結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35331号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
1.本件商標
本件登録第3312283号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙に示すとおりの構成よりなり、平成4年9月28日に登録出願、第41類「自動車に関する知識の教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授ビデオテープ映画の制作,映画の上映・制作又は配給放送番組の制作,小型自動車競走の企画・運営又は開催」を指定役務として、同9年5月23日に設定登録されたものである。
2.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至甲第18号証を提出した。
(1)本件商標は、商標法第4条第1項7号、同第15号同第19号に該当し、同法第46条第1項により無効にすべきものである。
(2)被請求人(商標権者)は、請求人との間で1990年(平成2年)、本件商標にかかる商標の使用許諾に関するライセンス契約を行い、その後、商標出願を平成4年に行った。しかし、このライセンス契約は、被請求人による契約違反により、1994年(平成6年)11月14日に解除された。したがって、被請求人は、この時点で、その出願にかかる商標を使用することができず、また日本において商標登録を受けることが許されないものであった。
(3)本件商標は、イタリア共和国の北部の都市、ブレシアを中心に過去数十年間にわたって行われてきた自動車レース「ミッレ・ミリア」のシンボルマークである。すなわち、本件商標は、右向きの矢印マーク内に「1000」と「MIGLIA」を2段書きしたものであるが、「MIGLIA」は英語の「MILE」(マイル)を意味し、全体としては「1000マイル」(約1、600km)を意味している。
なお、「1000」はイタリア語で「ミッレ」と発音されるので(甲第18号証)、「1000 MIGLIA」は「ミッレ・ミリア」と発音される。
この自動車レース「ミッレ・ミリア」の歴史は非常に古く、20世紀の初めに始り、現在も毎年ブレシアをスタートし、ローマを経由してブレシアに戻るルートで行われている。このレースは単に速さを競うものではなく、フェラーリなどのビンテージカーを使用する、極めて格調の高いレースである。自動車レースとして日本ではFIや、パリ・ダカールラリーが有名であるが、「ミッレ・ミリア」の歴史はそれらより古く、人気も劣らないくらいである。また、「ミッレ・ミリア」は現在ではイタリアのみならず、南米版「ミッレ・ミリア」、米国版「ミッレ・ミリア」、日本版「ミッレ・ミリア」などが開催されるに至っている(甲第5号証)。また、日本では、本場イタリアの「ミッレ・ミリア]がテレビ放送され、人気が高まっている(甲第10号証)。
(4)本件商標と同一の商標は、イタリアにおいてブレシア自動車クラブ(ACB)が所有しているが、同クラブは、自動車レース「ミッレ・ミリア」を開催・運営している主催者である。請求人は、同クラブからこの商標の使用を許諾され、かつ、サブライセンスを与える権能をも与えられている。請求人はかかる状況の基に被請求人に対し、1990年3月23日付けでサブライセンスを与えた(甲第1号証、甲第2号証)。
しかし、被請求人はサブライセンス契約に定められたロイヤリティーを請求人に支払わなかったので、請求人は、1994年11月14日、被請求人とのライセンス契約を解除した(甲第3号証、甲第4号証)。
したがって、被請求人は、この商標を使用することができないばかりか、日本において商標登録を受けることができないはずである。すなわち、登録査定された平成9年3月6日(甲第7号証)は、上記契約が解約された後であることから、査定時においては、被請求人は、本件商標の使用及び登録を受けることについて請求人から何等権原を与えられていない。
(5)かかる経緯と事実関係のもとで、被請求人が本件商標について登録を受けることは、請求人との信義に反し、法律上も許されないものである。また、イタリアにおいて権威のある自動車レースのシンボルマークを、イタリアにおける本来の権利者の意向に反して、信義に反した者に登録を認めることは、国際的な公序良俗、国際的信義に反するものである。
また、第17類の商品を指定商品とする本件商標と同一の商標に係る被請求人の出願が出願公告されたので(甲第7号証)、これに対し請求人が上記と同様の公序良俗違反を理由とする登録異議申立てを行ったところ、平成10年5月15日に、異議理由ありの決定(甲第8号証)と、拒絶査定(甲第9号証)がなされている。
以上の経緯から、本件商標は公序良俗に反して登録されたものである。また、被請求人は、請求人とのライセンス契約が解除されたことを審査官に通知すれば出願が拒絶されることを認識していたが、審査官に通知せずに登録を受けたものであり、この点からも公序良俗違反である。
このように本件商標は、商標法第4条第1項第7号に反して登録されたものである。
(6)また、本件商標は上述のように自動車レースの愛好家の間では世界的に認知され、日本でも日本版「ミッレ・ミリア」として、1992年(平成4年)からクラシックカーによる1000マイルの走行デモを伴うイベントが開催されており、そのシンボルマークとして、本件商標が使用されている。したがって、日本国内及び外国の自動車レースの愛好家や、関連業界の人々にとって、本件商標は極めて周知なものである(甲第10〜17号証)。
請求人との契約が解除された後において、被請求人への登録を認めることは、被請求人が請求人の意志に反して、日本において本件商標を使用することを容認することとなり、このような使用は商標法第4条第1項第19号にいう不正の目的をもって使用するものとなる。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に反して登録されたものである。
(7)さらに、本件商標が被請求人の権利として認められていると、被請求人がその業務にかかる役務ついて本件商標を使用したとき、需要者が、請求人或いは請求人が許諾した者の業務にかかる役務と混同することが予想される。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に反して登録されたものである。
3.被請求人の答弁
被請求人は、「本件の審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第19号に該当しない、詳細な理由は第2答弁書をもって陳述する旨述べているがその後相当の期間が経過した現在においても、何等詳細な理由を述べていない。
4.当審の判断
(1)自動車レース「ミッレミリア」について、職権によって、新聞記事を調査したところ、例えば次の記載が認められた。
▲1▼ 1991年6月22日付け日経流通新聞に「スクーデリアストラダーレ専務若林省吾氏−−シビアな視点で(発流行人)」をタイトルとする記事に、「この四月、〜世界に一台、あっても数台というマニアックな高級クラシックスポーツカー六十台が全国から集まり、列をなして長野県の八ケ岳高原を走った。(中略)一九五七年の事故をきっかけに中止になっていた一般公道を走るイタリアのクラシックカーの祭り『ミッレミリア』が七年前に復活。これが世界的に広がり、日本でも開催されるようになった。」との記載。
▲2▼ 1992年10月23日付け朝日新聞夕刊に「思いは画面の外へ(どきゅめんと)」をタイトルとする記事に、「『ミッレ・ミリア』とはイタリアのロードレース。今は、かつての名スポーツカーがイタリア国内1000マイル(ミッレ・ミリア)で競うラリーになっている。フジテレビは、3年前からこのレースを中継し、去年から、その名場面を集めた番組を週1回放送している。」との記載。
▲3▼1992年10月30日付け毎日新聞夕刊に「[ダッシュボード]ミッレミリアの風景−−マツダショールーム『M2サロン』」をタイトルとする記事に、「日本に初上陸して展示会や走行会が行われているイタリアのクラシックカーレース『ミッレミリア』の板画展が〜開かれる。」との記載。
▲4▼ 1997年10月18日付け毎日新聞夕刊に「クラシックカーで1600キロ走破−−『ラ・フェスタ・ミッレミリア』」をタイトルとする記事に、「『ラ・フェスタ・ミッレミリア』と銘打たれたクラシックカーのラリーが19日から5日間、日本で行われる。本場イタリアの伝統的ロードレース『ミッレミリア』が始まって今年で70年。」との記載。
▲5▼ 1998年10月19日付け毎日新聞朝刊に「世界の名車、優雅な走り競う−−98ラ・フェスタ・ミッレミリア、東京でスタート」をタイトルとする記事に、「今世紀の世界の名車たちが、〜1000マイル(1600キロ)を走る’98ラ・フェスタ・ミッレミリアが18日午後、〜スタートした。昨年に続いて2回目の今年は、(中略)67台が、次々とロングツーリングに出発した。」との記載。
▲6▼次の朝日新聞のテレビ番組欄に「ミッレミリア」に関する下記番組名の記載。
1)1990年6月3日付けのフジテレビ欄に、「(4日午前)1.15夢のミッレミリア!」
2)1991年6月9日付けのフジテレビ欄に、「(10日午前)1.00ミッレミリア’91」
3)1992年6月28日付けのフジテレビ欄に、「(29日午前)1.00ミッレミリア’92」
4)1993年7月11日付けのフジテレビ欄に、「(12日午前)2.05ミッレ・ミリア’93」
5)1994年7月17日付けのフジテレビ欄に、「(18日午前)1.20夢のミッレ・ミリア’94」
6)1995年6月18日付けのフジテレビ欄に、「(19日午前)0.55 ミッレミリア’95」
7)1998年7月4日付けのテレビ朝日欄に、「1.55堺正章夫妻の初挑戦!!夢のイタリアクラシックカーレース」
また、番組紹介欄には、「イタリアで行われたクラシックカーレース『ミッレミリア』。」と、同番組の紹介記事が掲載されている。
(2)甲第5号証及び上述の(1)▲3▼より、1992年10月23日から同年11月3日まで、クラシックカーの走行会や展示等大規模な催しが、「La festaMille Miglia(ラ・フェスタ ミッレ・ミリア)」と称して、東京等で開催されたことが認められる。
また、この催しは、本件出願の1月弱後に開催されているが、通常、このような催しを開催する場合、主催者等が数ヶ月以上前から周知活動を行うことから、この催しについても、本件出願前から各種媒体を通じて周知がなされたものとみるのが相当である。
そして、その催しのパンフレット(甲第5号証)には、別紙に示したとおり右向きの矢印内に白抜きで「1000」の文字と「MIGLIA」の文字を2段に書し、その右側に「>」を配してなる標章(以下「引用標章」という。)が多数表示され、また、「ミッレ・ミリアの名車達」をタイトルとするビデオテープが発売されていることが記載されている。
(3)甲第5号証、甲第11号証〜甲第18号証及び上述の(1)▲2▼、▲4▼より、「ミッレミリア」は、イタリアで1927年から開催されている自動車レースの名称であること、及び、引用標章は、同国では遅くとも1991年から、同レースのシンボルマークとして使用され、「ミッレミリア」と称されることが認められる。
(4)甲第10号証、上述の(1)▲1▼、▲6▼より、「ミッレミリア」は、我が国において、本件商標の出願前より関心が持たれ、テレビ放映され、或いは「ミッレミリア」と同様のクラシックカーレースが開催されていると認められる。
(5)これらに加えて、我が国においては、外国の自動車レースに強い関心を持つ者が少なくなく、雑誌等で各種レースが紹介されていること、本件商標の出願時においても海外旅行者の増加、多種多様な情報媒体の発展等に伴い、我が国の消費者が海外の事情を容易に取得できる状況にあったこと、さらには被請求人が答弁の具体的な理由を何等述べていないことを併せみれば、引用標章は、本件商標の出願前より、イタリア国内はもちろん、我が国においては少なくとも自動車又は自動車レースに関連する業界、及びそれらに関心を有する者の間に、イタリア国のクラシックカーレース「ミッレミリア」のシンボルマークとして、広く認識されていたものと判断して差し支えないものと認める。
そして、本件商標出願日以降も、この認定を覆すに足る事実を発見できないから、上述の認識は、本件商標の登録査定時においても継続していたというべきである。
(6)そうとすれば、本件商標は、別紙に示したとおり引用標章と同一と認められる構成よりなるものであり、かつ、その指定役務が自動車或いは自動車レースに係るもの又はそれを含むものであるから、被請求人が本件商標をその指定役務について使用するときは、これに接する取引者、需要者はその役務が請求人若しくは「ミッレミリア」と何等かの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように誤解し、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと言わなければならない。
なお、被請求人と請求人との間で結ばれたライセンス契約(甲第1号証及び甲第2号証)には、衣類、アクセサリー、装身具類、宝石等の商品について、「1000Miglia」マークの使用権を譲渡した旨が記載されているが、本件商標の指定役務については、何等の記載がなく、かつ、その契約も本件商標の登録査定前に中途終了している(甲第3号証及び甲第4号証)。
(5)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、他の無効理由について判断するまでもなく、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
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