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Trademark Appeal Case

商標「白水」の周知性と類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年審判第35255号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4212031号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4212031号商標(以下「本件商標」という。)は、別記に示すとおりの構成よりなり、平成9年2月10日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、平成10年11月20日に設定登録がなされているものである。

第2 請求人の引用商標

請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2563376号商標(以下「引用商標」という。)は、「白水」の漢字を縦書きしてなり、平成3年6月3日に登録出願、第28類「酒類」を指定商品として、平成5年7月30日に設定登録がなされているものである。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第57号証(枝番を含む。)を提出している。

1 請求の理由

(1)本件商標は引用商標と出所の混同を生ずるおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する商標である。

(ア)引用商標を構成する「白水」の文字は、「シロミズ」と訓読みして、「米をといで白く濁った水、米のとぎ汁」の意に使用されることもあるが(広辞苑第5版1366頁、甲第4号証の3)、もともとは、「ハクスイ」と音読みし、澄んで清らかな水、ないしは流れを意味する語である(学研漢和大辞典876頁、甲第3号証の2)。もっとも、このような意味からして、心が潔白であることを例える場合にも使用されることのある語でもあるが(同号証)、請求人は引用商標を構成する「白水」の文字を、請求人が販売している商品「焼酎」を製造している、八代工場の北東部にある白水村の地名に由来し、本来の意味、すなわち「澄んで清らかな名水」をあらわす文字として採択したものである(甲第5号証の2)。すなわち熊本市を東西に流れる一級河川「白川」の水源は、阿蘇白水村の白川吉見神社の境内にあり、湧水量は毎分60トンに及び、かつその水質は阿蘇の恵まれた自然の故に、日本の名水100選のひとつに数えられているものである。請求人は、その製造販売にかかる商品「焼酎」を含む「日本酒」に、白水村の水源より流出する上記名水を使用したものであることをあらわにするために、「白水」の商標を採択したものである(甲第6号証)。

(イ)請求人はこのような主旨の下に採択した引用商標を、その指定商品中「焼酎」について、引用商標出願の直後、すなわち平成3年10月より使用を開始し、請求人の工場が存在する熊本県八代を中心とし、当初は主として同県及び大分県福岡県等の北九州地域において販売していたのであるが、その後平成7年頃よりは首都圏を中心とし、全国的にもその販路を拡げ、今日に到っている。

すなわち請求人は、焼酎「白水」の販売開始の直後より、引用商標「白水」を使用した焼酎を北九州地域において、熊本日日新間、大分合同新聞を始めとする多数の新聞に広告し、地元の各酒類販売店その他において焼酎「白水」のパンフレット等を頒布するとともに、熊本放送、ラジオ熊本、熊本朝日放送、大分放送、ラジオ大分、大分朝日放送等、テレビ、ラジオ等を通じ、毎年1億円を越える広告費をかけて宣伝広告を続けてきた。その結果、平成7年ころの販売数量は2079KL(約20万ケース)、販売額は庫出価格で10億2500万円となっており(甲第7号証)、「白水」の商標は、本件商標の出願時(平成9年)より数年前の平成5〜6年頃までには、熊本を中心とする北九州一円においては、請求人の取扱にかかり、白水村の水源より湧出し、白川を流れる名水を使用した、なめらかで口当たりのよい商品「焼酎」をあらわす商標として、広く認識される周知商標となっていたものである。

さらに請求人は、その前後より引用商標を使用する商品「焼酎」の販路を、首都圏を中心とし全国的規模に拡充し、その宣伝広告の規模や範囲も全国にわたったので、引用商標は本件商標の出願時の平成9年頃までには、全国的にも広く認識されている周知著名な商標となっていたものである。

請求人は平成8年後においても北九州を中心として、もとより上記新聞、雑誌、ラジオ、テレビ放送等を通じ広告するとともに、週刊朝日等を含む全国紙においても広告し、また、全国1万件の卸、12万〜13万の小売店を通じ、別添証拠に示されるような各種リーフレットを需要者層に頒布し、その広告宣伝に努めた。その結果、その販売数量、庫出し販売価格も平成8年には262,906ケース、13億2900万円、平成9年には299,229ケース、15億5800万円、平成10年には344,295ケース、19億6000万円と、逐年上昇している(甲第8号証)。このようにして本件商標は、本件商標が登録出願された平成9年以降も逐年益々盛大に使用され、今日においては、請求人の製造販売する商品「焼酎」を表示する商標として全国的に周知著名な商標となっているものである。その宣伝広告の経過や現状は甲第9号証から甲第57号証まで、その他後に提出する甲各号証に示されるところにより明らかである。

(ウ)本件商標は冒頭に述べたように、上記周知著名商標を構成する「白水」の文字に「対酌」の文字を結合し、かつこれに「ハクスイタイシャク」の片仮名文字を配してなるものである。

従って、「白水」の文字自体の意味よりすれば、本件商標からは「清らかな流れを眺めつつ親しく向かい合って酒を酌み交わす」「米のとぎ水を親しく向かい合って酌み交わす」のような一連の称呼観念が生ずるものであって、「ハクスイ」(白水)のみの称呼観念は生じないから、引用商標とは、外観はもとより、称呼観念においても非類似の商標であり、従ってまた出所の混同も生じない商標であるともいい得よう。

(エ)しかしながら「白水」の文字が、上述のように、商品「焼酎」を表示するものとして広く認識されている商標であることをも勘案すれば、本件商標はこれを構成する文字の意味からして、『周知著名な「白水」の商標で知られている商品「焼酎」を、親しく向かい合って酌み交わす』のような意味を、世人に認識させる商標であると判断される。従って本件商標がその指定商品例えば「清酒」に使用されて市場に流通した場合においては、世人は該商標を、周知著名な商標「白水」で知られている商品「焼酎」の製造販売会社と同一の会社又はその関連会社により、その姉妹商品「清酒」について使用された商標であるかの如く認識し、商品の出所について混同する虞れが多いものと判断するのが経験則に照らし相当である。

従って本件商標がその指定商品に使用された場合においては、本件商標は引用商標が使用される商品と出所の混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する商標である。

(2)本件商標は、さらに商標法第4条第1項第11号に該当する商標である。

本件商標及び引用商標の構成は上記のとおりであるから、両者が外観において相紛らわしいものでないことはその構成に照らし明らかである。

しかしながらこれらを、称呼について検討するに、本件商標を構成する文字中、「白水」は上述のように指定商品中「焼酎」について広く認識されている商標であるから、識別力の強い部分である。これに対し「対酌」は親しく向かい合ってお酒を酌みかわすこと、すなわち、指定商品「日本酒」を親しく向かい合って酌みかわすことお酌する人をあらわす文字として、ありふれて使用されている観念であり(甲第4号証の2)、「白水」の部分に比べればはるかに識別力の弱い構成部分である。従って本件商標は、その片仮名部分に従って「ハクスイタイシャク」と称呼されるとともに、その称呼が長いことも影響し、「タイシャク」の部分を略して識別力の強い部分により「ハクスイ」とも称呼されるのもであるとするのが取引の経験則に照らし相当である。従って本件商標からは、「ハクスイタイシャク」の称呼とともに、「ハクスイ」の称呼も生ずるから、「ハクスイ」の称呼が生ずることの明らかな引用商標とは称呼上相類似する商標である。

そうだとすれば、本件商標からはその称呼に対応し「白水」の観念も生ずるから、「白水」の観念が生ずることの明らかな引用商標とは観念においても相類似する商標である。

すなわち、本件商標は引用商標との関係において称呼、観念を共通にする相類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と相抵触するものであること上記において述べたとおりである。

よって、本件商標は引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する商標である。

故に本件商標は商標法第4条第1項第11号または同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とせらるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)被請求人は、本件商標が、引用商標の使用される商品との関係において出所の混同を生ずるおそれのある商標ではなく、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない理由として、

(ア)甲第7号証(「白水」焼酎の販売実績)については、印刷業者、取引先又は同業者、需要者、広告業者、放送業者、公的機関(税務署)等何れの証明も提出していないし、新聞等広告宣伝の内容や方法、回数等も不明であるから、信憑性がなく、証拠として採用できない等と述べている。

しかしながら、提出された証拠が信憑性があるか否か、証拠として採用すべきか否か等は、特許庁が当事者から内容等について意見を徴した上で職権により判断せらるべきものであり、職権主義の下においてはその採否について被請求人が云々すべき性格のものではない。甲第7号証は、ワインではわが国のトップを占める請求人の和酒事業部が、その責任において発表した販売実績であり、請求人が平成3年から平成7年までにその生産販売した「白水」の標章が表示されている、商品「むぎ焼酎」の販売数量及び販売金額を示すものとして真正のものである。

(イ)甲第8号証(乙類焼酎「白水」の平成8年〜10年販売実績)についても、信憑性がなく証拠として採用できない等と述べている。しかしその証拠価値については甲第7号証について述べたところと同様である。その内容は甲第7号証同様、もとより真正のものである。

なお商標法第4条第1項第15号に該当するか否かは、まず本件商標の出願時前の実績により判断せらるべきものであるが、出願時以降、本件商標の登録時までの数字が、その周知性を否定するような数字となっている場合には、本号該当の阻却要件となるのであるから、出願時以降の数字も、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとの主張を維持するためには必要な統計である。

(ウ)甲第12号証から甲第20号証まで、甲第32号証、甲第34号証、甲第36号証ないし甲第49号証等についても、使用年月日、使用期間、配布数量等が不明であるから採用し得ない旨述べている。しかしこれらを証拠として採用するか否か、どのように判断するかも特許庁の職権により判断せらるべきものであり、被請求人がその採否について云々すべき性格のものではない。

(エ)甲第31号証、甲第33号証、甲第35号証、甲第50号証〜甲第55号証の1ないし4についても採用し得ないとする。

被請求人は、これらの証拠は本件商標の登録出願時後に発行したものであるから、証拠価値がないとの前提でその見解を述べているが、甲第8号証について述べたとおり、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについては、その出願時以降登録時までの間において、引用商標「白水」の周知性が喪失するような販売状況となっていた場合には、本号該当の阻却要件となり得るものであるから、引き続き盛大に販売されていることを証明するために、これらの証拠はもとより必要であり、かつ、証拠価値を有するものである。

(オ)甲第56号証の1〜7の平成7年1月〜6月テレビコマーシャル放送のビデオ画面の写真についても、放送事実の証明広告業者の証明等が何等なされていないので、直ちにこれを認めることができない旨述べている。

請求人は追って請求人が放映・放送したテレビ局より、放映・放送の年月日、スポット放映時間等の証明書等を入手し提出する予定であるが、何れにしても請求人がその製造販売する商品焼酎に「白水」の商標を使用して、テレビで宣伝放映した事実は甲第56号証の1から7までの証拠により明らかに認められ得るところである。

(2)以上述べたとおり、被請求人自信がその証拠価値と証拠能力を認める甲第9号証から甲第11号証、これらを否定しない甲第6号証のみならず、被請求人が採用できないとし、認めることができないとする甲第7号証から甲第56号証までの証拠を総合勘案すれば、「白水」の文字よりなり、請求人がその生産販売にかかる商品焼酎について使用する商標は、請求人により平成3年から、当初は北九州地域において、平成7年ころよりは首都圏を中心とし、全国的に使用され今日に到っている。すなわち、「白水」の文字よりなり請求人により商品「焼酎」に使用されている商標は、本件商標の出願時である平成9年より2年以上前から商品焼酎について全国的に使用されている商標として周知著名となっており、かつ本件商標の登録時前のみならず、その登録後においても今日に到るまで引き続き焼酎に使用され周知著名の商標として全国的に使用されている。

従って、「白水」の文字に「対酌」の文字を結合してなる本件商標が、被請求人により商品「清酒」に使用され、市場に流通した場合においては、商品「清酒」の取引者需要者は、該商標が請求人又は請求人の関連会社により、焼酎「白水」の姉妹商品「清酒」に使用され販売されているのかの如くに、商品の出所について混同するおそれがあることは明らかである。よって、本件商標は被請求人の主張にもかかわらず、請求人の製造販売する商品焼酎「白水」と出所の混同の生ずることは明らかであり、よって著名商標「白水」との関係において商標法第4条第1項第15号に該当すること明らかな商標である。

(3)被請求人は、本件商標が引用商標との関係において商標法第4条第1項第11号に該当しない理由として、本件商標は引用商標と外観、観念が相違するのみならず、(ア)「白水」の文字は周知著名ではなく、かつ日常一般に親しまれてまた使用されているとはいい難いのに対し、「対酌」の文字は、「親しく向い合って酒を酌みかわす」を意味するものとして広く知られているから、「白水」が主で「対酌」が従であるとはいい難いこと、(イ)被請求人が平成9年から今日までに盛大に使用している「白水酌人」の意味と酷似する本件商標は、「最高の水質で仕上げられたお酒を親しく向い合って酌みかわす」のような、まとまった意味合いを把握することができること、(ウ)本件商標の称呼「ハクスイタイシャク」は格別冗長でなく、よどみなく、一連に称呼し得るものであること、(エ)「白水」の文字は焼酎について使用された結果周知になっているとは認められないこと、等の理由により、称呼上も相類似しない商標であると主張する。

しかしながら、(ア)については、「白水」が商品「焼酎」について周知著名な商標であり、識別力が強い部分であるのに対し、「対酌」は向かい合って酒を酌み交わすのような意味を容易に認識させる語であるから、酒類との関係では識別力が弱い部分であり、従って「ハクスイタイシャク」の称呼とともに「ハクスイ」の称呼も生ずること、(イ)については、被請求人の主張するような意味をも世人に認識させるとしても、それ以上に、焼酎について周知著名な「白水」なる商品、「焼酎」の姉妹品である「『白水』なる清酒を酌みかわす」のような意味をも強く世人に認識させるから、この面よりするも、本件商標から「ハクスイ」の称呼も生ずること、(ウ)については、一連にも称呼されることは否定し得ないとしても、それは、「白水」が著名であることよりして、「ハクスイ」のみの称呼も生ずることを否定するものではないこと、(エ)については、「白水」の文字が焼酎について使用された結果周知著名となっていることは、上述より明らかであること。

以上のように被請求人の挙げる理由は、いずれも本件商標が引用商標との関係において称呼上も類似ではないとする理由とはなり得ない。

従って本件商標は、引用商標の著名性をも勘案すれば、引用商標とは称呼上相類似する商標であることは明らかである。

(4)被請求人は請求人が提出した甲各号証の信憑性について云々しているが、これらについては何れも請求人がその責任において蒐集し、真正に作成されたものであって、信憑性のあるものであることはもとよりである。これらのうち請求人が焼酎「白水」の宣伝広告のため、取引者、需要者等に配布した印刷物の作成時期については、請求人の開発部が調査したところでは、甲第57号証のりストに示されるとおりである。これらのうちには本件商標登録出願後に作成され配布されたものもあるが、既に述べたとおり、これらも引用商標が本件商標の登録時まで引き続き周知著名性を維持しており、本件商標の登録を排除する効力を有することを証するためには必要のものであることはもとよりである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第21号証を提出している。

1 答弁の理由

(1)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない理由について

請求人が引用商標「白水」を商品「焼酎」について、平成3年10月より使用した結果、今日においては全国的に周知著名な商標となっていると主張して提出した証拠書類についてみると、請求人の提出した甲第7号証(本格焼酎「白水」販売実績)は、請求人の和酒事業部が作成した資料(一覧表)であるが、これらの事実を裏付ける印刷業者の証明、取引先又は代理店の証明、同業組合又は同業者の証明、需要者の証明、広告業者の証明、放送業者の証明、公的機関(税務署)の証明等を何ら提出していないので、直ちにこれらの事実を認めることはできない。

即ち、(ア)新発売日 1991年(平成3年)10月16日より〔対外発表9月25日より〕(イ)発売地域 九州地域より順次全国〔首都圏1992年より〕と記載されているが、印刷業者、取引者、需要者、同業者等の証明書もなく、広告業者による広告宣伝の方法、回数及び内容の証明もなく不明であり、上記書面の内容が事実であるとする具体的な証拠がない。(ウ)販売実績(95年度)平成7年の販売数量、販売金額についても、この事実を証明する書類もなく、販売数量について税務署の課税移出数量の証明も提出されていないので信憑性がない。(エ)広告関係 実施地域、広告媒体について広告業者、放送業者(スポットCM)、印刷業者の証明書も何ら提出されていない。また、95年広告費約1億円と記載し、乙類平成7年1月〜6月出稿案、メルシャン(株)熊本支社の書類を添付しているが、新聞の広告宣伝の内容が全く不明であり、ラジオ、テレビ等の広告宣伝の方法、回数及び内容等も全く不明であるから、証拠として採用することができない。

甲第8号証(乙類焼酌「白水」の販売実績)についてみると、先ず、引用商標「白水」が商品「焼酎」に使用した結果、取引者及び需要者間に周知著名な商標となっているとして、商標法第4条第1項第15号の規定を適用する判断時期は、本件商標の登録出願時平成9年2月10日である。

したがって、この販売実績表に記載されている平成9年、平成10年については、本件商標の登録出願日以降のものであるから、これを採用することはできない。

また、平成8年の販売実績(販売数量、販売金額)についても、甲第7号証と同様に請求人が作成した資料であって、これらの事実を裏付ける何らの証左の提出もないものであるから、これらの事実を認めることはできない。

次に、甲第12号証(九州自動車道八代インターチェンジ出口付近広告写真)、甲第13号証(熊本市内酒販店広告写真)及び甲第14号証(JR八代駅プラットフォーム広告写真)については、いずれも使用年月日、使用期間が不明であるから採用することができない。甲第15号証(酒サミット江津本店、県庁東門店チラシ写)、甲第16号証(白水リーフレット業務用斡旋品のご案内)は、いずれも使用年月日、使用期間、配布数量が不明であるから採用することができない。甲第17号証(白水リーフレット店頭陳列会申込書)は、使用期間、配布数量が不明である。

甲第18号証ないし甲第21号証(白水リーフレット)及び甲第22号証ないし甲第24号証(白水ポス夕一写、卓上用広告物写等)は、いずれも使用年月日、使用期間、配布数量、使用地域が不明であるから採用することができない。甲第25号証(白水ポスター大写真)は、使用期間、配布数量、使用地域が不明であるから採用することができない。甲第26号証ないし甲第30号証、甲第32号証、甲第34号証、甲第36号証ないし甲第49号証(サントップスチラシ写真、白水包装用箱写、白水リーフレット、スタンド)は、使用年月日、使用期間、配布数量、使用地域等が不明であるから採用することができない。

甲第31号証、甲第33号証、甲第35号証(白水リーフレット等)、甲第50号証(西日本新聞)、甲第51号証(熊本日日新聞)、甲第52号証の1ないし5(焼酎大銘鑑)、甲第53号証の1ないし3(週刊朝日)、甲第54号証の1ないし3(週刊朝日)及び甲第55号証の1ないし4(財界九州)については、本件商標の登録出願日以降の発行のものであるから採用することができない。

甲第56号証の1〜7(平成7年1月〜6月、熊本放送、テレビ熊本、熊本県民テレビ、熊本朝日放送、大分放送、テレビ大分、大分朝日放送等におけるコマーシャル放送のビデオの主要画面の写真)を提出しているが、各テレビ局が甲第56号証の1〜7のテレビスポットを広告放送した事実(放送年月日、放送番組名、毎週何曜日、スポット放映秒数等)の証明及び広告業者の証明が何らなされていないので、直ちにこれを認めることはできない。

また、請求人は熊本放送、ラジオ熊本、熊本朝日放送...テレビ、ラジオ等を通じ、毎年1億円を越える広告費をかけて宣伝広告を続けて来たと主張しているが、主張するのみでこれを立証する証拠を何ら提出していないので認められない。また、引用商標を使用する商品「焼酎」の販路を、首都圏を中心とし全国的規模に拡充し、その宣伝の広告の規模や範囲も全国にわたったと主張しているが、主張するのみでこれを立証する証拠を何ら提出していないので認められない。さらに、請求人は全国1万件の卸、12万〜13万の小売店を通じ、別添証拠に示されるような各種リーフレットを需要者層に頒布し、その広告宣伝に努めたと主張しているが、卸売業者名、小売店名、配布年月日、配布数量、配布地域が全く不明でありこれを認めることができない。

以上請求人の主張及び証拠書類を個別に判断すれば上記のとおりであり、これを総合判断するも甲第9号証の1ないし3、甲第10号証の1ないし3、甲第11号証の証拠のみをもって、引用商標を商品「焼酎」に使用した結果、本件商標の登録出願時において、取引者及び需要者間に広く認識されるに至っている周知著名な商標と認めることはできない。

してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、該商品が請求人もしくは請求人と何らかの関係を有するものの業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものとは認められない。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。

(2)次に、本件商標の採択の理由及び取引の実情について陳述するに、被請求人の創業ははっきりしないが江戸時代の前半といわれている。被請求人の製造販売する清酒「蜂の白梅」は「越の寒梅」、「雪中梅」とともに越の三梅のひとつとして最近とみに注目されている銘柄である(乙第3号証日本の酒、乙第4号証日本酒銘鑑、乙第5号証日本酒全蔵元全銘柄)。そして、本件商標「白水対酌」の由来は、商標「白水酌人」の由来と同様、「白水」とは酒の最高の水質の事。「対酌」とは親しくむかい合って酒を酌み交わすこと。つまり最高の水質で仕上げられたお酒を親しくむかい合って酌みかわして人とのふれあいを大切にして楽しい一時が過ごせる旨いお酒になってほしいと考えて命名致した。

新潟・蒲原平野の弥彦・角田山系の天然水を汲み、四季を通じて酒造りの良い環境の風土、そして、昔ながら守り続けられた越後杜氏伝統の酒造技術より生れた新潟清酒が「白水酌人(はくすいしゃくびと)」であるが(乙第6号証パンフレット)、本件商標「白水対酌」も同じである。

しかして、被請求人は商標「白水酌人」「ハクスイシャクビト」を平成9年2月頃(商標登録出願以降)より商品「清酒」について今日まで使用し続けているものであり、盛大な宣伝と使用の実績により、現在では直ちに被請求人の製造販売に係る商品であることを認識し得るほどに、取引者、需要者間に周知著名な商標となっているものである。そして、その間請求人の引用商標とは取引上出所の混同を生じた事実は全くない。以下ラベル(乙第6号証ないし乙第8号証)等を提出する。

そこで、被請求人は前記のとおり「白水酌人」(清酒)が大好評を得ているので、本件商標「白水対酌」を近日中に清酒の姉妹品として発表する予定である。

(3)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しない理由について

本件商標と引用商標とを比較するに、本件商標は前記の構成よりなるものであるところ、前半の「白水」「ハクスイ」の文字と後半の「対酌」「タイシャク」の文字とは、同書、同大、同間隔で一連に書してなるばかりでなく、それぞれ漢字2字で同数をもって構成され、片仮名文字も前半4文字と後半5文字でほぼ均衡がとれているものであるから、外観上主従・軽重の関係なく一体的に構成されているものであり、これを観念上よりみれば、前半の「白水」の文字は、(ア)水の清らかな川の形容、(イ)水面が白く光って見える川(乙第9号証旺文社漢和辞典第694頁)。(ア)澄んだ清らかな川の流れ、(イ)心が潔白であることのたとえ(甲第3号証の2学研漢和大辞典第876頁)を意味すると記載されている。しかし、他の広辞苑(乙第10号証第1919頁)、大辞林(乙第11号証第1929頁)、三省堂国語辞典(乙第12号証第870頁)、角川最新漢和辞典(乙第13号証第633頁)等には掲載されていない。そうとすれば、「白水」の文字の意味は日常一般に親しまれ使用されているとは言い得ないものと認められる。むしろ後半の「対酌」の文字が、「親しくむかい合って酒を酌みかわす」(乙第14号証広辞苑第1445頁)を意味するものとして広く知られているものと認められるので、「白水」の文字部分が主で「対酌」の文字部分が従であるとは言い得ない。したがって、両者は主従・軽重の差があるということはできない。

しかして、本件商標を構成する「白水」及び「対酌」の文字について辞書に徴すれば上記の意味に解されるものであるが、被請求人は前記で述べたとおり、商標「白水酌人」を商品「清酒」について平成9年2月頃から今日に至るまで盛大に使用し続けているものであり、現在では取引者、需要者間に広く認識されるに至っている取引の実情よりすれば、「白水酌人」の意味と酷似する本件商標に接する取引者、需要者は、全体として「最高の水質で仕上げられたお酒を親しくむかい合って酌みかわす」の如き上品で風流な一つの意味合を把握することができるものと認められる。

また、これより生ずると認められる「ハクスイタイシャク」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであり、さらに、請求人が使用する「白水」の文字が商品「焼酎」について使用した結果、周知著名な商標とは認められないことは前記において述べたとおりである。他に構成中の「白水」の文字部分のみが、独立して認識されるとみるべき特段の事情は見出せないところである。

そうとすれば、本件商標はその構成文字に相応して「ハクスイタイシャク」の称呼のみを生ずるものと認められる。

他方、引用商標は「白水」の文字を書してなるものであるから、「ハクスイ」(水の清らかな川又は澄んだ清らかな川の流れ)等の称呼、観念を生ずるものと認められる。

してみれば、本件商標と引用商標とはその構成音数に顕著な差異を有するものであるから、それぞれ一連に称呼するも聴感明らかに相違し称呼上別異の商標と認められる。また、観念上も前記のとおり意味合いを全く異にするものであるから相紛れるおそれはないものと認められる。さらに、両商標は前記の構成よりみて外観においても相紛れるおそれはないこと明らかである。

したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、観念及び外観のいずれの点においても別異であるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しないものと認められる。

2 弁駁に対する答弁

(1)被請求人は、答弁書において、請求人が提出した証拠書類甲第6号証ないし甲第56号証のうち、甲第9号証ないし甲第11号証についてその成立を認め、その他の甲各号証については成立を否認したが、その後、弁駁書においても、否認した甲各号証の裏付けとなる証拠の提出がないのでこれを認めることはできない。なお、甲第6号証については、本件商標の登録出願日以降のものと判明したのでその成立は認められない。また、甲第57号証の請求人の開発部が調査した印刷物作成時期についても、その事実を裏付ける証拠の提出がないので認めることはできない。

(2)商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの判断時期は、次に述べる理由及び学説のとおり、本件商標の登録出願時、平成9年2月10日であること明らかであるから、請求人のこの点に関する主張は独自の見解を述べるにすぎないものといわざるを得ない。

しかして、商標法第4条第3項には「第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。」と規定されている。また、工業所有権法逐条解説(乙第20号証)の商標法第4条第3項の解説には、「3項は、出願に係る商標が1項各号に掲げる商標に該当するかどうかの判断の時点は査定時であることを前提にして、特に1項8号、10号、15号、17号、19号についてだけは査定時にこれらの規定に該当していても、商標登録出願時にこれらの規定に該当していなければよいという趣旨を表わしている。上記各号についてこのような救済規定を設けたのは、これら各号の場合には商標登録出願時に該当しないのに出願後にこれらの規定に該当するようになったものまで不登録にするのは酷に失するという理由による。」と記載されている。その他の学説として乙第21号証の法律学説判例総覧「工業所有権法」中央大学出版部昭和44年7月20日発行第914頁ないし第916頁がある。

以上のとおり、商標法第4条第1項第15号に該当するかどうかの判断の時点は商標登録出願時、すなわち本件商標については平成9年2月10日であること明らかである。したがって、本件商標の登録出願時以降の発行のものについては、引用商標が本件商標の登録出願時において周知著名な商標となっている証拠として採用することはできない。

(3)請求人は、甲第7号証及び甲第8号証は請求人の和酒事業部がその責任において発表した販売実績であり、甲第7号証は請求人が平成3年から平成7年までにその生産販売した「白水」の標章が表示されている、商品「むぎ焼酎」の販売数量及び販売金額を示すものとして真正のものであると主張しているが、主張するのみでその内容が事実であるとする具体的な立証が何ら提出されていないので信憑性がなく、これを認めることはできない。また、請求人は平成3年から平成7年までにその生産販売した...販売数量及び販売金額を示すものである旨述べているが、甲第7号証に表示されているものは「販売実績(95年度)平成7年」の販売数量と販売金額のみである。さらに、販売数量について甲第7号証はKLを単位としているのに対し、甲第8号証はケースを単位として計算しているのでその数量が明確でない。さらにまた、甲第7号証及び甲第8号証の販売数量、販売金額は、その内容が銘柄「白水」のみの数量である旨の立証(例えば、税務署長の証明書)が何らなされていないので信憑性がない。請求人のメルシャン八代工場(甲第10号証の2)では、銘柄「白水」以外の焼酎も生産されているところであり、焼酎の総生産量とも推認される。

ところで、酒類を製造しようとする者は、酒類の種類別に、製造場ごとに、所轄税務署長の免許を受けなければならない。そして、酒類製造者は、その製造場ごとに毎月分の酒類の製成及び移出数量、毎月末における酒類の所持数量等を翌月末までに所轄税務署長に申告しなければならない。また、酒類に付するラベル(胴貼り、肩貼り)についても届出をすると聞き及んでいる。そうとすれば、所轄税務署長は酒類の移出数量、移出した年月日、ラベル(商標)について、申告によって明確に把握しているものと認められる。しかして、当該年度における酒類の移出数量と酒類の移出に使用したラベル(商標)等についての証明は、所轄税務署長に申請して、この証明書をもって立証することが一般に行われており通例となっている。

第5 当審の判断

請求人の提出した甲第9号証及び同第10号証(情報誌「Home.Home」(1996年10月号及び11月号)、甲第17号証(1996年11月の注文書付きチラシ)、甲第25号証(1996年「天草メモリアルイヤー’96」の広告)等によれば、請求人は、本件商標の登録出願前より現在まで、筆書きした「白水」の文字よりなる商標を商品「焼酎」に使用してきた事実を認めることができる。

また、甲第17号証及び同第20号証によれば、上記「白水」の商標が付された焼酎は、平成7年度、平成8年度に熊本国税局酒類鑑評会で「優等賞」を受賞し、1995年1996年度酒類鑑評会では、2年連続優等賞を受賞している事実が認められる。

さらに、請求人は、「白水」販売額が平成8年度実績で約13億円(甲第8号証)であるとも述べている。

そして、請求人が提出している甲各号証を総合勘案すれば、「白水」なる商標は、本件商標の登録出願時である平成9年2月10日時には、請求人の「焼酎」に係る商標として、需要者間に周知・著名であったものと認められ、これは現在も継続しているものというのが相当である。

ところで、本件商標は、別記に示すとおり「白水対酌」の文字と「ハクスイタイシャク」の文字よりなるものであるところ、構成中の「白水」の文字は「澄んだ清らかな川の流れ」を、また、「対酌」の文字は「親しく向かい合って酒を酌みかわすこと」をそれぞれ意味するものであるとしても、これら両語は親しまれ広く知られている語とは言えないばかりでなく、これら両語を一連に書してなる本件商標よりは、被請求人が主張するように、取引者・需要者が容易に「最高の水質で仕上げられたお酒を親しくむかい合って酌みかわす」の如き意味合いを看取するものとも言い得ないものである。

してみれば、請求人が焼酎に使用する商標として著名な「白水」の文字を構成中の一部に有してなる本件商標を、酒類として共通するその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、該商品が請求人若しくは同人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認められる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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