり、「BATMAN/バットマン」の周知著名性立証の資料とはならない。

4.請求人は、3.の答弁に対して、次のように弁駁をし、証拠方法とし甲第10号証ないし11号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)被請求人は、請求人の商標「BATMAN/バットマン」が、本件商標出願前に著名であったことについて、これを否認しているので、先ずこの点について弁駁をする。

請求人のコミック「BATMAN」は1939年に発表されて以来全米を風靡し、またたく間に日本でも愛好されるに至ったものであって、その事実は特許庁において顕著な事実である。

なお、被請求人は、請求人提出の証拠の立証の趣旨を否認しようと試みる主張をなしているので甲第10号証ないし第11号証を提出する。

甲第10号証は、コミック「BATMAN」が米国著作権局に登録されていたものであることを示す著作権登録証のコピーであって、1942年,1979年及び1985年に登録されたことが分かる。

また甲第11号証はBATMAN/バットマンの60年の歩みを述べたものであって、これにより広くBATMAN/バットマンが人々に愛好されていたことを知ることができる。

被請求人は甲第6号証は本件商標出願後のものであると反論しているが、BATMANの映画は、甲第11号証の記事から明らかなように1940年にはコロンビア映画によってシリーズ映画として映画化され、1966年にはテレビに登場している。これら映画は時を移さず日本にも輸入されていたのである。甲第6号証は、日本で封切りされた時のPR活動の一例を示したにすぎず、1940年以降日本で封切りされた時は同様のPRが行われていたのである。

従って、被請求人の答弁は答弁としての実のないものである。

(2)次に被請求人は、請求人の行っているライセンス事業を「混同」の問題とは別のことのように述べているが当を得ていない。

「BATMAN」の名称及び形体又はスチールを商品展開の道具として用いようとするのは、BATMAN/バットマンが日本国内で周知されているからであって、その周知性を商品の拡売に利用しようとする事業者とこれを体系的にライセンス事業として全体の利益のために総合管理するところにライセンス事業の本旨があるのである。

従って、ライセンス事業が広く行われているということは、BATMAN/バットマンが周知されていて、商品展開に利用される価値あることを示すものである。

本件商標の指定商品関係には未だライセンスされたものはないが、もし本件商標が指定商品に使用されたとすれば、需要者は、請求人からライセンスされている商品であると誤認・混同することは必定である。

(3)被請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しないし、第19号は本件商標の登録後の規定であるから適用はないと主張するので、この点につき弁駁する。

第7号は公序・良俗に反する商標は登録しない旨の規定であるが、商標出願が、国際信義に反する場合は第7号に該当するとされている。

この国際信義に反する行為をより具体的に表現し、さらにその趣旨を広げたのが第19号の規定である。

もともと日本国の内外を問わず他人が権利をもっていて、周知されている名称を自己の利益のために正当な理由なくしてこれを利用しようとする行為は信義則に反する行為である。外国で周知されている名称を正当な理由なくして自己の有利に借用し、商標として専用しようとする行為は国際信義に反する行為である。この意味において、日本国の内外において周知されているBATMAN/バットマンの名称をその権利者に無断で登録し、これを自己の有利に専用しようとする行為は国際信義に反する行為であること明らかである。

即ち、本件商標は第7号の規定に反して登録されたものであること明らかである。

5.以下判断する。

甲第3号証の1ないし甲第6号証の14を総合すれば、「BATMAN」(バットマン)は、米国で人気のある漫画であり、また、この漫画の主人公の名であって、最近では1989年(平成1年)6月にこの漫画を基にした映画「BATMAN」が米国において封切られ客を集め、同年12月には、我が国でも、この映画が封切られた事実、そして、同年9月からこの映画の宣伝広告が我が国の新聞紙上で行なわれたこともあり、この映画のタイトル名であり、主人公の名でもある「BATMAN」(バットマン)が、本件商標の登録出願前に一般に相当程度知られていた事実を認めることができる。

また、甲第2号証の1ないし11によれば、請求人は、同各号証に示される商標登録の商標権者である事実、甲第4号証ないし甲第5号証の42によれば、本件商標の登録出願前に、請求人又は請求人に委託された者が、前記の「BATMAN」の漫画あるいは映画について有する権利、権益、権限に基づいて、我が国の複数の企業との間で、多岐の商品(本件商標の指定商品を含まない。)を対象としたライセンス契約を締結した事実が認められる。

しかしながら、請求人が提出した甲各号証を総合しても、自他商品・役務の出所を識別するための商標として、「BATMAN」の文字又は「バットマン」の文字からなる商標が使用され、国内外において周知著名となっていた事実を認めることはできない。

そうとすれば、本件商標は、我が国で一般に相当程度知られていた前記の映画のタイトル名であり、かつ、この映画の主人公の名でもある「BATMAN」を被請求人が請求人に無断で商標登録出願したものであるとしても、これが国内外で周知著名な商標であったと認められないことからすると、被請求人がその指定商品にこれを使用しても請求人等他人の業務に係る商品と誤認され、出所の混同を生ずるおそれのないものと判断するのが相当であり、また、他人の周知著名な商標の出所表示機能を希釈化させたり、その名声を毀損させる目的をもって本件商標が登録出願されたものと認めることもできない。

そして、請求人は、他に本件商標が不正の目的で登録出願されたと判断できる具体的理由を示すところがないから、本件商標は、国際信義に反する行為により登録されたものとまでは断定できないものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とすることができない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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