結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2000−35711(T2000−35711/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4042872号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成7年11月20日登録出願、別掲に示すとおり「ル・シエール」の片仮名文字及び「Le Ciel」の欧文字を上下二段に横書してなり、第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同9年8月15日に設定の登録がされているものである。
請求人が本件商標の登録を無効とすべきものとする理由に引用した登録第2591715号商標(以下、「引用商標」という。)は、平成3年12月17日登録出願、別掲に示すとおりの構成よりなり、旧第4類「せつけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、同5年10月29日に設定の登録がされているものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は引用商標と類似のものであって、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。したがって、本件商標の登録は、同法第46条の規定により無効とされるべきである。
(A)称呼について
本件商標は「ル・シエール」及び「Le Ciel」の文字よりなるから、これから「ルシエール」の称呼が生ずることは否定し得ない。
しかしながら、本件商標を構成する「Le Ciel」(ル・シエール)がその語義においてのみならず「ルシエール」とのみに読むべき語として、本件商標の指定商品の取引者、需要者間に一般に知られているものであることを認めるに足りる資料は、見出せない。
したがって、簡易迅速を旨とする取引の実際において、本件商標を自然で、かつ発音し易く称呼しようとした場合には、「シ」の母音(i)とこれに続く「エ」(e)が二重母音となり、「シエ」は自ずから比較的容易に「シェ」と転訛して発音される結果、本件商標は、「ルシェール」と称呼される場合も決して少なくないものとみるのが相当である(甲第3号証)。
してみれば、本件商標は、「ルシエール」の称呼の他、「ルシェール」の称呼も生ずるものというべきである。
一方、引用商標から「ルシェリ」の称呼が生ずることは明らかである。
そこで、「ルシェール」と「ルシェリ」の称呼の類否についてみると、両称呼は、前者の第3音に存する長音の有無及び末尾における「ル」と「リ」の差異を有しているものではある。
しかしながら、一般に長音は、常に明確に発音され聴取されるものとはいい難いといえるところ「ルシェール」の称呼における長音は、その聴取においても明確さを欠くとみられる中間音たる第3音に存するものであるから、これの存否は、両称呼の聴感に僅かな影響を及ぼすに止まるものとみるのが相当である。
また、「ル」と「リ」の音は、前者は子音「r」と母音「u」の、後者は、前者と同じ子音の「r」と母音「i」の結合した音節であるから、「ル」と「リ」における差異は、母音の「u」と「i」の差異のみといえるところ、この「u」と「i」は、共に他の母音にくらべ“きこえ”が弱いうえに、脱け落ちる場合が非常に多く、類似度の高いものとされている(甲第4号証及び同第5号証)。
加えて、この「ル」と「リ」の差異は、その称呼及び聴取の際にも明確さを欠くといわれる末尾に存するものである。
そうすると、両称呼間におけるこの「ル」と「リ」の差異も、これが両称呼全体に及ぼす影響は、極めて僅かなものというべきである。
したがって、本件商標と引用商標は、これらがそれぞれ全体として称呼されたときは、互いに明確には識別し難くその称呼において紛らわしいものというべきである。
(B)商品について
請求人は、引用商標を34品目にも及ぶ多様な化粧品群について、これらをいわば統括的に表示する標識として、現に盛大に使用している(甲第6号証)。
そして、甲第6号証は、本件商標の登録査定時以後(平成9年10月1日)に制作されたものではあるが、これを制作するのに要した期間及び本件商標の登録が平成9年8月15日であることを考慮すると、甲第6号証に掲載されている事実は、本件商標の登録査定時には既に存在していたと容易に推認できる。
しかして、本件商標の指定商品が、引用商標の指定商品に含まれるものであることは明らかであるから、本件商標を使用した商標権者の化粧品と引用商標を使用した申立人の化粧品が、同一市場に流通したときは、これらに接する取引者、需要者は、これらのいずれの化粧品も、同一の出所より出でたものとその出所を混同する場合も決して少なくないとみるのが相当である。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条の規定により無効とされるべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。
(1)答弁の理由の要旨
本件商標と引用商標とは、平成10年6月26日にされた商標登録異議の申立て(平成9年異議第90758号)についての決定の通り、称呼上類似するものではなく、非類似の商標である。
(A)本件商標から、「ルシェール」の称呼を生じるとする点について
本件商標は、「ルシエール」の称呼を生じ、「ル/シ/エー/ル」の4音(5拍)から構成され、第3音に存する母音の「エ」はアクセントを付けて、第2音に存する「シ」とは、独立強調して発音されるのが、通常自然な発音であり、簡易迅速を旨とする取引の実際においても、「シエ」が「シェ」と転訛して発音される可能性は、少ない。
(B)本件商標から生ずる「ルシエール」の称呼と引用商標より生ずる「ルシェリ」の称呼における長音の有無の差異と、語尾音における差異について
日本語の発音においては、「えー」の長音は明確に発音されず「えぃ」と発音される場合が確かに認められるが、「ルシエール」の称呼は外来語の称呼であり、外来語ではそのような現象はみられないとされているから、「ルシエール」の称呼における長音は明確に発音される(乙第3号証)。加えて、日本語は元来母音の長さの違いで語の意味を区別する言語の一つであることより、語尾音に伴って発音された長音でない限り、一連に称呼された語中にあって明確に発音される長音の存否が、語調、語感に及ぼす影響は大きい(乙第4号証)。
また、語尾音「ル」と「リ」の差異についても、甲第5号証における母音三角形は、あくまで類似度の比較を論じているに過ぎず、これが本件のごとく短い音構成よりなる両称呼全体に及ぼす影響が、特別に僅かなものというべき理由は見あたらない。
以上を総合すると、両称呼は、「エ」の発音が短母音か二重母音か、称呼中に長音が存するか否か及び語尾音において「ル」と「リ」の差異を有するものであり、これらの差異が短い音構成よりなる両称呼の全体に及ぼす影響は大きく、両称呼を一連に称呼した場合においても語調、語感を異にし聴き誤るおそれはない。
そして、請求人の主張するように本件商標から「ルシェール」の称呼が生じたとしても、他二点の差異が及ぼす影響の大きさに変わりはなく、両称呼は明確に識別されるから、本件商標は、引用商標とは非類似の商標といわざるを得ない。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものでなく、本件無効審判の請求は成り立たない。
本件商標は、前記したとおり、「ル・シエール」の片仮名文字と「Le Ciel」の欧文字よりなるところ、上段の片仮名文字は、下段の欧文字を含む本件商標の自然的称呼を表したものとみられることから、その構成文字に相応して「ルシエール」または「ルシェール」の称呼を生ずるとともに、本件商標及び引用商標の指定商品に係る化粧品等の業界においては、比較的多用され親しまれている外国語といえる仏語の知識をもって、これを定冠詞「Le」と比較的平易な仏語と認められる「Ciel」(空、気候)とを結合したものとして認識し把握されるものとみるのが相当である。そして、この場合「Le」の文字部分は、それ自体商品識別の機能はなく、「Ciel」の文字部分を要部とすべきものであるから、本件商標からは「シエール」又は「シェール」の称呼も生ずるものといえる。
一方、引用商標は、その構成別掲のとおりであって、「ルシェリ」及び「LECHERI(5文字目の「E」にアクサン記号「′」が付されている。)」の各文字よりなるところ、上段の片仮名文字は下段の欧文字の読みを振り仮名風に表示したものと無理なく認識し得るものであるから、その構成文字に相応して「ルシェリ」の称呼を生ずるとみるのが自然であり、かつ、該構成からは全体として直ちに明確な観念を生じ得ない造語と認識し把握されるとみるのが相当である。
そこで、本件商標より生ずる「ルシェール」の称呼と引用商標より生ずる「ルシェリ」の称呼とを比較するに、両者は、第2音「シェ」が長音を伴うか否か及び語尾において「ル」と「リ」の音の差異をそれぞれ有するものである。
しかして、前者は4音で構成されていて上記構成態様上の視覚印象から「ル」と「シェール」との間に息の段落を生じ易く全体として抑揚を伴って称呼されるのに対し、後者は「ルシェリ」と簡潔に一気に称呼し得る短い音構成であるから、両者は全体の語感印象を異にするものである。また、「ル」(ru)と「リ」(ri)の各音は、いずれも比較的響きの強い子音(r)と奥舌高母音(u)及び前舌高母音(i)がそれぞれ結合した音節であって語尾にあっても母音の違いが明確に聴取されるものである。してみれば、両者をそれぞれ一連に称呼しても、全体の音感、語調が相違し、彼此聞き誤るおそれはなく、互いに区別し得るものと判断するのが相当である。
次に、本件商標より生ずる「ルシエール」の称呼と引用商標より生ずる「ルシェリ」の称呼を比較すると、前者は5音、後者は3音と両者は構成音数を著しく異にし、さらに、語頭音「ル」以外の音の配列を悉く異にするものであるから、それぞれを一連に称呼したとしても、互いの音感、語調が異なり、彼此聞き誤るおそれはないというべきである。
そして、本件商標より生ずる「シエール」または「シェール」の称呼と引用商標より生ずる「ルシェリ」の称呼とを比較しても、両者は音の配列を全く異にする称呼上別異のものである。
また、本件商標は、前記意味合いの成語といえるのに対し、引用商標は造語であるから、両者は観念上紛れるおそれはなく、さらに、外観においても、互いに判然と区別し得るものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは称呼、観念及び外観のいずれよりみても互いに紛れるおそれのない非類似の商標であり、ほかにその指定商品との関係その他総合するに、なお両者はその出所について混同を生ずるおそれのない別異の商標というべきである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいえないから、同法第46条第1項により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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