結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2000−35050(T2000−35050/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4262478号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成6年11月22日に登録出願、第34類「喫煙用具(貴金属のものを除く。)」を指定商品として、同11年4月16日に設定登録がなされたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第13号証を提出している。
請求人「住友商事株式会社」は、甲第1号証に示すように菱形の4つの辺の両端に巾広の低い凸部を設け、その中に小さな菱形部分を設けた特徴的井桁図形からなる商標〔これを別掲(2)に表示し、以下、「引用標章」という。〕を使用している。当該引用標章は「住友井桁標章」と一般に呼ばれるものであるが、以下に述べるその著名性等を考慮すれば、本件商標がその指定商品に使用されるときは商品の出所について具体的混同を生じるおそれがあるというべきである。
(1)引用標章の著名性
住友グループの中核となる大規模の諸会社を起こした住友家は古くから銅の採掘、精練を業とし、住友の名は別子銅山と共に徳川時代には既に広く国内に知られていた。明治時代に入り、住友の事業は各方面に発展伸長したが、住友グループの主な事業会社は「住友」の名の下に事業を行ってきたものであり、「住友」標章は住友グループの事業や商品及び役務を象徴するものとして広く知られるに至った。
このような「住友」標章と並んで住友グループが使用してきたのが図形よりなる「住友井桁標章」である。住友が井桁標章を使用したのは徳川時代の初期に遡るが、これは泉屋なる屋号の「いずみ」を象徴する標章として採用されたものであり、銅業界において住友の事業を象徴するものとして当時から知られていたものである。
これは普通の井桁標章であったが、事業の発展に伴い、世間一般の井桁標章と判別しうる住友独特の井桁マークを使用すべきとの社会的要求から、明治35年に住友独特の太井桁標章が採用され、その後引き続き意匠的にも充分な考慮を加え、大正2年に至って桁の幅、間隔、角度等を厳密に規定して一般的な井桁とはー見明瞭に相違し区別される現在の「住友井桁標章」に規格が統一されたものである。
現在では、住友グループの中核を成す「住友化学株式会社」、「住友重機械工業株式会社」、「株式会社住友銀行」、「住友金属工業株式会社」、「住友金属鉱山株式会社」、「住友商事株式会社」、「住友信託銀行株式会社」、「住友生命保険相互会社」、「住友石炭鉱業株式会社」、「株式会社住友倉庫」、「住友電気工業株式会社」、「住友海上火災保険株式会社」、「住友不動産株式会社」、「住友大阪セメント株式会社」、「住友軽金属工業株式会社」、「住友建設株式会社」、「住友ベークライト株式会社」、「住友林業株式会社」が「住友井桁標章」を使用している。
以上のように、独特の形状を有し、長年かつ盛大に使用されている「住友井桁標章」は、住友の商品・役務の優秀性とも相俟って住友グループを表わす商標として各種商品・役務について著名となっていることは明らかである(甲第2号証ないし同第7号証)。
また、特許庁ホームページにおいて提供する特許電子図書館に「住友井桁標章」を周知・著名商標として掲載することについて同庁から本件請求人に承諾の要請があったという経緯がある(甲第8号証)。このような経緯から、同庁においても「住友井桁標章」が著名であることは明らかである。
更に、昭和42年審判第593号事件における登録異議の決定において「登録第465300号商標は、別紙に示すとおりの構成からなりその桁の幅、間隔、角度について近代的間隔に訴える美的要素を持っており、在来の井桁図形とは一見明瞭に相違し、外輪郭に特徴を有し判然と識別される独特なもので、世上住友井桁マークと指称され、これが取引者、需要者間に広く認識された周知商標であることは当庁においても顕著な事実である。」(甲第9号証)とされていることから、本件商標出願時である平成6年11月22日には「住友井桁標章」が著名な商標であったことも明らかである。
(2)本件商標と引用商標の近似性
本件商標は、菱形の4つの辺の両端に巾広の低い凸部を設けた黒塗りの図形内に「Cyma」の欧文字を白抜きに表わしてなる商標であるが、その外輪郭は「住友井桁標章」のそれと同じく、殆ど同じ角度の菱形の4つの辺の両端に巾広の低い凸部を設けたものである。このように、住友グループを表わす著名商標と同一の特徴を有する本件商標中の図形部分は、取引者・需要者の注意を特に惹き、強い自他商品識別力を発揮するものである。従って、本件商標に接する取引者・需要者は図形部分とその中に表示される「Cyma」の文字とを必ずしも一体にのみ認識しないものである。また、本件商標に接する取引者・需要者は著名商標である引用標章と殆ど同一の特徴を有する本件商標の図形部分を「住友井桁」と称呼、観念することも少なくないものである。
このような事情の下で本件商標が使用されるときは、たとえ小さな菱形の有無及び「Cyma」の欧文字の有無という差異が「住友井桁標章」との間に存在するにしても、本件商標に接する取引者・需要者は著名な「住友井桁標章」の外輪郭と酷似する本件商標の図形部分の外輪郭に注目し、本件商標を住友の井桁標章の一種と認識すると考えるのが相当である。
(3)商品の関連性
また、請求人「住友商事株式会社」は総合商社であり、様々な商品を扱う企業であるところ、本件商標の指定商品「喫煙用具」は請求人の事業範囲に含まれる商品である。
(4)混同を生ずるおそれ
従って、上記取引実情の下で本件商標がその指定商品に使用されたときは、その商品が請求人によって直接販売されているか、または特約の下に販売されているか、その他請求人又は住友グループと何らかの経済的若しくは組織的関係を有するものによって販売されているかのごとき混同を需要者に生じさせるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に反して登録されたものである。
(5)過去の異議申立事件における同種の決定例
なお、本件と類似の事例として甲第9号証に挙げた昭和42年審判第593号事件に対する登録異議の決定を引用する。当該事件は「IZUTSU」の欧文字を井桁の外輪郭で囲んでなる構成からなる商標に対して住友電気工業株式会社が登録の異議を申立てた事件である。当該登録異議の決定謄本によると、「・・・本願商標を、その指定商品に使用するときには、これに接する取引者、需要者は、この特徴ある住友井桁の外輪郭に注意と関心が惹かれ、該商品が恰も住友電気工業株式会社の商品であるかの如く世人をして商品の出所につき混同を生じさせる虞れが充分にあると言わなければならない。」と判断されている。
その他にも「井桁」の中央部に「山」の漢字を円で囲んだ図形を表わした図形よりなる商標(出願公告:昭46ー5253)、「井桁」の外輪郭内に扇の図形を表わした図形よりなる商標(出願公告:昭55ー22664)に対して、請求人が異議を申立てた事件においても同様の判断がなされている(甲第10号証ないし同第13号証)。
本件は上記登録異議申立事件と事情を同一にするものであるから、本件においても上記登録異議の決定と同様の判断がされて然るべきである。
(6)以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するから、同法第46条第1項第1号の規定に従い、登録を無効にされるべきである。
被請求人は、請求人の主張に対して、何ら答弁していない。
本件商標は、別掲(1)に表示したとおり、黒塗りの菱形図形の4端において互いに角度をなす辺方向へ一部をー定の巾広を保ち互いに交差するように突き出た凸部と、凸部と同じ巾広で4つの辺上に造られた凹部とからなる略菱形の外輪郭図形及びその菱形図形内に「Cyma」を白抜きで表してなる欧文字とからなる構成と認められる。そして、この略菱形図形は、その特徴とするところが外輪郭の突き出た凸部と凹部の構成要素にあることから、これを中心に見た場合、全体として、井桁状に組まれた太井桁図形として理解、認識されるものというのが相当である。
一方、引用標章は、別掲(2)に表示したとおり、太井桁図形よりなる構成であって、井桁の4端の互いに突き出た4組の凸部及びその凸部によって造られる4つの辺の凹部は同じ巾広を要素とする外輪郭をなし、その黒塗り菱形図形内に小さな菱形図形を表わしてなるものである。
そうとすれば、本件商標と引用標章とは、井桁の太さ及び井桁の4端の互いに突き出た凸部に対する4つの辺の凹部の大きさにおいて若干の差異及び図形内に「Cyma」の欧文字を白抜きに表わしてなることに対する小さな菱形図形の有無に差異のある標章であるが、特徴のある太井桁を基調とした点においてその発想を同じくするものであって、これを、時と所を異にして離隔的に観察するときは、前記差異点は薄れ、極めて近似した印象を与えるものである。
ところで、請求人の所有する引用標章は、請求人の提出した甲各号証等によれば、一般の家紋、暖簾に使用される井桁マークと違い、桁の幅、間隔、角度などに美的要素を具えた「住友井桁マーク」と称され、請求人を含む住友グループが明治時代から現代に至るまで住友の事業に一貫として、これを商標、社章として永年使用してきた結果、取引者、需要者において広く認識されていたことは公知の事実として認められる。
してみると、本件商標は、その構成中の外輪郭は、住友太井桁の図形と殆ど同一のものであると容易に認識されるから、井桁の中に「Cyma」の欧文字を白抜きに表わし、また、井桁の中に小さな菱形部分が欠如しているとしても、前記事情に徴すれば、「太井桁」の図形部分は、取引者、需要者をして、前記住友グループを想起させ、印象付けるものというべきである。
そうとすれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用するときは、該商品が恰も請求人もしくは請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く想起させ、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
なお、被請求人は、上記のとおり請求人の主張に対し、何ら答弁していない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、これを無効にする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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