Trademark Appeal Case
称呼類似と観念の相違
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2000−91122(T2000−91122/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4403835号商標(以下、「本件商標」という。)は、「NAS」の文字(標準文字による)を横書きしてなり、平成11年4月23日に登録出願、第8類「手動工具,手動利器」を指定商品として、同12年7月28日に設定の登録がされたものである。
2 登録異議申立の理由
本件商標は、昭和45年8月19日に登録出願され、別掲に示すとおり、茄子の図形の下に「NASU」の文字を横書きしてなり、第13類「手動利器、手動工具、金具(他の類に属するものを除く)」を指定商品として、同49年10月7日に設定登録された登録第1091593号商標(以下、「引用商標」という。)と称呼において類似する商標であって、引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は取り消されるべきである。
3 本件商標に対する取消理由
本件に係る登録商標は、登録異議申立人が引用する登録第1091593号商標(商公昭47ー52488号)と類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標権者の意見の要旨
申立人は、引用商標の「NASU」の文字を要部として観察すべき、と主張しているが、要部によって商品の出所を識別して取引が行われる場合のあることを否定するものではないが、例えば、野菜の茄子の図形の下に「ABC」という文字が付されている場合には、「茄子の図形部」及び「ABC」の文字部分が識別機能を担保しているというべきである。
しかしながら、引用商標においては、商標を見る者に対して、「野菜の茄子」の強い印象を想起させることは、誰の目からも明らかである。
そして、ローマ字「NASU」は、図形部分と外形上まとまりよく一体的に構成されている。その結果、「NASU」の文字は、「野菜の茄子の図形」を「なす」という読みで説明しているか、又は「野菜の茄子」を少し洋風にデザイン化したものと看者に印象付け、ローマ字「NASU」自体も「野菜の茄子」を意味するものとして看者に印象付けさせるにすぎないものである。すなわち、引用商標が商標の本質的機能として備える自他商品識別機能の本質は、「野菜の茄子」を看者に強く想起させる点にあるというべきである。
したがって、「野菜の茄子」を強く看者に想起させる引用商標と、なんの観念も想起させない「N」「A」「S」の文字からなる本件商標には、著しい相違点があり、称呼の一致をもって類似するという画一的な基準を適用する余地はないというべきである。このことは、昭和39年(行ツ)第110号最高裁判決及び平成6年(行ケ)第150号東京高裁判決からも首肯し得るところである。
5 当審の判断
本件商標は、前記のとおりの構成からなるところ、これよりは、各アルファベットの読みに従い「エヌエイエス」と称呼されるばかりでなく、例えば、日常一般にも親しまれている英語の「gas」が「ガス」と読まれ、日本農林規格の「JAS」が「ジャス」と読まれている用例に照らしてみれば、読みやすく簡潔な英語風の読みに従い「ナス」の称呼をもって、取引に資される場合も決して少なくないものとみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標は、「ナス」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
これに対して、引用商標は、別掲に示すとおりの構成よりなるところ、その構成中、顕著に表されている「NASU」の欧文字に相応して「ナス」の称呼を生ずるものと認められる。
してみれば、本件商標と引用商標とは「ナス」の称呼を共通にするものである。
ところで、両商標の共通する指定商品である「手動工具、手動利器」の中には、必ずしも専門家の使用する商品ばかりでなく、一般的な消費者の使用する商品も多く含まれており、このような商品分野においては、消費者が自己の求める商品を識別して購入する際に、テレビ、ラジオ等のコマーシャルにおける称呼による商品の宣伝を記憶して、これを頼りに取引に当たる場合も多く、本件商標及び引用商標より生ずる「ナス」の称呼のように、簡潔で、馴染みやすく、記憶にとどめやすいものである場合には、商標から生ずる称呼に頼る場合が少なくないものと認められる。
この点について、商標権者は、引用商標は「野菜の茄子」を強く看者に想起させる商標であるのに対して、本件商標は何の観念も想起させない商標であるから、称呼の一致のみをもって類似の商標とすべきものではない旨主張している。
確かに、引用商標は、茄子の図形と「NASU」の欧文字からなるものであるから、「NASU」の欧文字からも、その図形と相俟って、野菜の「茄子」の観念を生ずるということができる。一方、本件商標の「NAS」の文字は、特定の意味を有する語ではないから、両商標をその構成上、語義上のみから対比すれば、両者には観念上類似するところは見当たらない。
しかしながら、本件商標及び引用商標がいずれも「ナス」の称呼をもって商品の取引がされる場合、取引者・需要者は無意識のうちにも、その称呼から何らかの観念を思い浮かべるのが自然であり、「ナス」の称呼から連想し得る最も親しまれた意味合いは、馴染みの深い野菜の「茄子」であることからすると、需要者は、両者の「ナス」の称呼から、野菜の「茄子」を想起し、観念する場合も少なくないものというべきである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、称呼を同一にするために、需要者の間で、観念上の錯誤、混同を生ずることも否定できず、両商標は、観念の点においては何ら関係のないものであるとする商標権者の主張は、採用し難い。
更に、両者の外観についても、両商標の欧文字部分は、語尾における「U」の文字の有無の差のみであり、両商標が「ナス」の称呼をもって商品の取引がされる場合には、「U」の文字の有無にかかわらず「ナス」と称呼し得ることとも相俟って、「U」の文字の有無に差程強い印象の差があるものとは認められない。また、引用商標には、本件商標にはない「茄子」の図形を含んでいるが、これとても、「ナス」の称呼及び「茄子」の観念に相応する「茄子の図形」を線描画風に写実的に表したものであって、「ナス」の称呼をもって商品の取引がされる場合には、自ずと想起される形状であってみれば、この図形部分が際だった印象を与えるものともいえず、格別強く記憶に残るものともいい難い。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、その称呼が同一であるために、対比観察上の観念や外観においては違いがあるとしても、両商標が実際の取引の場におかれた場合を考慮すれば、一般的な需要者の間において、互いに混同されるおそれが高いものといわなければならない。
なお、商標権者は、昭和39年(行ツ)第110号最高裁判決及び平成6年(行ケ)第150号東京高裁判決を挙げて主張するところあるが、本件の判断も、商標から生ずる外観、称呼及び観念を総合して考察し、取引の実情をも勘案して判断しているところであり、上記判決の趣旨に反するものではない。
してみれば、本件商標と引用商標とは「ナス」の称呼を共通にする類似の商標であり、かつ、両者の指定商品も同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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