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Trademark Appeal Case

菓子名「サンマルク」の普通名称性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2000−90699(T2000−90699/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4371117号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4371117号商標(以下、「本件商標」という。)は、 「サンマルク」の文字を横書きしてなり、平成8年8月27日に登録出願、第30類「菓子及びパン(但し、「氷砂糖・水あめ」を除く。)」を指定商品として、同12年3月31日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

本件商標は、洋菓子の一名称としてわが国においても知られているフランス菓子の「サンマルク(saint marc)」を表示する「サンマルク」の文字を普通に用いられる方法で表示してなるにすぎないから、商品の普通名称又は品質を表示したものであり、自他商品の識別標識としての機能を有せず、また、商品「サンマルク」以外の商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第1号又は同第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反してされたものであるから、その登録は取り消されるべきである。

3 本件商標に対する取消理由

登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして商標権者に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

<取消理由>

登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る甲各号証を総合勘案すれば、「サンマルク」の語は、洋菓子を取り扱う業界において、スポンジとスポンジ生地の間にヴァニラとチョコレート等の2種の風味を有する生クリームを交互にはさみ、上面をキャラメル状に焼いたフランス菓子を指称するものとして使用され、一般に知られていると認めることができる。

そうすると、本件商標は、これと同じ文字を書した「サンマルク」よりなるものであるから、これに接する取引者・需要者は、これより上記「フランス菓子の一種で、スポンジを生地とするケーキ菓子」を容易に理解し、認識するにすぎないものとみるのが相当である。

したがって、本件商標は、これをその指定商品中「スポンジを生地とするケーキ菓子」について使用するときは、単にその商品の品質を表示するものであり、また、その指定商品中の上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見

上記3の取消理由に対して、商標権者は、次の要旨の意見を述べた。なお、欧文字にアクサン記号が付されている文字については、アクサン記号を省略して記載した。

(1)フランス国で発行されているフランス語の国語辞典(乙第1号証及び同第2号証)に「saint marc」の語は掲載されていないのに対し、例えば「SAINT‐HONORE」「saint‐honore」(サン・トノーレ)や「SAINT‐MICHEL」(サン・ミッシェル)の語がケーキの名前として記載されている。

(2)「サン・マルク」の語や「saint‐marc」の語の記載のある甲号証として示されている書籍は、特定の読者層向けの専門的な書物や申立人「株式会社銀座コージーコーナー」のちらしであり、本件商標の指定商品の需要者である不特定多数の者を対象とする日本国内で発行されている一般的な、かつ主な国語辞典や外来語辞典、仏和辞典等(乙第3号証ないし同第15号証、これらの総発行部数は、甲号証の書籍の総発行部数よりは、はるかに多いと思われる。)には、ケーキの一種の普通名称としての「サンマルク」の記載は見当たらない。

これらの仏和辞典には、フランス国での辞典と同様に、ケーキの名前として、「saint‐marc」の項目はないが、例えば、甲号証に記載されている、「saint‐honore」や「saint‐michel」の項目が記載されているのである。

(3)以上(1)及び(2)の事実より、「サンマルク」(saint marc)の菓子は、本件商標の登録査定前はもちろんのこと、登録出願前の古くより、フランス国はもとより広く世界的に知られていると認定すべき根拠はないものであり、わが国においても一般に知られていると認定するには、その根拠が極めて薄弱なものである。

(4)洋菓子の業界及びその需要者間においては、「サンマルク」(saint marc)は、フランス菓子の一種でスポンジを生地とするケーキ菓子で、スポンジとスポンジ生地の間にヴァニラとチョコレート等の2種の風味を有する生クリームを交互にはさみ上面をキャラメル状に焼いた菓子を指称する名称として一般に知られている、と認定する。

しかし、申立人の提出に係る甲第18号証によれば、「パイ生地のしっとりさがいいサンマルク」と述べられており、甲第18号証のこの記載は、「サンマルク」(saint marc)はスポンジを生地とするケーキ菓子、との認定と矛盾する。したがって、この認定も、その根拠が薄弱である。

(5)前記した「SAINT‐HONORE(saint‐honore)」や「SAINT‐MICHEL(saint‐michel)」或いはこれらを片仮名文字で表した「サン・トノーレ」、「サン・ミッシェル」と同一の片仮名文字を要部とする商標等が多数第30類「菓子、パン」において登録になっており(乙第16号証及び同第17号証)、これらの商標は、何の限定もなしに「全ての菓子」及び「全てのパン」において登録され、その後無効審判の請求等を受けることなしに今日まで有効に存続している。

(6)甲各号証に「サンマルク」や「Saint‐Marc」の語が記載されているが、これらの語がケーキの一種の普通名称として記載されているのかどうか判然としない。さらにいえることは、登録後に第三者の使用によってケーキの一種の普通名称と化したものが仮にあるとしても、例えば、上記「乙第19号証」他15件の商標のように、甲各号証で示されている書籍にケーキの名前として記載されている語と同一の語が、当該書籍が発行された日以降に商標登録されている事実が多数あることからすれば、,甲各号証においてケーキの名前として記載されている語であっても、一般需要者において、その名前がある特定の品質をもったケーキを表す語であると直ちに認識される程には著名でない場合は、当該語は商標として機能し得るとみなされる可能性があることを否定できないのである。

そこで、「サンマルク」の語についてみると、上記(1)ないし(3)及び(4)に記載したことからも明らかなように、本件商標の登録査定時において、「サンマルク」の語は、一般需要者が、フランス菓子の一種で、ある特定の品質をもつケーキ菓子のことであると直ちに認識する程には著名であったとはいえない。すなわち、本件商標は、その指定商品について、商標として機能するとみなされる可能性があり、上記ケーキ菓子であると容易に理解され認識される語であるとは断言できないのである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する商標とは断言できないものである。

(7)「サンマルク」の語は、ある特定の品質をもったケーキ菓子を表す語として、わが国において一般に知られているといい得る根拠が薄弱であり、スポンジを生地とするケーキ菓子に直結する語であるとはいえないものである以上、「ケーキ菓子」とは別分野の、少なくとも、例えば、「和菓子」及び「パン」において使用されても、その商品の品質を誤認させるおそれがないものである。

したがって、「サンマルク」の語からなる本件商標は、その指定商品中「ケーキ菓子」以外の、少なくとも、例えば、「和菓子」及び「パン」においては、商標法第4条第1項第16号の規定に該当しない。

このことは、甲各号証に記載されている語と同一の語(或いは同一の称呼が生じる語等)からなる商標、特に甲各号証の書籍の発行日以降に、「和菓子を含む全ての菓子」及び「全てのパン」において登録されている商標の存在からも明らかである。

(8)商標権者は、商標権者の名称の要部と同一の「サンマルク」という名のフランチャイズ方式のベーカリーレストランを全国的に展開し、そこで提供される焼きたてのパンとともに、その料理の内容、料金、雰囲気等で多数の人から支持を受け、さらに個人株主の数も増加しつつあり、今では、「サンマルク」の語は、商標権者の業務に係るベーカリーレストランの名として著名になっているといい得るものであり、「サンマルク」においてはパンも販売しているのである(乙第44号証ないし同第57号証)。

上記事実よりすれば、「サンマルク」の語に接した需要者は、その語から商標権者の業務に係る、焼きたてのパンを提供し販売していること等で著名なべ一カリーレストランの名前「サンマルク」を連想するといえる。

この点からしても、本件商標は、その指定商品中少なくとも「和菓子」及び「パン」に使用された場合、当該商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるとはいえないものである。

実際、商標権者の業務に係るベーカリーレストラン「サンマルク」の経営において、今までに「サンマルク」の菓子を販売する店かと誤認されたということはない。

(9)以上述べたとおり、本件商標は、前記3の取消理由に該当するものではなく、少なくとも、その指定商品中「和菓子」及び「パン」については、取消理由に該当しないものである。

5 当審の判断

本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの理由により本件商標の登録を取り消すべきものとした前記3の取消理由は、妥当なものであって、これについて述べる商標権者の上記4の意見は、以下の理由により、採用することができない。

(1)申立人の提出に係る証拠によれば、

甲第2号証「洋菓子 スポンジ/バターケーキ」(1983年7月1日株式会社学習研究社発行)に「Saint‐Marc、サン・マルク」の項が設けられ「表面のカラメルが香ばしいフランス菓子。」と記述されており、甲第3号証「洋菓子事典」(1983年7月30日株式会社学習研究社発行)にも同様の記述がある。

甲第4号証「お菓子の学校」(昭和59年12月15日株式会社主婦の友社発行)に「サンマルク」の項が設けられ「アーモンドパウダーを加えて焼いたスポンジ生地に、バニラ風味とチョコレート風味のシャンティイクリームをはさみ、表面に振りかけた粉砂糖を香ばしく焼いて仕上げます。切り口がシンプルで美しいお菓子です。」の記述と共に、その菓子の作り方が写真を添えて紹介されている。

甲第5号証「洋菓子全集1 ヨーロッパの伝統と菓子」(昭和60年11月1日専修学校日本菓子専門学校発行)にフランス菓子として「(8)サン マルク(Saint‐Marc)」の項が設けられ「人名に由来する菓子は非常に多いが、聖人に由来する菓子は、このサンマルクとガトー サントノレだけであろう。」と記述されている。

甲第6号証「桑原清次の洋菓子入門 暮らしの設計188号」(1994年8月30日6版中央公論社発行)に別立てスポンジ生地を使って作るお菓子として「サンマルク」の項が設けられ「なめらかなクリームとアーモンド風味のスポンジの調和した味わいが忘れられなくなるお菓子。」の記述と共に、その菓子の作り方が写真を添えて記述されている。

甲第7号証「シェフ・シリーズ47号 フランス菓子を育てた農民の眼 洋菓子の出発点」(1994年4月20日中央公論社発行)に作り手の解釈がはっきり分かるオーソドックスな菓子として「サンマルク Saint‐Marc」の項が設けられ「アーモンド風味のビスキュイで泡立てた生クリームとガナッシュを挟み、表面を香ばしくキャラメリゼしたサンマルク。味のハーモニーを楽しむケーキですが、シンプルなだけにそれぞれの品質と比率にこだわりたいところ。」と記述されている。

甲第8号証「洋菓子事典」(1991年12月4日株式会社主婦の友社発行)に「サン・マルク Saint‐Marc(仏)」の項が設けられ「聖マルコの名をつけたアントルメ。粉末アーモンド入りの特別なビスキュイにヴァニラとチョコレートの2種の生クリームをはさみ、上面をキャラメリゼ(砂糖を熱したこてで焼くこと)して仕上げる。」と記述されている。

甲第9号証「洋菓子・和菓子・デザート 百菓辞典」(平成9年8月30日株式会社東京堂出版発行)に「サン‐マルク 仏Saint‐Marc」の項が設けられ「聖マルコ(マルク)の名前を付けたものだが、由来は不詳。粉末アーモンド入りのスポンジの上に、チョコレート入り生クリームと普通の生クリームを2層に重ね、同じスポンジをのせてカラメリゼしたもの。」と記述されている。 また、甲第10号証「ミセス愛蔵版第14号味で選んだ洋菓子店」(昭和54年6月4日文化出版局発行)、甲第11号証「コーヒー・ケーキの店」(昭和55年7月15日株式会社柴田書店発行)、甲第13号証「完全無欠のケーキ屋さんとっておきガイド」(昭和58年1月5日株式会社主婦と生活社発行)、甲第17号証「柴田書店MOOK OYSYケーキ」(平成6年9月30日株式会社柴田書店発行)、甲第18号証「うまい店ガイドケーキ・甘味処」(1996年4月20日株式会社京阪神エルマガジン社発行)及び甲第19号証「ChouChouシュシュ1997NO.2」(1997年1月22日株式会社角川書店発行)などの書籍に菓子、ケーキの一つとしての「サンマルク」(Saint‐Marc)を販売している店が紹介されている。

甲第20号証「銀座コージーコーナーのパンフレット」及び甲第23号証「Chateraiseのパンフレット」に洋菓子、ケーキ菓子の一つとしての「サンマルク」の写真が他の菓子の写真と共に掲載されている。

上記の事実からすると、「サンマルク」(Saint‐Marc)は、フランス菓子の一つの洋菓子として洋菓子関連の複数の事典(辞典)及び主婦など一般の需要者を対象とした複数の書籍に記載されており、菓子を取り扱う事業者のみならず、一般需要者においても「サンマルク」(Saint‐Marc)がフランス菓子の一つであると認識し得る機会が多分にあったものということができる。そして、「味で選んだ洋菓子店」などとして洋菓子の一つとしての「サンマルク」(Saint‐Marc)を販売する店舗が紹介されていることからすると、実際に洋菓子の「サンマルク」(Saint‐Marc)を販売する店舗は、紹介されている店舗のほかに、数多く存在するものと推認することができる。しかも、これら洋菓子店、コーヒーショップ、レストランなどの店舗は一般需要者を対象とする店舗であることは広く知られているところであるから、一般需要者が、日常、洋菓子の「サンマルク」(Saint‐Marc)に接する機会はさらに多かったものということができる。

これらのことからすると、上記の取消理由に記載したとおり、「サンマルク」の語は、フランス菓子の一つを指称するものとして一般に知られていたものと認めるのが相当である。

そうとすれば、「サンマルク」の文字を普通に用いられる方法で書してなるにすぎない本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、「サンマルク」の文字はフランス菓子の一つを表したものであろうと理解するに止まり、結局、本件商標は、該商品の品質を表示したものであって、自他商品の識別標識とは認識し得ないものと判断せざるを得ない。

しかして、わが国において甲各号証に上記記載の事実が存し、「サンマルク」の文字はフランス菓子の一つであるとの認識がなされている以上、商標権者の提出に係る辞書類に洋菓子の「サンマルク」(Saint‐Marc)に関する記述がないこと、また、商標登録要件の存否の判断は、その査定時を基準として個別具体的になされるものであるから、甲各号証において記載されているケーキの名前と文字が同一、あるいは称呼が同一等の語からなる商標の登録例があることをもって、上記認定を妨げることにはならない。

(2)甲第18号証について、商標権者は、同号証に「パイ生地のしっとりさがいいサンマルク」と述べられており、「スポンジを生地とするケーキ菓子」の認定と矛盾する旨述べている。しかしながら、該記述の上部に掲載されている洋菓子の写真は、他の甲号証の洋菓子の一つである「サンマルク」(Saint‐Marc)の写真と照らし合わせてみると、他の洋菓子の一つである「サンマルク」の写真と大きく異なるところはないといえる。

そうすると、該写真と記述内容を合わせて考察すれば、必ずしも「パイ生地のサンマルク」を洋菓子の一つとしての「サンマルク」(Saint‐Marc)の一バリエーションと解する可能性を否定し得ないというべきであるし、同号証が存在することのみをもって、上記(1)の認定を否定することができることになるとも判断することができない。

(3)商標権者は、「サンマルク」の語は、「ケーキ菓子」とは別分野の、少なくとも、例えば、「和菓子」及び「パン」において使用されても、その商品の品質を誤認させるおそれはない旨述べている。しかしながら、上記のとおり「サンマルク」が、スポンジを生地とするフランス菓子の一つであることが一般に知られていること、及び、洋菓子の一つである「サンマルク」と、それを除く「菓子及びパン(但し、「氷砂糖・水あめ」を除く。)」とが、商品の生産部門、販売部門、原材料、品質、用途、需要者層等が概ね共通することからすると、本件商標を洋菓子の一つである「サンマルク」を除く商品について使用した場合、商品の品質の誤認を生ずるおそれが十分にあるといわざるを得ないものである。

(4)したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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