Trademark Appeal Case
繊維断面図の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2000−90878(T2000−90878/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4386246号商標(以下「本件商標」という。)は、別記に表示したとおりの構成よりなり、平成10年10月15日登録出願、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,愛玩動物用被服類」、第23類「糸」、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,ふきん,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳,シャワーカーテン,紅白幕,ビリヤードクロス,のぼり及び旗(紙製のものを除く。)」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品とし、平成12年5月26日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
本件商標は、商品の品質を表示するものであって、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものであり、かつ、商品の品質の誤認を生ずずるおそれがある。したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同第6号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものであるあるから、その登録は取り消されるべきである。
3 本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第第16号に該当するものとして商標権者に対して通知した取消理由の要旨は、つぎのとおりである。
<取消理由>
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出にかかる甲号各証によれば、各種の素材繊維の断面を電子顕微鏡で拡大した写真や図形は、商品カタログ、ラベル、リーフレット等の広告宣伝物や繊維に関する技術文献中に、その商品の構造、機能等の説明のために普通に使用されている事実を認めることができる。
しかして、本件商標は、甲第3号証の2(グッドデザイン1998ー1999)によれば、ナイロン多軸交差中空構造糸を電子顕微鏡等によって拡大した写真と認められるものであり、これを標章としてみた場合においては、各社によって使用されている電子顕微鏡による繊維の拡大写真の一類型と理解・認識されるものである。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品中の「ナイロン多軸交差中空構造糸及び該糸を原材料に用いた商品」に使用しても、これに接する取引者・需要者は、単に商品の構造、原材料、品質を表示するものと理解するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を有するものとは認識し得ないものであり、また、本件商標を上記以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
4 商標権者の意見
上記3の取消理由通知に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べた。
<意見>
本件商標は、特殊な表示形態である井型の断面形状を立体的に、極めて写実的に、かつ抽象的に表示した図形からなる商標である。
たとえ、本件商標が繊維の電子顕微鏡の断面図を表示するものであっても、一部専門家又は研究者は別として一般の取引者・需要者において、その断面形状、つまり「繊維の内部構造」の如きを見ることだけによっては、該繊維の特性、格別の機能、或いは作用の因果関係を判断することは困難であるといって差し支えないといえる。
つまり、本件商標に接する一般取引者・需要者においては、これが「繊維の断面図の写真」を仮に認識せしめるものであっても、全体として統一された特異な構図が特徴となっており、これより直ちにその商品の構造、原材料、品質を的確かつ端的に表示するものとはいえないことは明らかである。
以上のとおり、本件商標は、その表示方法の特異性、並びに固有の特徴である構図キャラクターを打ち出しており、視覚を通じて取引者・需要者に格別な印象を植え付け、現実の取引市場においても、商標権者並びにその関連会社の製造・販売に係る商品を認識せしめるものとして、自他商品識別力を遺憾なく発揮しているものである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではない。
5 当審の判断
(1)商標権者は、たとえ、本件商標が繊維の電子顕微鏡の断面図を表示するものであっても、一部専門家又は研究者は別として一般の取引者・需要者において、その断面形状、つまり「繊維の内部構造」の如きを見ることだけによっては、該繊維の特性、格別の機能、或いは作用の因果関係を判断することは困難である旨述べる。
確かに、繊維の断面の形状を表した本件商標に接した一般の取引者・需要者が、これより該繊維がいかなる特性、品質を有するものであるか理解することは困難を伴うものといえる。しかしながら、織物、被服等の繊維二次製品のラベル、カタログなどにおいて、該商品に使用されている繊維の構造、品質、特性等を表示するために繊維の断面の形状を表した図形が、これらを記述した文字などと共に広く使用されていることは、申立人の提出に係る証拠によるまでもなく取引者・需要者の間に知られているところであって、本件商標の図形が繊維の構造の断面の形状を表したものと看取し得る限り、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者・需要者は、繊維の名称或いは繊維の特定の機能、作用等までは理解し得ないとしても、これより該図形に表された断面形状の繊維を原材料とした商品であろうと、ひいては該繊維の有する品質、特性を端的に表すために表示したものであろうと把握するに止まり、商品の識別標識とは認識しないものと判断せざるを得ないから、これに対する上記商標権者の意見は採用しない。
(2)商標権者は、本件商標は特殊な表示形態である井型の断面形状を立体的に、極めて写実的に、かつ抽象的に表示した図形からなる商標であり、全体として統一された特異な構図が特徴となっており、自他商品識別力を有する旨述べる。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠によれば、繊維の断面形状を斜視図をもって立体的に表すことは広く行われており、また、繊維の断面形状は、筒状であったり、表面がうろこ模様の棒状であったり、異形の構造の繊維を仕込んだ複合繊維の形状であったりと多種多様であることが認められる。
そして、商標権者が述べるように、本件商標に表された繊維の断面形状における井型が繊維の断面形状としては特異なものであるとしても、本件商標は、斜視図をもって立体的に表されている点において繊維の断面形状の一般的な表現手法と大差ないし、上記のように繊維の断面形状は多種多様であることに照らすと、本件商標に接した取引者・需要者は、これより井型の形状に特異性、独創性を看取し、この点をもって自他商品の識別標識と認識するというよりは、繊維の構造、品質、特性を表すために広く行われている、繊維の断面形状を斜視図をもって立体的に表したものの一類型であろうと認識するに止まるものと判断せざるを得ないから、この点に関する上記商標権者の意見も採用の限りでない。
(3)以上のとおりであり、商標権者の意見は、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものである旨認定した前記3の取消理由を覆すに足りるものではない。
したがって、本件商標は、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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