Trademark Appeal Case
著名商標と関連事業
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第16086号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおり黒塗り横長四角形の中に「日立信販」の文字を白抜きしてなり、第36類「資金の貸し付け」を指定役務として、平成4年9月30日に使用に基づく特例の適用の主張をして登録出願されたものである。
2 原審において、登録異議の申立てがあった結果決定した理由の要点
登録異議申立人株式会社日立製作所(以下「申立人会社」という。)」は、「日立」と略称され、世界的に著名な総合電気機械メーカーであることは一般に良く知られているところであり、同時に同社及び電気機械、情報、金融サービス、その他商品、役務を業務とする同社関連の多数の企業が使用する「日立」の文字からなる標章は、その取扱いに係る商品あるいは提供に係る役務を表示する代表的出所標識として、あるいは、商号の略称として本願商標の登録出願前より取引者、需要者間に広く知られ周知、著名になり現在に至っているものといい得るものである。
そうとすると、本願商標は、「日立信販」の文字を書してなるものであり、前記したように申立人会社が自己の業務に係る商品あるいは役務に使用し取引者、需要者の間に広く認識されている「日立」の文字を有してなるものであるから、本願商標をその指定役務に使用するときは、前記実情よりして該役務が申立人会社あるいは申立人会社と何らかの関係にある者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれがあるものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 請求人の主張
(1)登録異議の申立てについての決定では、「日立」の文字からなる標章は、「株式会社日立製作所」の代表的出所標識として、あるいは商号の略称として周知著名になっており、したがって、「日立」の文字を有する商標は、出所の混同を生じさせるおそれがある旨認定している。
しかし、「日立」の文字を有する商標あるいは商号において、「株式会社日立製作所」の関連企業でないものは多数あり、また商標登録もされている。
(2)請求人は、創業以来消費者金融業に専業化し、他の事業を行っていない。
そして、本願商標は、多岐にわたるメディアにおいて広告宣伝した結果、消費者金融業者として周知性を獲得しているものである。
(3)店舗の存在場所、営業の方法、宣伝広告の方法等において消費者金融は特異性があり、この特異性から、電気メーカーはもちろんのこと他の業界から本願指定役務の業界へ参入することは考えられないから、他の業界との出所の混同を生ずることはない。
4 当審の判断
(1)原審において登録異議の申立てがあった結果、提出された証拠(以下「異議甲第号証」という。)によれば以下の事実が認められる。
(ア)申立人会社の沿革
異議甲第1号証及び同第2号証(枝番を含む。)によれば、申立人会社は、明治43年久原鉱山付属の修理工場として発足し、大正9年2月日立、亀戸の両工場を擁し、株式会社日立製作所として独立。
昭和31年10月日立金属株式会社、日立電線株式会社分離独立。
昭和38年4月 日立化成工業株式会社分離独立。
昭和44年12月日立建機株式会社、日立住宅設備販売株式会社分離独立。
昭和47年10月日立設備工業株式会社を設立。
昭和48年4月 日立環境サービス株式会社を設立。
昭和51年2月 日立照明株式会社を設立。
昭和55年8月 日立コンピュータエンジニアリング株式会社を設立。
昭和58年4月 本社所在地を東京都千代田区神田駿河台四丁目6番へ変更。
以上によれば、申立人会社は「日立」の名称を冠した会社を順次設立していることが認められる。
(イ)事業規模
異議甲第2号証の57及び同第2号証の61(有価証券報告書)によれば、日立製作所の事業規模は、平成3年度(第123期:平成3年4月1日より平成4年3月31日まで)において、資本金270,917,802,000円、売上高3,925,250,000,000円、平成7年度(第127期:平成7年4月1日より平成8年3月31日まで)において、資本金278,178,661,000円、売上高4,126,419,000,000円、従業員数は平成4年3月31日には80,997人、平成8年3月31日には75,590人である。
(ウ)事業範囲
異議甲第2号証の57及び同第2号証の61によれば、申立人会社の事業範囲は、「電気機械器具の製造・販売を主な事業目的としているが、その製品の範囲は、幅広い分野で利用されるコンピュータ、通信機器、電子部品などのエレクトロニクス製品から、各種の産業用途向けの重電・産業機械及び交通機器更には消費者向けの家庭電器に至るまで極めて多岐に亘っている。」との記述が認められ、請求人自身申立人会社は総合電機メーカーであることは認めている。
(エ)企業集団等の状況
また、同じく前記証拠による「企業集団等の状況」の項によれば、第123期(平成3年4月1日より平成4年3月31日まで)における申立人会社及び関係会社は984社(子会社799社、関連会社185社)あり、連結子会社として名称の掲載されているものが「バブコック日立(株)」をはじめとして62社あり、名称の掲載されていないものが737社である。第127期(平成7年4月1日より平成8年3月31日まで)においては申立人会社と関係会社は1,080社(子会社866社、関連会社214社)に及び、連結子会社として名称の掲載されているものが「バブコック日立(株)」をはじめとして63社あり、名称の掲載されていないものが803社である。
この掲載事実からすれば、申立人会社は企業グループを形成していることが認められる。
また、連結子会社として名称の掲載されているものにおいて、そのうち「日立」の文字を含む会社が両期ともに40社以上あり、さらに、海外に住所を有する「日立」をアルファベットで表示した「HITACHI」を含む会社が18社であることが認められる。
そして、これらグループ企業は「日立」もしくは「HITACHI」の文字と一般的な業種名又は地理的名称が結合されているものがほとんどである。
さらに、前記企業グループにおける主な事業内容及び主要な関係会社の位置付けによれば、主要な事業は、情報・エレクトロニクス、電力・産業システム、家庭電器、材料、サービス他の5部門に亘って、製品の開発、生産、販売、サービスに至る幅広い事業活動を展開しているとの記述が認められる。そして、127期においては、関係会社の位置付けにおけるサービス他の事業内容では「電気・電子機器の販売、貨物輸送、不動産の管理・売買・賃貸、印刷、金融サービス」と記載され、この事業を行う子会社として「中央商事、日立物流、日立クレジット、日立印刷」等があげられていることからすれば、申立人会社の関係会社が「金融サービス」の事業をも現に行っていることが認められる。もっとも、本願商標出願時における123期においては「金融サービス」の事業を行っている旨の記載はないが、職権により調査したところによれば、連結子会社である「日立クレジット株式会社」は、「日立クレジット株式会社」の文字からなる登録第3360153号商標及び「Hitachi Credit Corporation」の文字からなる登録第3360154号商標を、指定役務「第36類 資金の貸付け及び手形の割引,債務の保証及び手形の引受け,金銭債権の取得及び譲渡,信用状に関する業務,割賦販売利用者に代わってする支払代金の清算,割賦購入あっせん,集金の代行及び支払の取次ぎ,生命保険契約の締結の媒介,損害保険契約の締結の代理,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与」について、「特例商標」として登録を受けていることからすれば(いずれも現商標権者は、申立人会社である「株式会社日立製作所」である。)、連結子会社である「日立クレジット株式会社」は、本件商標の出願当時においても「金融サービス」の事業を行っていたものと認められる。
(2)引用商標の著名性について
(ア)特許庁備え付けの商標登録原簿によれば、申立人会社は、昭和43年5月24日登録出願され、昭和56年12月25日に設定登録された、別掲のとおり「日立」の文字を横書きしてなり、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品とする登録第1492489号商標(以下「引用商標」という。)を有しているものである。そして、これには本願指定役務を含む区分において防護標章登録がなされているものであることが認められる。
(イ)新聞、雑誌広告における引用商標の使用
異議甲第4号証の1の1ないし同第4号証の2の164によれば、申立人会社は平成1年1月6日から平成9年1月14日に至るまで、「技術の日立」又は「日立」あるいは「日立オフィスプロセッサ」のごとく「日立」の文字に商品名を冠したものなどの引用商標を、「日本語ワードプロセッサ、コードレス電話機、大型コンピュータ、光ディスクファイルシステム、ファクシミリ、パーソナルコンピュータ、カラーテレビジョン受像機、ホームエレベーター、除湿機、衛星通信システム、テレビ会議システム、ワイドテレビジョン、CADシステム、8ミリビデオカメラ、フロン分解装置」などの商品について、日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、夕刊フジ、スポーツニッポン、サンケイスポーツの広告に継続的に使用していることが認められる。
(ウ)カタログにおける引用商標の使用
異議甲第5号証の1の1ないし同第5号証の7の4(いずれも日立製品型録(国内版)平成元年から平成7年の各抜粋)によれば、申立人会社は「技術の日立」又は「日立バス総合運行管理システム、日立コードレステレホン」のごとく「日立」の文字にシステム又は商品名を冠したものなどの引用商標を、「電子応用機械器具を中心とした各種システム商品、電子計算機、電子顕微鏡などの電子応用機械器具、電話機、ファクシミリなどの電気通信機械器具、ルームエアコン、扇風機、冷蔵庫などの家電製品及び遮断機、モーターなどの電気機械器具」等について、継続的に使用していることが認められる。
(エ)テレビ放送における引用商標の使用
異議甲第6号証の1及び同2によれば、申立人会社は在京テレビ局において同社のCM放送及び番組の提供を行っていたことが認められる。
それによれば、少なくとも「日立ふしぎ発見!」の番組は、昭和61年4月から平成5年当時まで継続して放送されていることが認められる。そして、同号証では実際に放送で使用されている商標などが明確ではないものの、番組名に「日立」の名を冠しているものであること、民間放送の番組提供であることから、当然に申立人会社の宣伝がなされていたであろうことから、引用商標が申立人会社の商品について使用されていたことが推認される。加えて、同番組は昭和62年10月から、土曜日21時から21時54分までのいわゆるゴールデンアワーでの放送であることから、これはTBS系列の全国ネット番組であるものと推認できる。
(オ)以上によれば、引用商標はその指定商品について継続して使用された結果、本願商標の出願の時はもとより、現在においても著名商標と認められるものである。
(3)役務の出所の混同について
本願商標は、別掲のとおり「日立信販」の文字を表示してなるものである。そして、その指定役務は第36類「資金の貸付け」であることから、「日立」に続く「信販」の文字は本願指定役務の業界にあっては「業態」を表すものであると認められる。
そうすると、本願商標を構成する前半に、4(2)で認定のとおりの申立人会社の著名商標と同じ「日立」の文字を有すること、4(1)で認定のとおり、申立人会社のグループ企業は「日立」の文字を用いているものが多数あること、この場合「日立」の文字のほかに、一般的な業種名又は地理的名称が用いられている場合が多いこと、申立人会社のグループ企業には本願指定役務と同一又は類似する役務の会社が現に存すること、以上を考慮すれば、本願商標は、これを請求人がその指定役務に使用した場合、需要者、取引者は申立人会社の著名商標である「日立」の商標を連想、想起し、申立人会社又は同会社のグループ企業と何らかの関係を有するものの業務であると、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
(4)請求人の主張について
(ア)「日立」の文字を有する商標あるいは商号において、「日立製作所」の関連企業でないものは多数あり、また商標登録もされていると述べる。
しかし、請求理由に示すその名称の多くは、「日立造船株式会社」及びその関連会社と認められるところ、同会社は昭和18年に大阪鉄工所から日立造船に商号を改称したものであることが、同社のインターネットのホームページにより認められること、異議甲第1号証の3(日立製作所史3)「50年の歩み」(第3頁ないし第10頁)によれば、第3頁「おもな子会社の設立、合併」の項において、「・・・(昭和)18年、既に関係会社は29社にのぼり、このうち、持株比率100%の子会社は日立造船(株)、日立航空機(株)、日立兵器(株)、日立精機(株)など16社を数えた。」の記述、第8頁「持株公開と集中排除」の項において、「・・・。この結果(昭和)22年2月および9月にわたり、日立造船(株)はじめ53社、4,603,070株の全持株を持株整理委員会に譲渡し、長年育成してきた系列会社との関係を一応断ったのである。」の記述からすれば、もともとは申立人会社の関連会社であり、関連会社であった当時から継続してその名称を使用していることが認められる。また、たとえ同会社を含む他の会社が、「日立グループ」と関係がなく、その商号中に「日立」の文字を用いていたとしても、そのことと本願商標が商品や役務についての出所の混同を生ずるおそれがあるか否かとは関係がないことである。
(イ)請求人は、申立人会社と出所の混同を生ずるおそれがない理由の一つとして、創業以来消費者金融業に専業化し、他の事業を行っていないこと、本願商標は、多岐にわたるメディアにおいて広告宣伝した結果、消費者金融業者として周知性を獲得していると主張する。
しかし、本願商標が、請求人の業務に係る商標として周知性を獲得しているとしても、本願商標と申立人会社又は「日立グループ」とは何ら関係のない者の業務に係る商標であるとして認識されていると認めるに足る証拠はなく、むしろ請求人は、原審における登録異議の申立てにおける申立人会社の主張にあるように、会社案内若しくは自己の業務の広告において、申立人会社のグループ企業と誤認、混同を招来させるごとき表示をしていることからすれば、前記理由により本願商標が申立人会社の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがないと認めることはできない。
(ウ)さらに、請求人は、店舗の存在場所、営業の方法、宣伝広告の方法等において消費者金融は特異性があり、この特異性から、電気メーカーは勿論のこと他の業界から参入することは考えられないから、他の業界との出所の混同を生ずることはないと主張する。
しかし、今日においては、小売り流通業者や電子機器メーカーが、保険、証券を含む金融業界への参入若しくは参入する可能性のあることは顕著なる事実である。
そうすると、請求人の主張はいずれも採用することができないものであり、上記のように判断するのが相当である。
5 結び
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同様の理由により拒絶した原査定は、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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