結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2000−35647(T2000−35647/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
1.本件商標
本件登録第3371112号商標(以下、「本件商標」という。)は、「TOWERーRECORDS」の文字を横書きしてなり、平成7年7月18日に登録出願、第25類「セーター類,ワイシャツ,帽子,下着,靴下」を指定商品として、平成11年2月5日に設定登録されたものである。
2.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第115号証(枝番号含む)を提出し、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第15号及び同第19号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、その登録は同法第46条第1項の規定により無効とされるべきであると主張している。
(1)「TOWER RECORDS」の周知・著名性について
(ア)請求人エムティエス インコーポレイテッド(MTS,Inc.)は、1960年に、アメリカ合衆国において「TOWER RECORDS」の商号の下で、大規模レコード販売店を創業した。現在では、レコードのみならず、コンパクトディスク、ビデオディスク、ビデオテープ等の音楽・映像関係の商品を中心に、書籍、かばん、文房具等の各種商品を販売する店を「TOWER RECORDS」の営業表示並びに商標の下で世界的に運営・展開している(甲第6号証ないし甲第28号証)。
「TOWER RECORDS」商標(以下、「使用商標」という。)は、1960年(昭和35年)にアメリカ合衆国において最初に使用されてから、以後40年間にわたり、世界各国で一貫して上記商品及び関連サービスに使用されている。海外においては、1995年(平成7年)時点で、本国アメリカ合衆国において100店舗以上を出店し、カナダ、メキシコ、香港、韓国、シンガポール、台湾、タイ、アイルランド、イギリス、イスラエルにも多数の店舗を有している。また、請求人は、日本を含む世界各国に商標登録ないし出願を行っており(わが国では、登録第1984368号、同第2133067号及び同第4409794号として登録されている。)世界的に最も広く知られたレコード店となっている。
(イ)遅くとも1970年代には、日本においても「TOWER RECORDS」の名は、アメリカ合衆国を本国とする有名なレコード店の店名として相当広く知られるようになっていたが、1979年(昭和54年)、請求人は、アメリカで発売されたレコードをそのまま日本に輸出して、日本の既存のレコード店を通じて販売するという業務を始めた。この「輸入盤」と呼ばれるレコードの販売方式を日本に広く普及させたのが請求人である。
さらに、1980年(昭和55年)には、北海道札幌市において、請求人と無関係の者が「TOWER RECORDS」の商号並びにロゴを使用するという不正競業事件があった。その結果、「TOWER RECORDS」の日本第1号店が札幌に誕生することとなった(甲第6号証)。その後、我が国では、1981年(昭和56年)12月に、請求人の100%出資により「タワーレコード株式会社」(東京都品川区南品川2−15−9)が設立された(甲第7号証)。
請求人のレコード店は、黄色地に赤色で大きく表された使用商標(甲第2号証)と、特徴ある店内装飾、積極的な宣伝広告活動、そして、それまで日本になかった規模の豊富な品揃えと価格の安さ等によってたちまち成功を勝ち得、本件商標が出願された平成7年7月18日時点においては、既に北海道から九州に至る全国23店舗を擁する日本有数のレコードチェーン店となっていた。なお、現在、その店舗数は40店舗以上に増加している(甲第7号証及び甲第8号証)。
特に「TOWER RECORDS」の東京・渋谷店は、世界最大の売場面積を誇り(甲第9号証、同第21号証、同第23号証ないし同第26号証)、大阪店や福岡店もそれまでにない規模であったため(甲第16号証)、各種報道機関によってこれらの店舗が大々的に報道された。
なお、請求人の使用商標は、我が国の一般的な英和辞書にも「米国のCD,カセット販売チェーン店」として掲載されている(甲第115号証)。このことは、我が国において使用商標が、中学・高校生を含む幅広い範囲の一般需要者に知られていることを示唆するものであり、請求人の使用商標の周知・著名性を裏付けるものである。
(ウ)「TOWER RECORDS」のこのような発展を支える広告・宣伝活動として、前記タワーレコード株式会社は、長年にわたり日本の若年層を対象としたテレビ・ラジオ番組を提供し、電車内の吊り広告や駅貼り広告、新聞、雑誌、街頭のネオンサインやポスター等に使用商標の広告を多数掲載し続けている(甲第29号証ないし甲第114号証)。また、若い世代に向けたイベントやコンサート、催し物などをいわゆる「冠スポンサー」として企画・開催し、「TOWER RECORDS」の名前を掲げて、その商号・商標の宣伝・普及に力を注いでいる(甲第22号証、甲第28号証、甲第101号証及び甲第109号証)。
以上のことから使用商標が、請求人の展開するレコード・チェーンの店舗名及び請求人の別名として、また、請求人が取り扱う商品についての商標として、本件商標の出願日である平成7年7月18日はもとより、そのはるか以前から、わが国及び外国において広く知られていたことは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標の構成は前記のとおりであり、使用商標と同一の文字を構成要素とするものである。また、本件商標の指定商品は、第25類「セーター類,ワイシャツ,帽子,下着,靴下」であるが、音楽業界の宣伝広告及び販売促進活動においては、このような被服類が「販促品(ノベルティーグッズ)」として一般に使用され、有償若しくは無償で頒布されている。
したがって、本件商標の付されたTシャツ、帽子等の商品は、あたかも請求人又は請求人と何らかの関連ある企業体が製造販売する商品であるかの如く、誤認・混同されることは必至である。すなわち、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標である。
(3)商標法第4条第1項第8号について
「TOWER RECORDS」は、請求人が40年以上にわたって使用してきた店舗名でもあり、商標法第4条第1項第8号が保護法益とする請求人の「人格」が化体したものであって、請求人の著名な略称となっていることが明らかである。
また、上述のとおり、請求人の100%出資による子会社である「タワーレコード株式会社」も、設立以来すでに15年以上もの間、大々的に「TOWER RECORDS」の名の下に商品を販売し、宣伝広告活動を展開してきているので、使用商標は、同社の著名な略称ともいえるものである。しかして、被請求人は、請求人とは無関係であり、本件商標の出願にあたり、請求人あるいはタワーレコード株式会社から承諾を得ていないものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、世界的に著名な使用商標をそっくりそのまま構成要素とするものである。しかして、このような本件商標が使用されれば、請求人の使用商標が有する出所表示機能(指標力)が稀釈化され、また、そのような使用は、請求人の著名商標に化体した業務上の信用(グッドウィル)への“ただ乗り”に該当し、国際信義上も極めて穏当でない。他方、被請求人は、そのことにより不正の利益を得ることになる。
さらに、本件商標が使用商標と無関係に選択されたとは考えられず、その顧客吸引力を利用しようとするものであることは、前記の諸事情からみて客観的に明白である。
以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一の商標であって、不正の目的をもって使用するものというべきである。
3.被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。
4.当審の判断
(1)使用商標の周知・著名性について
本件審判の請求の理由及びその証拠方法として請求人の提出に係る甲各号証である、タワーレコード株式会社の「会社概要」(甲第7号証)、雑誌「AERA」の記事(1994年(平成6年)12月12日付朝日新聞社発行:甲第9号証)ほか、甲第6号証、甲第10号証、甲第71号証ないし甲第114号証の各種雑誌の記事及び掲載広告、1982年(昭和57年)10月25日付日経流通新聞(甲第11号証)ほか、甲第12号証ないし甲第28号証の各社新聞紙の報道記事、甲第29号証ないし甲第70号証の駅構内・電車内等での広告写真及び広告掲載証明書、ランダムハウス英和大辞典の掲載事項(株式会社小学館発行:甲第115号証)より、以下の事実を認め得るものである。
(ア)請求人「エムティエス インコーポレイテッド(MTS,Inc.)」は、1960年に、アメリカ合衆国において「TOWER RECORDS」の商号の下で、大規模レコード販売店を創業。現在では、レコードのみならず、コンパクトディスク、ビデオディスク、ビデオテープ等の音楽・映像関係の商品を中心に、書籍、かばん、文房具等の各種商品を販売する店を使用商標の営業表示並びに商標の下で世界的に運営・展開しており、世界中に150店以上の店舗を有していること。
(イ)日本においては、1981年に日本法人「タワーレコード株式会社」を設立し、1997年6月現在で日本国内に40の直営店舗を展開しており、特に、渋谷店はそのフロア面積において世界一の規模をもっており、CD、ビデオ以外にもCD−ROMやゲーム、書籍なども販売していること。
(ウ)株式会社小学館発行の「ランダムハウス英和大辞典」の、「TOWER RECORDS」の項では「米国のCD,カセット販売チェーン店」として紹介されていること。
(エ)その他、甲各号証よりすれば、使用商標は、「米国のCD,カセット販売チェーン店」ないし商品「レコード、CD、ビデオ」等の販売に使用され、少なくとも本件商標の出願日前において、我が国のみならず世界的にも周知・著名な商標であると認め得るものである。
(2)本件商標と使用商標との関係について
(ア)本件商標と使用商標とは、その構成前記のとおり、いずれも「TOWER」及び「RECORDS」の各文字を主たる構成要素として一連に書し、これをハイフンないし半文字程度の間隙により分かち結合してなるものであるから、両者は極めて近似し、同一視される如き商標と認めて差し支えのないものである。
そして、両者の各文字は平易な英語といえるものであるとしても、各文字を結合させた全体からは、一般に馴染まれた熟語として特定の称呼・観念を生じ得る一連の成語を形成するものでなく、該各文字を任意に組み合わせた一種の造語からなる固有の商標とみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、その各文字の組み合わせが、使用商標と偶然に一致する商標を任意に採択したものといい難く、むしろ、使用商標に起因して採択使用するものと推認せざるを得ないものであって、かつ、被請求人(商標権者)が、本件商標に係る登録出願をするに際し、請求人及びその日本法人より承諾を得ていたものと認めることはできない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
以上の(1)及び(2)を総合勘案すれば、被請求人が、既に「米国のCD,カセット販売チェーン店」ないし商品「レコード、CD、ビデオ」等の販売に使用され日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている使用商標と同一視できる本件商標を採択使用する行為は、使用商標の周知・著名性を利用しようという不正の目的があったものといわざるを得ない。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の「他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするもの。」に該当するものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、上記条項に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定より無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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