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Trademark Appeal Case

「パッチ」の普通名称性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第30524号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

商標法第50条の規定により、登録第2232361号商標の指定商品中「薬剤」についてはその登録は、取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

I 本件商標

本件登録第2232361号商標(以下「本件商標」という。)は、「パッチ」の片仮名文字を横書きしてなり、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品、ただし、のり及び接着剤を除く」を指定商品として、昭和62年12月21日登録出願、平成2年5月31日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

II 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。

1.本件商標は、その指定商品中「薬剤」に関して継続して3年以上日本国内において使用されていないから、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。

なお、本件商標の指定商品中「絆創膏」については、ニチバン株式会社に使用許諾がなされているが、「薬剤」について使用されていないことに変わりはない。

2.弁駁に対する答弁

(1)商標権者は、本件商標を「外皮用薬剤(虫さされ・かゆみ止め用貼付剤)」(以下「使用商品」という。)に使用しているとして、乙第3号証、乙第4号証を提出している。

被請求人は、使用商品の包装箱表面の中央部左方に位置する赤色にて縁取りされた黄色の略半円形部分の中、使用商品の包装中袋表面の中央部左方に位置する緑色にて縁取りされた銀色の略半円形部分の中、及び使用商品の台紙裏面のほぼ全面に散在する青色にて縁取りされた半透明の略半円形部分の中にある、2段書きされた「貼る」と「パッチ」のうち、後者の表示が本件商標である旨主張する。

しかし、上記態様で示された「パッチ」の表示は使用商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示した標章であり、自他商品識別標識としての「商標」ではない。

英単語の「PATCH」には「傷をおおう布きれ、傷あて」等の意味があり(甲第2号証)、アレルギー疾患患者の皮膚反応テストのことを「パッチテスト」(貼布試験)と呼ぶ(甲第3号証)ことは一般日本人の間でよく知られている。「パッチ」の語は、甲第2号証、同第3号証以外にも多くの辞書・辞典に掲載されている単語であり、傷や患部に当てる布片、特に薬剤を浸した布片を意味する普通名称である。使用商品は、写真から判断する限り、まさしくそのような商品である。

上記使用態様では「貼る」と「パッチ」を2段書きしているが、「傷や患部(虫に刺されたところ、かゆいところ)」に「貼る(ための)パッチ」であることが明白であり、商標権者(通常使用権者)自身、「パッチ」が普通名称であると意識していたに違いない。

(2)商標権者が上記態様で使用されている「パッチ」をあくまで商標の使用であると主張するなら、次の資料を提出してもらいたい。

▲1▼「ヒドランパッチ」ではなく、「パッチ」という商標により取引きされたという資料。通常使用権者の証明書(乙第3号証)では不十分であり、例えば、納品伝票、請求書等のコピーを若干部提出してもらいたい。

▲2▼「パッチ」という商標を付した商品に対する厚生省の製造(輸入)承認(許可)のコピー。

その許可書には商標も記載されているはずである。もし、許可されていない商標を使用しているとなれば、法律違反をしていることになる。

III 被請求人の主張

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。

1.本件商標は、平成6年4月から現在に到るまで継続して日本国内において、本件審判請求に係る指定商品「薬剤」に使用されている。

(1)被請求人は、本件商標について、帝国製薬株式会社(香川県大川郡大内町三本松567番地在、以下「帝国製薬」という。)に使用の許諾をしている(乙第2号証)。

通常使用権者たる帝国製薬は、本件商標を使用した商品「外皮用薬剤」を平成6年4月に上市し、上市以来、現在に到るまで継続して日本国内の薬局・薬店を対象に出荷しており、当該商品は本件審判の請求の登録がなされた平成10年6月17日前3年以内は勿論、現時点においても、薬局・薬店の店頭で販売されている。

(2)上記(1)の記載事実は、平成10年9月9日付帝国製薬作成の証明書(乙第3号証)のとおりであり、本件商標が表示された使用商品は、該証明書に添付した写真(写し)のとおりである。

なお、上記証明書添付の写真(写し)は、帝国製薬から被請求人に提供された使用商品の実物を撮影した写真(乙第4号証)のカラーコピーである。

(3)使用商標について

乙第3号証添付の写真(写し)及び乙第4号証の各写真A〜Dに示したとおり、使用商品の包装箱表面の中央部左方に位置する赤色にて縁取りされた黄色の略半円形部分の中には、「貼る」及び「パッチ」の各文字が赤色にて2段に表示されており、(乙第4号証:写真A及びB)、使用商品の包装中袋表面の中央部左方に位置する緑色にて縁取りされた銀色の略半円形部分の中には、「貼る」及び「パッチ」の各文字が緑色にて2段に表示されており(乙第4号証:写真C)、使用商品の台紙裏面のほぼ全面に散在する青色にて縁取りされた半透明白色の各略円形部分の中には、それぞれ「貼る」及び「パッチ」の各文字が青色にて2段に表示されている(乙第4号証:写真C)。

そして、帝国製薬が前記各形態で文字「パッチ」を使用商品の包装に表示して販売されている行為は、正に、商標法第2条に規定されている「・・商品の包装に標章を付したものを譲渡・・する行為・・」である。

(4)前記各形態で使用商品の包装に表示されている文字「パッチ」、換言すれば、前記各形態にて本件商品の包装に付されている商標「パッチ」の構成と本件商標の構成とを対比すると、両構成は字体及び色彩においては相違するが、「パッチ」の仮名文字を左横書きしている点で一致している。

したがって、前記各形態にて使用商品の包装に付されている商標「パッチ」が本件商標と社会通念上同一と認められる商標であることは明白である。

(5)以上述べたとおり、通常使用権者である帝国製薬は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、その指定商品中、取消請求に係る「薬剤」の「外皮用薬剤(虫さされ・かゆみ止め用貼付剤)」について、本件審判の登録前3年以内に日本国内において、使用していた事実を立証し、本件商標には、商標法第50条第2項の規定により、商標登録取消しの理由が存在しないことを明らかにする。

2.弁駁に対する第2答弁

(1)請求人は、乙第3号証及び乙第4号証の各写真に示した「パッチ」の表示が、使用商品の普通名称を普通に用いる方法で表示した標章であって自他商品識別標識としての商標でないから、本件商標が使用されていない旨主張し、甲第2号証及び甲第3号証を提出している。

しかし、わが国において「パッチ」なる語が「傷や患部に当てる布片」や「薬剤を浸した布片」を意味する普通名称として用いられておらず、事実、わが国の代表的な国語大辞典である株式会社小学館(1990年1月20日第1版第3刷発行)「国語大辞典(新装版)」(乙第5号証)、同じく代表的な外来語辞典である株式会社三省堂(1992年9月10日第18刷)発行「コンサイス外来語辞典第4版」(乙第6号証)には、請求人主張の「傷や患部に当てる布片」や「薬剤を浸した布片」なる語意は収録されていない。

また、被請求人は、英語「patch」の有する語意の一つに「傷をおおう布切れ,傷あて」があることは認めるが、「patch」なる語は、甲第2号証に収録されているとおり、数多くの語意を有しており、わが国において外来語として親しまれている語意は、乙第6号証に収録されている「つぎを当てるための布.つぎはぎ」であるから、外来語「パッチ」と英語「patch」とを混同して「パッチ」なる語の自他商品識別力を論じることは誤っているといわざるを得ない。

さらに、被請求人は、「パッチテスト」(貼布試験)なる語が「アレルギー疾患患者の皮膚反応テスト」を指称する語(甲第3号証)としてわが国でよく知られていることは認めるが、「パッチ」なる語と「パッチテスト」なる語とを一義的に扱えないことは、両語のもつ語意からして明白であるから、「パッチテスト」なる語をもって「パッチ」なる語の自他商品識別力を論じることも誤っているといわざるを得ない。

(2)わが国において「パッチ」なる語は「ももひき」または「つぎを当てるための布.つぎはぎ」なる語意(乙第5号証及び乙第6号証)をもって親しまれており、かつ、「パッチ」なる語は「傷や患部に当てる布片」や「薬剤を浸した布片」を意味する普通名称として用いられていないから、「パッチ」が使用商品について使用される場合に自他商品識別標識としての充分な機能を発揮することは明らかである。

被請求人は、乙第3号証及び乙第4号証により、本件商標と社会通念上同一と認められる「パッチ」を、使用商品について自他商品識別標識としての充分な機能を発揮する態様で使用している事実を立証している。そして、乙第3号証及び乙第4号証の各写真に示すとおり、使用商品の包装には、販売名としての商標「ヒドランパッチ」とその愛称である商標「パッチ」とが付されている。

したがって、通常使用権者では、使用商品に係る納品伝票、請求書に販売名(ヒドランパッチ)を記載しており、当然のことではあるが、医薬品製造承認も該販売名をもって受けている(承認番号:05AP第0611号・平成5年6月8日)。

構成を異にする複数の商標が包装に付されている商品が数多く市場に流通している事実から明らかなとおり、販売名である商標の外に該商標と構成の異なる商標を併用することはごく一般的なことであるから、使用商品に係る納品伝票、請求書に愛称(パッチ)を記載1していないことや該愛称によって医薬品製造承認を受けていないことをもって、商標「パッチ」が使用商品に使用されていないとする請求人の主張は成立し得ない。

IV 当審の判断

1.乙第2号証によれば、被請求人は、本件商標に関し、平成6年4月1日に帝国製薬との間で、使用許諾契約を締結したことが認められる。

2.(1)使用に係る商標について

▲1▼被請求人が本件商標を使用商品について使用していた事実を立証する証拠として提出した乙第3号証に添付の写真の写し及び乙第4号証(乙第3号証に添付の写真の写しは、乙第4号証のコピーと認められ、実質的に同一のもの。)を徴するに、使用商品は、取消請求に係る「薬剤」の範疇に属する商品と認められるところ、使用商品の包装用外箱の表には、上段に大きく赤色で「ヒドランパッチ」の片仮名文字が書されており、該文字は看者の注意を極めて強く惹く態様で書されているものである。また、同じく、包装用外箱の裏には、「ヒドランパッチ」の片仮名文字が他の文字に比べ大きく、赤色で書されているばかりでなく、包装用外箱の側面にも、「ヒドランパッチ」の片仮名文字が他の文字に比べ大きく表示されている。また、包装用外箱の裏における「ヒドランパッチ」の片仮名文字の下の‘商品の説明’としての〔特徴〕欄には、「ヒドランパッチは、ペタンと貼るだけで・・」なる記載が認められる。

一方、「パッチ」の表示についてみるに、使用商品の包装用外箱の表に、極めて顕著に表示された「ヒドランパッチ」中の「ラ」の文字の下部に、黄色の略半円形内に小さく「貼る」「パッチ」の各文字を2段併記して表示してなるものであり、同じく、包装用外箱の裏には、‘商品の説明’としての〔用途・用法〕欄に「パッチをライナーからはがし、・・」なる記載が認められるところである。

上記「ヒドランパッチ」及び「パッチ」の表示方法からすると、使用商品に接するこの種商品の取引者、需要者は、商品の包装用箱に顕著に書され、全体として特定の意味合いを想起させない「ヒドランパッチ」の文字部分に強く印象づけられ、該文字部分を自他商品の識別標識たる商標として理解するとみるのが相当である。

これに対して、「パッチ」の表示は、「貼る」の語と一体的に書されている状況、〔用途・用法〕欄における記載状況からすると、これに接する取引者、需要者は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る商標の使用とは認識し得ない態様のものといわざるを得ない。

▲2▼なるほど、乙第5号証及び乙第6号証によれば、「パッチ」の片仮名文字からは、「ももひき、つぎはぎ」などの意味が見出せるが、わが国の医薬品業界においては、例えば、1992年7月11日付日経流通新聞には、虫に刺された部分をテープやシールで覆う「パッチ型」の「外皮用薬剤(虫さされ・かゆみ止め用貼付剤)」について「虫さされ用『パッチ』」に関する記事(他にも同様の新聞記事として、1993年8月21日付日経流通新聞、1994年4月5日付読売新聞朝刊など)、また、「パッチフィルムを使用した、貼るタイプの口内炎治療薬」(1994年5月10日付日経流通新聞)、更年期障害治療薬で「皮膚に張り付けるタイプのパッチ剤」(1994年12月27日付日経産業新聞)、「ニコチン・パッチ(禁煙補助ばんそうこう)」(1993年3月26日付日本経済新聞夕刊)等に関する記事が掲載され、本件審判の請求登録日の3年前には既に、医薬品の取引者、需要者の間では、「パッチ」の語は、「薬を塗布したシール状(あるいはテープ状など)の貼付剤」なる意をもって、商品の品質を表示する語として認識されていたとみられるところも大いにあるといえる。

▲3▼上記2.(1)▲1▼▲2▼よりすれば、乙第3号証に添付の写真の写し及び乙第4号証に表示された「パッチ」は、登録商標としての

使用とは把握、認識され難いものといわざるを得ない。

(2)本件商標の使用時期について

乙第2号証によれば、通常使用権者は、平成6年4月1日より5年間、本件商標の使用を許諾されていたことが認められるが、乙第3号証に添付の写真の写し及び乙第4号証に表示された使用商品が実際に取り引きされたと認め得るに足りる証拠を何ら提出していないものである。

してみると、使用商品が本件審判の請求登録日の3年以内に使用されたものであると認めることはできない。

3.以上によれば、本件商標は、日本国内において継続して3年以上、取消請求に係る「薬剤」について、通常使用権者により使用されていなかったものと認めざるを得ず、かつ、使用されなかったことについて正当な理由があるものとは認められない。

したがって、本件商標は、その指定商品中「薬剤」について、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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